ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

13 / 32
今回で第1章は終わりです。
楽しんでいただければ幸いです。


蹂躙、その果てにあるEnding

  かすれた、しかしどこか威厳を感じる音声と音楽が鳴ったかと思うとガシャコンバグヴァイザーIIIから黄金と鮮烈な赤の混ざり合った波動が発生し、正斗の全身の細胞に特殊なエネルギーを作用させていく。

 

  音声が一つ繰り返していくたびに、正斗の肉体は変質していく。今まで個々として存在していた俺の中の無数の属性力(エレメーラ)が一つに収縮され、胸の中心で拳大の巨大な結晶となるのが実感できた。

 

  その属性力(エレメーラ)ーー万能属性(ジ・ゴッド)とガシャコンバグヴァイザーIIIから発生している全身の細胞を書き換えるエネルギー波が共鳴し、正斗の肉体をエレメリアンと化していく。

 

  エネルギー波は周囲の空間にでさえ干渉し、正斗を中心として波動と同じ色の極大の火柱が立ち上る。それに思わず自分の顔をかばうドラグギルディとバハムギルディ、ツインテイルズを見たのを最後に、〝神崎正斗〟は一旦眠りについた。

 

 

 

  代わりに現れるはーー究極のバグスター、ゲムデウス。

 

 

 ゴォォォ……

 

  …やがて、正斗を覆っていた火柱が消え失せる。残ったのはゲムデウス唯一人。人間神崎正斗の肉体は異形のものへと代わっていた。人間からすれば、悍ましいであろうその姿に。

 

『ハァァァーーフンッ!!!』

 

 パァンッ!!!!!!!

 

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

  ゆっくりと息を吐きながら、神崎正斗が掲げていた、ガシャコンバグヴァイザーIIIの消えた今はゲムデウスのものである腕を下ろす。そうすると全身に溢れ出る属性力(エレメーラ)を体感し、試しに拳を大木に振り下ろしてみた。すると、大木はいとも容易くへし折れ、轟音を立てながら消滅する。それに周りにいるゲムデウスの主意識の友と、ゲムデウスの神域に土足で足を踏み入れた咎人どもが驚愕を目を見開いた。

 

  ふむ、脆くあっけない存在だ。そう思いながらゲムデウスは翼を使い地面に降り立ち、あらゆるものを破壊し尽くすだけの究極の力を持つであろう己の至高の肉体を見下ろし確認しながら歩き出した。

 

  まず最初に目に入った両腕は、他の前身と同じく鎧の如き究極に堅牢な外骨格に包まれ、赤と金で彩られている。ゲムデウスへと変わった時に体高は二メートル以上になり、全身に内包する膨大な筋肉とエネルギー、纏う神の鎧に比例して一歩足を踏み出すだけで蜘蛛の巣状に地は割れる。

 

  その両足もまた美しく洗礼された鎧に包まれており、腰からは黒と赤で染められた悍ましい色の羽根のようなマントがたなびき、背には無尽蔵に生成されている属性力(エレメーラ)を放出し、それの副次的効果で鳥の丸焼きような頭の異形ーーバグスターウィルスを生み出す一対の異形の翼。

 

  動きに伴い揺れる両肩には一見、嗤っているようにも見える下顎のない黒く染まった龍の頭蓋が存在し、その白い目には狂気が宿る。龍の頭蓋骸につながる、たとえこの惑星がぶつかろうともむしろ惑星の方を木っ端微塵にする堅牢さを誇る胴体の鎧は、白、赤、金で装飾され、胸元には逆三角の形に丸い装飾が施され、そこからは気体状にバグスターウィルスを周囲の空間に散布している。

 

  ふと立ち止まり、先ほど大木を消滅させた時に出てきた地下の水流から生まれた小川に目を落とせば、そこに映るのはやはり異形の…しかし荘厳さを感じる顔。天を貫く黄金の角に我が威光を示す天輪、かつては人のものであった、全身に走るものと同じく怪しく光る青い目。むき出しの牙はゲムデウスの荒れ狂う力を示すかのようだ。

 

  結論として、ゲムデウスがこうして現界するのは初めてだったが…存外にうまくいったようだ。ゲムデウスは、その人間ならば歓喜という感情を表すため、大きく両腕を広げ嗤う。

 

『クククク……ハーッハッハッハッハハッハッハッッ!!!!!!』

 

 

 ドォッ!!!

