ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】 作:熊0803
すみません、更新が遅れました。
オリキャラとオリ設定、そしてあの人が登場です。
楽しんでいただければ幸いです。
「……では、取引の内容はこれで確定でいいですね?」
「ああ」
例の総二と愛香の婚約発表とドラグギルディ改め龍美の編入の件から少し時は流れ、ゴールデンウィーク数日前のある日の放課後。現在俺はある店で商談をとある相手とかわしていた。結果は上々、目的のものを譲ってもらえそうだ。
そして、その取引相手とはーー
「それでは、こちらが譲渡されるものに対する代金です。〝鴻上会長〟」
「うむ、確かに受け取った」
ーー鴻上ファウンデーション会長、鴻上光生。目が痛くなるような真っ赤なスーツに身を包み、傍に見目麗しい秘書を伴った壮年の彼は俺の差し出したトランクの中身……〝それ〟を譲ってもらうために積んだ大金を確認し、鷹揚に頷いてそれを傍らの秘書に渡した。
取引に使ったのは、雰囲気の良いフランス料理の店。外国から来たという歌手の女性とかなり大柄なギター弾きがいることで有名になっているその店を会食の場に選んだのだ。先ほどその例の二人組を店内前面の舞台で見たが、確かに一目置くだけの歌声だったと思う。例のギター弾きが明らかに人間じゃない大きさだったが。ていうか上半分がマスクで隠れてたけど、顔が青かったし。
確か歌っていた曲は、セーヌ川をモチーフにした歌……「La Seine and I」だったか。なかなかに心の踊るものだった。
とまあ、そんなことはいいとして。それを譲り受けるに値する大金と幻夢コーポレーション系列のロボット、マシン関係の会社との連携および技術提供を交渉材料に出すことによって、無事に商談はまとまった。自慢じゃないが、世界最高と自負するうちの技術はかなり価値が高いだろう。何せ、社員が優秀だからな。
そうしてすでに受け取る予定の〝それ〟を使う龍美のパラメータや詳細のデータを開示し、その上で会長自身に認めてもらった。ビジネスで大切なのは、信頼されるためにどこまで相手に情報を与えるかだからな。
そんなことを考えながら、相手側の秘書が何重にもロックされたジュラルミンケースからセキュリティを解除し、取り出して机の上に置いた〝それ〟を手に取った。全てが石でできている〝それ〟はずっしりと重たく、二枚の円盤が重なってできたような見た目で、表面には彫刻が施されていた。
上蓋と思われる方の石版を右手で掴み、ゆっくりと回転させる。元からすでに開封されていたそれはすんなりと開いて、中にあったその姿を俺に見せる。するとそこに収まっていたのは、水晶のような透き通った紫色の、外周部が金色で縁取られた10枚のメダルだった。
数日前にも見たそれはやはり、俺に属性力とはまた違った強力な力の波動を伝えてくる。最初に見た時はひとりでに浮き上がって俺の体内に侵入してこようとしたからな。万が一にも、次はない。
「……確かに受け取りました」
「ハッピーバースデー!私たちの新しい関係の誕生だ。これからもよろしく頼むよ、神崎君」
「ええ、もちろんです」
大げさに両腕を広げ、周りに奇異の目も気にせずに立ち上がって叫ぶ会長に俺は苦笑しながらそう返す。そのあとは一通り連携についての打ち合わせをし、すでに軽い食事も済ませているのでそのまま解散した。
今までずっと黙っていたパラドを伴い、店を後にする。出口をくぐり抜け、俺がスーツのボタンを外してふぅと一息ついたところで、ノイズとともにいつもの格好になったパラドが抱きついてくる。
「あー、やっぱりつまらないなぁ。エムのためだから頑張ってるけどさ、やっぱ私は難しいやりとりをするより、ゲームしてる方がずっと楽しいよ」
「はは、本音を言えば俺だってそうさ。だがこれは全て意味のあること、必要なことだ。ただ、いつも退屈な思いをさせて済まないな」
「んーん、いいよ。だって、仕事してる時のエムは、いつものエムと違ってまたかっこいいもん♪」
「……そ、そうか」
「あー、エム照れてるー?このこのー」
少し顔を赤くする俺に、パラドはニヤニヤとしながらほおを突いてくる。通行人の呆れとか嫉妬とかいろんなものが混じった視線が痛い。いつまでもここにいては俺の羞恥心がオーバーリミットしてしまう。
なので俺は、俺のほおにプニプニと当てられていたパラドの指をその白くて綺麗な腕ごと掴み、少々強引に引いて止まっていた車に乗り込んだ。そしてドアを閉めたかと思うともう運転席に収まっていた緒川さんに、「いつものゲームセンターで頼む」という。
緒川さんはちらりとミラーでこちらを見たのち、びっくりしているパラドを見て少し笑うと「かしこまりました」と言って車を発進してくれる。
「……エム」
「ん?」
「もしかして、私がさっきつまらないって言ってたから?」
「さあ、どうだろうな。ただ俺がゲームをしたくなっただけかもしれんぞ?」
「……もう。エムのばか。でも、ありがと」
そう言って、パラドはぎゅっと俺の腕に抱きついてきた。俺は柔らかに微笑んで、彼女のサラサラの髪を撫でる。その様子を緒川さんが運転しながらニヤニヤしているが、気にしないことにした。
【カカッ、幸せで純粋な欲望……俺が入り込む余地はねえわな。ま、大人しくしといてやるぜ】
……ふむ。早速意識を確立したか。まだ封印装置としての役割も果たしている、あの石版を開けてほんの数日だというのに。さすがは太古の錬金術師が作り上げた、かつての太古の地上の支配者たちの力を秘めたメダルといったところか。
