ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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2日ほどあけてからの投稿です。
楽しんでいただければ幸いです。


特別編 仮面ライダードラゴンズ[裏技]My Heroineを奪還せよ! ステージ2

 

  五人の準備が整った瞬間、第1層の時は銅鑼が鳴ったが、今度は何重にも重なった笛の音色が響き渡った。より一層歓声が大きくなり、変身したドライトとグラファイトは相手側の攻撃に備える。

 

  その二人の警戒にこたえるように、愛香……変身した今は仮面ライダーヴァルキュリアは少し腰を落として槍と盾を構えたかと思うと、思い切り地面を蹴って二人めがけて突進した。

 

  その速度は背中の羽に内蔵された小型の超火力ブースターにより音速に匹敵し、気がつけば二人の眼前にヴァルキュリアの緑色の眼光と引き絞られたビーム槍が迫っていた。仮面の下で目を見開く二人。

 

  音の壁を破壊し破裂音を引き起こすほどの神速の突きが繰り出される。スーツの機能により動体視力を強化されているのに、ギリギリまで体の反応が追いつかなかった。しかしここでやられるわけにはいかない。

 

  咄嗟に二人はガシャコンドラゴンブレイドとガシャコンドラゴンファングを交差させ、計四本の剣でなんとかヴァルキュリアの槍を防ぎきった。それでもなお、あまりの衝撃に数メートルほど後退させられる。凄まじいパワーだった。

 

  だがそれで終わりではないと言わんばかりに、ヴァルキュリアは不敵に笑い左肩アーマーのジェット噴射機を起動させた。すると緑色の炎が吹き出し、超速での横移動を可能とさせる。そのまま体ごと一回転させ、横薙ぎに槍を振るってきた。

 

  それに対して仮面の片目による意識のシンクロで一瞬で思考を交わした二人はうなずき合い、グラファイトが半身を引いて左肩の円形のアーマーで槍を防ぐ。しかし防ぎきれず、槍の刃がアーマーに食い込んだ。

 

  しかし、それがグラファイトの狙い。即座にスーツに意思による命令を行い、アーマーの形になっている十数匹の蛇龍を操作して逆に槍を絡め取った。これには流石に驚く愛香。だがすぐに冷静な表情に直すと槍を手放し、なんと盾で殴りかかってきた。

 

 ビィィンッ!

 

「!?」

「そう簡単にやらせはしないぜ!」

 

  だが盾を持つ腕を手首のリングの中に内蔵されている鋼鉄の太いワイヤーを使ってドライトが腕を引き寄せ、盾はグラファイトの仮面のほおをかすめるだけに終わった。それでも軽い衝撃が内部まで響くあたり恐ろしい。

 

  グラファイトが左肩のアーマーに絡め取っていたままの槍を地面に放り、片腕をワイヤーで捕らえられているヴァルキュリアに畳み掛けるように斬撃を放とうとしたところで……ドライトが横から何かに攻撃され、相手の武器で断ち切られたワイヤーごと吹き飛んでいった。

 

  壁に轟音を立てながら激突するドライト。あまりの力に、思わず仮面の下で血を吐いてしまう。そしてそれを引き起こした犯人は土煙に隠れており、驚きめを見開いているグラファイトにはすぐには見えなかった。

 

  やがて土煙が晴れ、そこに立っていたのは……美しい銀髪をたなびかせ、擬似太陽の光を反射して清く輝く純白の鎧を着込んだ一人の少女騎士。トゥアールことトゥルーブレイブだった。その目は鋭く研ぎ澄まされ、いつものおちゃらけた様子は何処へやら戦士の表情となっている。

 

  そのまま追撃しようとトゥルーブレイブが踏み込んだ瞬間……壁際で朦々と立ち込めていた土煙の中から黒く煌めく剣が空気を切り裂き飛来した。それを持ち前の反射神経で剣を持つ片腕だけを振るい、いとも容易くはじきかえすトゥルーブレイブ。

 

  しかし、攻撃は一度では終わらなかった。土煙が晴れ、姿を現したドライトは先ほど切断されたワイヤーの先を交換し、留め金にもう一本の剣も繋ぐと二本の愛剣でトゥルーブレイブに果敢に挑み始める。