 

 

  ゲムデウスが笑い声をあげただけで周囲の地は抉れ、豪風が舞う。ゲムデウスの力に本能的にに恐れおののいたのか、全員が後ずさった。

 

『あぁ…とても良い気分だ』

 

  それが、それを見て最初に浮かんだゲムデウスの明確な感情だった。

 

「ぐっ!?」

「な、何よこれ!?」

「エム…うっ!」

「あれが……正斗さん?」

「まさか、ありえぬ!人が我らと同じとなるなど!?」

「だが、あれはまぎれもない神の…首領様と同じ……いや、それ以上の!?」

「馬鹿な!」

 

『ハーッハッハッハッ……ふぅ。実にいい気分だ。礼を言うぞ、神崎正斗』

 

 ーーあまりやりすぎるなよ。あと、パラドたちは守れ。

 

『ふむ…承知した』

 

  ゲムデウスは己の意思の奥底にいる主意識にそう答えながら、すっと右腕を掲げる。そうすると突如雷鳴が鳴り響き、咎人の後ろにいた有象無象の百ほどを消滅させた。驚いて振り返る咎人と…確か、ツインテイルズと言っただろうか?ゲムデウスの主意識たる神崎正斗が言った、守護対象たち。しかし、これで終わりではない。神たるゲムデウスが持ちし力は、この程度のものではないのだ。

 

『出でよ……〝宝剣デウスラッシャー〟』

 

  ゲムデウスが命じれば、掲げた手の上に後ろにいた無数のバグスターウィルスが動きを止めて粒子と成り、収束して一振りの我が鎧と同じ色を持つ片刃の剣ーーゲムデウスの振るう神の剣、〝宝剣デウスラッシャー〟となった。ゲムデウスはそれを掴み取り、そのまま振るう。

 

『消えよ』

 

 ズパンッ!!!!!

 

  宝剣デウスラッシャーより波動が生じ、さらに黒く蠢く有象無象を二百ほど屠る。同じく切り裂かれるはずだった咎人二匹は咄嗟に回避した。しかし、あの程度の存在にゲムデウス剣を防げることは絶対的にありえない。

 

 故にーー

 

 ブジュゥッ!!!

 

「「カハッ!!?」」

 

 ーー断罪される。

 

  その矮小なる身の一部を深く切り刻まれた咎人らは地に膝をつき、こうべを垂れる。そうだ、それこそが至高の神であるゲムデウスに取るべき態度。彼らはただ、神たるゲムデウスの裁きを静かに受け入れれば良いのだ。それ以外は何も必要ない。愛も、信念も、矜持も、何もかも。なぜならそれらは全て無意味なるもの、ゲムデウスよって消されるものなのだから。

 

「くっ!このまま、終わってたまるものかぁっ!!!」

「…! ドラグギルディ、貴様……!」

「共に行くぞ、兄弟よ!」

 

  しかし、不遜にもこうべをあげ、ゲムデウスに向かい敵意を向ける愚か者たち。彼らはまだわからぬようだった。自分たちはどこまでいってもゲムデウスには決して叶わぬ、ちっぽけな存在だということが。

 

  ならば、教えてやろう、とゲムデウスは思う。その心が折れ、身を地に伏すその瞬間まで、どこまでも徹底的に。

 

「見よ、我が愛の結晶を!!!」

「グオォオオォォォォォっ!!!!」

 

  黒の咎人は体に闘気を纏い、頭部より黄金のツインテールを生み出す。白の咎人はその身に宿る属性力を爆発的に高め、その流麗で洗礼された姿をかなぐり捨て身の丈三十メートルを超える巨大な白龍となった。黒の咎人はその背に乗り、手に白の咎人が持っていた()()()と自らの()を携え、二匹とも雄叫びをあげながらゲムデウスに向かい突進してくる。

 

「「受けてみよ!我らが信念の剣っ!!!」」

『ほう……』

 

  信念ときたか。ゲムデウスは動かぬ顔で嗤った。しかし、それもまたーー

 

『無意味』

 

 ガァンッ!!!