これは面白くなりそうだなと考えている間にゲームセンターにつき、俺は一時間ほどパラドとともに様々なゲームを楽しんだ。もちろんその中には、俺の生み出したゲームもある。既存物から新しいアイデアが生まれる可能性もあるからな。
そうして遊び倒した後、そういえば今日もエレメリアンが出現し出撃していた総二達はどうしているのだろうと思いそちらに寄ってみることにした。
緒川さんにアドレシェンツァの前まで送ってもらい、しかしなぜか閉まっていたので裏口から入ってエレベーターを使い、地下の秘密基地に向かう。そう時間がかからないうちにたどり着き、エレベーターの扉が開けば、ちょうど総二達は机に座って会議をしているところだった。その中には龍美もいる。
「お、正斗。おかえり。取引はうまくいったのか?」
「ああ、無事にな。龍美、やがてお前の力になるものを入手した。心待ちにしているがいい」
「おお、本当か!私は少女となろうとも武人、戦うための力がある方が落ち着く」
「それならウチの道場くる?」
「やめてください愛香さん、バーサーカーをもう一人生み出すつもりですか?」
「ちょっとあっちでお話ししようかトゥアールー?」
「いやぁぁぁぁぁ肉体的会話ぁぁぁぁぁ!」
愛香にドナドナされていったトゥアールの悲痛な叫びをスルーし、俺はパラドとともに椅子に座る。そして総二になんのことを話していたのか問う。すると総二は、あちらに増援が来たらしいことについて話し合っていたことを教えてくれた。
その理由を聞くと、今日現れたのは巨乳属性のエレメリアンだったらしい。また俗な属性だなと思いながら聞いてみれば、どうやら上官の存在を思わせるような発言をして愛香に瞬殺されたのだとか。理由は……聞くまい。
まあとにかく、俺もそれは予想していたところだ。並みのエレメリアンと比べると幹部級はかなりの腕前、その幹部たるドラグギルディとバハムギルディが敗北したのだ、部隊を補充していてもなんらおかしくはない。
しかし、以前あるときにドラグギルディから聞いた話によるとアルティメギルは無数の並行世界に様々な部隊を送り込み、同時侵攻している。つまりそれだけの数の舞台があるということで、このままいくと雪だるま式に増えていく可能性すらあるな。
だがまあ、何も恐れることはない。俺たちは必ずこの世界を守る、そう誓ったのだから。それに、いざとなればゲムデウスになって俺がアルティメギル首領とやらをぶちのめせばいいしな。
「ふむ……
「ほう、知っているのか龍美。他に何か情報は?」
「かつての仲間を売るようで心苦しいが……まあここまでしてもらった身だ、教えよう」
「助かる」
少し複雑そうな表情ながらも、龍美はリヴァイアギルディについて情報を提供してくれる。それを聞いた限り、やはり手強い相手だというのは間違いないようだ。今の装備で対抗できないようならば、新たなガシャットの完成も急がなくてはな。
ああ後、早速手に入れた
……ふむ。そう考えると、今更ながら我が身は恐ろしいな。俺は今までゲームの参考になるからといろいろなことをしてきたが、一つ一つ全てに信念と愛情をもってそれらを吸収してきた。俺の中で一番強いのは言わずもがな
幹部の数倍の力を持ったそれからパラドが生まれ、さらに他の属性からもバグスター達が生まれたことを考えると、俺は数え切れないほどの属性を持ちながら、それでいて全ての純度がバグスターが生まれるほど高いのだ。一体何をどうすればそんなことになるのだか。
え、お前が歩くチートだからだろって?解せぬ。
使えないとわかった時の愛香の顔は、それはそれは悲壮なものであったという。総二がしばらく慰めてようやく回復したようだ。総二のために家事万能、手作り弁当からほつれた服の補修までなんでもござれの完璧美少女たる愛香の唯一の弱点……それは貧乳であること。
別に、総二が貧乳があれだからとかいう理由じゃない。むしろ総二は愛香の貧乳が好きだ。何故かって?俺が時間をかけて洗脳しt……じっくりと良さを教え込んだからさ。なので総二は貧乳好きである。
俺?俺は乳っていうか、パラドのだったらなんでもいい。まあ要するに何が言いたいのかというと、単に愛香がコンプレックスを抱いているだけなのだ。
顔を真っ赤にしたパラドにぽかぽかと叩かれながら世の中はままならないものなのだなと考えていると、結構エグい音がしていたのにピンピンしているトゥアールと疲れた様子の愛香が戻ってきた。
「あいたたた……」
「全く……」
「そうだトゥーちゃん。バハムギルディから手に入れたツインテール属性の
「いいえ麗奈さん、テイルギアの核でもあるツインテール属性を使ったら力が大きすぎて暴走するんじゃないの?」
「あ、それあるね未春っち。そこのところどうなのー?」
「はい。おっしゃっている通りツインテール属性の変換にはセーフティをかけています。危険すぎますからね」
「……ていうか、さらっと自然に会話に入ってきたな。未春さん…それに、
俺はため息をつきながら、俺やパラドでさえも知覚できないうちに会議に紛れ込み、上席に座る悪の女幹部っぽいコスプレをしている未春さんの肩に手をかける女性……我が母、神崎麗奈に呆れた目を向けた。
神崎麗奈。以前にも言った気がするが幻夢コーポレーション広報部部長にして、現役のモデルも兼任する半チート的存在である。何故チートかというと、まず見た目がこの世のものでないくらい綺麗だ。クォーターの母さんは十代って言っても高確率で通じるほど若々しい。
肩口で切りそろえられた金色の髪はさらりと揺れ、ルビーのように鮮やかな赤眼は文字通り宝石のよう。痩せすぎず太りすぎず、全体的に色香の漂うムチッとした体はまさにボンキュッボンで、今年36歳にしてコスプレが趣味なため着ていると思われるチャイナドレスはその美しいボディラインがしっかりとわかる。