 

  二本の剣のそれぞれの柄頭に繋がれたワイヤーを巧みに操り、まるで意思を持っているかのように縦横無尽に黒剣がトゥルーブレイブに襲いかかる。だがトゥルーブレイブも見事なもので、再び戦う決意をしてから鍛え直し、全盛期の頃を超えた超人的な剣術と盾術でことごとくを防いでいる。

 

  それを横目に、グラファイトは槍を拾い直したヴァルキュリアとの神速の打ち合いを繰り広げていた。ヴァルキュリアの卓越された槍術はゲムデウスである正斗、パラドに次いで直接戦闘では随一の実力を誇るグラファイトを以ってして、なおも互角。そこにガシャットによる底上げされたポテンシャルが重ね上げられ、若干押し気味だった。

 

  さらにそこへ、それまで二人の凄まじさで空気になっていた総二ことレッドが参戦してヴァルキュリアの援護を始めた。テイルギアによりなんとかヴァルキュリアの槍は見えているので、邪魔にならないようにグラファイトに剣を振るう。

 

  が、実際はヴァルキュリアがレッドに配慮してわざと援護する隙を見せていた。全力でこちらに意識を向けていないことにグラファイトは少し不満になるも、しかし相手側の三人の中で一番実力が劣っているのがあちらの総二とわかっているためあえて戦闘を続ける。

 

「ブースター最大出力!」

 

  戦いを続けている中で突然、愛香がそう叫んだ。すると両肩のジェット噴射機が甲高いを音を立てはじめる。グラファイトは嫌な予感がした。その予想は的中することとなり、ジェットが噴射されたかと思うと眼前からヴァルキュリアが消えていた。

 

  一体どこへ……そう思った瞬間、背中を切りつけられる感触を覚える。

 

 ザンッ!

 

「なっ、ぐぁっ!?」

 

  思わず声を上げるグラファイト。そう、ヴァルキュリアは最大出力にしたジェットを使い、グラファイトですら視認できな速度で背中に周り斬りつけたのだ。

 

  だが、純白の戦女神の猛攻はこの程度ではまだまだ終わらない。

 

「まだまだいくわよ!」

 

  ヴァルキュリアの言葉通り、ジェットを最大限に活用した瞬間移動とも呼べる超速の移動によりグラファイトは翻弄され、なすすべなく全ての攻撃をその身に受けて全身から火花を散らす。そこに追撃するようにレッドが斬撃を繰り出してきた。

 

  ヴァルキュリアとて今浮かべている冷徹な無表情からはわからないが、自分と総二のラブラブな写真や動画など公開されたくないに決まっている。そのため、自分ができる限りの肉体のリミッターを解除し、文字通り全身全霊をかけて奮闘していた。本気と書いてマジと読むレベルである。

 

  一方トゥルーブレイブの方も、彼女の凄まじすぎる猛攻にワイヤーによる遠隔操作攻撃を中断して接近戦に持ち込んだはいいものの、ドライトは押され気味であった。当然と言えば当然だ、何せ戦ってきた年数が違う。

 

  全ての攻撃が、重すぎる。速すぎる。強すぎる。一度振るえば会場の中に豪風が巻き起こり、空間が切り裂かれ、踏めしめる足によって地面にはクレーターが出来上がる。

 

  彼女の振るう剣が、ことごとくを無意味と化す絶対の盾がドライトの全てを叩き潰していた。一体その細身のどこにそんな力があるんだと言いたくなる。

 

  自らの悲願を果たすため、たとえ悪となろうとも自らの正義のために戦い抜いたダークグラスパーことイースナ。正斗の変身するクロノスと戦い破れ、彼によってスカウトされ今はツインテイルズの一員であるテイルエターナルとなり戦っている。

 

  そんな彼女が長年持っていたあるもの……ガイアメモリと呼ばれるガジェットの一つ、〝T()3()()()()()()()()()〟を譲り受け所有権を譲り受けたトゥアールは知った。いや、思い出したと言うべきだろうか。

