ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】 作:熊0803
久方ぶりなので変かもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいです。
早朝、幻夢コーポレーションの屋上。
「…………」
そこでその男──グラファイトはただ一人、落下防止用の鉄柵の上に腰掛けて目覚める寸前の街を見ていた。
これはグラファイトの日課である。つい先ほどまで鍛錬をしており、その証拠に半ゲームエリア化された屋上は所々抉れている。
そのためあまり眠る必要がなく、一晩中己を極限まで鍛え込み、そして太陽が昇るのを見るのが楽しみの一つだ。
やがて、空が白んできた頃。
「……やはり、ここから見る太陽は格別だ」
すでに季節は6月。夏の暑さが忍び寄る中で、日の出も早くなっている。5時前になる頃には、地平線の向こうから赤い光が顔を出した。
ピリリリリ
「ん?」
段々と登っていく太陽を眺めていると、尻ポケットから振動。携帯を取り出すとメールの着信だった。
機械に疎いグラファイトは、ガシャットとバグヴァイザー以外のマシンはほぼ使えない。そのため今時珍しいガラケーである。
パカっと指で蓋を開け、メールを確認する。すると仕事仲間であり、人間態ではライバルである尊からであった。
「……ふむ」
内容を察するグラファイト。ボタンを下に押して内容を確認すると、案の定想定していたことについてだった。
そこの位置などを一通り確認すると息を吐き、立ち上がって跳躍すると屋上に着地する。そして目の前に手をかざした。
「出でよ、グラファイターズ!」
グラファイトが叫んだ瞬間、目の前の空間に五つのエフェクトが出現。
程なくして、怪人態のグラファイトをグレードダウンしたようなモンスターが出てきた。グラファイトの能力である
「各々、俺の記憶から場所は把握しているな。では、いつも通り死なない程度に痛めつけて来い。二度と手出しできないようにな」
五人のグラファイターズは頭の前で両の拳をぶつけると、そのまま翼を広げて飛んでいった。
「ふぅ……これで慧理那の安寧をまた一つ守れた」
グラファイトが行ったのは、慧理那の
知っての通り、慧理那は容姿が幼い。そのため変な輩がよく見合いを申し込んでくるが、その度に潰しているのだ。
メイド達が相手のアラを全力で探し出し慧理那の母である慧夢に報告。そうしたら逆恨みすることのないようグラファイトが痛めつける。
グラファイトは満足げに頷き、飛び乗った給水塔の上にまた腰掛けた。そうするとまた朝日を見ようとする。
♪〜
「……珍しいな。追加情報か?」
が、それは二度目の着信で遮られた。電子音ではなく、ドラゴナイトハンターZのテーマ曲からしてプライベート用の方か。
メイド達がまた何か掴んだのだろうと、グラファイトはろくに相手を確認もせずに通話ボタンを押し耳に当てる。
「どうした?何か問題でも……」
『あの…………鉛龍様で、いらっしゃいますでしょうか』
ドンガラガッシャーン!
グラファイトは給水塔から転げ落ちた。よもや慧理那から電話がかかってくるとは思わなかったのだ。
『だ、大丈夫ですの!?大きな音がしましたわよ!?』
「あ、ああ。軽く背中を打って悶えただけだ。問題はない。それで、こんなに早い時間に電話とはどうしたんだ?」
普段なら、慧理那は6時に起きる。そして一時間で準備を整え、グラファイトが七時に迎えに行き登校する流れだ。
そのためか、電話越しの慧理那の声は少し眠そうで。身辺警護を請け負っている身として……それとある理由でグラファイトは心配する。
『その、ですね……』
慧理那は逡巡するように、ごにょごにょと何事か呟く。グラファイトは彼女が話し出すのを静かに待った。
大抵の人間……特に社会人なら、中々話しを切り出さないで小声で何か言っているなら苛々するのだろうが、グラファイトは特にそうは思わない。
というより、もっとヤバいのを知っている。繁忙期に入った時の正斗である。五日寝ないでひたすら書類仕事をしているなどザラだ。
そのうち怪しく笑いながら次のゲームのプログラムと思しき単語を羅列し始めるので、その時点でパラド許可のもと
そのため、グラファイトは無情の心境で慧理那の話を待った。
『じ、実は!』
「なんだ?」
『わ、私の、お母様が、ですね……』
「あの人がどうかしたのか?」
少なくとも数日前たまたま顔を合わせた時は、変わりなかったが。いや、最近何か含みを持つ目を向けられるような……?
