ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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今回は長いです。
すいません、戦闘シーンがショボいかもです。
楽しんでいただければ幸いです。


心が踊る大変身!

 光が収まり、ゆっくりと目を開けるとそこはもう慣れ親しんだアドレシェンツァではなく、どこか野外の場所であった。日の光、風、歩道、アスファルト。見覚えのあるその場所はしかしていつもの平穏さはどこにもなく、咽せそうになる焦げ臭い匂いや熱気を肌で感じる。

 

「ふむ…どうやら、事態はあまりよろしくないようだな」

「みたいだねー」

「……え?えっ!?」

 

  一見冷静そうな俺たちとは裏腹に、総二は盛大に混乱しているようだった。愛香も声こそあげないものの、困惑した様子である。おそらく、今の今までなかった感触や感覚を一気に与えられ、理解が追いついていないのだろう。俺とパラド、そしてここに飛ばした張本人であるトゥアールは事前に心構えをしていたのでそうでもなかったようだが。

 

「何で俺たち、外に…って、何でここにいるんだよ!?」

 

  きょろきょろと辺りを見回していた総二が素っ頓狂な声を上げる。なぜ自分たちがここに?という困惑を如実に表していた。

 

  改めて、今俺たちがトゥアールに()()()()()()()場所の名は『マクシーム空果』ーー大小二つの棟、野外展示スペースからなる地元では最大のコンベンションセンターであり、イベントや音楽関係のライブ、学校の行事などにも使われたりする。かくいう我が社も何回かここでイベントを開かせてもらった。

 

  俺たちはそのマクシーム空果の野外駐車場に位置する場所にいた。マクシーム空果は、総二の家からだと軽く見積もっても二十分はかかる場所にある。普通ならば一瞬で移動することなどあり得なかった。

 

「予想より早かった……迎え撃つつもりが、まさか後手に回ってしまうとは」

 

  胸を撫で下ろし、棒記憶消去装置に似た銀色のスティックを見ながらトゥアールと名乗る女がそう呟く。その顔からはもう少し早く来ていればという後悔が見てとれた。

 

「まあ、過ぎたことをうだうだ言っていても始まるまい。それよりも……」

 

  俺はそこで口を閉じ、顔をある方向へ向ける。自然と全員の目線がそちらへ向いた瞬間、耳をつんざくような轟音が聞こえて来た。その原因によって、俺たちは先程からの焦げ臭さの元を知ることとなる。

 

「あれを見ろ」

「……なっ!?」

 

  俺の持ち上げた指が指し示す場所…そこでは、駐車場に停めてあった車が次々とポップコーンのように空高く弾け飛ぶ光景が繰り広げられていた。それらは当たり前のように落下し、炎上。それは、事態が事態でなければハリウッド映画の撮影か?と思い込むほどの非常識な光景であった。

 

「総二様…と、愛香さんとそこの二人も。私からあまり離れないでください。奴らに見つかります。認識撹乱(にんしきかくらん)の作用範囲はそこまで広くありません」

「にんしき……かくらん?」

 

  呆然とした様子でトゥアールの言葉をつぶやき、ふらふらと炎上する車のほうへ向かおうとする総二を手で制す。そして愛香とアイコンタクトをして総二を任せると、次にパラドに頷いてみせる。

 

  いつの間にかいつもの服装に早着替えしていた彼女はすぐに意図を理解し、黒コートのポケットから何かを取り出すとそのスイッチを押した。すると、パラドを中心に半径一メートルほどの円形フィールドのようなものが現れ、俺たちを覆い隠す。いきなりのことに俺とパラド以外の全員が驚きと困惑を表した。

 

「こ、これは一体…?」

「お前の認識撹乱装置と同じ効果をもつフィールド発生装置だ。といっても見ての通りあまり範囲は広くないがな」

「…あなた、一体何者なんですか?」

 

  彼女の当然の疑問をスルーし、総二のほうへ今一度意識を向ける。総二は愛香によってある程度茫然自失の状態から立ち直ったようで、俺に説明を求めるような目を向けて来た。

 