 

 ーーいとも容易く、防がれた。

 

「「「「「「なぁ!?」」」」」」

 

  ゲムデウスがデウスラッシャーを持つ右腕を下げ、代わりに掲げた左腕に粒子が収束して現れた不思議な形状をした大楯ーー〝宝盾デウスランパート〟により、その体に比例して肥大化したバハムギルディの一対の角も、その背に乗るドラグギルディの双剣も完全に防がれていた。

 

  驚くドラグギルディとバハムギルディをせせら嗤い、ゲムデウスはそのままデウスランパートに属性力(エレメーラ)を注ぎ込み先端部分を操作、先端に三本の爪がついたまるでムカデの胴体のようにして双剣を粉々に破壊、次に何節にも別れた長い鞭のように形状を変形させてバハムギルディもろともドラグギルディを地に叩きつける。アルティロイドを何十体も潰しながら轟音を立てて黒白竜は地に落ちた。

 

「グ、ガハァ……!」

「な、何という力…!」

『理解したか?神たる我に楯突いた意味を』

「「くっ……!」」

『這いつくばったまま、死ぬがよい』

 

  冷酷な嘲笑とともにゲムデウスがデウスランパートの先端を元に戻し、再度デウスラッシャーを天空に向かって突き上げると、ドラグギルディとバハムギルディ、アルティロイド、ツインテイルズ全てを包み込むほどの赤と青で縁取られた数百メートルに及ぶ巨大な黄金の魔法陣が出現した。

 

 バヂ、バヂバヂバヂッ!!!

 

 ゴォォォォオオォオッ!!!

 

 キュィィイィイイィッ!!!

 

  それからは何十、何百という放電現象が起こっており、さらに紅色の豪炎、果ては巨大な水晶の刃まで。それらは一つ一つが致死の威力を内包している。死の恐怖に体を縛られ、誰一人として動くことはできなかった。ゲムデウスはそれを満足そうに見て、デウスラッシャーを振り下ろす!

 

『砕け散れ!!』

 

 神の審判は下された。

 

 ドゴォォォォォン!!!

 

「「がぁぁぁぁぁッ!?」」

「「「モケェーー!?」」」

 

  まず最初に、無数の水晶の刃が落下した。それにドラグギルディとバハムギルディの全身が切り刻まれ、残っていたアルティロイドのうち三百体ほどが押しつぶされる。

 

 ゴアァアアァアアァアアッ!!!

 

「「グォォオォォォォォっ!?」」

「「モケケェ!?」」

 

  次に龍のような唸り声をあげて地に激突した豪炎で既にボロボロの黒白竜の体を炭化させ、アルティロイドがさらに二百体ほど焼却され消滅する。

 

 ビシャァァァンッ!!!

 

「「ガハァアァアアァッ!!」」

「モ、モケーーー………」

 

  最後に、無限大にも等しい万雷がとどめを刺し、ドラグギルディとバハムギルディは瀕死寸前まで追い込まれ、アルティロイドは一体残らず全て消え失せた。ツインテイルズたちは事前にゲムデウスの中の正斗により対象外となっていたので、傷一つ負ってはいない。しかし、あまりの圧倒的な光景にこれまでのようにピクリとも動くことも、声を発することすらできなかった。

 

『フン、この程度か。あっけない。さあ、今度こそ完全に消えーーっ?』

 

  再度、デウスラッシャーを振り下ろし今度こそドラグギルディとバハムギルディを切り刻もうとしたところで…ゲムデウスはピタリと動きを止めた。そしてゆっくりと、左腕に持つデウスランパートを見る。

 

『…何?』

 

  その表面には何と、本当にごく僅かだが傷が付いていた。先端の三本爪の先端も一ミリほどわずかに欠けている。まさか、ありえないとゲムデウスは思考した。神である自分の武具に傷をつけるなど、と。

 

 ーークク。ゲムデウス、どうやら思ったより骨があるようだな?

