ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】 作:熊0803
楽しんでいただければ幸いです。
千優とグラファイトは螺旋階段を駆け下りていき、最後まで降りきると今度は地下迷路のようなものが姿をあらわす。二人は顔を見合わせ、頷きあったあと迷宮の中に飛び込んでいく。中は割と複雑な構造になっており、かなり進みにくかった。
が、しかし慧理那を助け出すため、そして自分たちの秘蔵写真集を公開されないために魂をこれ以上ないほどに燃やしている二人にかかれば迷宮などなんのその、ほんの数分足らずで踏破してしまい、出口の上り坂に辿り着いた。
それを駆け上がり、もう二度も見て少し見慣れてきたアーチをくぐり抜けると……また一階層と二階層とは違う趣のステージが現れる。そこは一言で言うならば、純白の神殿であった。舞台の構造は八角形になっており、その八角形の壁にはそれぞれ生物の姿が彫り込まれている。
荒々しく翼をはためかせるタカ、全てを挟み切る鋭いツノを持つクワガタ、黄金のたてがみをたなびかせて咆哮するライオン、鼻先の長い角のようなイボを掲げているサイ、海の中でその巨体を跳ねさせるシャチ、毒液を吐き出し、鋭い牙をのぞかせるコブラ、雄々しく翼を広げ、天高くその嘴を突き立てるプテラノドン。そして、鱗に包まれた白い体に炎を纏った、東洋の龍。
秀逸なデザインのその装飾たちに一瞬千優とグラファイトが見惚れていると、ステージの上にある観客席にホログラムの観客が出現する。その全てが人間ではなく、何かしらの動物の特徴を持った亜人であった。例えば両手が鋭い鎌の蟷螂人であったり、背に大きな翼を持った鳥人であったりと。
そんな中、二人が立っている場所から対面に位置する壁の上……特別な形状になっている場所に座席がせり上がってきて、そこにはそれまで戦い勝利してきた両世界の仲間たちが座っていた。楽しげな表情のパラド、顔を赤くしている正斗の世界の総二&愛香、それに苦笑しているソーラ、気まずそうにしている千優の世界の愛香、乾いたニコニコ顔の正斗の世界のトゥアール。ちなみに千優の世界の総二はすでに修行部屋にGOである。
それに今日何度目になるかわからない驚きの表情を浮かべる二人に、さらなる驚愕を抱かせることが起きた。総二達のいる座席の上に小さな台が出現し、そこにホログラムで正斗の姿が浮かび上がったのだ。
『お集まりの紳士淑女の皆さん。二人の勇者がラスボスこと私、ゲムデウスにたどり着く前の最後の戦いのステージにたどり着きました。心ゆくまでどうぞお楽しみください』
ワァアアアアァーーーーーーーー!
ホログラムのマイクでそう言い、観客を盛大に沸かせると正斗は消えていく。それと同時にその下のプテラノドンの彫り込まれた壁がせり上がり、左右の地面に設置された機械から煙が噴き出したかと思うと二人の戦士が入場してくる。堂々と入場してきたのは、二人の男女。どちらとも知っている顔だった。
一人は、
さらに、龍兎はトゥアールの恋人でもある。お互いに一目惚れというある意味運命の出会いだった。その片耳にはいつも通りお揃いの彗星のイヤリングをしており、またいつもと同じく青いジーパンに黒いブーツ、腰に巻いた赤い上着、白いロングTシャツ、青いスカーフにベージュ色のコート、特徴的な髪型の茶髪という格好で胸を張って入場してきた。
もう一人は、
人間になってからは様々なことに興味を示して挑戦しており、今は学生にして漫画家として活躍している。今日の格好もとある男と付き合い始めてからおしゃれに目覚めたため、白いミニスカートに黒いタイツ、リボンのあしらわれたフリル付きの服におしゃれなブーツ、総二をして見事と言わざるを得ない黄金のツインテールをたなびかせ、威風堂々とした様子でこちらも入場してきた。
二人は千優とグラファイトから数メートル離れたところで立ち止まる。そして龍兎がどう見ても女にしか見えない顔に笑顔を浮かべ、手をあげる。
「よっ、千優にグラファイト。最後の相手は俺たちだ。存分に暴れさせてもらうぜ」
「ふははは、私たちの力、とくと目に焼き付けるがいい!」
やる気満々の二人であった。と、そこで正斗の世界のトゥアールが身を乗り出し、龍兎に叫ぶ。
「龍兎さーん!応援していますから頑張ってくださーい!」