  俺は肩をすくめてそれに答え、先ほどとは別の場所…広い駐車場の中央部分を見るように促す。それに機敏に反応した総二と愛香は少し身を乗り出して凝視し…すぐに驚きの声を上げた。

 

「ーーなぁぁぁぁ!?」

「え、嘘、なんで!?」

 

  そこにいたのは爬虫類…というかトカゲにごちゃごちゃと角を装飾したような頭部と、厳かな甲冑を身にまとった二足歩行の身体を持つ異形の何かがいた。

 

  もし初見ならばけったいな見た目と場所が場所なこともあり、イベント用の着ぐるみか何かと思うだろう。だがそれが歩くたびにアスファルトの地面はヒビ割れ、二メートル以上の威圧的な体躯に凶悪な相貌、刃のような背びれや短剣の如き生えそろった牙、それらが醸し出す異様なリアリティがあれが()()だということを証明していた。

 

  更に、これで二人が俺から生まれた存在の一人である『彼』を知らなければ、「怪物だ!」とでも叫んでいたであろう。勿論、あれは正真正銘の化け物だ。人間では太刀打ちできない力を秘めている。

 

 しかして、その実態は……

 

「者ども、集まれい!」

 

  突如異形は虫でも払うかのように近くにあった車を片手で吹き飛ばし、はっきりと日本語で、人間の言葉で命令を出した。そして、大きな口を歪め、怪物は叫ぶ。絶望に彩られた、終焉(ズッコケ)をもたらす言葉をーー

 

「ふはははははは!!この世界の生きとし生ける全てのツインテールを、我らの手中に収めるのだーーーー!!」

 

「「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

  銅鑼声で高らかに宣言された変態発言に総二と愛香は吹き出すでもなく、呆然とするでもなく同じく高らかな声でツッコミを炸裂させた。きっと初見ならば吐血しそうになったであろうことが容易に想像できる。

 

 俺がくつくつと笑いをこらえていると、もはや驚く気力も失せたといった様子の愛香がこちらに疑問を投げかけてきた。

 

「…ねえマサ、あれってそうだよね……?」

「なにがだ愛香?」

「あれって…やっぱり、()()()()()()()()()()()()()()()()…」

「ああ。まあ、うちの奴らの方がはるかに優れているがな」

 

  俺の返答にがくりと崩れ落ちる愛香。そんな俺たちを見て混乱しまくりなトゥアール。こちらはこちらでかなりカオスなことになっていた。そんな俺たちを置いて、展開は進んでゆく。

 

「モケェーーーーーーー」

 

  トカゲ怪物の周りに、黒ずくめの格好の集団が大勢現れた。頭にはなぜかパンツのようなものを被っているが、それは気にしない方向でいく。そのある意味個性的で無個性な集団は、戦闘員を想起させた。

 

  ふむ…あのトカゲモドキと戦闘員?は、次のゲームキャラの参考にできるかもしれん。よく覚えておくとしよう。

 

  話を本筋に戻して、カサカサと某黒光りする先輩のような小刻みな早足で散っていくその戦闘員?たちは、その内の幾体かが女の子を捕らえていた。捕まえられる少女たちの共通点は、ただ一つ。

 

「ツイン……テール…」

 

  そう、ツインテールである。総二が小さく呟いた通り、戦闘員はツインテールの少女のみを抱えて攫っているのだ。

 

「…やはり、目的はそれのようだな」

「だね。いずれにしても、どうにかしないと」

 

  小声でパラドと会話をする俺の傍らで総二たちは気を揉み、トゥアールはただ無言で奴らの動向を伺っていた。

 

 

 ●◯●

 

 

「それにしても、ツインテールの少ない世界よ……嘆かわしい!これだけ電気と鋼鉄にまみれながらその実、石器時代で文明が止まっていると見える!!」

 

  いらだたしげに右往左往するトカゲモドキは、日本語でおかしなことをほざいていた。常人が聞いたら耳どころか意識を塞ぐに違いない。

 

「まあよい、それだけ純度の高いツインテールを見つけられようというもの……者ども、隊長殿の御言葉を忘れるなっ!極上のツインテール属性はこの周辺で感知されたのだ、草の根分けても探し出せい!!…兎のぬいぐるみの耳を持って泣きじゃくる幼女は、あくまでついでぞ!!」