白磁色の手足はすらりと長く、顔立ちや性格的にギャル系美女な母さんはミサンガやネイル、ナチュラルメイクをしていて、それがさらにその美しさを際立たせる。必要最低限のケアしかしていなくてこの見た目を保っているのだから、まさに理想の女性だろう。
それに、この見た目で母さんは頭もいい。少なくとも、俺のガシャットの話に多少だったらついてこられる程度には。けどそれは、その馬鹿げた身体能力に比べればゴミも同然だ。母さんには俺でも絶対勝てない。瞬殺される。多分、ゲムデウスになったって勝てないだろう。
〝生きる力そのもの〟。それが母さんのあだ名だ。俺の身体能力は、おそらく母さんから譲り受けたものだろう。で、頭脳は父さんだ。二人とも仕事も完璧以上にこなせる。過剰なくらい俺に愛情を注いで育ててくれた。いやほんと、うちの両親俺が霞むくらいチートだからな。
今のことだってそうだ。母さんはどこからか俺に関することなら全ての情報を入手していて、比喩ではなく俺のことについて知らないことは全くない。なんならこの思考も全部筒抜けだ。
……まあ、そんな母さんのことが俺は大好きだけどさ。
そんな母さんは驚いてそちらを振り向く一同……ちなみに総二は未春さんの格好に
「おかえりー我が最愛の息子よー!」
「むぐっ」
一瞬で俺の前に移動した母さんはその豊満な胸に俺を思いっきり抱きしめた。逆らう気もないし、そもそも絶対勝てないのでなすがままにされる。それをいいことに、母さんはいつも通り過剰なスキンシップをしてきた。総二達が顔を赤くして目をそらすくらいの。あのトゥアールでさえもだ。
しばらく蹂躙された後、ようやく解放されて俺はヘトヘトになりながらパラドの横に座りなおす。パラドが俺の頭を撫でてくれた。あぁ……癒される。
とまあ、馬鹿騒ぎはここまでにして。
「それならいっそのこと、それをコアにした新しいテイルギアを作ればいいんじゃない?あの初幹部戦での龍美ちゃん達の強さからから鑑みるに、かなり有用に使えると思うんだけど」
「うわぁぁぁぁぁぁあああままたしても一般人とは思えない言葉が母さんから出たぞぉおおおおぉおおーーーーー!?」
「あら総ちゃん、私みたいな日常側の視点が思いもよらないヒントになるかもしれないわよ?」
「何が日常だこっちにどっぷり浸かり切ってるじゃねーか!」
ピンっと指を立てていう未春さんに、トゥアールは頷く。総二とのやりとりはお馴染みなのでみんなスルーだ。確かに、あの純度のツインテール属性ならば、テイルギアのコアとして十分使い物になるだろう。
「……なるほど。その手がありましたか。それに、ちょうどいいですね」
「ちょうどいい、とは?」
隣でギャーギャー騒いでいる観束親子とそれを見てケラケラと笑っている未春さんの幼馴染兼親友である母さん達を放っておき、俺たちは話を進める。トゥアールは真剣な表情で頷き、言葉を続けた。
「実は今、
「ハイブリッドか……」
トゥアールはコンソールパネルに設計図をご丁寧に表示してくれる。かなり難解なものだ。今現在作れているガシャットの中で最高レベルの50を二つ内包するガシャットギアデュアルの設計図に匹敵する。しかしそれはそれだけの強大な可能性を秘めているということで。
他のメンバーはテイルブレスの画像と
同時に、トゥアールがこれを研究しだした原因もなんとなくわかった。テイルレッド……すなわち総二は変身すると幼女になる。本人曰くテイルギアを作った際自らの幼女属性は組み込んでもいないのにだ。その原理は未だ解明できてはいないが、あえてそれを必然にすることができたら?そう考えたのだろう。
俺のその推測はどうやら当たっていたようで。ほぼ同じことをトゥアールは説明していた。その瞬間愛香ががっついて俺とパラドが抑えるということがあったが、まあよしとする。てか二人掛かりじゃないと抑えられないって、どんだけ渇望してんだよ。
「まあわからないでもないですけどね。女にとって胸とは異性に対して自分をアピールする重要な武器の一つ。それがないに等しいというのは絶望以外の何者でもないでしょう。まあ私巨乳なのでわかりませんが」
「…………」プチッ
「はい愛香落ち着こうな。ふむ、その論理は男である俺にはわからないが、ハイブリッド技術の研究は賛成だ。 だがそれだけでは一味足りないと俺は考える」
「……と言いますと?」
尋ねるトゥアールに、俺はニヤリと笑いブレザーの胸の内ポケットからそれを取り出した。基盤も本体部分も全て真っ黒な、無地のガシャットだ。規格はガシャットを二つ重ねて一つになったような大きさだ。
「これは?」
「ああ、ゲムデウスの制御をしようと実験している過程で生まれた、突然変異したゲムデウスウィルスを内包したガシャットだ。最初に使用した人間の遺伝子情報や記憶、癖、好みなどを情報として吸収し、初めて使用可能なガシャットとなる……と、考えられる」
「なるほど……それで、これをどうするんですか?」
「なに、どうせだからハイブリッドのテイルギアを作るのなら、これを組み込んでみないか?」
「ーーッ!? それは……」
「ああもちろん、臨床実験は俺が被験者になる。確実に安全じゃないものなんて使わせられないからな。幸い、同じものが掃いて捨てるほど溜まっている。俺を実験台にして安全性を確保できた時点で完成……これでどうだ?」
「………わかりました。やってみましょう」
神妙な顔で頷いたトゥアールに俺もまた頷き返し、こうして第三のテイルギア……それも、適応型ではなく最初から内部にガシャットが組み込まれたものが開発されることが決定したのだった。
●◯●
