ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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今回は正斗が正宗っぽくなります。
楽しんでいただければ幸いです。


宣戦布告とプレゼンテーション

 

 

  翌日、正斗たちが登校してからすぐ校内放送で全校生徒に招集がかけられた。よって一時間目の授業を中止し、体育館に全校生徒が集まっている。当然、昨日のマクシーム宙果の事件のことだ。ただし、正斗だけは用があると言って総二たちと別行動をしどこかへと姿を消した。

 

  静寂が支配する厳粛な空間。欠伸交じりに早く終われと願う生徒の姿が見えないのが、逆に異様に見える。その森閑とした空気を唯一破ったのは登壇する生徒会長、神堂慧理那のコツコツという足音だった。彼女の後ろには昨日の失態を反省してか、もはや憚りもせずSP兼メイドが数人控えている。

 

  加えて、すぐ隣にも毛先のたった黒髪を七三分けにした背の高い精悍な顔つきの男子生徒がボディーガードの如く付き添っていた。その男子生徒が誰なのか知っていた総二と愛香は小さく息を呑み、パラドは面白げに瞳を揺らす。

 

  慧理那は男子生徒を伴い壇の上に立つと、生徒全てを視界に納めるように見回しながらすうと息を吸って話し始める。その様子を生徒たちはまるで、遠山裁(とおやまさば)きを待つ平民たちのように押し黙り彼女が声を発するのを待った。

 

「皆さん。知っての通り昨日、謎の怪物たちが暴れまわり、街は未曾有(みぞう)の危機に直面しました」

 

  確かに未曾有も未曾有だろう。明確な意思を持って心の力を奪い、表面上は声を大にして変態発言をする怪物などある意味宇宙人来襲より衝撃的である。

 

「実は、私も現場に居合わせ、そして狙われた一人です」

「なっ……!!」

「何だって!」

 

  生徒たちがにわかにざわめき出す。いかに会長のために静粛にしていようとも、それを上回る怒りが溢れたとあっては抑えることなどできないようで。ちなみに、総二は慧理那の身振り手振りに合わせ揺れるツインテールにテンションを上げていた。それを察知して嫉妬する愛香にわき腹に肘鉄を入れられているが、自業自得である。

 

「許せねえ!」

「この身に変えても倒してみせる!」

「おい早く俺の身体にダイナマイトを巻け!黙れ、今すぐにだ!」

 

  我が事のように、いやむしろ我がこと以上に怒り男女関係なく叫ぶ生徒たち。激情の炎は生徒たち自身を導火線としたように瞬く間に伝播し、二千人からの若者を暴徒と化そうとしていた。可愛い生徒会長が狙われたとあっては憤るのも無理はないだろう。このノリの校風ならば、そのうち総二の失言も受け入れられるに違いない。

 

「みなさんのその正しき怒り、とても嬉しく思いますわ。他人のために心を痛められるのは、素晴らしいことです。まして、わたくしのような先導者として未熟な者のために」

 

  身長が低いので、底上げ台を用いての答弁。なおかつ爪先立ち。その姿は黒板に回答を書こうとして、一生懸命背伸びする幼女を連想させる。そしてその健気さも陶酔の源泉となる、とても訓練された犬……もとい、生徒たちであった。

 

「しかし、狙われたのはわたくしだけではありません。この中にも何人かいらっしゃることでしょう。まして目を学校の外に向ければ、さらに多くの女性が危うく侵略者の毒牙にかかるところだったのです」

 

  再びざわめき出す生徒たちだが、今度はそれをすぐ遮るようにしかし!と強く言う慧理那。それに一旦混乱を収め、一同は耳を傾ける。

 

「今こうしてわたくしは無事にここにいます。テレビではまだ情報は少ないですが、ネットなどで知った人も多いでしょう。あの場に風のように颯爽と現れた……正義の戦士たちに助けていただいたのです」

 