「…………モケ?モケェ」

「応よ、言われるまでもない!究極のツインテール属性の奪取は我らの悲願……だが!この俺も武人である前に一人の男……やはり、ぬいぐるみを持った幼女も見たいのだ!見つけたものには褒美を遣わすぞ!」

 

  ……やはり、流暢な日本語で世迷言をほざいている。そろそろ殴り飛ばしたくなってきた。だが務めて冷静に、まだ機は熟していない、情報収集に専念しろ。

 

「大人に用はない!手早くつまみ出せ!多少手荒でも構わぬ!!」

 

  統率された動きで、怪物の指示をこなしていく黒ずくめたち。その中の一人が進み出て、何事かを怪物に伝えた。

 

「モケー」

「何、ぬいぐるみを持っている幼女がいない!?ふむ、女がぬいぐるみを持たぬなら、持たすが男の甲斐性よ!構わぬ、連れてまいれ!」

 

  ……いや、そんなもので男の甲斐性を語られても全国のお父さんがたに謝れとしか言えないのだが。

 

「たすけてー!」

 

  泣きじゃくる一人の幼い女の子が、怪物の前に連れられて来た。ツインテールを振り乱し異形の巨躯に見下ろされるその様はまさしく理不尽に生命を冒涜された哀れな生贄の巫女を連想させる。

 

 …ギュッ。

 

  幼い子供とはゲームを最も楽しんでくれる年齢層の一つであり、大事な顧客だ。だからその子たちが何かの犠牲になるのは許さない。また、自分自身子供が嫌いではないので、自然と手に力がこもり始めた。手元に何か壊していいものがあれば八つ当たりしそうだ。だがまだだ、まだ待て。

 

  俺たちが見る先では、怪物は特に危害を加えるでもなくむしろあやすように人形をあげている。見た目でプラスマイナスゼロ以下となっているが、ギリギリ安全なことに変わりはない。

 

「なあトゥアール、お前はこの事態を知ってて俺たちを連れてきたんだろ!?だったら早くなんとかーー」

 

  が、俺とは違い我慢しきれない様子だった総二が急に言葉を止め、ある一点を見て目を剥いた。つられてそちらを向いた瞬間ーー思考が停止した。視界に写ってはならないものが映ったからだ。

 

「神堂…会長……」

「エリ、ちゃん……」

 

  俺とパラドが同時につぶやく。そう、見間違えるはずがない。我が社にとって大切な顧客の一人であり、友人。総二が正負双方の意味で魅了され、高校生活初日からやらかした元凶となったその少女を。

 

「ホ、ホントだ!ちょっと、あれ会長じゃない!?」

 

  制服姿の神堂慧理那会長が黒一色の戦闘員二名に左右それぞれの腕を捕らえられ、強引に怪物の前へと引っ張られていた。普段見慣れたメイド兼SPたちの姿はなく、ただ彼女は一人大事そうに胸に何かを抱きしめていた。買い物袋から半分はみ出したそれは特撮番組の玩具と、幻夢コーポレーションのゲームの一つのキャラクターのぬいぐるみだった。

 

「ーーパラド」

「……ああ、()()も心が滾って仕方がない」

 

  俺の憤怒にまみれた冷たい声が、あたりに響き渡る。口調の変わったパラドの殺意と闘志をない交ぜにした危険な声が、それに答えた。俺たちの声に体がすくみ上ったのか、三人は動かなくなる。

 

  パラドは懐から先ほど渡したものーー『ガシャットギアデュアル』を取り出し、左手で持ち上げると右手でダイヤルを捻った。下に向けられたのは、眼鏡をかけたスライムの絵柄。

 

《PERFECT PUZZLE……!!》

 

  不可思議な音とともに空間に絵柄が浮かび上がり、奇妙な男の声が響く。それに伴いパラドの背後に長方形のディスプレイが現れ、《GAME-START》の文字が表示された。

 

《What's the NEXT STAGE? What's the NEXT STAGE?》

 