少し時間は進み、一方でのアルティメギル基地。合流した分隊の母艦との連結も完了し、基地規模も、統一部隊員数もかなりのものとなった、正斗達の世界でのアルティメギル。
その大会議室では各部隊の要人を集結させ頂上会議が開かれており、難航を極めていた。主に巨乳か貧乳化の討論によって。やれ豊胸手術による巨乳ばかりで嘆かわしいだ、貧乳で永劫の時を生きても彫刻と変わらないだ、強面の怪人達が男子中学生のような会話を繰り広げる。きっと常人が見れば一ヶ月は悪夢に悩まされるだろう。
途中からもはやただの口喧嘩であるそれを、この中で一番の強者であり権力者であるポセイドギルディは、ただ微笑んで見守っていた。自分の愛弟子二人がしっかりと止めることを確信していたからだ。
ポセイドギルディの予想通り、硬質なテーブルにヒビが入るほどの力を込め拳を叩きつけ、クラーケギルディが一喝する。そして何日も終わらない言い争いをやめろと部下達に言う。無数の触手がビン、と張り詰めいきり立つ上官に、流石に口論をやめるエレメリアン達。
厳粛な騎士性を重んじるクラーケギルディが感情をあらわにするほどにまで行ってしまった事態にリヴァイアギルディもまたため息をつき、一度部隊の統一は白紙に戻して個々での制圧を開始することを命令した。部下がそれではツインテイルズには勝てないとそれに反対しようとするが、しかしリヴァイアギルディは否と答える。
なぜならば……
「俺の腹心たるバッファローギルディがああも容易くブルーに屠られたのだ。ツインテイルズの実力はとうの昔に承知しておるわ。……まあ最も、あやつがあそこまで腑抜けだったことに失望もしているがな!」
愛香の巨乳への執念により瞬殺された大切な部下のことを口では罵りながら、また触手をギチギチと強張らせて言うリヴァイアギルディに誰もなにも言えない。あのクラーケギルディでさえもだ。彼とて部下を持つ身、その辛さはよくわかる。部下など全員押し黙ってしまった。
「た、大変です……!」
突如会議室に、一体のエレメリアンが血相を変えて駆け込んできた。一体何事かと全員がそちらを向けば……
「ダークグラスパー様が、この部隊を視察に来られるとのことです!」
「ほぉ、あの娘が来るのか」
「なんと!」
「それは確かなのか!」
それまで静観を決め込んでいたポセイドギルディが初めて懐かしむような声でそう言い、クラーケギルディとリヴァイアギルディは立ち上がって驚く。まだ確定はしていないと言うエレメリアンに、だが戦士達は皆一様に右往左往し始めた。
到着の時期すら未定。それがエレメリアンが次に言った言葉だった。つまり遥か先の話か、それとも明日にでも来るのか……あるいは今すぐということもありえるのだ。〝彼女〟を孫娘のように思っているポセイドギルディにはなんら関係ないが、他の者達にとっては十分危険な事態だ。
ダークグラスパー。ポセイドギルディ達三護神同様部隊を持たず、単身首領の勅命を受け世界を渡る戦士。その使命は組織の反逆者の処罰。いつしかその謎の戦士はダークグラスパーと呼ばれ、闇の処刑人と恐れられているのだ。
以前は、クラーケギルディもリヴァイアギルディもダークグラスパーの存在を信じてはいなかった。せいぜい監視役としての存在程度だろうと。だがしかし、かのポセイドギルディ自身が修行時代、「あの娘はわしの孫娘みたいなもんでの」と嬉しそうに語った。つまり、ダークグラスパーは実在する。
何れにせよ、今のこの事態が首領に好ましく思われていないのは確実。それゆえに、クラーケギルディとリヴァイアギルディは自分たちのみで出向き、ダークグラスパー降臨の前にツインテイルズの小手調べをすることにした。
二体はポセイドギルディの前に歩み出て、それぞれの尊敬の意を伝える仕草を取ると言った。
「では
「フン、せいぜい足を引っ張るなよ」
「それはこちらのセリフだ」
「ほっほっほっ。若きことは良きかな良きかな。危なくなったら帰って来るのじゃぞ。この老いぼれに、愛弟子二人が死ぬところなんぞ見せてくれるな」
「「ーーはいっ!」」
今こうして、アルティメギルの中でも巨乳属性ここにありと謳われた戦士と、同じく貧乳属性ここにありと謳われた二人の戦士が、双璧をなして出陣したのだった。
●◯●
いろいろ遊んだり仕事したりテイルギア作ったりしていた三連休も終わり、ゴールデンウィーク明け。予定通り、正斗とトゥアールは例のエンプティガシャットを組み込んだハイブリッド型テイルブレスを完成させることができた。
正斗は今自分の手の中にある、つい先ほど最後の入力を終えたテイルブレスーー正式名称、ハイブリッド型対精神生命体用迎撃戦闘スーツ構成装置……〝ガシャットブレス〟を見て、少し自慢げな笑みを浮かべた。これを完成させるまでに、かなりの苦労をしたからである。それは常人には計り知れないものだ。
ガシャットブレスは総二と愛香の使っているものとは違い、ツインテール属性のエンブレムが浮かび上がったパーツの下から台形のパーツが飛び出ている。そこにはガシャットの本体のように外周より内側が少し凹んだ形状であり、使用可能になった場合ここにイラストが出現する。
苦労を具体的にいうと、正斗は臨床実験で回復のエナジーアイテムを千回は使った。覚醒すればゲムデウスにすらなれるこの体といえど普段は少し強い程度の人間、負担はかなり大きなものであった。だがそれもこれも彼にとって、パラドに出会っていなかった12年間の月日を思えばへっちゃらのへの字である。
そういうわけで無事に?完成したガシャットブレスを見て正斗が上機嫌で笑っていて、それを向かい側で一緒に最終調整をしていたトゥアールや他のメンバーが苦笑しながら見ていると、不意に部室の中にコンソールのアラームがけたたましく鳴り響いた。チッ、と舌打ちした正斗はこのタイミングできたかと思う。こちとら疲れているというのに。