何にせよ、慧夢がらみならば一回の護衛である自分よりも何かと顔のきく正斗の方が良いだろうと考えるグラファイト。
「まあ、なんだ。俺よりもビジネス的な付き合いもある正斗を頼ったほうが……」
『い、いえっ!鉛竜様に聞いてほしいのです!』
「うおっ!?」
特撮で好きなシチュエーションのシーンを見た時ばりの大声で耳元で叫ばれ、一瞬携帯を遠ざけるグラファイト。
数秒して、また大声が聞こえてこないことを確認すると携帯を耳元に戻す。すると今度は慌てたような声が返ってきた。
『も、申し訳ありません!私ったらなんてはしたない……』
「いや、気にしないでいい。それで結局相談とはなんなのだ?」
『実は昨日……お母様が……』
無意識にゴクリ、と喉を鳴らすグラファイト。謎の緊張が体を襲い、戦闘中でもないのに身構える。
『や、やっぱりなんでもないですわ!それではまた後で!』
が、結局それだけ言って一方的に電話を切られてしまった。肩透かしを食らったような気分になるグラファイト。
しばし通話の切れた携帯を見つめ、やがて仕方がないとため息を吐いてボタンを数度押す。そして電話帳からある人物を選んだ。
『プルルル……ガチャッ。私だ、尊だ。お前からかけてくるなど珍しいな』
電話に出たのは尊だった。グラファイトは先ほどの慧理那の様子を説明し、あることを頼んでおく。
『……わかった。何なないか探っておこう』
「ああ、頼む。それではな」
『待て、私から一つだけ……何かあったら、必ずお嬢様のそばにいてくれ。これは絶対だ』
「……言われなくとも。俺はあいつの護衛だからな」
そう言ってグラファイトは通話を切った。フゥ、と息を吐きポケットに携帯をしまう。
一体、慧理那の悩みとはなんなのか。具体的なことは何も知れなかったそれに雲をつかむような気分になる。
「キシシシシッ!」
「ん?」
グラファイトがなんとも言えない心情でいると、聞き慣れた声に上を見上げる。
そこには給水塔の上に立つラブマシーンがいた。半ゲームエリア化している会社の敷地内のみ、実態を得られるのだ。
ラブマシーンは仮面のような顔でグラファイトを見つめ、やがて給水つの上から屋上に降り立つと構えを取る。
「キシシッ」
「……なるほど、組手か。なかなか粋なことをするな」
慧理那を迎えに行くまで後二時間弱。気分を晴らすにはちょど良いと、グラファイトも拳を握り拳法の構えをとった。
早朝の屋上に静寂が訪れる。互いに互いの隙を探し、鋭い視線が交差した。
「ふっ!」
「キシッ!」
そして、太陽が見守るなか二人は激突した。
●◯●
「諸君、おはよう」
ところ変わって、アルティメギル基地。
基地内にいる全てのエレメリアンが召集を受け、ホールに集まっていた。彼らは皆一様に前方の壇上を見ている。
その上にいるのは、つい最近この基地に着任したばかりのダークグラスパー、その人。大鎌を片手に、堂々と佇んでいる。
まさしく支配者というべき悠然とした姿勢に、再び闘志を燃やしているエレメリアンたちは何が始まるのだろうと待っていた。
「さて、このような場に皆を呼び出した理由じゃが……これじゃ」
パチン、とダークグラスパーは指を鳴らす。すると黒いエレメリアンの一人が、壇上にあった謎の山からヴェールを取り払った。
「お、おおおおお!?」
「こ、これは……」
「なんという……!」
山の正体は、うず高く積み上げられたゲームの箱……すなわち数え切れぬほどのエロゲーのパッケージたちである。
己の属性をこよなく愛するエレメリアンたちはその山を見て、各々の趣向に合ったものを無意識に探してしまう。