「おっけートゥアールちゃーん!トゥアールちゃんにいいとこ見せてやるぜー!」
大きく手を振る龍兎と、少し頰を赤らめながらも同じくブンブン手を振るトゥアール。完全なるバカップルであった。思わずダブルツインテイルズメンバーと龍美、千優とグラファイトは苦笑してしまう。
とまあ、いちゃつきはここら辺でおしまいにしておいて。振り返った龍兎と龍美は真剣な顔になり、それぞれ懐からなだらかにラインの入った丸いパーツとその左右にそれぞれ一回り小さい丸いパーツのついたもの……オーズドライバーと赤いグリップのレバーと丸いパーツ、何かを差し込むスロットの二つ付いた長方形のベルト……ビルドドライバーを取り出し、腰に巻く。
龍美の細い腰に銀色のベルトと円形のスキャナー、メダルのホルダーが現れ、龍兎の腰にフルボトルのホルダーのついた黄色いベルトが巻かれる。それを確認した二人は龍美は両目を紫に輝かせ、強く胸を張ったかと思うとそこから金色に縁取られた紫色の三枚のメダルを出現させ、龍兎はポケットから龍の彫り込まれた半透明の白いボトル……〝バハムートフルボトル〟を取り出す。
龍美がプテラノドン、トリケラトプス、ティラノサウルスの描かれたメダルをオーズドライバーの前面をスライドさせてセットし、再度カバーをスライドさせて固定するとバックルを斜めに傾ける。龍兎は顔の横に持ってきたバハムートフルボトルを20回ほど振るとフタを前にセット。
すると、独特な鳴き声をあげながらどこからともなく体にフルボトルのスロットのついた白い体躯の小さなロボット……ラグナロクドラゴンが現れて龍兎の手に収まった。
『行くぞ、我が相棒よ!』
「おっけーバムさん!」
「ギルよ、貴様の力を貸せ!」
『カカッ、上等だ!』
龍美がオースキャナーをホルダーから外して待機状態を表す音声を鳴らせ、龍兎が振ったフルボトルをラグナロクドラゴンのスロットに差し込んで尻尾と首を折り畳む。すると側面に龍の顔が浮かび上がった。それをビルドドライバーに差し込む。
《BURN UP!》
《RAGNAROK DRAGON!》
テンションの高い声がドライバーから流れ、軽快な変身待機音が流れる。それに乗るように龍兎はドライバーのレバーを回していった。するとボトルから取り出された成分がドライバーから伸びてまるでコンテナのような形に展開した太いガラスの管のようなものを通っていき、最後には龍兎の体の前方と後方に半分になっている鎧を作り出す。
《ARE YOU READY!?》
それまで加速度的に鳴っていた待機音が終わり、ドライバーから言葉が吐き出される。龍兎は数回肩をほぐすような動作をした後握った両手の拳を打ち合わせ、胸の前でクロスすると叫んだ。それと同時に、龍美もオースキャナーをドライバーに沿うように振り下ろし、同時に左手を交差させて顔の横で構える。
「「変身!」」
《プテラ!》
《トリケラ!》
《ティラノォ!》
《プットッティラーノザウルース!》
《BURN UP THE WORLD!GET RAGNAROK DRAON! YEAH!》
龍美がオースキャナーを胸に押しつけるようにすると体の周囲にメダルのようなものが複数幻影のように現れ、そこから三つの紫色のメダルが選ばれると体の前で一つに融合、龍美の胸に押し付けられる。するとそこから波動が広がり、その身を変身させた。
また、龍兎も両腕を腰だめに構えると鎧が前方と後方から迫ってきて合体、コンテナのようなものの側面にて生成されていたドラゴンのようなものが背中に取り付き、頭と胴体にさらに鎧が重ね着される。
まず龍美だが、その身にやや生物的な鎧を纏っていた。胸部にプテラ、トリケラ、ティラノの描かれた金色で縁取られた円形装甲……オーラングサークルと呼ばれる鎧に脇腹を守る黒い装甲、背中からは血管の走る紫色の大きな翼を携えている。その下の体はうっすらと腹筋の浮かび上がった銀色の鱗に包まれている。
両肩にはトリケラトプスの堅牢な体を模したかのようなそれぞれ一本の角のついたアーマーを纏い、前腕にもトリケラトプスの頭部のような広がった形状の鎧を。手の甲を守るのは紫色の装甲で、ほっそりとした五指は尖った黒い外骨格に包まれている。