そう思いながらパソコンに表示されたトゥアールと共有しているモニターを見て……正斗はすぐに真剣な顔に切り替えた。そしてどこからともなく取り出したインカムをして、すでに変身準備に入っている総二達に向かい出動命令を出す。
「凄まじい
「……何? リヴァイアギルディ以外にも誰かきているのか……?」
「場所は?」
「都心のビル群の中の、大型プラザホールの目の前です。頑張ってください、総二様、愛香さん、パラドさん!」
「ああ!セカンドテイル・オン!」
《GOLDEN KING SAVIOR!》
「第五撃、変身ッ!」
《PURPLE BEAST BERSERKER!》
「大変身」
《KNOCKOUT FIGHTER!》
各自変身を完了した三人は頷きあい、勇ましく転送装置の光のゲートへと飛び込んだ、一瞬で移動を完了した三人の耳に入ってきたのはーー
「この摩天楼を颯爽と闊歩する、巨乳のツインテールはおらぬかー!」
「違う!私たちは正しく貧乳のツインテールを求めなければならないのだ!」
ーー世にも汚らわしい言葉が乱舞していた。レッドとブルーは盛大に蹴躓き両手を腰の横でぴんと伸ばし、ヘッドスライディングでアスファルトを抉り砕き、ボブスレーのように延々と道路を滑走して行った。危うくパラドクスも同じことになるところだったが、寸前のところで沈静化のエナジーアイテムを使いなんとかした。
「……何、何なのよ最近のこいつらは!なんで乳ばっかにこだわってんのよ!」
「落ち着けブルー!今までだって大概だったろブルマとかスク水とか!」
「殺す……絶対殺す!」
『む、まさかクラーケギルディとは。あの二人は犬猿の仲なのだがな』
『ほう』
『あの二人は私がいた頃もかなり仲が悪いことでアルティメギルの中で有名な奴らだった』
濃厚な殺意を漂わせ、ブルーはウェイブ・ボルグオルタを構える。龍美と正斗のやり取りを聞きながらレッドも「俺はブルーの貧乳好きだけどな……」とブツブツ呟き聖剣テイルカリバーを構え、数日前の正斗の思考を思い出して顔を赤くしていたパラドクスも臨戦態勢に入る。
そうまでしてようやく、その二体のエレメリアン……クラーケギルディとリヴァイアギルディはツインテイルズに気がついた。いつも通りやや大げさな仕草で驚き、正面から三人に向かい合う。レッド達は周りを見渡しながら苦い顔をした。
というのも、場所がかなりまずかった。最近は正斗が少しずつエレメリアンの情報を世間に流し、ポッピーなどのテレビに出ているバグスター達も警告を促しているのだが、しかしエレメリアンが人間に危害を加えないという点を見て現場に居合わせるどころか見学し始める人間がいるのだ。
そういう輩が増えている中、今回の出現場所は都心のビル群の中の、大型プラザホールの目の前。横目に看板を見てみればどうやら何かのコンテスト…オーディションが行われていたようであり、それだけ人が密集している。目的上、このような場所が狙われやすいのは必須だった。
しかも相手は幹部級……あのゲムデウスでようやく圧倒できるほどの相手が二体もだ。対峙するだけで全身を殴りつけられるようなこの圧倒的な存在感はまさしくそれにふさわしい。こんな街中であの山林の戦いが繰り広げられたら呑気に撮影や見学をしているギャラリーなどひとたまりもないだろう。
早速リヴァイアギルディがテイルレッドを見てその完璧なツインテールに驚き、次に巨乳でないことを非常に悔しがる。そして次にパラドクスを見て……目を見開いた。
「……テイルパラドクス。俺はお前がツインテールでないことがとても惜しい。その完璧な巨乳にはさぞかしツインテールが似合うだろうに!それにテイルレッド、お前は逆だ!成長したその時に出逢えていれば、
「はんっ、悪いけどもうこれはエムのものだから!あんたらに見せる乳は一つとしてないね!」
アホなやり取りをしているリヴァイアギルディとパラドクスにクラーケギルディが叫ぶ。
「妄言はそこまでにしろ、俗物め!レッドの美しさはすでに完成している!神の造形に手を加えようなど、それは破滅をもたらす傲慢!それに、残りのあと一人のツインテイ、ル、ズ……………は……」
「はいはいテイルレッドとテイルパラドクスね。私はどーせあんたらの好きな幼女でも、ましてやパラドクスみたいな巨乳でも……」
「「避けろブルーッ!」」
レッドとパラドクスは弾かれたように同時に叫ぶ。なぜならほんの瞬きほどの間に、クラーケギルディがブルーの前に接近していたからだ。ブルーですら察知できない高速移動か、あるいは気配を消し去っていたか。
どちらかはわからないが、ともかく急接近をしたクラーケギルディは何の冗談か、硬直しているブルーに対して忠臣が王にそうするようなうやうやしさで片膝をついて礼をしてみせた。ぽかんとする二人。
「…………………………美しい……」
「「……は?」」
突拍子も無い言葉に、緊張の糸が途切れ放心してしまうレッドとパラドクス。その間に、クラーケギルディはどんどん世迷言をほざいていく。
「美しい。まさか、敵である貴方がそうだったとは。なんという神の悪戯……なんという悲劇なる運命!」
「いや、あんた、何言って……」
『む……これは、まずいな』
『何?』
『ああ……というのも、私が知るクラーケギルディとは……貧乳好きなのだ』
『……なるほど。しかしこれは、また別の問題が浮上したな』
『ほう?』
『ちょっと現場に行ってくる』
『む、そうか。気をつけろ社長』
『無論だ』
困惑していて正斗達の会話も聞こえていないブルーにクラーケギルディは儀式めいた動作で腰に携えていた細身の長剣を引き抜き、刃に手を添えてブルーに差し出す。
