ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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今回はあのキャラが出ます。
前半は多分オリジナルです。
楽しんでいただければ幸いです。
…オリガシャット登場(ボソッ


新たなる戦士登場! 前編

 

 

 

 アルティメギルからの宣戦布告を受け、タトルギルディを倒した翌朝のこと。神崎家の無駄に広い食堂にて、部屋の前方に設置されたテレビを見ながら総二とパラドは死んだ魚のような目をしながらもそもそと朝食をとっていた。その様子に俺を含めた他のメンバーは言葉も出ない。

 

 何故ならば……

 

『あ、あの!握手してもらっていいですか!?』

『え?ああ、それくらいなら…って、へ、変ところ触るなぁ!』

『ハアハア、テイルレッドちゃん、お姉さんと一緒に着替えさせっこしましょうか!』

『わーっ帰るぅ〜道開けてぇ〜!』

 

 テレビの中では女子高校生に囲まれ、もみくちゃにされる変身した二人の姿が。昨日のタトルギルディの出現した学校での映像だ。どうやらその時携帯での撮影にとどまらず動画まで撮られていたらしい。それをこうして今テイルレッド&パラドクス特集という朝のお茶の間にて晒されているわけだ。

 

 昨日は最終的にはパラドが透明化のエナジーアイテムを使って帰ってきたが、特にアイドルでもないのに大勢の人間にもみくちゃにされた総二は疲労困憊の様子になっていた。それに加え翌日にこれなのだから、目が腐るのも当然というものだろう。

 

 ちなみにアルティメギルについてもある程度のことが全てのニュース番組で取り上げられていた。おそらく外国のニュースでも同様に報道されたと思われる。

 

 というのも、俺が各支社に連絡して自らが知っていることとトゥアールよりもたらされた情報の一部を開示したからだ。そうすることでいくら外面があれだろうとれっきとした危険な存在だということを知らしめるためだ。すでにエレメリアンが出現した際こちらに知らせが届く防犯器具…例えばブザーなど…も開発して発売している状態である。

 

 まあ、エレメリアンが出現して即倒すというスタンスを取ればそこまで大騒ぎにはならないだろう。レッドたちの人気は継続するかもしれんが、もし危険思想のファンなどが出てきて本格的にやばい状況になればこちらでカバーすればいい。

 

 それはともかく、今は総二たちだ。最初などこのほのぼのと少しの狂気の混じった光景をみて絶叫をあげていたくらいだ。屋敷が完全防音で良かったと思うほどの音量だった。それに加え、変身しているとはいえ総二が豊かな胸に囲まれていることに嫉妬した愛香が拗ねるというのだから災難としかいいようがあるまい。俺?変なことしたやつは社会的に抹殺しようとしましたけど何か?

 

『俺はあの子達を心からリスペクトするぜ』

 

 俺がそんなことを考えている間にも続く特集。今画面にはどう考えても堅気ではない顔中傷だらけの男が映っている。誰だお前。

 

 それにしても、かなり鮮明な画像や動画が使われているな。若干ブレはあるものの、最近の携帯のスペックは存外高いようだ。というか『()()()()()()』に余計な情報は喰うように言っておいたんだが、戦闘シーンと今流れている映像がセットになっているあたり…奴め。いたずら心を出してわざと放置したな。まあいい意味でも悪い意味でも大衆的な存在に落ち着いたのは良しとして。

 

「フン、くだらんな。こんなことをしている暇があるのならアルティメギルについてもっと慎重になればいいものを」

 

 ニュースを見て確実に笑っているだろうラブマシーンのギザギザ歯仮面を思い浮かべていると、食卓に座っていた人物の一人ーー先日神堂生徒会長と一緒にいた青年がそう呟く。それにようやく総二が明確な反応を示した。

 

「あのなあ!どんなにくだらなくても晒されてるこっちはたまったもんじゃないんだぞ〝グラファイト〟!」

 

 声を荒げる総二に肩をすくめる男ーー否、グラファイト。そしてそれに苦笑する俺と愛香、パラドという図が出来上がった。

 

 グラファイト。俺から生まれたバグスターの一人であり、元のキャラクターとしては『ドラゴナイトハンターZ』の敵キャラ『龍戦士グラファイト』だ。その名の通り龍人の姿をしたエレメリアン態を持っており、性格も荒ぶる龍のごとく戦闘狂。それを生かして幻夢コーポレーション所属の派遣ボディーガードをやらせていたが、先日神堂生徒会長が襲われたと連絡すると飛んで帰ってきた。今はここを拠点として彼女の専属ボディーガードとなり身辺警護をしている。これほど頼りになる護衛者もいないだろう。

 

「で、グラファイト。そういうお前はどうなんだ?奴らと戦う気は…」

「無論だ。せっかくあちらから侵略しているのだ、いずれ存分に暴れさてもらう!…まあ、慧理那の護衛が優先だが」

 

 勢いよく立ち上がり、獰猛な笑みを見せて宣言するグラファイト。が、最後にそう付け加え黙々と朝食に手を伸ばし始めた。その理由を宿主である俺と同じバグスターのパラドは密かに知っており、こっそりと顔を見合わせてニヤニヤとした。