ドライバーの両腰、後ろ腰には大きな鱗を重ね合わせたかのような鎧を纏っており、膝下には綺麗に並んだ紫色の鱗と銀色の鱗を。銀色の鱗の光る太ももには紫色のラインが走り、両足は鋭く太い前に三本、後ろに一本の爪が付いている。
最後に頭部だが……獰猛に笑う口の中には綺麗に揃った鋭い歯が並び、紫色に変わった前髪で隠れている額から鼻先にかけてと横顔は両方とも模様のようになっている紫色の鱗に覆われ、両耳は斜め後ろ前に向かって大きく張り出して尖ったものに変化している。勿論、その耳のすぐそばの側頭部からは紫に輝くツインテールが飛び出していた。緑色の瞳は爛々と輝いている。
それが、仮面ライダーオーズ:プトティラコンボの姿であった。正に半人半竜といった出で立ちだ。
一方龍兎のほうは、全身を覆うスーツと鎧に包まれていた。先ほど纏った鎧には白地に黒い炎が描かれており、まるでジャケットのようだ。背中の部分には骨のような白いヒレが三本飛び出している。両肩まで届くそのアーマーは横に二本の爪のようなものが飛び出している。
その下には合体した時に一つになった下に向かって尖った斜めに線の入った白い装甲が覆っており、さらに体は黒い漆黒のスーツが体を守っていた。体のアーマにつながった黒い装飾のついた肩アーマーに二の腕には同じ形の、左腕には炎の踊るリングをつけている。
両腕の前腕には白く輝くアーマーをつけ、背中のものとよく似た鋭く黒いエッジがついている。また、比較的シンプルな右腕とは反対に左腕には黒い炎をかたどったかのような装飾が足されていた。それは黒いアンダースーツに包まれた両足の太ももの装甲の右足の方にも走っている。膝下にも白い装甲が斜めに組み合わさってついていた。足首には白いリングと、その下の足は白い具足が包んでいる。
最後に頭部は、ドラゴンの横顔が向き合ったかのような鋭く尖ったクリスタルのような白い両目に口の部分には白いマスクが装着され、額には黒いドラゴンのような装飾が施されている。そこから頭頂部にかけて白い装甲が後頭部の付け根まで届いていた。
それが龍兎が変身した、仮面ライダーバハムートの姿である。
2人の変身を見て千優とグラファイトもうなずき合い、すでにバックルのついているバグルドライバーⅡとバグルドライバーⅢを腰に装着する。そしてドラゴナイトハンターツウィンガシャットを起動させた。
《DRAGOKNIGHT HUNTER!TWIN!」
「EXステージ、変身!」
「ミステリーウィルス、培養!」
《ガシャット!》
《ランクアーップ!ドラゴナイトハンター!ツウィン!》
《パージアッープ!ドラゴナイトハンター!ツウィン!》
バグルドライバーのディスプレイから飛び出したパネルが二人の左右に配置され、二人の体を通り抜けてぶつかり合い砕けると仮面ライダードライト、仮面ライダーグラファイトへと変身させる。
「「我ら龍騎士、愛する姫を助けんがため、この力を振るわん!」」
「さあ、試合といこうか!」
「我が力、その魂に焼き付けるがいい!」
トランペットで吹き鳴らしたかのようなファンファーレとともに、ゲムデウスにたどり着く前の最後の戦いが始まった。
第三ステージ、スタート。
●◯●
「オォオオォッ!!」
龍美改め、変身したオーズはファンファーレが鳴り響いたのと同時に雄叫びをあげて勢いよくその右腕を地面へと振り下ろす。すると手がめり込んだところから地面に亀裂が走り、紫色の光が隙間からもれる。オーズは思い切り腕を引き抜いた。その手には大きな手斧が握られていた。
メダガブリュー。それが大きな手斧の名前である。あらゆる場所から生成できる謎の武器であり、黒い恐竜、太古の覇者と名高いティラノサウルスの頭骨を模しており、茶色い岩のついた銀色の頭骨に金色の両目と不揃いな歯が並んでいた。その顎門の間には複雑な模様の刻み込まれた、水晶のような分厚い紫色の刃が存在している。その下からはクリスタルのような円筒形のパーツが飛び出ており、これまた複雑な彫刻がなされた持ち手が繋がっていた。
《BEAT SLASHER!》
一方、バハムートの手元にもドライバーからランナーのようなものが出現し、成分が剣の形に成形される。次の瞬間、バハムートの手元にはチューナーと剣を一体化させ、持ち手の柄に引っ張るタイプのレバーが付いた両刃の剣が出現した。ビートスラッシャー。バハムートの専用武装である。