  言葉の途中から、慧理那の声は少し甘くなり始めた。それはまるで憧れの君に心を焦がす姫君のごとく。しかしそれとは真反対に、背中にだらだらと冷や汗を流すものが一人いた。総二だ。

 

「ーーわたくしは、あの少女戦士たちに心を奪われましたわ!!」

 

  そう言った瞬間、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!と大きな喝采が巻き起こる。

 

  その言葉を待っていただの、胸を張って片方の子にちっちゃい子ハアハアと言うのに引け目を感じていたがこれで何の憂いもないだの、ちっちゃい会長がちっちゃい正義の味方に憧れる…これが摂理なのか!?だの、アクション映画のラストでよくある作戦成功の報を受けて一斉に諸手を挙げて喜び騒ぐ人々を思わせる興奮の坩堝(るつぼ)。日本の、否地球の未来が心配になる発言がどんどん飛び出していった。それに少し目眩を覚える総二、愛香、パラド。

 

  だがそんな三人に構わず、慧理那は演説を続けた。

 

「これをご覧あれ!」

 

  会長が右手を挙げると、男子生徒がパチンと指を鳴らしそれに従ってメイドの一人がスクリーンを展開した。そして大きく映し出されたのは二人の少女戦士、好戦的な笑みを浮かべるテイルレッドと仮面ライダーパラドクスファイターゲーマーの姿。

 

「「「おぉぉぉぉ!!!」」」

「ギャァァァァァァ!!!」

 

  今一度歓声をあげる生徒たち、絶叫をあげる総二。スクリーンに映っている写真は無駄に完璧なアングルだった。すでにこのような写真が、ネットにちらほらと流出している。それらはある存在によってもうひとまとめにされているが…生徒たちがその由を知るわけもない。

 

「神堂家は、あの方々を全力で支援すると決定しました!皆さんもどうか、わたくしとともに新時代の救世主を応援していきましょう!!では、わたくしのスピーチはここまでですわ。ご静聴ありがとうございました。では、とある方の演説に移ります」

 

  より強くなっていく歓声を手で制し、慧理那は演壇の上から降りた。そのまま男子生徒が底上げ台を持ってメイドたちも一緒に幕の影へと消え、その代わりに新たな人物が姿をあらわす。

 

 ざわざわ……

 

「えっ!?」

「嘘っ、あれって…!」

「まさか、あれは…!?」

 

  ざわめく生徒たち。コツコツとビジネスシューズを鳴らして演壇に立った黒スーツ姿のその男の顔を知らぬ者はこの場に誰一人としていない。彼は日本、いや全世界に名を知らしめる大企業の若き天才社長であるが故に。誰もがその企業の系列の製品を必ず一度は手にしたことがあるだろう。例えばゲーム、例えば家電製品、例えば洋服。全てが時代の最先端をいく商品、それを常に世に出し続ける最高の会社。

 

「御機嫌よう諸君、初めましてのものは初めまして。この場を借りて、改めて挨拶させてもらうことにした」

 

  世界の頂点とも言うべきその会社ーー幻夢コーポレーションの一番上に君臨し、今もなお多くの業界のテレビや雑誌で取り立てられているその最強の男の名はーー

 

()の名前は神崎正斗。幻夢コーポレーション社長にして、今は君たちとともに高校生活という青春を謳歌し始めたものだ」

 

 

 

 ーーワアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

 

  慧理那の時以上の大歓声が、体育館に木霊した。他の者たちと同様困惑していた総二と愛香はそれに驚き、薄々と感づいていたパラドは声を押し殺して大爆笑する。少し間をおいてようやく我に返った二人は、さっきから姿が見えないのはこういうことかと二度目の驚愕をした。

 

「大きな歓声をありがとう。…さて、今私がこの場に立った理由はいくつかの話があるからだ」

 