 

『……フン。興ざめだ、あとは好きにしろ、神崎正斗』

 

  今までの声とは何か違う、呆れたような、途端に興味を失ったような空虚な声でゲムデウスは言うと、デウスラッシャーとデウスランパートを削除して自分の体より溢れ出すほどの、全身を構成している特別なバグスターウィルス…自分が神たる所以である〝ゲムデウスウィルス〟を胸の中心に存在している万能属性(ジ・ゴッド)属性力(エレメーラ)の中にまとめあげ、その肉体と精神を内側にしまい込んで肉体を変質させていく。

 

「ふう…やはり疲れるな、実際に体を私が操作しているわけではなくても」

 

  代わりに、数秒前までゲムデウスがいた場所には最初の巻き戻しのように、ジャケットを直して息を吐く正斗が立っていた。

 

 

 ●◯●

 

 

  やはり、ゲムデウスの力を俺自身が完全にコントロールするのは不可能、か。内側からの干渉はできるが、やはり予測通り肉体と意識までは別物になってしまうな。

 

  そんなことを考えながら歩き始める。最初にまず、呆然としているパラドたちの方へ行った。すると至近距離に来てようやく俺に戻ったことに気がついたのだろう、慌てた様子でこちらに駆け寄ってくる。

 

「お、おい正斗、さっきのは!?」

「そうよ、いつの間にあんな力を!?」

「まあ待て、落ち着け二人とも。特にレッド、今のお前の姿で詰め寄られると事案に見える」

「いやそんなこと今はどうでもいいだろ!それより、なんでエレメリアンになれたんだよ!しかもめっちゃ強いじゃねえか!」

 

  大げさな身振り手振りを交えていう総二に、そういえば自分がパラドを除いたツインテイルズにも、他のバグスターたちにもエレメリアンになれることを言っていなかったのを思い出す。

 

「ああ、言っていなかったか?ガシャコンバグヴァイザーIIIには体内の属性玉(エレメーラオーブ)を融合し、共鳴反応を引き起こして肉体を変化させる機能が搭載されている。まあ、俺限定だがな」

「そんな力聞いてないわよ!ていうか、大丈夫な訳!?」

「そ、そうです!人間がエレメリアンになるなんて、どれだけの負担がかかるか…!」

「心配せずとも負担は最小限になるよう調整してある。俺が死んだら他のバグスターも死ぬわけだしな、それくらいは想定済みさ」

 

  俺の回答にほっとする一同。まあ、最小限といっても普通の人間なら即死するくらいの負担なのだが。おそらく、死ぬ回数は100回はくだらないだろう。俺が死んでいないのはひとえに普段からの鍛錬と異常なほど強靭な肉体、それに加え外界の端末という意味でバグスターが顕現するほどの強力な属性力(エレメーラ)が各々の核として排出されているおかげだ。さしもの俺でも、完全な状態の属性力(エレメーラ)数十個分のエネルギーなど耐えられない。

 

  それにしても…まさか、トゥアールまであれほど心配してくれるとはな。普段奇行や変態発言をして愛香や俺、パラドなどにシメられたりする姿しか見ていないが、やはりこいつも善人なのだろう。そもそも、そうでなくてはわざわざ別世界まで来て侵略者を止めようなどとは考えないだろうし。

 

  一方、事前に知っていたパラドもわかってはいても心配だったのだろう、俺を少し咎めるような目で見て来ている。さすがにうっと息を詰まらせ、無言でジローっと睨んでくるパラドに素直に頭を下げて「ごめん」と端的にであれ、しっかりと謝った。すると彼女はふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向くも、無事で良かったという思いが遊戯属性(ゲーマー)から感じられた。