オーズとバハムートの準備ができたところでドライトとグラファイトはそれぞれガシャコンドラゴンファング、ガシャコンドラゴンブレイドを手に持ち、相手からくるのを受けていた一回戦、二回戦の時とは逆に自分たちから相手に駆け出していった。
これにはいくつかの理由がある。一回戦と二回戦は相手に先手を取られて苦戦するパターンが出来上がってしまっていたことと、まだこの力に慣れきっていなかったのだ。だが流石に千優とグラファイト、二回も使えばもう完璧に仮面ライダーの力を使いこなせるようになっていた。
また、これまで強敵ぞろいであったこの『Tower of Deus』』だが、その中でもひときわ危険なのがオーズとバハムートだ。なにせ、かたや元エレメリアンにして今は
特に実際に普段から戦っているグラファイトは二人の尋常でない強さを知っているので、タッグになられたら相当攻略難度が跳ね上がるのが容易に想像できたため、仮面の片目の機能を使って思考を交わし合うとそれぞれ一人ずつ相手にして分断させることにしたのだ。
予定通りそれぞれの敵に向かっていく二人。ドライトはオーズと、グラファイトはバハムートと。その目論見は成功し、オーズのメダガブリューとドライトのガシャコンドラゴンファング、バハムートのビートスラッシャーとグラファイトのガシャコンドラゴンブレイドが火花を散らしてぶつかり合う。
スーツにより強化された力でドライトはメダガブリューを押し込むが、しかしオーメダルの力に加え彼女のネオ・エレメリアンとしての力も解放されているオーズはそれを獰猛な笑みを浮かべながら受け止める。それどころか強引に振り切り、弾き返してしまった。
思わずたたらを踏むドライトに接近したオーズはパラドの斧術以上のスピード、テクニックのこもった神速の斬撃を振り下ろしてきた。なんとかそれを回避するものの、しかし横腹を何かにえぐられるように打ち据えられ、思わず横に吹き飛ぶ。
本の銃数分前にトゥアールに吹き飛ばされたのを思い出しながらなんとか地面を転がって減速し、オーズを見ると腰の紫色の鎧……テイルディバイダーの後ろ腰の部分が変化し、三メートルほどにもなる長大な尻尾に変化していた。あれで攻撃されたのだろう。メダガブリューを持つ右手を引きしぼり、姿勢を低くして左手を地面につけているその姿は正に獣の王。
しかし、ドライトは仮面の下でニヤリと笑い、一度首と肩を回してコキリと音をならせると再度オーズに突進してきた。それをさらに笑みを深めて応戦するオーズ。斬り込んできたドライトの剣を受け止め、流麗な動きで斬撃を繰り出す。負けじとドライトも剣を振るった。
叩き斬る、叩き割る、叩き潰す。そういう表現が似合いそうな荒々しくも確かな技のこもった斧撃が嵐のように叩きつけられてくる。それを同じく力強い剣で応戦するドライト。そうしているうちに、観戦していた総二とソーラが何やら気がついたような顔をした。
ドライトはオーズの斧撃をことごとく防ぎ、あるいはいなしてまるで舞うように剣を振るっている。が、ある時は修羅のごとく荒々しい剣を、そうかと思えばまたゆらゆらと不規則かつ予測不能の剣を使う。そう、まるで……まるで風に揺れる女の髪のごとく。
「……なあソーラ、千優さんの剣」
「うん、そうだね総二。もしかしてあれは…」
「何?あのすごいやり取りの中に何かあるの?」
「「ああ……あの千優さんの剣は……ツインテールの剣だ!」」
「……は?」
「……………あー。また始まっちゃったかー」
胸を張って自信満々に言い切る総二とソーラに千優の世界の愛香は間抜けな声をあげてポカーンとし、愛香はまたかとでもいうようにやれやれと頭を左右に振る。その拍子にツインテールが揺れて総二とソーラの目線がそちらにいったのはご愛嬌だろう。
そんな総二たちのやり取りをその異常なほどに発達した聴覚で聞いて、オーズは今自分の目の前で剣を振るっている戦士の動きを改めてよく観察してみた。そうして見ると、確かにドライトが振るっているのはかつての自分と同じ……ツインテールを模した剣技であった。
生まれ変わって新たな武器……メダガブリューを使い始めたことにより、その天賦の才で早くも初戦のうちに使いこなせたにもかかわらずエレメリアン時代に極めた剣技を応用し、新たに修練を積んでいる斧術と組み合わせて見事にツインテールの斧術を完成させたオーズである。それ故に、ドライトの剣がどのようなものがすぐにわかったのだ。