  BGMとともに一定の言葉がテンポよく繰り返され、眼鏡をかけた不機嫌そうな顔の青スライムとともにディスプレイにパズルが表示されると、そこから周囲に色とりどりの色絵柄の巨大なメダルが放出されていった。ノイズのような青い風が地を、空を撫で、《ゲームエリア》を展開させてゆく。だが怪物たちはそれに気づかず、それをいいことにパラドは動作を続けた。

 

「さあ、ゲームを始めようぜ……!」

 

  ゲームエリアの展開に構わずニィッと笑い、パラドはガシャットギアデュアルを持った手を顔の右横に持ってくると、ある言葉を宣言した。まるで偉人たちの訴えの如く、強さを内包した声で。

 

「《変身》ーー!」

《Dual Up!!》

 

  パラドのほっそりとした指が、ガシャットギアデュアルについた黒いスイッチーーデュアルアップスターターを押しこむ。すると上半分の黒画面が青く輝き、ゲームキャラのような戦士を映し出した。

 

 キュゥゥゥゥ!

 

  同時にパラドの前にパズルを組み立てるように大きなパネルが出現し、そのまま勢いよくパラドに向かっていき、その身を変身させる!!

 

《Get the Glory in the Chain‼︎ PERFECT PUZZLE‼︎‼︎‼︎》

 

  静かな、しかし強い音楽とともに英語で変身音が鳴り、パネルは通過し終わると砕けて消えた。残ったのは、姿を変えたパラド……否、一人の戦士。パラドだった戦士はおよそ10代前半の少女へと変わっていた。その身を青い戦士の装甲で包んでいる。

 

  金色のパーツがある大きな青い肩の装甲。ふくよかな双丘を包む、顎と首回りを守るようなパーツがある金色に縁取られたラインと、その中にはパズルを想起させる胸アーマー。しなやかな両腕の二の腕の半ばからは、青と金で彩られたプロテクターのついたグローブをはめ、キュッと引き締まった上半身を銀と黒のドットの入ったスーツが包む。細い腰には金色のベルトとバックル、スーツと同じく膝上までの黒ドット柄のフレアスカート。すらりとした両足は、腕と同じく金のプロテクターがついた黒タイツとブーツで覆い隠していた。そして何より重要なのは…見るものすべてを魅了するような愛らしい顔と、それを引き立たせる野暮ったい白の丸メガネ、少しパンクな青髪のリーゼント。

 

  少女戦士はガシャットギアデュアルを反転させ、ベルトにある黒いホルスターにガシャッとはめ込む。そしてこちらを見てニヤリと静かに笑い、右腕を胸の前で並行に振るった。

 

「《仮面ライダーパラドクス》、参上。ーーさあ、ゲームスタートだ!」

 

  そういうやいなや、パラド改め仮面ライダーパラドクスは勢いよく怪物たちのほうへと飛び出していったーー

 

 

 ●◯●

 

 

「離しなさい!」

 

  パラドが変身をしている頃、神堂慧理那は毅然とした態度で怪物に向かって抵抗していた。そんな彼女を、怪物は値踏みするように全身をくまなく睨め回す。

 

「ほほおう、なかなかの幼子!しかも、どうやらお嬢様のようだな!!お嬢様ツインテール……まさしく完全体に近い!貴様が究極のツインテールか!」

「究極……!?それよりあなた、何者なんですの!?人間の言葉が理解できますのなら、他の子たちを解放なさい!」

「理解できるとも。こうして意思の疎通ができているではないか。故に、解放はできぬと断ずる」

 

  慧理那の要求を、怪物は正面から切って捨てた。それに一瞬呆然とするも、すぐに我を取り戻して慧理那は叫ぶ。

 

「では答えなさい、一体何の目的でこんな真似を!」

「いずれ分かる!まずは、物のついでよーー」

 

  馴れ馴れしい仕草で、トカゲモドキは慧理那に大きな猫のぬいぐるみを差し出した。それが慧理那にとっては悪魔の道具のように見えて仕方がなく、それまでずっとそらさなかった目を閉じてしまう。そして、願った。

 

(誰か…助けてくださいましーー!)