まるで中学生男子がごときざわめきをダークグラスパーは石突で床を叩くことで沈め、語り出した。
「妾は貴様らの新たな司令塔として先日この基地に来たわけじゃが、無論不満に思う心や反抗する意思はあろう、それはあって然るべきものじゃ。故に、妾はこれらを全て貴様らに譲ることとした」
ざわり、と再び空気が揺れた。まさか、この宝が己のものになるのか?と。
見た所、新旧あらゆるものが揃っており、少なくとも一つはそれぞれの好みに合いそうなものがある。
これを全て、譲るとおっしゃるのか。エレメリアンたちの心に感激と、ダークグラスパーへの尊敬が浸透してゆく。
「さあ皆、存分に受け取れい。妾からのせめてもの労いよ」
再び指を鳴らすと、ひとりでに山が動きはじめてエロゲーが飛んでゆく。
常人が見ればひどく奇妙なそれは、エレメリアンたちにとっては豊穣の雨に等しい。己の手に収まったエロゲーに頬を緩ませる。
「ややっ、これは先日発売されて即売り切れ、追加注文が殺到した幻夢コーポレーションの新作ではないか!」
「なんだと!?ぬう、羨ましいやつめ。だが俺とて負けてはおらぬ、2年前のものだが未だ根強い人気のある作品よ!」
「ハッハァ!甘いなお前たち!私は初回限定版のフィギュア付きよ!」
「「な、なにぃ!?」」
ギャアギャアと騒ぎ始める屈強な戦士たち。熱気は戦の前さながらだが、内容は男子校のようなものである。
おそらくこの光景を総二が見れば、白目をむいて卒倒するだろう。そんな中──ダークグラスパーはニヤリと笑った。
「受け取ったな?そのゲームを」
三度、指鳴り。
その瞬間、全てのエレメリアンの体を紫色のオーラが包み込んだ。それは金縛りのごとく動きを封じる。
困惑が広がる中、ダークグラスパーは指揮者がタクトを振るうがごとく腕を振るい、エレメリアンたちを動かす。
床から向かい合わせにパソコンが二台置かれたテーブルと椅子が規則的にせり上がってきて、エレメリアンたちはそこに座らされた。
「なっ、これは一体!?」
「ダークグラスパー様、この仕打ちはどういうことか!」
「なに、もう飴は与えただろう?ならばここからは鞭、特訓の時間じゃ」
「と、特訓でございますか?」
動揺するエレメリアンの一体、ベアギルディに「左様」と頷くダークグラスパー。
「貴様らにはこれから一段階上の存在になってもらう。この美の四心の戦士たちのごとくな」
軍隊もかくやと整列する漆黒のエレメリアンを指差すダークグラスパーに、ゴクリと喉を鳴らすエレメリアンたち。
「して、それはいかような方法で……?」
「決まっておろうスパロウギルディ──五大究極試練のさらに先、〝神・三大試練〟じゃ」
「なっ!?」
神・三大試練。それは首領を守る三護神が編み出した、試練の中の試練、アルティメギル屈指の伝説。
聞けばポセイドギルディ直々に白鳥兄妹がその試練に身を投じたというが……それを今から自分たちも受けるのだ。
そう胸を踊らせる中──古参であるが故にその実態を知るスパロウギルディは青を通り越した顔を真っ白にした。
「だ、ダークグラスパー様、どうかお考え直しを……」
「ならぬ。もう決定したことじゃ」
「し、しかし」
「ではこのまま無駄死にを繰り返すか?」
「ぐ、それは……」
それを言われてしまってはなにも言い返せない。スパロウギルディはすごすごと引き下がった。
「さて、反対意見も無くなったところで試練の内容を教えてやろう──貴様ら、エロゲーをやれ。今ここで」
「「「──っ!!?」」」
今、あの方はなんといった?エロゲーをしろといったのか?大勢がいるこの前で、己の性癖を暴露しろと?