 

  自らをバハムギルディの凶刃から守り、彼に致命傷を負わせた代わりに消滅した男のことを。ちなみに、バハムギルディが黒いマントを羽織っていたのはその男への最大の敬愛と尊敬を表してのものだ。

 

  腐れ縁であり、叔父ではあったが実の兄も同然であり、ライバルであり、唯一の友。トゥアールにとって男はそういう存在だった。イースナの師匠でもある男は最後に、

 

「俺は地獄に堕ちるが、お前は笑え!どんな時でも諦めず笑い続けろ!それがわかったらその不細工な泣きっ面さっさと拭って、イースナや他のクソどもを守り抜きやがれ!」

 

 と言い残し、消えていった。

 

  トゥアールは絶望した。嘆いた。他の何よりも……世界の命運なんかよりもずっと大切なはずの人を忘れていたことに。

 

  けれど……彼女は笑った。男の言い残した通り、挫折した自分を、嘆く自分を、全てを持ち前の明るさで笑い飛ばした。

 

  そして決意した。男の繋いでくれたこの命、今一度人々の救済のために使おうと。その決意は……彼女の胸に新たな属性力(エレメーラ)を芽生えさせ……そして勇者の力を与えた。

 

  その属性力(エレメーラ)の名は……勇者属性(ブレイバー)。ドライトの変身者である仲足千優の持つ英雄属性(ヒーロー)とは似て非なる、哀しき勇気を持って初めて芽生える、最強の一角に数えられる究極であり悲哀の属性力(エレメーラ)。その力はツインテール属性に匹敵する。

 

  けれど、それこそが男から貰った……受け継いだ魂。永遠に失われることのない遺産。立ち上がったトゥアールの勇気。彼女の培った全ての力を呼び起こし、辿るそれこそがーー真実の勇気(トゥルーブレイブ)なのだ。

 

  その力はそれまで失うことに怯えていたトゥアールの中のかつての実力を目覚めさせた。故に、つい数ヶ月前に戦い始めたツインテイルズの面々とは桁の違う戦闘経験が存分に発揮されタドルレガシーの強大な力を完璧に使いこなしているのだ。

 

 それはまるで、辿るように。

 

 それはまるで、呼び起こすように。

 

  トゥルーブレイブに変身している時だけ限定に限られるが……彼女は、かつて男と共に背中を預けあい戦っていた頃の、全盛期の実力を大きく上回る力を持つ。そんな各々が甲乙つけがたい信念を持っているツインテイルズの中でも随一の思いを持つ彼女の剣は、〝想いの剣〟はどこまでも重かった。

 

「フッ!」

 

 ギギャァァンッ!!!

 

「ガフッ……!?」

 

  胴体めがけて振るわれた神速の袈裟斬りを防ぐことに失敗し、モロに斬撃をその身に受けたことにより盛大に火花を散らしながらドライトは吹き飛ぶ。そして丁度ヴァルキュリアの猛攻に耐えきれず、同じように吹き飛ばされたグラファイト同じ場所まで転がっていった。

 

  だが彼らとて譲れないものがある。なんとか立ち上がり、荒い息と血にまみれながらもお互いの背中を使って両足を地面につけた。さすがは千優とグラファイトと言ったところだが……しかしだからと言ってヴァルキュリア達が手を止める理由にはならない。

 

  ヴァルキュリアは白いパーツで覆われている左耳にスーツから一定量のエネルギーチャージが完了したことを告げられ、そのエネルギーをスーツに内蔵された必殺ファンクションの起動に回した。

 

  ヴァルキュリアの命令を受けたスーツはチャージしていたエネルギーをゲーマドライバーのガシャットギアデュアルΣに回した。するとダイヤルのオーディーンゲーマーの部分が点滅し始める。それに従うように、ヴァルキュリアはゲーマドライバーのレバーを閉じた。すると彼女の槍に凄まじいエネルギーが収束していく。

 

《ガッチョーン……キメワザ!》

 