 

「そこまでだ、エレメリアン!!」

 

  彼女の願いに応えるように、どこからともなく現れた影がトカゲモドキへと突撃する!怪物は直前に気がつき、体を反転させて腕をクロスして防ごうとした。だが、何者かの脚蹴りから伝わってきた威力が尋常なものではなく後退りさせられる。

 

「ぬぅっ!?」

「さあ、まだまだ終わりじゃないぜ!」

 

  影は高速で移動し、いつの間にやらそこら中に散らばっていた大きなメダルの一つ…疾走する人の描かれた黄色いメダルを自らに取り込む。

 

《高速化!》

「何っ!?」

 

  影はより一層速さを増し、トカゲモドキへと嵐のような連続攻撃を繰り出す。あまりの手数の多さに、トカゲモドキは防戦一方であった。

 

「そらそらそらそらそらっ!!!」

「ぬがぁぁぁぁっ!?」

 

  だが、影の攻撃は永遠には続かなかった。それまで彼女を著しく速くさせていたメダルの力…《エナジーアイテム》の効果時間が切れたのだ。

 

「ちっ!」

 

  彼女は咄嗟に攻撃を中断し、バク転を数回行って慧理那の前へと降り立った。まるで少女を守護する騎士の如く。その小さくも言いようのない覇気を纏った背中を、慧理那は呆然と見上げた。

 

「ぐっ…貴様、いきなり現れて攻撃とは卑怯な!何者だ!」

「はん、侵略者が卑怯だのなんだの言ってんじゃねえよ!あんたらに名乗る名前なんてないね!」

「何ぃ!?」

「……けど、こっちにはある」

 

  突如現れた少女戦士は構えを解いて、後ろにいる幼き少女たちへと顔を向けた。その息を呑むほど美しい横顔を見た慧理那は、強烈な既視感に襲われる。

 

(……え?パラ、ちゃん、ですの?)

「オレの名前はパラドクス、仮面ライダーパラドクスだ。以後お見知りおきを!」

 

  野暮ったい白丸メガネをくいっと上げ、ニシシっと少女戦士ーー否、仮面ライダーパラドクスは笑った。その笑顔に幼女だけにとどまらず、敵までも見惚れる。

 

「ーーはっ!しまった、天使と見間違えてしまった!敵の前で隙を見せるとは、なんたる不覚!」

「こっちとしてはそれはありがたいけどな…さてと、続きをしますか!」

 

  突然、戦士パラドクスの雰囲気が変わる。両手を空中に掲げたかと思うと、それに連動するように近くにあったエナジーアイテムたちが浮かび上がった。そしてパラドクスの前に規則正しく並び、パラドクスはそれを肩部装甲に内蔵された機能でまるでパズルのように操り始める。

 

「これはこうして…こっちはこれでっと、こんな感じかな、そんじゃ行っくぜぇ!」

 

  組み替えられたエナジーアイテムが三枚ほど群から分離し、二枚はパラドクスに、もう一枚は敵へと送られる。

 

《高速化!》

《マッスル化!》

「漲ってきたぁぁぁ!」

《混乱!》

「ぐぬっ!?」

「「「モケッ、モケッ!?」」」

 

  パラドクスの体が一瞬それぞれのエナジーアイテムに合わせたエフェクトを放出し、対して怪物たちは多量のはてなマークを頭上に浮かべて混乱状態となる。そのタイミングを逃さず、パラドクスは仕掛けた。

 

「そのまま、しばらくピヨってろ!」

 

 ドガガガガガガガガガッ!!!

 

「がっ、ぐふっ、ぐぉぉぉぉっ!?」

「「「モケ〜〜〜!?」」」

 

  悲鳴をあげる怪物たちと、彼ら相手に笑い声を上げながら無双するエナジーアイテムの効果でパワーアップしたパラドクス。一体どっちがワルでどちらがイイヤツなのか、幼女たちは少しわからなくなってきていた。だが、とりあえず先ほど助けてくれたのでパラドクスを応援する。純粋な子供たちであった。

 

「ははは、どんどん行くぜ!!」

 

  子供達の声援を聞いたからか、さらに勢いを増したパラドクスは攻撃する速度をどんどん増していくのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