 

「まあ、せっかくだ、素直に心配は受け取ろう。他ならぬ大切な親友と仲間たちだしな」

「ったく、だったらあんまり無茶はやめろよ?」

「そうよ、あんまり聞かないようなら物理的に止めるからね」

「いやテイルブルー、それ完全に蛮族な発げほぉっ!」

 

  いつものごとく愛香に殴られて吹っ飛ばされるトゥアールを見て嗤い(誤字にあらず)ながら、後始末をつけるために体ごと向きを変え、再び歩き出す。その先には瀕死のドラグギルディとバハムギルディが地面に仰向けに倒れ伏していた。

 

「やあ、ドラグギルディにバハムギルディ。私の力は理解できたかね?」

「…ああ、身にしみたぞ神崎正斗。まさか、人間でありながらエレメリアンになる存在がいようとは、完全に想定外だった」

「フッ…それに、どうやら俺たちは自分が思っている以上に思い上がっていたらしい。貴様の力はまさしく、首領様にも匹敵するほどの神のごとき力であった。自ら豪語するだけのことはあるだろうな」

「ふむ…まあ、あれは正確には私ではなくゲムデウス自身の人格なのだが…まあいい」

 

  なんかすでに満足そうな顔をしているドラグギルディとバハムギルディに曖昧な表情でそう言い、一度咳払いをして気持ちを取り直すと再度強い口調で話しかけた。

 

「さて。今こうして話しかけた目的は、別に自慢ではない。君達二人に交渉を持ちかけたくてね」

「交渉、だと?」

「貴様、この世界の守護者であろう?それなのに侵略者である俺たちと交渉をするとは…正気か?」

「まあまて、そうカリカリするな。取引とはお互いが冷静にお互いの利益を考慮して進めるものだ。…で、だ。肝心の交渉内容だが……君達二人とも、人にはなりたくないかね?」

「「ッ!?!!?」」

 

  唐突で突拍子も無い言葉に、ドラグギルディとバハムギルディは目を見開いた…気がした。ゲムデウスではないから鎧のようなエレメリアンの表情など俺にはわからんが、後ろで息を呑んでいるパラドや総二たちのように動揺していることは雰囲気から察せられた。

 

「な、何を言って……」

「言葉通りの意味だよ。君たちも一度は望んだことはないかね?もし人間なら。自分たちには奪うことしかできなかった属性力(もの)を平穏に見守れたら、とは」

「それ、は……」

「その動揺は肯定と受け取るぞ?そこで君たちにチャンスをあげよう。今私の手を取るのならば、人間になれることを確約しよう。そして我らの一員となり、今度は奪う側から守る側にはなってみないかね?」

 

  明らかに心が傾いているであろうドラグギルディとバハムギルディに、俺は自分の手を差し出した。俺はゲムデウスという究極のバグスターとなったが故に、彼らエレメリアンの苦悩が理解できた。本当ならば奪いたくはない。ただそれを愛したいのだ。しかし、彼らはそれなしでは生きられない。だから仕方がなく、侵略するしかないのだ。

 

  もちろん、全てのエレメリアンがそうではないだろう。中には悪意を持って属性力(エレメーラ)を奪っているエレメリアンも存在しているはずだ。しかし、目の前のエレメリアン二体はそうではないと確信していた。なぜなら、彼らは部下を愛する心、必要なこととはいえ卑劣な手段を嫌い、心裂かれる思いで例の作戦を実行したことを吐露したから。

 

  それらのことと…何より、先ほどゲムデウスのデウスランパートに傷をつけるほどの力量から、俺は彼らは十分交渉を持ちかけるに値する相手だと思っているのだ。だから願わくば、この手を取ってほしい。そうでなければこの場で絶版だ。それは優秀な人材がとても重要な会社経営をしている俺からすれば、あまりしたくはなかった。

 