  いつも通り大勢の前に立つことにより一人称や口調が変わった正斗は堂々とした態度で言葉を紡ぎ、それに一人の例外もなく期待を込めた表情をする。ここにいる生徒たちのほとんどが彼のファンであった。

 

「一つ目は、昨日のことについてだ。先ほど神堂生徒会長がすでにある程度のことを説明したので最初の部分は省略させてもらうが、実は私もその場に居合わせた。まあ、彼らの目的を見る限り男である私はお呼びではなかっただろうがな」

 

  両手で男にしては少し長い髪をツインテールの形にして言う正斗に笑い声をあげる一同。すでにこの数分でここにいる全員の心を掴んでいる正斗に、総二たちは相変わらず凄まじいなと目を見開いた。パラドは誇らしげな顔している。

 

「次に、二人の戦士についてだが……私個人としても幻夢コーポレーションとしても支援することに決定した。各国との支社とも連携を取っている状態だ」

 

  正斗の言葉に、思わず生徒たちは首を傾げた。確かに彼女たちは可愛らしいし侵略者を撃退したが、何もそこまでやるか?と。しかし、一同の疑問は正斗の計画の通りである。

 

「というのもーー彼女らの力は私と()()()()()()によって生み出されたものだからだ」

「「「えぇぇええぇえぇぇええええぇえぇええっ!!!」」」

 

  一拍おいて明かされた衝撃の事実に今までで一番の驚きをあらわにする生徒たち。当然だろう、かの侵略者を退けた戦士たちの力は天下の幻夢コーポレーションの天才社長と名高い正斗と協力者とやらが作り出したというのだから。彼ら彼女らの今の心境は驚き半分、正斗への尊敬と敬意が半分を占めていた。

 

  一方で、総二と愛香、パラドはなるほどと正斗の意図を察していた。

 

  こうして自分と幻夢コーポレーションをバックにすることでテイルレッドとパラドクスの立場を確かなものとし、例えば正体がバレた時……特に総二……に『あくまで自分が生み出したものであり、本人にそういう趣味があるわけではない』と言い訳をすることもできる。加えて、協力者とはおそらくトゥアールのことであり、総二たちと同時に彼女の社会的地位をも確立したのだ。驚きの聡明さだった。

 

「私は彼女らに戦う術を与えたものとして最後まで力になる所存だ。そして、私もそのうち彼女らの戦いに参加するつもりである。それを踏まえた上で、どうか見守ってほしい」

 

  壇上で頭を下げる正斗に対する生徒たちの答えは先程と変わらず、完全なる肯定だった。『あの』神崎正斗社長の言うことならば信用できるし、何よりレッドとパラドクスが可愛いからである。

 

  正斗は生徒たちの返答に満足した様子で顔を上げ、次の段階へと演説を進めた。

 

「君たちに限りない感謝を送る。では次の話だ。この場を以ってして、新たなゲームの発表をしようではないか!!!」

「「「イェェェェェェェェェェェェェェェェェェェィ!!!!!」」」

 

  その言葉で体育館ーー否、会場と早変わりした場のボルテージは最高潮にまで高まった。もはや絶叫にも似た歓声を上げる生徒たちを見渡し、正斗がそのままだったスクリーンへ手をかざすとそこへ幾つかのゲームタイトルが派手なエフェクトとともに表示された。

 

「一つ目は『タドルファンタジー』。既存のRPGゲーム『タドルクエスト』の続編で、勇者を倒し世界を征服する魔王の物語を描いたものだ」

 

  スクリーンに映るタドルファンタジーのイメージ画は『TADDLE FANTASY』としゃれた形のタイトルと黒い空を背景に佇む魔王のような戦士の画だった。タドルクエストを熱心にプレイしている生徒は雄叫びをあげる。

 