  場所は変わり、パラドクスの無双を眺めている正斗たち。こちらでは、正斗に向かって質問の嵐が飛んでいた。

 

「ちょ、何あれ!なんでパラドが変身してるの!?」

「正斗お前、いつの間にあんなもん作ったんだよ!」

「あなた本当に何者ですか!?」

「おいお前ら、一旦落ち着け。深呼吸しろ」

「「「ふー、ふー!!」」」

 

  三人揃って仲良く肩を上下させている。いろいろ衝撃なのはわかるが、人間何かあった時冷静になるのが一番大事だ。なのでお前らも落ち着け。

 

「ふぅ……それで、あれは何なんだ?」

 

  数十秒後、ようやく落ち着いた総二が問いかけてくる。それに俺は自信たっぷりの声で返した。おそらくドヤ顔もしていることだろう。愛香がちょっと顔を引き攣らせているし。

 

「あれは俺が開発した、対精神生命体用戦闘スーツだ。で、あのゲームカセットのようなものはいわゆる変身アイテムだな」

「対精神生命体用…つまり、エレメリアン用?」

「ーーッ!?ちょ、ちょっと待ってください!なんで、あなた方がそれを!?」

 

  愛香が顎に手を当て呟いた言葉に、今度はトゥアールが驚きをあらわにした。ま、当然といえば当然だ。本来ならば、俺たちが住むこの世界の人間はエレメリアンの存在を知らないはずなのだから。しかし、俺や総二たちはパラドや他の実体化したバグスターたちによってすでにある程度のことを知っている。

 

「それは後で説明してやる。それよりも、お前は何かやるべきことがあるんじゃないのか?」

 

  俺の言葉にトゥアールははっとし、総二に向かって先のブレスレットのことや必要最低限のことを語り始めた。途中何度かふざけかけたが、俺がバグヴァイザーを頭に突きつけ愛香に関節を極められるとスラスラと情報を吐き出す。

 

  要約すると、あのブレスレットはパラドの行使しているガシャット同様、身体能力を強化する戦闘用スーツを生成するデバイスらしい。そして総二はこの世界で最強のツインテール属性…俺やパラドで言うところの遊戯属性(ゲーマー)のような属性力(エレメーラ)の持ち主であり、彼が変身すればあの怪物たち、すなわちこの世界に侵略してきたエレメリアンたちと互角以上に戦えるのだとか。

 

「……つまり、俺のツインテールがあいつらを倒して世界を守る武器ってことか?」

「はい。どうやら今私に銃口を突きつけてる人の連れの方がいるので唯一ではないようですが、それでも強力なことに変わりはありません」

「で?変身したらそーじが女とかになるわけ?」

 

  愛香の冗談を交えた言葉に、しかしトゥアールははっきりと頷いた。

 

「はい、なりますね。ツインテール属性を最大限に引き出すのがテイルギアの役目ですので」

「…マジか」

 

  頭を抱えてうずくまる愛香。それに対して、総二は少し複雑そうなものの決意を固めたようだった。総二は無言で俺に顔を向けてきて、俺はそれに肩をすくめて答える。別に俺に止める権利も理由もない、好きにしろと言う意味を込めて。

 

「…俺、やるよ」

「そーじ!?」

「だってさ…俺が戦えば、愛香のツインテールも守れるんだろ?」

「…え?」

 

  いきなりのお前を守る発言に愛香の顔がボッと赤く染まり、俺は内心でヒューヒューともてはやす。現実でやったら愛香に殴られるので、せいぜいニヤけるだけだ。

 

「だから、俺は戦う。世界のツインテールを……何よりも、愛香のツインテールを守るために」

 

  ふっとイケメンスマイルでかっこいいセリフを言い、総二はブレスレットのついた腕を胸の前に持ってきた。そうすると目をつぶり、何かを念じ始める。

 

 カッ!!!!!