  それを見たトゥルーブレイブも一度構えていた剣を下ろして両手でバグルドライバー(フィーア)のAボタンとBボタンを同時に押す。まるで聖歌のような必殺技帯気音が鳴り響き、ドライバーから白色の雷が迸ってトゥルーブレイブの剣に莫大なエネルギーを纏わせた。

 

《キメワザァ!》

 

「フィニッシュは決め技で決まりよ…さあ、神の裁きを受けなさい」

「あなたの全ては私が切り裂きます……安らかに地獄で眠りなさい」

 

  ヴァルキュリアがゲーマドライバーのレバーを引いて展開し、トゥルーブレイブがバグルドライバーⅣの黄金のAボタンを押す。するとそれぞれの武器に集まっていたエネルギーが最大出力になり、いつでも放てる状態になった。

 

  ちなみに、巻き込まれてはいけないのでレッドは既に後ろに下がっている。流石にこの二人の武器を見て、一緒に直接斬りに行くグランドブレイザーを使う気にはならなかった。

 

《WAR GOD!CRITYCAL RAY!》

《TADDLE CRITYCAL SLASH!》

 

  ヴァルキュリアが背中の羽を使って天高く飛び上がり、白いエネルギーによって十メートル以上にまで伸びた槍を上半身を使って練り上げるように四回転させる。そして裂帛の気合いとともに一閃。

 

  そして、まるでキングゲーマーになった時の正斗の世界のレッドのようにヴァルキュリア同様に白いエネルギーを立ち上らせる剣を両手で持って大上段に構え、そして短い叫び声とともにトゥルーブレイブが全力で剣を振り下ろす!

 

  ドライトとグラファイトの視界いっぱいに白いエネルギー刃が映り込んだ。なんとか避けようと体をよじるが、しかしわずかにしか動かない。スーツの中は全身満身創痍であり、既に動けるような状態ではないのだ。

 

  だが、その程度では二人は諦めない。たとえどれだけ窮地に立たされても闘志を絶やさない。それこそが彼らの強さの秘訣なのだ。その二人の熱情に反応したのだろうか、アーマーの右胸の紋章が輝いた。

 

  驚いてそれを見下ろす二人。あとエネルギー刃を食らうまで数秒のところだった。その刹那ともいえる瞬間、仮面の裏に表示された紋章の隠し機能を理解し一瞬で二人はアイコンタクトを交わし合い、この輝く龍の証に全てを託すことにした。

 

 

 

 ドガァァァンッ!!!!!!!

 

 

 

  そして前と後ろからエネルギー刃がぶつかり合い、爆発が起きる。それによって地面がえぐれ、凄まじい土煙が巻き上がった。ヴァルキュリアとトゥルーブレイブは勝負は決まったと言わんばかりにそれぞれ槍と剣を一度振るい、踵を返す。

 

 

 

 オォオオオオオオォオォオォオオオオオ!

 

 

 

  しかし突如、会場全体を震わすような龍の雄叫びが響き渡った。反射的に振り返ったヴァルキュリアとトゥルーブレイブ、そして空気になっていたレッドが見たのは……双頭の巨大なドラゴン型の赤黒いエネルギーの塊だった。

 

  双頭ドラゴンはもう一度雄叫びをあげると、スゥッと空気に解けるように消えて行く。不可解な現象に首をかしげる三人に……二匹の竜騎士の爪が迫る。

 

 ヒュルルルルル!!!

 

「「ーーッ!?!!?」」

 

  突如土煙を突き抜けて飛んできた牙のような長い両刃の薙刀……グレングラファイトファングに戻ったガシャコンドラゴンブレイドと、柄頭同士で合体して黒い薙刀になったガシャコンドラゴンファングを見て目を見開き、慌てて自分の武器でそれを防ぐ。

 

  その二つの薙刀に追随するように、土煙の中からそれを操っているグラファイトが姿を現した。そう、ドライトとグラファイトは紋章から出現したドラゴンを合体させ、それによって二人の必殺技を防いでいたのだ。

 

  グラファイトの手首のリングが赤く輝き、それと同じ色の光が二つの薙刀の隙間から漏れている。属性力(エレメーラ)で遠隔操作しているのだ。弾かれた薙刀はなおもブーメランのごとく高速で回転する致死の円盤となり、ヴァルキュリアとトゥルーブレイブを襲う。