「………本当に。本当に、我らは人となれるのか?」

「ああ、勿論だとも。ビジネスはまず信用から。それが鉄則であり、私はそれを最も重要視している。故に、嘘はついていないと断言しよう」

「そう、か……ドラグギルディよ、お前はどうする?」

「……もしも。もしも、俺が長年渇望したその望みが叶うのなら、俺はこの人間の手を取りたいと、その言葉を信じたいと、そう思う。しかし……」

 

  そこで言い淀むドラグギルディ。おや、まだ何か引き抜きをするのに必要な交渉材料がいるようだな。ならまずは、彼らがアルティメギルに固執する理由を考えてみるか。これまでの会話から察するに……

 

「…ああなるほど、君たちを縛り付けているのは人間となった時、かつての部下たちに刃を向けること…そして先ほどから言っている〝首領〟の事かね?」

「…そうだ」

「やり方はどうあれ、我らは一度首領様に忠誠を誓った。それを破るのは、心苦しい」

 

  苦渋の感じられる口調で言うドラグギルディとバハムギルディに、俺はふむと一つ頷いて答える。

 

「ふむ…ならば、別に戦わなくてもいいぞ?平穏に一人の人間として暮らすという手段も当然用意している。この世界の守護者となるというのは、あくまで可能性の話だ」

「…それも、本当なのだな?」

「我らに首領に背けと言うのだ、嘘偽りは許さぬぞ」

「無論だとも」

 

  俺が鷹揚に頷けば、ドラグギルディとバハムギルディはしばし黙考をする。俺は結果を想像しながら、後ろのメンバーははらはらと俺たち三人の様子を伺っていた。しかしそれはほんの数分で終わりを迎える。なぜなら、二匹の竜は顔を上げ、俺を強い視線で射抜いたからだ。

 

「………人間神崎正斗よ。我は、お前の真摯な態度を信じ、この命預けようと思う。どうか我を…いや、俺を人にはしてくれないだろうか?」

「…交渉成立だな。ではバハムギルディ、君の返答を聞こうではないか」

「…俺も、貴様にこの命をくれてやる。我が兄弟とともにな」

 

 パチパチパチ。

 

  答えを出したドラグギルディとバハムギルディに、俺は心からの賞賛を拍手により送った。

 

「おめでとう。君たちは良い選択肢を選んだ。これからは仲間としてよろしく頼む」

「「…ああ」」

 

  俺の与えたダメージで立てない二体を、それぞれ片腕で引っ張り上げた。人外の力に二体は驚いたような雰囲気を出すものの、フッと穏やかな声を出す。俺もそれに微笑み返したが…突如、バハムギルディが片腕を振りかざした。

 

「なっ!」

「やっぱり演技だったのね!」

「エム(正斗さん)、避けて(ください)!」

 

  後ろからツインテイルズの声が聞こえた。しかし俺は微動だにしない。バハムギルディの殺意が自分に向いていないことをわかっていたからだ。そんな俺を見てバハムギルディは破顔し…なんと、振り上げた腕をそのまま自分の胸に振り下ろし、貫通させた。流石に驚く俺とツインテイルズ、ドラグギルディ。

 

「バハムギルディ!?」

「フハハハハハッ!!!俺は貴様に命を預けることにしよう!俺の()()()()()()()()()()!!!」

「…ほう」

「……ドラグギルディ。我が生涯の盟友(とも)にして兄弟よ。貴様は生きろ。生きて、俺たちが見れなかった世界を見て、感じて、生き抜け!!それが今ここで果てる我が命への手向けと思えッ!!!」

「バハムギルディ、お前……」

「クハハハッ!テイルパラドクス、そしてツインテイルズよ!!いつの日か、また会おうぞーー!!」

 

 ドォオオオオンッ!!!