ダークグラスパーの顔を見るが、冗談を言っているようには見えない。であれば、聞き間違いではないというのか。
「おっと、逃げようなどとは思わぬことだ。その時点で其奴は粛清する」
「「「…………」」」
「よろしい。では詳しく説明しよう。まず貴様らには向かい合わせに座っているな?それはなんのためであると思う?」
はて、と首をかしげるエレメリアンたち。よもや座り方にまで意味があるのか、真の試練とは。
「それはな、このためじゃ」
先ほど質問をしたベアギルディの手からケージをとり、傷つけぬよう念動力で蓋を開ける。
中から説明書や初回特典のカードなどが出てくる中、本命のディスクを取り出し、パソコンを立ち上げ挿入する。
ガガ、という読み込み音が流れ、デスクトップにアプリがインストールされていった。五分もすると完了する。
ダークグラスパーは迷いのない動きでマウスを操作し、カーソルを合わせてダブルクリック。
しばしのロードの後、ゲームが起動され、会社のロゴが表示された後ファンシーな音楽とともにタイトル画面が映し出された。
「さて、それでは反対側のモニターを見てみよう」
今度はベアギルディと相対し座っているアリゲギルディの方へ回り、電源をつけるダークグラスパー。
少しの間駆動音が響き、立ち上がった画面を見て──アリゲギルディは目を見開いた。ダークグラスパーはニヤリと笑う。
「こ、これはっ!?」
「さあ皆の者、見るがいい!これが貴様らの受ける試練の正体じゃ!」
大鎌を掲げると、スクリーンにアリゲギルディのデスクトップ画面が映し出される。
そこにはなんと、ゲーム画面を開いたままのベアギルディのパソコン画面が小さなウィンドウの中に映っていた。
「な、なぁ!?」
「貴様らにはこれから、互いがゲームをプレイする様を逃さず見せ合ってもらう!そうすることで羞恥心を捨て去り、強き心と協調性、鋼の肉体を手に入れる!その名も、〝エロゲ・タガ・イニミ・セアー・ウ!〟」
鬼だ。全員がそう思った。
エロゲーをプレイするのを見せ合うなど、正気の沙汰ではない。慌ててシャットダウンしようとするが、すでにパソコンには細工済みだ。
見れば、美の四心のメンバーの目が全員もれなく死んでいた。中には小刻みに震えるものもいる始末。
おそらく彼らは、この地獄の結末を見たのだろう。それを乗り越え強くなった彼らに同情の念と尊敬が浮かんでくる。
しかしこれは上官命令、しかもツインテイルズに勝つための特訓だ。拒否は許されまい。つまりデッドオアデスである。
「今回は初回ゆえ、一本完全攻略できればそれでよしとしよう──それでは、始めるのじゃ!」
そして、地獄より地獄な特訓が始まってしまった。
●◯●
時間はめぐり、正斗たちの世界での放課後。
「それっ!」
「ふっ、負けるものか」
俺たちはいつものように、部室でゲームに勤しんでいた。
パソコン画面の中では、個性的なデザインをした戦艦が二つ並んで前からやってくる敵艦を轟沈させている。
『バンバンシミュレーション』。アーケードの決定版である『バンバンシューティング』の続編のゲームだ。
戦争シミュレーションゲームであるこれは、自分の好きなように艦隊をカスタマイズし他のプレイヤーと競い合うこともできる。
そして今まさに、俺はパラドとしのぎを削っていた。
「酸素魚雷、発射!」
「ぬ、ポイントが高い潜水艦を取られたか。だが、こちらも負けてはいないぞ」
「あっ、エムずるい!一発で高ポイントの旗艦やっちゃうなんて!」
「勝負事に妥協は無しだ。それこそゲームではな」