 

  不規則に飛び回る二つのそれをなんとか回避する二人。そんな二人に対してグラファイトは近くにあった白い聖杯を殴り壊した。すると中から緑色のエナジーアイテムが飛び出てくる。タイミングが良い、回復のエナジーアイテムだった。

 

《回復!》

 

「よし……後は任せたぞ、相棒!」

「オッケーだぜグラファイト!」

 

  エナジーアイテムを使用してグラファイト

 は一応の応急処置をすませると、今もなお薙刀を回避しているヴァルキュリアとトゥルーブレイブめがけて走っていった。そんなグラファイトにとあることを任されたドライトもまた走り出す。

 

  グラファイトと別れたドライトは近くにあった石像にミドルキックを叩き込んで蹴り壊す。するとこれもタイミングが良く、彼が狙っていたエナジーアイテムが出現した。そのエナジーアイテムとは……

 

《透明化!》

 

  ドライトがそれを使用した瞬間、まるで先ほどの双頭のドラゴンのように解けるようにその体が透明になった。誰に見えるわけでもないのに思わず小さくガッツポーズをするドライト。そのままドライトは誰にも認識されないのを良いことに、どこかへと姿を消す。

 

  一方、ある程度の回復をすませたグラファイトは目についた聖杯や石像をことごとく破壊。その中にあるバフ系のエナジーアイテムを全て吸収し続け、『バディリンカー』によるステータス上昇効果も上乗せされて凄まじい数値になった身体能力を生かして薙刀を避ける二人に突撃していった。

 

  薙刀の嵐の中に飛び込んできたグラファイトに、思わずギョッとする二人。既にレッドはつい先ほど、薙刀が後ろから飛んできて後頭部にたまたま剣の腹が当たって気絶しているので、地面の上で伸びている。まあ、それはともかく。

 

  マッスル化、高速化、伸縮化の三つのエナジーアイテムをそれぞれ4個、3個、1個吸収したことにより色々とすごいことになっているグラファイトは腕を引き絞り、ややその拳を届かせるには心もとない距離で振りかぶる。しかしそれは伸縮化の効果によりまるで某ゴム人間のように伸び、ヴァルキュリアの腹部に炸裂する。

 

「きゃっ!」

「ハァッ!」

「くっ!」

 

  ヴァルキュリアがダウンしたのを見るとグラファイトは次はトゥルーブレイブに狙いを定め、ゴ◯ゴ◯のピストルもどきを発射、それを間一髪で回避したトゥルーブレイブだが、気持ち悪いくらいに伸び縮みする腕や時折混ざる脚からの攻撃に復活したヴァルキュリアとひたすら回避していた。

 

  なんとか隙を見つけて逃れようとするが、しかし逃げ道を塞ぐように薙刀が飛んでくる。もちろん故意による操作である。そうやって二人は少しずつ逃げ道を塞がれていった。

 

  ちなみにその光景は側からみれば……女白騎士二人に対して竜騎士が触手のごとく両手両足を裂帛の叫び声をあげながら繰り出しているというなんともシュールな絵面だった。というかぶっちゃけ言って物凄く気持ち悪かった。

 

 閑話休題。

 

  そうやって徐々に追い詰められていき、最後には全ての逃げ道を絶たれた二人ではあるが、流石は超武闘派少女と勇者属性(ブレイバー)の所有者と言うべきか、すぐに最後の逃げ道に気がついた。そう、上空だ。グラファイトの手足が届かないところまで飛び上がって仕舞えば良い。

 

「ヴァルキュリア!」

「わかってるわよ!」

 

  声を掛け合ったヴァルキュリアとトゥルーブレイブは、ヴァルキュリアは背中の羽で、トゥルーブレイブは鎧の天使の羽のようなものから青いエネルギーの天使の翼を広げて上空めがけて飛翔した。

 

 が。

 

《ギュ・イーン!》

 

「それが狙いだぜ!」

「「えっ!?!!?」」

 