「二つ目は新作、『トランスフォーマーズ』。宇宙より襲来した金属生命体と人間の戦いを描いた育成型アクションゲームだ。自分だけのトランスフォーマーをカスタマイズすることも可能、先に『ゲキトツロボッツ』プレイ済みなことを推奨するが…もちろん、やってくれているものもここには多くいるだろう。このゲームは、今年の秋頃にアメリカの映画会社と連携して実写映画が三部作で公開される予定だ」

 

  トランスフォーマーズのイメージ画は『TRANCE FORMERZ』という機械じみたフォルムのタイトルと青い目のロボット戦士と赤い目をした異形の金属生命体の間に右腕を掲げる人が描かれたもの。ゲキトツロボッツプレイヤーは新たなガチンコ勝負に心を燃やす。

 

「三つ目はこれも新作、『君の名は。』。恋愛ゲームだ。『ときめきクライシス』などを先にやるとさらに楽しいと思われる。ーー以上、三つのゲームを紹介させてもらった。これらを発売されたら購入し、楽しんでくれることを願う」

 

  星の如き色のタイトルと彗星の光る空を背に振り返る男女の描かれたイメージ画を最後に、全てのゲームのプレゼンテーションが終了する。しかし、正斗の話にははまだ続きがあった。

 

「……最後にもう一つ。君たちのツインテイルズへの熱意を評し、作成中のゲームを極秘に紹介しよう」

「「「な、なんだってー!!?」」」

 

  一週間先行告知だぞ?と微笑み、『秘密だよ』とでも言うように人差し指を口に当てしーっとする正斗に興奮を抑えきれないと言った様子で笑いながら同じ仕草をする生徒。総二たちも苦笑して周りに合わせた。

 

  正斗は手を演壇の上に戻し、満を辞してと言った様子で先ほどの男子生徒のようにパチンと指を鳴らした。すると照明が全て落ち、スクリーンへと薄暗いスポットライトが当てられる。そこには、緑色の0と1で構成された電子空間の中に陰でその姿を隠した無数の戦士たちが両眼を光らせる絵が堂々と描かれていた。そして、見るものを畏怖させるような雰囲気をたたえた文字で『KAMEN RIDER CHRONICLE』というタイトル。生徒たちは思わず息を呑んだ。

 

「『仮面ライダークロニクル』…究極のゲーム、とだけ言っておこう。ではこれにて、本当に演説を終了させてもらう。今後とも我が社の製品をよろしく頼む」

 

  壇上を降りる正斗を、一同は最後まで歓声で見送る。そうして、長い全校集会は終わりを迎えるのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

「あたしたちには言ってくれても良かったじゃない」

「そうだぞ正斗」

「いやなに、サプライズ感を出したくてな」

 

  時は進んで昼休み。教室にて机をくっつけあいいつも通り総二、愛香、パラドと共に俺は昼食を取っている。すでにプレゼンテーションは終わったので口調は元に戻り、雑談を交わしながらハンバーガー…うちの料理長、実現したバグスターの一体であるバガモンバグスター特製…を齧る。うん、今日もうまい。

 

「お〜、この写真はまだ見たことなかった!」

「あっ、そのアイテム取ってくれ」

「りょーかい」

 

  そんな俺たちの周りでも多くの生徒が食事をしており、平常授業の一日目であるが故にほとんどが中学からの顔なじみで固まっているようだった。

 

  彼ら彼女らの口からは、テイルレッドとパラドクスのことや、新たなゲームへの待ち遠しいという声、食べながらゲームをする声など、様々な事柄が出ている。中にはちょっと病院行ったほうがいいだろっていう発言も混じってたが、どうやら昔からの俺の非常識さでメンタルが鍛えられているのか我関せずを貫いているようだった。少し複雑な気分である。

 

「そういえば。二人とも、今日は久しぶりに幻夢コーポレーションに来ないか?歓迎するぞ」

「え、いいのか?」

「当然だとも。お前たちならいつでも来ていいぞ」

「じゃあ、遠慮なく行かせてもらうわね」

「「「………」」」

 