 

  次の瞬間、赤い閃光がブレスレットより発せられたかと思えば繭が総二を包み、一瞬でその身をツインテールの戦士へと変身させた。

 

  光が収まるとそこに立っているのは、ぴったりと体に張り付くような黒、白、赤のボディスーツと肢体をメカメカしい装甲に包んだ、紅蓮の美しいツインテールを同じく機械のリボンで結んだ小さな少女だった。ていうか、幼女だった。どうやらトゥアールの言葉通り、女となったらしい。なんで幼女なのかはよくわからないが。

 

  総二こと赤い幼女は小さくなった自分の体を見下ろして一つため息をつき、次に車の窓で自分のツインテールを見てうんうんと頷いていた。おい、バカやってないではよ行け。

 

「ーーよしっ。それじゃあ行ってくるよ。愛香、お前のツインテールを守るために」

 

  しばらくして満足したのか、トゥアールに扱い方を教わると幼女総二は勢いよく飛び出していった。その後ろ姿を、俺は敬礼して見送る。

 

「…で。なんで幼女なのか教えてもらいましょうか?」

「それはですね愛香さん、敵も相手が幼女だったら油断するでしょう?つまりは見た目も武器の一つなのですよ……………幼女可愛いよ幼女」

「あんたの腐れた趣味で人の彼氏幼女にすんなぁぁぁぁ!!」

 

  後ろからロリペド変態女が愛香にべシンベシンと容赦なく制裁を加えられる音が聞こえたが、スルーした。自業自得なので。

 

 

 ●◯●

 

 

  舞台は戻り、パラドクスとエレメリアンたちとの戦闘。それまでパラドクスの無双で代わり映えのなかった様相は変化をした。

 

「……ありゃ?エナジーアイテムがない。調子乗って使いすぎたか」

 

  そう、パラドクスは周囲にあったエナジーアイテムを全て使い尽くしてしまった。テンションが上がると自制が効かなくなるのは、彼女の正体であるパラドの悪い癖である。それを見逃さず、トカゲ型エレメリアンは立ち上がった。

 

「どうやらあのメダルのようなものは使い果たしたようだな!散々いたぶってくれおって…今度はこちらの番だ!」

「いいや、そうはさせないぜ!!」

 

  また一人、新しい乱入者の声が聞こえた。その方向へ全員が目を向けると、空高くからパラドクスのように戦闘スーツに身を包んだ赤い幼女戦士が降り立ってきた。手にはメカメカしい大剣を持ち、パラドクスに向かってニッと笑う。

 

「ぬぅ!?まだいたのか!しかし、そのツインテール属性ーーお前が究極のツインテール属性の持ち主か!?」

「どうやらそのようだな、っと!」

 

  着地した車から飛び降り、幼女戦士はパラドクスの横に並ぶ。そうすると大剣を両手で持ち、臨戦態勢を取った。

 

「加勢するぜ、パラド……クス!」

「ギリギリだなぁ。まあ、別にいっか」

「な、なんという幼気!!そして素晴らしきツインテール!そこな幼女、名を何という!?」

 

  凶悪な顔で器用に驚くエレメリアンに、幼女戦士は少し考えた後真正面から堂々と受け答える。

 

「ーーテイルレッド!そして俺たちは…ツインテールの守護者、ツインテイルズだ!」

「オレはリーゼントだけどな…ま、テイルパラドクスってことにしとくか。んじゃテイルレッド、ここからは二人協力プレイで行くぜ!」

「おうよ!」

 

  パラドクスの差し出した右手を、テイルレッドがパシンッ!と勢いよく叩く。それを見たエレメリアンは今一度慄き、高笑いした。

 

「フハハハハハハ!なるほど、テイルレッドにテイルパラドクスか。よかろう!我が名はリザドギルディ!アルティメギルの斬り込み隊長にして、少女が人形を抱く姿にこそ、男は心ときめくべきという信念のもと戦う戦士よ!さあ、死合おうぞツインテイルズ!!」

「ハッ、死ぬのはお前だけだ!」

 

  声高に己の名を宣言したエレメリアンーーリザドギルディにパラドクスは挑発的に返すと、腰のホルダーからガシャットを引き抜きダイヤルを元に戻した。そしてもう一度、今度は反対の半円を下に傾ける。

 

《KNOCK OUT FIGHTER‼︎》

 

「第2ラウンドといこうか、侵略者ども!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




駆け足気味かな…?
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