  突如仮想ドラゴンに乗るドライトが空気から溶け出すように出現した。訳がわからず思わず声を上げてしまう二人。そんな二人に対して、ドライトは自分のものとグラファイトから最初の土煙の中で受け取ったものを合わせて両手に一つずつ装着したバグヴァイザー:チェーンソーモードを二人めがけて振るった。

 

  いきなりの事態にチェーンソーをもろに受けたヴァルキュリアとトゥルーブレイブは地面に叩き落される。だがそこにいるのは……伸縮化の続いている両腕をバネのようにして待ち構えているグラファイトが。

 

  待っていましたと言わんばかりに、グラファイトは落ちてきた二人を両腕のバネを解放して思い切り打ち上げた。だがそこにいるのは仮想ドラゴンに再び乗って滞空しているドライト。またしてもチェーンソーで叩き落される。

 

  打ち上げられる。叩き落される。打ち上げられる。叩き落される。ただひたすらその繰り返し。なんとかそれからも逃れようとするが、非常にいやらしくどこからともなく薙刀が飛んできて追撃を加えていった。

 

  やがて、ヴァルキュリアとトゥルーブレイブが地面に落下した時には満身創痍であった。白く輝いていた鎧は薄汚れ、全体にヒビや亀裂が走っている。一瞬の油断が、それまで圧倒的に優勢であった彼女たちの劣勢を招いてしまったのである。

 

  だが、既にドライトとグラファイトも満身創痍、特にグラファイトなど一応の回復しかしていない体でエナジーアイテムを同時に7個も使ったので、ボロボロも良いところだ。なので、勝負を決めることにする。

 

  戻ってきた薙刀を双剣に戻したグラファイトは降りてきたドライトにガシャコンドラゴンファングを返却し、逆にバグヴァイザーⅢを返してもらうとバックルに装着した。そしてドライト頷きあって、同時にそれぞれのバグルドライバーのABボタンを同時に押す。

 

《キメワザ……》

《キメワザ!》

 

「こいつでフィニッシュだ……」

「とくと味わえ!」

「くっ……罰ゲームだけは……!」

「私は、一度でも負けられないんです……!たとえゲームだとしても……!」

 

  二人のバグルドライバーから鳴り響いた二つの声に、それぞれの思いを胸に秘めた二人はなんとか立ち上がろうとした。しかし、こんなところで終われないのは全員同じ。ドライトとグラファイトは、一層目の時とは反対にバグルドライバーのAボタンを押す。

 

《DRAGOKNIGHT CRITYCAL PUNISH!》

 

  二人の仮面の目が光り輝き、ドライトは右腕に、グラファイトは左腕にエネルギーが集中して強い光で輝いた。二人はそれを確認すると、よろよろとよろめきながら立ち上がりかけているヴァルキュリアとトゥルーブレイブめがけて突撃する。

 

  せめて最後の抵抗と言わんばかりに、ヴァルキュリアは盾は先ほどの攻撃でどこかに吹き飛ばされたので槍を、トゥルーブレイブは剣を構えて待ち構えた。それでこそ倒し甲斐があると言わんばかりに、二人はさらに走る速度を上げ、拳を引きしぼる。

 

「「「「おぉぉおおーーーーー!」」」」

 

  四人全員が雄叫びをあげて激突しーーそして、ドライトとグラファイトが走り抜けたその時その身に技を受けたのは……ヴァルキュリアとトゥルーブレイブだった。

 

  瞬く間に身体中に《HIT!》のエフェクトが乱舞し、会場を揺るがすほどの大爆発を引き起こす。それを背に、ドライトとグラファイトは拳をこつんと合わせたのだった。

 

  二人が拳を下げるのと同時に爆風が晴れて、装甲の下のライダーゲージがゼロになった二人が変身を解除される。それに合わせるように、レッドも遠くで変身が解除されていた。

 

  ドライトとグラファイトとバグルドライバーからガシャットを引き抜いて変身を解除して千優とグラファイトに戻ると、全身血まみれ傷だらけのお互いに吹き出しながらも健闘を称え合う。

 