だが、すぐに少し違和感を感じる。というのもドライトの剣は確かにツインテールの剣ではあるし、かつての並行世界のもう一人の自分の剣技を見事に模倣してはいるのだが、何か違うのだ。こう、ツインテールそのものに愛を捧げたオーズの剣に対して、ドライトはただ一人のためだけに磨いたもののように見えるのである。
それは……そう、まるで今彼が纏っている竜騎士の鎧が代弁しているかのごとく、騎士が幼い頃から使える想い人である主人に捧げるために培ってきた、愛の剣……
「ーーーッ!!!そうか、そういうことか!!千優、貴様の剣はーー」
「そうだ、俺の剣はーー慧理那のツインテールの剣だ!彼女のために磨き、振るう剣だ!」
「クハハハハハ!!!面白い、面白いぞ、仲足千優ォォオオオオオォオオオォオッ!!」
「ぐっ……!?」
心底楽しそうに哄笑をあげたオーズの斧の速度が、さらに上がる。脇腹めがけて振るわれたメダガブリューをなんとかギリギリのところでガシャコンドラゴンファングで防ぐ。が、次の瞬間にはメダガブリューは体の右側から首筋に迫っていた。
それから、オーズの猛攻はとどまるところを知らなかった。正に狂喜乱舞、悪鬼羅刹という言葉がぴったりと当てはまるような凄絶な笑みを浮かべ、嵐のような斧の乱舞を繰り出してくる。それにドライトは防戦一方であった。
シュルルル!
「しまっ!」
「フンッ!」
「がはぁっ!!!!!」
斧にばかり注意がいってしまい、足に巻き付いていた尻尾に気がつかず、腰を使って振るわれた尻尾にバランスを制御され、地面に勢いよく叩きつけられる。一度だけで終わらず、二度、三度と同じことが繰り返された。
なんとか逃れようとドライトはガシャコンドラゴンファングをガンモードに変更してオーズに発砲する。だがそのことごとくをメダガブリューで防御されてしまった。某黒スーツの死者たちの使う小銃のように内部から破裂させるガシャコンドラゴンファングの銃弾により刃を破壊することはできるが、すぐにメダガブリューの刃……フラグメントリーパーは自己修復してしまうため、意味がなかった。
相棒の危機を察知してバハムートと戦っていたグラファイトが救援に向かおうとするが、しかしそれを許すバハムートではない。ここぞとばかりにビートスラッシャーの柄頭のレバーを引き出し、二回引き出して刀身に添えつけられたメーターが上方の赤色に達したところでグラファイトに振るってくる。
《ヒッパーレ!ヒッパーレ!ミリオンヒット!》
「ふっ!」
「ハァッ!」
すぐに助けに行くのを諦め、一時的な強化のなされたビートスラッシャーを両手のガシャコンドラゴンブレイドで防ぐ。しかしそれを意に介さず、容易にビートスラッシャーを振り切るバハムート。当然グラファイトは後退させられた。
そこにさらに踏み込み、バハムートは追撃をする。応戦するグラファイト。ガシャコンドラゴンブレイドはもともと二メートル以上あるグレングラファイトファングを分割して改造されたものであり、一本で一メートルはある長い剣なのだが牙のような見た目からしてやや細身だ。
それに比べて中央のメーターを含めて幅の広いビートスラッシャーを両手で振るうバハムート。結果、二本の細身の剣と一本のバスターソードのような剣がぶつかり合っており、本来ならバハムートはパワー&テクニックタイプでグラファイトはオールラウンダーなのだが相殺され、ほぼ互角の打ち合いになっていた。
ならば勝負の命運を分けるのは……本人たちの根性だろう。それを体現するかのように、龍戦士と竜騎士は背中に東洋の青龍と赤と黒の
《ズ・ドーン!》
と、突如バハムートの振るったビートスラッシャーを弾いたグラファイトが柄頭に内蔵されていたボタンを片足を上げて太ももで押し込み、ガシャコンドラゴンブレイドの片方を変形させてゼロ距離で発車する。それをバハムートはビートスラッシャーから左手を離し、白い炎を纏った拳で打ち消す。
グラファイトはガシャコンドラゴンブレイドを片方銃に変形させ、バハムートは片腕を炎拳にして応戦しながら、残った手でそれぞれの剣を振るって戦うという高度な戦闘が繰り広げられた。まるで腕だけが独立した思考を持っているかのように激しいやり取りだ。