「私の名はクラーケギルディ。我が剣を貴方に捧げたい。我が心のプリンセスよ」
「………………………………………あ?」
クラーケギルディの言葉を聞いたレッドの、空気が変わった。それをいち早く察知したパラドクスはあちゃーと天を仰ぎ、こうなってはどうしようもないのでただ見守ることにする。レッドの持っていたテイルカリバーの持ち手からギシギシと音が鳴り始め、今にもへし折れそうだ。
よく知った中でありクラーケギルディの悪癖を知っていて二人の近くでため息をついていたリヴァイアギルディも、目元が赤い前髪で薄く影になり、その中でギラギラと光る据わった両目のレッドの雰囲気の変わりように困惑した。
そんなリヴァイアギルディに近づき、パラドクスはマテリアライズスマッシャーに包まれた手でその切り立った鰭のようなパーツが組み合わさった肩を叩いた。
「えーと。リヴァイアギルディさんだっけ?あんた、下がったほうがいいよ」
「む?何故だテイルパラドクス」
「いや……離れてないと単純に、焼け死ぬよ?」
「は?」
ほらあれ、とパラドクスが指差す先を見て、リヴァイアギルディは目を見開く。レッドが全身から青色と赤色の混ざった豪炎を吹き出し、テイルカリバーを分割して炎を纏わせていたからだ。レッドの精神力に感化されたのか、ガシャットはひとりでにキメワザスロットホルダーに収まる。
レッドはガシャットの収まったホルダーのボタンを押し込み、すでにかなーりヤバいことになっているテイルカリバーにさらにエネルギーを充填していく。それを確認するともう一度ボタンを押し、クラーケギルディめがけて走りだした。
「貴方の美しさに魅せられたのです!幾多の世界を巡っても、こんな気持ちになったのは初めてのこと!どうか、私の愛を受け取ってーー」
《KING! CRITYCAL SRASH!!》
「ーーそれ以上、ブルーに近づくんじゃねええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
「がはぁっ!?」
レッドの炎刃に吹き飛ばされ、まるでギャグ漫画のごとくビルの壁に埋まるクラーケギルディ。しばらくの後重力に従いその巨体が剥がれ落ち、荒い息を吐きながらクラーケギルディはレッドを見た。
「な、何をするのだ!」
「あぁ!?そんなもん決まってんだろーが!」
ビシッとクラーケギルディを指差し、レッドは荒々しい口調で声高に宣言した。
「お前が〝俺の〟ブルーを口説いたからに決まってんだろ!ブルーは俺の女だ!ブルーに手を出すやつは誰だろうとぶった斬る!」
「にゃっ!?」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
「……はぁ。遅かったか」
レッドの言葉にブルーが一瞬で顔を真っ赤にし、クラーケギルディは衝撃を受けたのかよろよろと後ずさり、ギャラリーが雄叫びをあげる。パラドクスは腹を抱えて爆笑し、リヴァイアギルディもあんぐりと口を開けた。ようやく到着した正斗は、それを見て頭を抱える。
正斗が危惧していたこと。それは、総二の暴走である。中学生時代、明らかに誰も入り込む余地もない総二と愛香の間に割って入ったバカな男子生徒がいた。そのとき総二はどうしたか。その場で力の限り自分の愛香への愛を力説し、さらに今のようにクラスメイトたちの目の前でキスをして完膚なきまでに心をへし折ったのだ。
前々からそう思ってたんだやら赤×青キタァァァァ!やら、色々な反応を示すギャラリーを気にすることなくレッドはブルーに歩み寄ると、たまたま近くにあった台を使ってまるでクラーケギルディに見せつけるようにブルーにキスをした。またしても絶叫するギャラリー……否、群衆。
今度こそ膝から崩れ落ちるクラーケギルディにレッドはブルーから離れながら、どうだと言わんばかりに平ぺったい胸を張る。いや、元は男なので当然といえば当然なのだが。それとさっきのが事案臭いのは気にしてはいけいない。
「なっ……!?」
「そういうことだから、今後一切ブルーを口説こうなんて思うな!ブルーはずっと俺のもんだからな!」
「きゅぅ〜………」
羞恥心が限界に達したブルーは、顔を真っ赤にしたまま目をぐるぐる回し、パタンと地面に倒れて気絶してしまった。そこで見かねた正斗がレッドに沈静化のエナジーアイテムのメダルを投げる。するとようやく落ち着いたレッドは、後ろで倒れたブルーに気がついてオロオロと慌て始めた。
「あ、あれ!?ブルー!?」
「全く……お前は何をやっている」
「え!?正斗!?何でここに!?」
「お前が暴走するのが目に見えていたからだバカ」
「あでっ!?」
レッドの頭に拳骨を落とした正斗はいきなりの世界的に有名な幻夢コーポレーションCEO登場に今まで以上の声量で絶叫する人々に手を振り、パラドクスに目配せをしてレッドにもブルーを連れて行くように指示をした。
冷静になってようやくさっきのはやりすぎなことに気がついたレッドは、その髪のように顔を赤くしながらブルーを担ぎ、パラドクスとともにその場を離れていった。後に残ったのは、正斗一人。
「やれやれ……さあ、ゲームを始めようか」
その手に、出っ張りが二つ付いた小さな灰色のバックルと一つのガシャットを持って。
●◯●
全く……案の定暴走したな。総二はこと愛香のことになると見境がなくなる悪い癖がある。人目をはばかることもなく先ほどのようなことも暴走しているときだと平然とするので、昔から困っているのだ。
「まあ、それは今はいい。それよりも……確か、リヴァイアギルディとクラーケギルディと言ったな?」
「貴様は……確か、報告にあった神崎正斗だな?おいクラーケギルディ、そろそろ復活するのだ!」