 総二たちとそんな会話をしていると、ふと周りから視線を注がれていることに気がついた。皆話をやめ、男女問わずこちらを驚いたような顔で見つめている。最初は俺がいるからだろうかと思ったのだが、総二たちにも視線が注がれているあたりどうやらそうではないようだ。

 

 とすると、考えられる理由は…

 

「…ああ、なるほどな」

「正斗?一体なにが…って、なんでみんなこっち見てるんだ?」

「…そりゃあ、あの幻夢コーポレーションに簡単に入れるっていうんだから驚くに決まってるでしょ」

 

  どうやら気がついていたらしい愛香の言葉に、シンクロして頷くクラスメイトたち。この人数が一様にして同じ動作をすると、なかなか面白いものだな。

 

「っていうか今更なんだけどさ、本当に観束と津辺さんってラブラブだよな」

 

  とある男子生徒の言葉に首を傾げる二人。だが先程からずっと食べさせあいっこのようなことをしているし、総二はさりげなく愛香のツインテールをずっと弄っている。これでイチャついていないというのなら、世のカップルはすべからくイチャついていないだろう。

 

「……愛香、私は嬉しいよ。こんな公衆の面前でも堂々と観束くんとラブラブできるようになるなんて、成長したね!」

 

  無自覚な二人に俺が呆れていると、近くにいた女生徒……少し派手めな感じの美人、秋山奈々子(あきやまななこ)という中学時代からの愛香の友人がぐっと親指を立てた。途端に真っ赤になる愛香に、秋山さんと一緒に食事をしていた小柄な美少女…こちらも友人の瀬川茜(せがわあかね)…もうんうんと頷く。

 

「全くだ。昔は手を繋ぐのも恥ずかしがっていたくせに、立派に成長して俺は嬉しいぞ!」

「「お前はお父さんか!あとイチャイチャ具合はお前だけには言われたくない!」」

 

  高らかに宣言された二人のツッコミに、クラスメイトたちは楽しそうに爆笑した。ふむ、確かに俺とパラドのイチャイチャ具合は二人に勝るとも劣らないからな。それもこれも、パラドが可愛すぎるのがいけないのだ!

 

「…もー!またそんなこと言うー!」

 

  愛香みたいな顔をしたパラドに殴られました。でも痛くなかったですはい。

 

 

 ●◯●

 

 

  放課後。トゥアールから鞄に常備しているバグヴァイザーを通じて基地が完成したとの報告を受け、それを観てから幻夢コーポレーションのほうへ向かうこととなった。学校の玄関口や校内では上級生が熱心に部活動の勧誘をしていたが、俺に恐れおののいたのかすんなりと抜けることができた。こういう時は自分の権力があってよかったとしみじみ思う。

 

「と、そういえば。部活といえば二人はどうするんだ?」

「あー…どうしよう。そういやツインテール部とか書いて有耶無耶になってたな…」

「あ、あたしはそーじと一緒ならどこでもいいかなー、なんて…」

「「………」」ニヤニヤ

「そ、そこニヤニヤしない!!」

 

  もじもじと随分と乙女チックな仕草で乙女チックな発言をする愛香にパラドと二人でニヤついていると、突如空気が変わったことを肌で感じた。はっとして空を見上げれば、そこには超巨大なスクリーンのようなものが空中に浮かび上がっているのが確認できる。

 

『この世界に住まう全ての人類に告ぐ!我らは異世界より参った選ばれし神の徒、アルティメギル!』

 

  スクリーンの中では、豪放そうな黒、ややスマートな見た目をした白二体の竜人のようなアルティメギルが並んでこれ見よがしな玉座に座り、足を組み演説していた。とりあえず少しイラっときた。

 

  それにしても、まさか昨日の今日で来るとはな。隣では呆然とした総二と愛香が鞄を取り落としている。一応そういう場合も想定していた俺とパラドは、じっと画面に目を凝らした。