終いには、お互いの脚を使った攻防まで展開された。剣を振り下ろす腕を膝を跳ね上げてずらして防ぎ、あるいはあえて一歩踏み込んで相手の体制をずらしその隙を突こうとする。Wツインテイルズも観客も興奮冷めやらぬ様子で絶叫し、応援を送った。
その声援に応えるように、グラファイトが背中の装甲から機械じみたドラゴンの片翼を広げて親指にあたる骨……をもした金属の爪を日本刀のように長く伸張させ、バハムートに振り下ろす。それをバハムートは同じように炎の翼を出現させて防いだ。それどころか、超高熱で翼がみるみるうちに溶けてゆく。
仮面の下で舌打ちをし、グラファイトは片翼を解除すると発砲していたガシャコンドラゴンブレイドを元に戻してもう片方に連結、グレングラファイトファングに戻して振るう。すると今度はバハムートが後退させられた。地面に敷き詰められたタイルがえぐれ、ひび割れる。
それを見てグラファイトはグレングラファイトファングを何回か回し、何か得心したように頷いた。どうやら、やはり普段から使い慣れているこちらの形の方がいくらかやりやすいと思ったようだ。
それを証明するように右脇に抱えて腰を落とすと、左手をバハムートに突き出し、人差し指と中指をクイックイッと曲げる。つまり、挑発である。バハムートもまた仮面の下で嗤い、あえてその誘いに乗って突進する。
剣の間合いまで入った瞬間振るわれたビートスラッシャーと、カウンター気味に放たれたグレングラファイトファングがぶつかり合い、激しい轟音とともに火花を散らす。グラファイトとバハムートは至近距離で仮面に包まれた顔を寄せ合い、その奥の闘志で燃え上っている瞳で相手を睨みつける。
しかしそれも一瞬のこと、お互いの武器を弾きあうと超至近距離で武器を打ちあった。火花が、お互いの装甲に時折叩き込まれる武器によってアーマーの破片が宙に飛ぶ。それに構わず、二人は激しく戦いあった。
一方、なんとか尻尾から脱出し、そこかしこに設置されていた石像から回復のエナジーアイテムを使ってダメージを回復したドライトの方も全力で慧理那のツインテールの剣技を発揮してオーズと戦っている。これまで切り札の一つとして温存していたものだけあり、真にツインテールへの愛から生まれたオーズをして互角に持ち込まれる。
だが……ドライト、グラファイト、オーズ、バハムートの四人の心境はもっとやれと言わんばかりに熱狂的な応援をする観客たちの心とは真反対にそろそろ飽き飽きしていた。
龍は血気盛んで喧嘩っ早いことでよく知られる伝説上の怪物である。その龍の特性を背負う四人は、まどろっこしい泥仕合いも確かに好きだが……それ以上に、自分の魂を賭けて作り上げた最高の技で相手を完膚なきまでに叩きのめすことこそが戦いの華だと思っていた。
故に……
「「「「そろそろ終いにしようか!」」」」
あいも変わらずメダガブリューを叩きつけ、果敢にツインテールの剣を振るい、途中からビートスラッシャーとグレングラファイトファングを投げ捨てて直接殴り合いをしていたバハムートとグラファイトが同時に叫ぶ。
全員その場から飛び退いて後退し、ドライトとグラファイトはバグルドライバーⅡとバグルドライバーⅢのABボタンを二回同時に押し込む。オーズは自らの胸に腕を突っ込み、そこから銀色のメダル……セルメダルをメダガブリューの刃の上部にあるエナジーエンハンサーからメダルを四枚装填する。バハムートはドライバーのレバーを勢いよく回し、何かを組み上げていくかのような必殺技待機音声を鳴り響かせた。
《ウラワザ……!》
《ウラワザ!》
「こいつでフィニッシュだ……」
「とくと味わえ!」
拾ったグレングラファイトファングと連結させたガシャコンドラゴンファングにドライバーからエネルギーが充填され、それを二人は拳を地面に叩きつけた後上半身と腕を使って練り上げるようにする。すると仮面の目が光り輝き、炎が薙刀を覆った。
《ガブッ、ガブッ、ガブッ、ガブッ、ゴックン!》
「これで終いだ……!」
頭骨の後ろにあるレバーを操作してティラノの顎門を閉じさせてメダルを飲み込ませ、エネルギーをチャージするとどこからともなく紫色の粒子が集まり、複雑な文様の刻み込まれた円筒形のクリスタルが長大な砲身へと変わる。
《READY GO!》
「ハァァァァ……!」