 

  そう言い残し、自分の胸からツインテール属性の属性玉(エレメーラオーブ)をえぐり出したバハムギルディは巨大な爆風とともに粒子となり爆散した。俺はそれを生身で最低限の属性力(エレメーラ)を操り、障壁を張って防ぐ。ドラグギルディやツインテイルズは手やフォトンアブソーバーで防いでいた。

 

「…ふむ、そういう形もまたありか。バハムギルディよ、君の勇姿は私が覚えておくことにしよう」

 

  やがて爆風が収まると障壁を解除し、足元に転がったツインテール属性の属性玉(エレメーラオーブ)を拾う。すると手を通して、ツインテール属性の強大な波動を感じた。やはりというべきか、幹部クラスの属性力(エレメーラ)は格が違うようだ。俺の遊戯属性(ゲーマー)の三分の一くらいの力を秘めていた。

 

「ほら、君が持っておきたまえ」

「…む。感謝する」

 

  バハムギルディの忘れ形見をドラグギルディに放る。彼はそれを危なげなく受け取り、しばしの間眺めた後グッと手の中に握り込み、再度俺を見下ろした。

 

「…改めて。元・アルティメギル先遣部隊隊長ドラグギルディ。これより貴殿に忠誠を誓う。よろしく頼む」

「ああ。これからは社長と呼びたまえ。さて、それでは一度ガシャコンバグヴァイザーIII(これ)の中に入ってくれ」

 

  今までずっと手に持っていたガシャコンバグヴァイザーIIIを向けるとドラグギルディは大人しく頷いたので、カチリと側面のボタンを押してドラグギルディの肉体もろとも属性力(エレメーラ)を回収した。

 

「よし、と」

 

  画面の中にドラグギルディがいることをしっかり確認し、ジャケットの内ポケットにしまうとくるりと体を反転させ、こちらを仕方がないなという目で見ていた仲間たちにニコリと微笑んだ。

 

「さあ、帰ろうか」

「「「「おう(ええ、はい)!」」」」

 

 

 ●◯●

 

 

  翌朝。

 

  昨日までと何も変わりのない、いつもの登校風景があった。俺は透明板を操作し、パラドはゲームを、総二と愛香はイチャイチャする。全くもっていつも通りだ。ただし、少しだけ違うのは…トゥアールがいることだろう。どうやら彼女は陽月学園に転入してくるらしい。

 

「そういえば総二、未春さんの属性力(エレメーラ)は何なのだろうな?」

「おいやめろマジでやめてくださいお願いします!」

 

  ふと思いついたので言ってみれば、全力で総二は考えるのを拒否していた。まあ、だいたい察することはできるからいいけどな。

 

「なんかあたし、最近考えちゃうんだよね」

「愛香?」

「道行く人を見て、この人は何が好きなんだろう、どんな属性力を持ってるんだろう、ってね」

「なるほど…」

「何はともあれ、好きなものを好きでいれるというのは素晴らしいことなのだろうな」

 

  俺がそう締めくくれば、二人は苦笑して頷く。そう考えるとトゥアールの世界は情熱を失ってしまったのだったな。やれどんな髪型がいいだ、どんな服装が、などなど、はたから聞けば何だそれ、と言われそうなものこそが俺たちの心の支えだという事実を、決して忘れてはいけないだろう。

 

  別に、それらを声高に叫ぶ必要はない。ただ今しがた言ったように、それを好きでいれるというのは重要なことだと、トゥアールを見て実感させられるのだ。故に、たとえ相手が変態であろうとおふざけであろうと、侵略から世界を守りきらなければならないのだ。

 

  そういえば、場所が場所なだけにあの決戦はテレビで報道されることはなかった。朝のニュースもいつも通り、ツインテイルズのほのぼのとした映像だった。まあ、ゲムデウスになるところを見られても問題はないのだが。ツインテイルズの戦いに参加するという意思表明はもうしているわけだし。

 

  ああ後これは余談だが、その朝豪邸の部屋の一つが未春さんの怪しげなコスチュームで埋まっていたのを目撃したのは俺の心のうちだけにしまっておくことにした。俺の母さんと悪ふざけしているに違いない。あの人そういうノリ大好きだしな。まあ、総二は血涙を流すかもしれんが。

 

「改めて…皆さん、私の世界の仇をとってくれて、ありがとうございます」

 