「そんな……まさか、既に姫の心がレッドのものだったとは……無念」
「まあ、諦めろ。あいつらのイチャイチャぶりはプライベートでもかなりのものだ」
がっくりとうなだれるクラーケギルディ。まあ、一応2人のうち1人の戦意を削いだのでレッド達は今日も活躍したといえば活躍しただろう。あとでネットやニュースで愛香とのキスシーンをさんさん取り上げられるだろうが。以前やったときは確か普通に男だったので抱き締めてもいたっけか。
「それはともかく。君たちにはあることを協力してほしい」
「協力だと?」
「ああ……実戦データの収集相手というな」
首をかしげるリヴァイアギルディに俺はニヤリと笑い、手に持っていた灰色のバックルを制服を締めるベルトのバックル部分にあてがう。すると自動で中に収納されていた黒いベルトが装着され、腰に固定された。そこらではお目にかかれない謎のテクノロジーに人々が騒ぎ立てる。
しっかりと固定されたことを確認すると、今度はいつも通り胸元の内ポケットから青に近い薄緑色と銀色、赤でカラーリングされたそれ……ガシャコンバグヴァイザーⅡを取り出し、その裏側のくぼみにバックルの出っ張りをはめこんだ。
《ガッチャーン!》
プロト仮面ライダークロニクルガシャットのものとよく似た渋い男の声が文字通りがしゃんとバックルにはめ込まれ、バグルドライバーⅡになったガシャコンバグヴァイザーⅡから鳴り響く。どこか人を畏怖させるような凄みの効いた声にギャラリーはごくりと唾を飲み込み、リヴァイアギルディと復活したクラーケギルディは警戒した様子だ。
それらを見ながら俺はゆっくりと目を閉じて、その黒いガシャット……プロト仮面ライダークロニクルガシャットを持つ右手を上げた。肩と水平になったところでピタリと止め、横にしていたガシャットを手ごとまっすぐにする。
プロト仮面ライダークロニクルガシャットからのカチャリという音とともに目を見開き、俺はその言葉をスタータースイッチを押し込みながら呟いた。
「……さあ、今こそ審判の時」
《KAMEN RIDER CHRONICLE !!!》
基盤がダークグリーンに光り、重々しい声と重厚な音楽が周囲に響き渡る。ガシャットから発せられた名前に、ギャラリーは驚きの声をあげた。当然だろう、名前のみ大々的に公開されているゲームの名前が、ツインテイルズの使っているものとよく似たアイテムから発せられたのだから。
俺はその反応にニヤリと笑いながら、天高くプロト仮面ライダークロニクルガシャットを放り投げる。誰もがそれに視線を吸い寄せられる中バグルドライバーⅡの赤いAボタンを押し、軽快な音楽を鳴らせた。
するとプロトクロニクルガシャットはそれに反応したかのようにそれに内包された空間を操作する力で静止し、螺旋状に円を描いて俺の元へと戻ってくる。最後に俺の体の周りを二回転すると、ひとりでにガシャットスロットにその身を滑り込ませた。
《ガシャット…》
「変……身」
頭上に時計盤が現れたのを感じながらそう静かに呟き……俺は、ゆっくりとバグルドライバーⅡのバグルアップトリガーを押し込む!
《バグルアーップ!》
バグルドライバーⅡのディスプレイから長方形の何かが現れ、それは頭上で半分に割れ放電を起こす時計盤と重なった。それに向かって右手を伸ばし。
《天へ至れライダー!〈Wooo!〉挑めクロニクル!今こそ時は、満たされりィィッ!!!〈Wooo!〉》
時計盤からⅠからⅫまでの数字が降りてきて体の前面に円形に並び、そして長方形のディスプレイがその右手に向かい一気に落ちてくる。一瞬で足元までくぐり抜けるとそれは消え、その代わりに俺はその身を新たな力で包み込んでいた。
まず色は、全体的に灰色だ。対照的に黒いアンダースーツに走る三本の線は真紅に輝き、その上からさらに全身に鎧を纏っている。胴体には胸が右側がゲームのコントローラーについているような四つの円がつき、左側には複雑な文様の刻み込まれ、背中を覆う灰色の装甲と脇下を守る部分が飛び出たアーマーを。
両肩には角ばった大きな黒い線の走った灰色の肩鎧をつけ、その中にはこの力ーー仮面ライダークロノス:プロトクロニクルゲーマーの力たる時間操作から自分を隔絶するための装置が組み込まれ、それを全身と同じ100t以下の攻撃を無効化する特殊合金の外装で覆っている。
腰にはアキレス腱まで届くローブを纏い、そこにも左胸にあるものと同じ複雑な模様が全体的に描かれている。表面は灰色に黒色で模様が、裏側は真紅だ。ロープに隠された太ともの半ばまでや腕、手首についているリングもまた真紅色で、アンダースーツの上から両足を覆うブーツは灰色に黒色の塗装が施され、脛に向かって飛び出たパーツには逆三角形の模様がある。
両腕と両足の脛も例の特殊合金製の装甲で保護され、胴体同様重要な部分である頭部はその仮面ライダーの名に反さず全て覆われている。前髪が荒々しくあげられ、後ろに向かい髪のようなパーツの流れる灰色の頭部、龍が如く額からは三本の角が飛び出ており、その下の大きな二つの目は黒地に灰色。一見無感情にも見えるそれは正しく俺の視界とリンクしていた。
ゆっくりと右腕を下ろし、全身各部を確認し終えた俺はいつの間にやら周囲が真っ暗になっていることに気がついた。はて、画面の中に表示されている時刻はまだ真っ暗になるようなものではないが。もしかしたら、プロトクロニクルガシャットの力かもしれん。
そう考察しながら、ゆっくりとクラーケギルディとリヴァイアギルディの方へと歩いていく。目の前で俺の変身を見たギャラリーは周囲が暗くなったことも気にせず絶叫に等しい歓声をあげ、動画や写真を撮っていた。それらを気にすることなく、恐れおののいたのか後ずさった二体のエレメリアンに近づきながら話しかけた。