ボトルから成分が取り出され、限界まで熟成される。バハムートの背後に十数メートルもの白い炎を纏った黒い東洋龍が出現した。バハムートは腰を落とし、両腕を水平に構えていつでも蹴りを打ち出せる体制に移行する。
《GUREN! BAKURYUKEN!》
《プットッティラーノヒッサーツ!!!》
《LAGNAROK FINISH!》
「「ォォオオオオオォオオオォオッ!」」
「ハァッ!!!!!」
「オルァアアァアアアァァァアアァッ!」
グレングラファイトファング、ガシャコンドラゴンファング、メダガブリューの砲撃、東洋流のブレスに加速されたバハムートの蹴りが激突しあう。激しいスパークがステージの上を駆け巡った。
最初は、絶大な威力を誇るメダガブリューのビーム砲撃とバハムートのキックが押していた。だがしかし、なぜか加速度的に自分たちの力が増していく感覚を覚えた二人は負けじとそれを少しずつ押し返していく。
実は二人のツウィンガシャットに搭載されている共鳴機能、通称『バディリンカー』には隠し機能が搭載されている。それは、ライトガシャットとレフトガシャットの使用者の身体的距離が近いほどステータス上昇は速くなり、かつ一定条件下……ウラワザを使用した際はさらにそれにブーストがかかるといったものだ。
グ、ググ……………!
「くっ……!」
「押されている、だと……?」
「「全ては……慧理那の為にッ!!!」」
そしてついに……二人の剣が押し切った。
「「ぐ……ァァァアアァァァァアアァ!」」
ドガァァァァァアアァァンッ!!!
グレングラファイトファングとガシャコンドラゴンファングの炎を纏った必殺の一撃がビームとキックを押し返し、その身に強烈な一撃を叩き込む!
吹き飛ばされたバハムートとビームと炎が混合した上に逆流したオーズは盛大に吹き飛び、そして身体中に《HIT!》のエフェクトが乱舞したのと同時に大爆発とともに完全に必殺技を破られたのだった。ドライトとグラファイトは体を反転させてそれに背を向け、お互いの武器を打ち付けあう。
武器を下ろして分割し、腰のホルダーに挿し直したところで爆風が晴れ、地面に転がったオーズとバハムートが現れる。二人は自動で変身が解除され、龍美は『残念だったな』と笑うギルの意思に従いオーメダルが体内に戻り、龍兎はボトルを刺したままのラグナロクドラゴンがドライバーから分離して慰めるように鳴く。二人は苦笑いしながら地面に仰向けになった。
と、同時に再度ファンファーレが鳴り響き、観客が決着を知らせる笛の音色にこれまでで最大の絶叫を繰り出す。千優とグラファイトはそれに思わず耳を塞ぎながら二人に近づき、手を取って立ち上がらせた。
「うーん、負けたか……トゥアールちゃんにいいとこ見せたかったんだけどなー」
「いや、十分かっこよかったぜ龍兎。ほら、トゥアールこっちにブンブン手ぇ振ってるしさ」
「そっか……ならいいや!」
「ふははは、私もまだまだだな。修練を積み、いつか貴様に勝つぞ!」
「ふっ、いつでも待っているぞ」
握手し合い、不敵な笑みを浮かべあう四人。それを見計らったかのようにノイズが走るような音が鳴り、先ほどの台の上に正斗のホログラムが出現し、声が響く。タイムは12分58秒。やりとり自体は激しかったが全員が決着をつけたがったので、時間は短かったのであった。
『さてと……それでは龍兎、龍美、君たちには罰ゲームだ』
「……まあ、そうだよな」
「ふっ、覚悟はできている。さあ、いつでも来い!」
『……いい覚悟だ。では龍兎はトゥアールとの初デート&告白の時の動画、龍美は私とトゥアールで作った空間転移装置で色々
目を見開く二人に構わず、もはや聞き慣れてきたウィーンという音ともに天井から観客席に合わせて8面のスクリーンがついた装置が降りてくる。そして半分は龍兎とトゥアールが、半分には龍美とその彼氏の旅行写真が映されていった。
二人の罰ゲームの余波を食らったトゥアールが慌てて立ち上がるが、しかし総二と愛香にガシッと掴まれる。ギョッとしてトゥアールが見下ろせば、こっちに来いと言わんばかりに不気味な笑みを浮かべた二人がいた。