  そんなことを考えていると、不意に制服姿のトゥアールが深々と頭を下げた。それに鷹揚に答える俺たち。ドラグギルディは生きているというのは突っ込むべきではないだろう。

 

  ともあれ、確かに戦いにひと段落ついたのは本当だ。ドラグギルディとバハムギルディという司令塔を失った以上、先遣部隊はしばらくはなりを潜めるのではないだろうか。その合間の日常を、せいぜい楽しむこととしよう。もちろん、パラドや総二たちと一緒にな。

 

「ていうかあんた、本当に転入してくんのね」

「勿論ですよ!もう総二様のことはすっぱり割り切りましたけど、せっかく来たんですから楽しまないと!」

 

  そう。どうやらトゥアールは、総二のことは諦めたらしい。俺は別に総二が愛香を本妻として何人も愛人を作り、ハーレムを築き上げてもそれはそれで面白いだろうからよかったのだが、彼女は新しい恋を見つけることにしたようだ。ま、一応応援してやるか。

 

『うわーはっはっはっ!ツインテイルズよ、まだ終わってはおらぬぞ!』

 

  そう思っていると、不意に上から野太い声が聞こえて来た。反射的に全員顔をあげれば、そこには雲ひとつなかった青空の一部が四角く切り取られ、朝も早よからいかつい獣顔が大写しになっていた。チッ、思っていたより増援が早かったか。

 

『ドラグギルディ様とバハムギルディ様を倒して勢いづいているのだろうが、そうはいかぬ!お二人が昇天されたこの世界は我らにとっても死地!何が何でも全ての属性力(エレメーラ)をいただくぞ!』

 

  やはり、ドラグギルディの引き抜きには気がついていないか。当然だろう、俺がアルティメギル基地に送られる映像を完全に改ざんしたのだから。まあそれはともかく、今ギャーギャー喚いているエレメリアンはタイガギルディというらしい。

 

  で、タイガギルディの属性力(エレメーラ)はスク水。母なる星に身を委ねる水の衣こそ、星の意思を継ぐ属性力(エレメーラ)だとか何とか。ドラグギルディとバハムギルディの盟友であるタイガギルディは相当意気込んでいるようで、ツインテイルズに対して宣戦布告をしていた。

 

「なんかもう、毎日来るんじゃねえのこれ……」

「そのペースになってももうあたし驚かない自信があるな……」

「ははっ、いいね。心が躍るなぁ!」

 

  それぞれの反応を示すツインテイルズたち。それを横目に見ながら、ふと手元の透明板の上に表示されている時計を見た。予鈴までは後20分と言ったところか。遅刻の同時入室でからかわれる可能性もある以上、早急に片づけなければいかんな。

 

「なあ愛香、正斗、パラドも。部活決めたか?」

「む?いきなりだな…いや、まだだが」

「あたしもだけど…まあ、そーじと一緒なら何でもいいけどね」

「オレもまだだな」

 

  いきなり不可解なことを聞いて来た総二は宣戦布告への返礼とばかりに、青空を遮る無粋な輩めがけて高々と右腕を突き出した。

 

「ならさ、俺たちで本当に作ってみないか?ツインテール部」

「ふふっ、いいかもね」

「お、楽しみで心が踊って来たぜ!」

「ふむ…良いだろう。それで、活動内容は?」

「もちろんーーこの世界の守護さ!」

「いいですね!」

「ああ…なら少し早めに、早速やるとするか?」

 

  俺の挑発的な口調に、全員やる気満々の様子でそれぞれの変身アイテムを手元に携えた。

 

「よし、いくぞ!ーーテイルオン!」

「ーー第二撃、変身っ!」

「さあ、ゲームを始めようぜ…!」

《Dual up!》

 

 

 

 

 

  …そうして。俺たちの物語は、ようやく序章を終え、新たな幕を開けるのだったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝GAME CLEAR!〟

 

 

 

 

 

 

 

 

〝Let's play to the NEXT GAME?〟

 




感想をいただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。