「改めて名乗ろう。私の名前は〝仮面ライダークロノス〟。時を統べ、君たち無遠慮にも私たちの世界へ土足へ踏み込んできたエレメリアンに審判を下すーー神だ」
む、なぜか一人称と口調が勝手に変わってしまった。普通に話そうとしてみるが、なんとなくそれはできないことがわかる。どうやら勝手に変換されているらしい。挙げ句の果てには、なんか渋い大人っぽい声になっている。
まさかとは思うが、プロトクロニクルガシャットに意思でも宿ってるんじゃないだろうな。まあ、それはそれで好都合だ。こういうのは第一印象が重要だからな。
「か、神だと……?」
「だが、この圧倒的な力のオーラは……まさしく、神そのもの……!」
「驚いているところすまないが……君たちは二人とも、この場で絶版だ」
「…っ!何を!」
「あまり我らを愚弄してくれるな、人間!」
怒りの声をあげ、無謀にも飛びかかってくるクラーケギルディとリヴァイアギルディ。俺はそれになぜか含み笑いをあげながら、バグルドライバーⅡのABボタンにそれぞれ両手を添え、押した。
《PAUSE…!》
バグルドライバーⅡから音声がなったかと思えば、俺の体から灰色の波動が広がる。それはクラーケギルディ達を、ギャラリーを、音を、時間そのものを停止させる。その中で動けるのは彼ら二体に審判を下す俺ただ一人だけ。
「しー……審判の時は、厳粛でなければならない」
誰も見ているはずもないが仮面の口に該当する部分に人差し指を当て、そう言いながら悠然と歩みを進める。そしてまずは最初にクラーケギルディの前に立つと、まずは試しにと言わんばかりにその腹に全力で正拳突きを放った。吹き飛び、不自然に空中で崩れた体制で静止するクラーケギルディ。
ふむ、とそれを見て一つ頷きながら、今度はリヴァイアギルディの方へと近寄った。そして今度は先ほどので大体のスペックを把握できたので、長年培った技を込めた鋭い蹴りを左足で放った。クラーケギルディ同様、吹き飛び空中に止まるリヴァイアギルディ。
その二体に対し、俺はダメ押しと言わんばかりにバグルドライバーⅡをバックルから外し、どこからともなく取り出した左手の灰色のグリップにはめこんだ。拳の方へ向いているのは、二つの銃口。ビームガンモードにしたそれのBボタンを押す。
《ガッチョーン……ガッチャーン!キメ技……!》
《CRITYCAL DEMISE!!》
「……フンッ!」
エネルギーが充填されたガシャコンバグヴァイザーⅡを横薙ぎに振るい、エネルギー弾を発射する。それはクラーケギルディとリヴァイアギルディに命中し、爆炎とともにさらに後ろに吹き飛ばした。
ドガァァァァアァァンッ!!
それを確認した俺はグリップを収納し、ガシャコンバグヴァイザーⅡをバックルに装着し直してバグルドライバーⅡに戻す。そしてもう一度手を添え、ABボタンを再び押し込んだ。
「ーーそして時は動き出す」
《RE - START……》
「ーーっ!? ガハァァァァアッ!?!!?」
「グブフッ……!?!!?」
全身にダメージを受け、地面に激突して転がるクラーケギルディとリヴァイアギルディ。目に負えぬほどのスピードで……本当は時間を停止した中で……二体のエレメリアンを倒したことに、ギャラリーは色めき立つ。
重傷を負っているクラーケギルディとリヴァイアギルディにとどめを刺さんと歩き出そうとする……が、突然変身が解除された。む、一体どういうことだ。バグルドライバーⅡを見てみれば、ガシャットから火花が散り、煙が立っていた。どうやらぶっ壊れたらしい。
ふむ……やはり、時間操作と必殺技の同時発動はプロトタイプでは負担が大きすぎたか。まあ、仕方がない。また作り直せばいいだけの話だ。バグルドライバーⅡからガシャットを引き抜き、基盤に走った無数のヒビを見てため息をつく。
「命拾いしたな、クラーケギルディ、リヴァイアギルディ。今日は帰りたまえ。もう動ける状態ではないだろう?」
「ぐっ……!」
「…………次は、俺たちがお前を倒す!」
そう言い残し、リヴァイアギルディは先に総二のテイルカリバーを受けて動けないクラーケギルディの肩を支えて出現した虹色のゲートの中に消えていった。それを見届けた俺はベルトを分割してポケットの中に戻し、きゃーきゃー騒ぐギャラリーに優雅にお辞儀をしてからその場を徒歩で離れていった。
ピピピピ、ピピピピ
「ん?」
さて、そろそろ基地に戻ろうかと思っていたところで、トゥアルフォンから着信を知らせる音がなる。ズボンのポケットからトゥアルフォンを取り出し、トゥアールと表示されている電話に出た。
「どうした?」
『…………今すぐ帰ってきてください。ブルーの正体が、バレました』
「……一応聞くが、誰にだ?」
『あの可愛いロリ生徒会長です』
表現方法がアウトだったが、それだけで察することができた。ふむ、神堂か。まあ目の前でグラファイトの正体を第一に見た人間であるし、それに近しいパラドや総二達のことも薄々疑ってはいただろうからそのうちバレるとは思っていたがな。
詳細を聞くとどうやら裏路地に移動し、そこで愛香の目を覚まさせるために一旦変身解除したところを見られたようだ。トゥアールにわかったと端的に返し、通話を切って俺はやれやれ、今日はイレギュラーが多いなともう一度ため息をつくのだった。
これからは一日、二日くらいの間隔で投稿します。
バレた正体、そして神堂慧理那は……ヒーローとなる。
「第二十銃術、変身!」
次回「黄色いガンナー、テイルイエロー!」
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