  それが終わると、笛の音が響き渡る。それにより二人は勝利したことを再度認識して喜び合ってから、地面に寝っ転がってどこかすがすがしい表情をした愛香とトゥアールに近づいた。

 

「あーあ、負けちゃったか……ま、仕方がないからそーじと同じ目にあうとしますか」

「潔いですね、愛香さん……それにしても、まさか負けてしまうとは。変身している時なら自信があったんですが……まだまだですね」

「……確かにお前ら、すげえ強かったよ。トゥァールに関しては背負ってるものが大きいしな、強いに決まってるさ……正直、必殺技を受けた時は一瞬負けるかとも思ったさ……でもな、一つ言わせてくれ」

 

  そこで千優は言葉を切り、一つ息を吸って。一瞬グラファイトの方を見てから……

 

「好きな人を守るためにならどこまでも命を張れる、俺が知る中でも最強の漢と……ヒーロー舐めんな。階層が違えど、戦場で共に戦えるお前らと違ってこちとら捕らわれている上に制限時間付きだ。そこが勝敗を分けた……ただそれだけさ」

 

  そう言った。それにグラファイトは少し目を見開き、照れ臭そうに小さく鼻を鳴らして……ふと千優の足元を見て、思わず苦笑してしまった。なぜならプルプルと震えていたからだ。

 

「……語録を増やしているところ悪いが相棒、そろそろ回復しておけ。もうフラフラだろう?」

「…あー、やっぱ気づいた?流石グラファイトだな……実はもうそろそろ限かぐはっ!」

「「千優さん!?」」

 

  血を吐いて倒れた千優に慌てて飛び起きて、周りに残ったままの石像と聖杯を愛香が素手でぶち壊してありったけの回復のエナジーアイテムをかき集めてくる。そしてなんとか千優を回復させたのだった。

 

  それから数分後。なんとか試合開始前までくらいには千優を回復できたので、地面に顔から突っ伏して気絶している総二のところに行って全員で揺すって起こした。

 

  起きた総二はしばらくキョロキョロしていたものの、しかし負けてしまったことに気がつくと悔しがった後に自分のツインテールもまだまだだなといつも通りの言葉をこぼした。

 

「ていうか総二、せっかくロロリーの世界に行く少し前にパワーアップしたのに使わなかったんだ……?」

「いやぁ、フォーラーチェイン使ったらあっちの愛香の邪魔になりそうだし、ライザー使おうにも制限時間付きで結び直してる間に弱点知ってるヒロ兄にやられそうだしって色々考えてるうちに、後ろからこう、ゴスっと…」

「な、なるほど……それは災難だったな」

「ったく、あっちのそーじも抜けてるんだから」

「ていうか、正斗にもらった〝リオレウスガシャット〟あったろ?あれはどうしたんだよ?」

「あ、そういや忘れてきた」

「おいおい……」

 

  総二の言葉に全員が苦笑してしまう。正斗に渡されたあのガシャットがあればもう少し役に立ったであろうに。こういうところが抜けていると言われている所以なのだろう。

 

  ともかく、あちらの世界の総二の敗因は気遣いのしすぎとうっかりガシャットを置いてきてしまったことだと結論が出たところで、ゲームクリアの音声とともにノイズの音が走り、つい先ほどと同じように正斗の声が響き渡った。

 

  勝利したことへの賞賛と、タイム。15分47秒だったらしい。思ったよりも時間がかかったと千優とグラファイトは反省した。逆に総二たちも自分たちが今回負けた原因を考えて反省する。

 

  皆んなそこそこ反省をしたところで……楽しい楽しい、一部の敗者には地獄の罰ゲームの時間である。

 

『とりあえず愛香とトゥアールにはそれぞれ総二と龍兎とのラブラブ写真&動画集を流すとして……ふむ。あちらの総二はどうするか』

「あ、それなら俺から提案していいか、ゲームマスター?」

『ふむ……言ってみたまえ』

 

  頷き、千優がした提案とは、千優の世界の総二への罰ゲームは、カイデンバグスターによる地獄の修行だった。正斗の世界の総二に比べ、いささかこちらの総二は歯ごたえがないということなようである。

 