 

『我らは諸君らに危害を加えるつもりはない!ただ、各々の持つ心の輝き(チカラ)を欲しているだけなのだ!抵抗は無駄である!そして抵抗をしなければ、命は保証すると約束しよう!』

 

  最初にアルティメギルと名乗った黒竜に続き、すらりとしたフォルムの白竜が中性的な声でふざけたことを平然とした様子でぬかす。それが終わるとまた黒竜が言葉を発した。どうやら順々にやっているらしい。

 

『だが、どうやら我らに弓引く者がいるようだ……今一度言う、抵抗は無駄である!それでもあえてするならば……思うさま受けて立とう!存分に挑んで来るがよい!!』

 

  空に浮かんだ厚みのないウィンドウとは別に住宅地の方からも聞こえて来る音にまさかと思い、スマートフォンを取り出してみるとワンセグのチャンネル全てに同じ映像が流れていた。やはり、放送電波全てをジャックしているようだ。かなり滅茶苦茶だな。

 

「あいつら、ホントに地球丸ごと侵略するつもりなのか!!」

 

  我に返った総二が叫ぶ。確かに、いくらでも抵抗しろと言う余裕の発言。それが人類の保有するあらゆる軍事力と科学力を見越した上でのものならば、すなわちアルティメギルとは相当な力を誇る組織だと言うことを示している。

 

  少し、面白くなってきた。まるで大商社と取引をする時の気分だ。奴らの侵略(やり取り)の方法は破壊ではなく、心の輝きを、命の精彩を奪う静かな侵略(やり方)。昨日の戦いはほんの前哨戦(挨拶)、これから世界を相手にした圧倒的侵略(大きな契約)が始まる、ということか。

 

『ふはは、我が名はタトルギルディ!ドラグギルディ様とバハムギルディ様の仰る通り、抵抗は無駄である!綺羅星と光る青春の輝き……体操服(ブルマ)属性力(エレメーラ)を頂く!』

 

  俺が興奮に打ち震えていると、タトルギルディと名乗る二体の竜の代わりに現れた亀のような姿形をしたエレメリアンがふんぞり返りながらそう宣言した。だが、背後から近づいたアルティロイドが申し訳なさそうに耳打ちした瞬間絶叫する。それは、仕事が軌道に乗って調子に乗った新入社員がミスった姿を連想させた。

 

『何ィ!?この世界では今はほとんど存在せぬだと!おのれ愚かなる人類よ、自ら破滅の道を歩むかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

  とてつもなくくだらないことで絶叫する怪物(エレメリアン)と、絶句する人類(俺たち)。バラエティ番組だったら放送事故もいいところである。

 

  しかし、髪型にとどまらずもはや半絶滅した衣類への思いさえエレメリアンを生み出すほどの力を持つと考えると奥深さを感じた。ただし、あんなのを生み出すくらいブルマを愛した者たちの脳を一度じっくりと見て見たいという意味でだが。

 

『総二様、パラド様、今のご覧になりましたか!?』

 

  ウィンドウが閉じてほどなくして、トゥアールから隣町の高校が襲撃されていると通信が入った。どうやらそこはまだブルマならしい。

 

「…まあ、そういうことだ。行ってくれるか二人とも?」

「ま、やってやりますか。心が滾るぜ…!」

「………はぁ。テ、テイルオン」

 

  ガシャットギアデュアルを取り出しながらパラドは不敵に笑い、総二は今日話し合って決めた変身用キーワードを恥ずかしそうにつぶやきながら変身をした。

 

  変身完了すると、そのまま鞄を俺たちに預け向かっていく。ひどくスケールの小さな「世界規模の侵略」を潰しに。

 

 

 

 




正斗は公の場では口調が変わります。
それとある作品のキャラクターが二名ほど登場したのですが、気付いた方いますかね。
感想をいただけると嬉しいです。
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