「ふふん、こっから巻き返すもんね!」
愛しき恋人と過ごす、至福のひと時。昼休憩の間に今日の仕事は終わらせてあるので、なんの気兼ねもなく楽しめる。
それは総二たちも同じことだ。ツインテールのキャラが多いソシャゲをしている総二の膝の上で愛香がニヨニヨしている。
一方、それを茶化しそうなトゥアールはといえば……ここ数日心ここに在らずといった様子で、虚空を見つめていた。
「……ふむ」
なにやら学園にエレメリアンが紛れ込み、その際に龍兎とハプニングがあったらしいが……はてさて、どうしたものか。
コンコン
「ん?」
危うく取られそうになったドロップ品を取り返していると、扉がノックされた。
気配を探ってみると、知っている人物たちだった。総二と目線を合わせ頷き、中に入るよう促す。
「失礼する」
「邪魔をするぞ」
「やあ桜川氏、それにグラファイトも」
一旦ゲームをポーズにして二人を出迎える。すぐさまパラドとすっと膝から退いた愛香がお茶の用意をしてくれる。
「はい、どうぞ二人とも」
「ああ、ありがとう」
「感謝する」
「それで、顧問である桜川氏はともかくお前が一人でここにくるのは珍しいな、グラファイト」
桜川氏は数日前、このツインテール部の顧問になった。本人曰く、理由は主に神堂の身辺警護が主らしい。
実際顧問がいないのは問題でもあったので、都合が良かった。関係者だから信用もできるのでうってつけだ。
そんな桜川氏とは反対に、常に神堂のそばについて離れないグラファイトがいるのはちょっとした予想外であった。
「実は、少し相談したいことがあってな」
「ほう。それは俺が力を貸す必要のあることか?」
グラファイトとて俺の生み出したバグスターの一人、相談と言うのならいくらでも乗るつもりでいる。
とはいえ、大概腕っ節一つで解決する男だ。自分の手に余るか、俺たちに関係性があることしか言わないはずだが……。
「……その前に、そいつはそのままでいいのか?」
「ああ、しばらくすれば正気に戻るだろう。して、その内容は?」
「実は、慧理那のことでな」
「会長のこと?」
神堂のこと、ときたか。二人ともの神妙な顔から察するに、尋常でない内容のようだな。
同じように思ったのか、共にたたかう仲間のことは放っておけないと総二たちも居住まいを正した。
それを見てグラファイトと桜川氏は頷き、まるで戦闘中のごとき真剣な顔を作ると徐に話し始めた。
「最近お嬢様の生活態度ことが、神堂家で問題になっていてな」
「生活態度、か……具体的には?」
「知っての通り、慧理那はツインテイルズの一員として戦っている。そのため、家を空けることが多くなった。それについて雇い主が怒っていてな」
「慧夢さんか……」
神堂慧夢。陽月学園の理事長であり、古くから続く名門の家柄である神堂家を一身に背負う身でもある。
その性格は厳粛にして寛容、まさに名家を率いるふさわしい器を持つ女性だ。私も一人の大人として尊敬している。
ちなみに神堂家はツインテールを重んじるという少々特殊な家柄であり、彼女自身も年齢を感じさせないツインテール属性を保持している。
そして今しがた言ったように、グラファイトの雇い主だ。曰く、バグスターの目で彼女のツインテールへの熱情を見抜いたからとか。
「確か、門限が厳しいって言ってたよな」
「そうだねー、泊まりに行った時も9時になるところっと寝ちゃうし、かなり規則正しい生活してるよ」
同性であれば最も親交のあるパラドがつぶやく。「それがまた可愛くて抱き枕にするんだけどね」と続いた言葉に皆苦笑した。