  それはグラファイトも感じていたのか、ウンウンと頷く。実際にさりげなくサポートしていた愛香や遠巻きに見ていたトゥアールも同じことを思ったのか、曖昧な笑みを浮かべて頷いていた。

 

「総二、ちょっとお前向こうの総二に比べて歯ごたえがなさすぎるぞ!パワーアップアイテムがまだ使い慣れないからとか愛香とトゥアールがこっちのより強いからとはいえ、ここまで弱さが浮き彫りだとちょっとひどくないか!?戦隊レッドとして恥ずかしくないのか!」

「そ、そりゃあ情けないとは思うけど……」

「自覚があるならよし……ということでゲームマスター。総二の罰ゲームはそっちの総二が普段からこなしてるっていう修行を、来週のアルティメギルの休戦期間最終日までに圧縮・短縮して練度を上げたやつで鍛え上げるってのでいいか?」

『ふむ……面白そうだ。承知した、それで決定にしよう。ということで、カイデン』

『御意に』

「えっ?」

 

  スピーカーの向こうで正斗が指を鳴らすと、会場の入場口から胴着に身を包み、後頭部で上結びにしているにもかかわらず膝下まで届く長い黒髪を持つ二メートルを越した筋肉モリモリマッチョメン……人間態のカイデンが現れ、困惑する総二の首根っこを引っ掴むとそのままドナドナしていった。

 

  ちなみに夏休みが終わったころに本人から聞いた正斗の話によると、夏休みはひたすら修行の地獄の期間だったようだ。逆に正斗の世界の総二は未春が正斗から譲り受けたものを無言で愛香とのラブラブ記録をリビングで、それも大音量で見ていたりして大絶叫していたりもしたのだが……それはまた別のお話。

 

  とまあ、それはともかく。総二は既に執行されたので……あとは残りの二人である。出会ったのが最近なのでトゥアールはそこまででもないが、愛香の方はかなり不安そうである。

 

  ウイィィィン、と音を立てて天井から一層の時と同じ機械が現れたかと思えば、そこに移ったのは……部屋の中で総二に対する思いをひたすら吐露してえへへと笑っていたり、総二をぼーっと見つめてとろけた表情をしている愛香の映像だった。画像の方も総二とキスをしていたり、腕を組んでいたり、二人で雑魚寝をしている画像だったりと。左下には撮影&編集者:ポッピーピポパポの文字が。

 

「ちょおおおおぉおぉぉおおおぉっ!?」

『ということで、特別編:愛香のドキドキ♡総二への愛情特集をご覧ください。トゥアールはこの後だな』

「いやぁぁぁぁぁあぁあぁあああぁぁああああぁあぁあぁぁあああああああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあっ!!!」

「ドンマイです、愛香さん……」

 

  絶叫して頭を抱え、崩れ落ちた愛香を見て千優とグラファイトはドン引きした。トゥアールは愛香の肩を叩き、慰めるように言葉をかける。まあ、どのみち彼女もこのあと同じことになるのだからおそらく自分が同じことになるのを想像して諦めているのだろう。実際、笑顔がどこか乾いている。

 

  そんなふうに騒いでいると、会場の中心の地面がいきなり円形に陥没し、回転して真ん中から両側に横スライドしたかと思うと螺旋階段が現れた。どうやら最後までファンタジーテイストでいくつもりのようだ。

 

  千優とグラファイトは顔を見合わせ、頷きあうとトゥアールに一言を声をかけてからその螺旋階段に走り寄り、下っていったのだった。

 

  そうして階段を下っているうちに、そういえばとふとグラファイトは疑問に思うことが一つ胸中に浮かんできた。実は、千優がグラファイトが思っていたよりかは重症ではなかったのだ。

 

  千優は自分とは違って普段は普通の人間……のはずなのだが、回復のエナジーアイテムを使って治療する前からある程度の傷が修復されていたように感じたのだ。それは気のせいかと思ったが……しかしどこか引っかかる気もする。

 

  グラファイトは隣の千優を時折見ながら、その疑問を自分の脳内でぐるぐるとひたすら考えながら階段を駆け下りていったのだった。

 




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