悲鳴をあげながら奈落の底(羞恥地獄)に引きずり込まれたトゥアールの目線の先で、大きな噴水のある公園の片隅、夕暮れのベンチで向かい合っている龍兎とトゥアールが映し出された。やたらキラキラしており、さらに感動的なBGMが流れている。罰ゲームにすら本気なゲームクリエイター、神崎正斗であった。ちなみに左下に例のごとく撮影&編集者:バハムートギルディと書いてある。
『え、えっと、トゥアールさん!』
『ひゃ、ひゃい!』
『……一目惚れしました。君の笑っている顔や少しおっちょこちょいなところ、でも時々悲しそうな顔……全部好きです!俺と、俺と付き合ってください!』
『ーーッ!こっ、こちらこそ、不束者ですが、よろしくお願い、します……!』
「うわぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああああああぁぁぁあぁああぁぁぁああぁぁぁッ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁですぅうううぅうぅぅぅうううぅううううぅぅぅぅぅぅううぅううううぅう!!!」
さしもの天才物理学者兼最強格闘家といえどもこれは恥ずかしかったのか頭を抱えて膝から崩れ落ち絶叫する龍兎と、今日二度目になる極限の羞恥心で叫ぶトゥアール。阿鼻叫喚という言葉がよく当てはまった。例のごとく容赦のない罰にドン引きする千優とグラファイト。リア充は至高と謳う千優は少しニヤニヤしているが。
一方、龍美の方は元からの精神性の強さもあるのか、顔を赤くはしているものの仁王立ちして耐えていた。流石は元アルティメギル先遣部隊の隊長を任せられるだけのことはあった。が、それを許す正斗ではない。目に見えるくらい恥ずかしがっていなければ満足しないのだ。軽く鬼畜である。
というわけで、ポチっとなとボタンを押す正斗。するとタカの壁が地面にせり落ち、そこから一人の男が姿を現した。茶色に紫と様々な色を組み合わせた少し派手なコーディネートをしている男であった。その男を見てぽかんと口を開ける龍美。
「や、やあ、龍美ちゃん」
「……ふぇっ!?えええええ映二殿!?」
男に……自らの愛する男にして正斗の中学時代からの友人、
映二は少し苦笑しながら、また、これを見ているであろう正斗のニヤニヤとした愉悦顔を想像して少しやるせない気持ちになりながら龍美に近づいていく。
そしてやがて龍美の前に立ち……そっと片腕で、その腰を抱き寄せた。途端にぼんっ!と顔を真っ赤にする龍美。そんな龍美の顎をもう片方の手で上げ、映二は少し赤い顔でその綺麗な赤眼をじっと見据える。
「あ、あぅ、あ、え、映二、殿……?」
「……ごめんね、先に謝っておくよ」
「え、な、何を……って、にゃ、にゃんでそんなに近づいて……っ! ま、まさか……!」
『そう、そのまさかだ』
チュッ…
イヤッフゥゥウゥウゥゥーーーー!
公衆の面前で行われた愛の逢瀬に、ホログラムのはずなのに妙にリアルな熱気を感じさせるほど観客たちが狂喜乱舞した。総二たちWツインテイルズも顔を赤くする。
そんな中そっと映二が顔を話すと、龍美は目を回して、しかしどこかとろけた表情で映二の腕の中で気を失ってしまった。それに申し訳なく思いながらも、こちらを見ているホログラムの正斗にこれでいいかとアイコンタクトを送る。それにオッケーのサインを出す正斗。
正斗はわかっていた。そんじょそこらの罰ゲーム程度では龍美が揺るがないことを。そこで考えたのだ……彼女の一番の羞恥ポイントを突いてやろうと。軽い鬼畜外道である。とまあ、それはともかく。その結果映二に協力という名の脅迫をしたのだ。
ちなみにその内容は、映二が龍美に向けて密かに書いているポエムを龍美に公開されたくなかったら言う通りにしろという割とガチな方な脅しである。流石に映二もそれは避けたかった。
本当に容赦のない罰ゲームに、さしもの千優とグラファイトも顔を青くした。そんな二人を嘲笑うように、最初に龍兎たちが入場してきた入り口が変形して白亜の階段に変わる。
『さあ、最終ステージへの道だ。進みたまえ、勇者諸君』
ステージの状況などなんのその、さらりと言う正斗に二人は首がおかしくなるのではないかと言うほどブンブン縦に振り、さっさと変身を解除すると駆け出したのだった。
そして……最後の戦いが始まる。
次回で最後です。
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