「そう、そこだ。最近のお嬢様は、生活サイクルが乱れてしまっている。夜は遅くなり、生徒会長の仕事にもイマイチ身が入っていないみたいでな」
「もしかして、ツインテイルズのことで頭がいっぱいでってこと……?」
「ああ、その通りだ愛香。日頃近くで見ている俺からしても、少々のめり込みすぎているほどにな」
「それはいけないな。しっかりと体調管理をしなければ、そのうち大変なことになってしまう」
「「「「お前が言うなこのワーカーホリック」」」」
桜川氏以外の全員に突っ込まれた。解せぬ。
「たった四日と18時間寝なかっただけでなないか」
「また強制的に眠りたい……?」
「家まで引きずっていくか……?」
「わかった、わかったからパラド、その拳を収めろ。総二も縄を取り出すな」
「まったくお前という男は……」
「で、ここからが問題だ」
そのあと桜川氏の口から明かされたことに、惚けているトゥアール以外の全員が驚いた。
なんと、神堂家には18歳になると必ず結婚する掟があるのだという。16歳で婿を探し始め、17歳までに見つけ、結婚まで共に過ごす。
現代には似つかわしくないそのしきたりは、実のところ俺からすればそう珍しくない。会社のスポンサーにもいくつかそういう家はある。
「いま二十一世紀よ!?そんな明治とか昭和みたいな……」
「ああ、その通り。だから奥様も自分の過去の経験と時代の流れを考え、学業と生徒会長の職務を頑張ることで慧理那様の婿探しを延期していた」
「が、それが今崩れた。先ほど言った通り、生活サイクルの変調によってな」
グラファイトの補足に、私はだいたい何があったのかを理解できた。だが総二たちに聞かせるためあえて黙っておく。
「それに怒った奥様は……ここ数日、次々と見合いの話を取り付けていらっしゃるのだ」
「なぁっ!?」
「ま、まさかそこまで古風とは……」
「これまでは俺とメイドたちで
「で、ツインテイルズに勧誘した張本人である俺たちに相談したわけか」
首肯するグラファイト。確かに、第三者からすればなかなかに介入のしずらい内容だ。それも一生を左右することである。
世界が違うと思ったのか、総二たちは難しい顔をして沈黙してしまった。無理もない、そんなのは常識的でないからな。
しかし……生憎と、私は常識的ではない。
「わかった。俺の方からも少し、慧夢さんと話してみよう。なに、多少は取り合ってくれるはずだ」
「本当か?それは助かる。ついでに、私にも見合い話を持ってきてくれるとなお嬉しい」
さらりととてつもないことを頼まれた。まあ、そこは本人が頑張って欲しいということでスルーする。
「ともかく、任せておけ。総二たちも神堂のことを気にかけてくれるか?」
「当たり前だ。同じツインテイルズの仲間、ツインテールに誓って力になるぜ!」
「まっ、私たちはマサほど役には立たないでしょうけど……まあ話くらいはできるでしょ」
「二人とも、感謝する。本来であれば、あいつをそばで守る俺がなんとかしたいのだが……」
申し訳なさと悔しさの混同した声音で軽く頭を下げるグラファイト。気にするな、と総二たちは言った。
それを見ていると……ふと、グラファイトとの繋がりから、とある感情を持っていることに気が着いた。
「ふっ……」
「エム、悪い顔してるよ?」
「いや、気にするな」
首をかしげるパラドに笑顔で答えながら、私はある一つの計画を頭の中で展開していくのであった。
復活したトゥアールによってエロゲーを見せられる慧理那。
ついに夏服到来。
そしてーー解かれたツインテール。
次回、「夏と消えたツインテール」
感想をお願いします。