 

 とまあ、そんな感じで少々穏やかではない朝食は過ぎていった。そのあとは全員で登校しながらツインテイルズのまとめwikiやらブログ、ファンサイトや考察ページを眺め、それにゴリゴリと精神を削られる総二をいつものごとく愛香が慰めていたのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 それから時は過ぎ、放課後。帰宅した瞬間にエレメリアン出現の報を受け、ゆっくり休みたかった総二は喫茶店アドレシェンツァの奥にあるエレベーターで地下秘密基地に行き出撃した。ただし今回は会社の外せない会議があったのでレッド一人での出動だが。

 

「んじゃ、がんばってくれ」

「おうーーテイルオン!」

 

 挨拶だけして会社へ行った正斗とパラドを見送り、総二はツインテールの戦士へ変身しながら超科学の結晶である空間跳躍カタパルトでそれぞれの戦場へ移動した。それを、残ったトゥアールと正斗が衛星をつかてのモニターを行う。ちなみにトゥアールはパラドとの話が功を奏したのかある程度吹っ切れており、表面上は普通に見えた。

 

「ったく、なんで律儀に毎日毎日一体ずつでてくんだよ………」

 

  転送されながらレッドは小さく悪態を吐く。まるで監視されていたかのような絶妙なタイミング。たった三日で悪しきテンプレが完成しつつあることに少し恐怖を感じる。これがアルティメギルの作戦なのだとしたら効果はてきめんだろう。

 

  それに加え、等間隔で小出しにされていくのだからかなり辛いだろう。何せ相手の総数がわからないのだ、終わりのないマラソンほど精神を苛む苦行はない。これならば複数箇所同時投入の方がまだいいかもしれない。

 

「到着、っと。んで、今日はどんなやつなんだ?」

「ああ……やっとお逢いできましたね、テイルレッド!」

 

  現地に到着したテイルレッドの前には早速、新たな怪物(ヘンタイ)がイラっとするポーズで佇んでいた。若干ジ◯ジ◯立ちに似てないこともない。やるしかないと気を引き締め、リボンを叩いてブレイザーブレイドを出現させる。すると、それを見たエレメリアンは嬉しそうに自己紹介をしてきた。

 

「私はリボンに魅せられしもの、フォクスギルディ。どうかお見知り置きを、美しき女神よ」

「誰が覚えるか!」

 

  フォクスギルディと名乗ったエレメリアンは狐を思わせるシャープな外観をしている。筋骨隆々だったこれまでのエレメリアンとは一線を画していた。さらに声優のようないい声なのが余計に腹立たしい。

 

「フッ、可憐でありながら力強い、素敵なリボンだ。見ているだけで心がとろけますよ」

 

  反対に心が逆立ったレッドは短期決戦に望むことにした。幸い、出現場所は閑散な郊外だったので昨日のようにギャラリーもいない。存分に力を振るえそうである。果たしてそれがレッドたちの力を警戒したアルティメギルが、穏便に行動しようとしているからかはわからないが。とにかく、問答無用で行けることに変わりはない。

 

「屈強な同胞達を倒した剣が、リボンより生まれ出でしものだったとは…運命を感じます」

 

  だが、必殺必至のブレイザーブレイド(炎刃)を前にしてもフォクスギルディは不気味なほど落ち着き払っていた。妖艶な笑みを浮かべながら、どこからともなくリボン紐を取り出すフォクスギルディ。もったいつけて眺めたあと、無駄に回転して宙に投げる。

 

  すわっ攻撃か!と身構えるが、新体操の演技のように渦を巻いてレッドの体の側を旋回しただけでリボンはすぐにフォクスギルディの元へと戻っていってしまった。

 

「……何だ?」

「おお……こ、これほどのものとは……グフォッ」

 

  まるで大昔の少女漫画のようなオーバーリアクションで吐血し、膝をつくフォクスギルディ。何してんのこいつ、今の内に斬り捨てていいの?と真剣に考えるレッド。しかし次の瞬間、決勝せよ、我が愛!とフォクスギルディが叫んだ瞬間リボンに属性力(エレメーラ)が注ぎ込まれ、磁性流体のように慌ただしくデコボコしながら変形を始めた。

 

「お!?」

 

  いよいよ我慢の限界に達そうとしていたレッドだが、リボンが二つに分離しテイルギアのフォースリヴォンと同じ形をとったところで、警戒よりも興味が先行してしまった。しかも、リボンからマジックハットの鳩よろしく突然ツインテールが飛び出してくる。

 

「おおっ!?」

 

  思わず拍手を送りそうになるが、フォクスギルディの奇術はやめ時を逸してしまっていた。ツインテールから頭が、頭から胴体がと次々に飛び出して行き、ついには手足も出揃って人の形になってしまった。それはまさしくーーテイルレッドを模した、完璧な等身大フィギュアであった。

 

「ーーって、俺じゃねーか!」

「リボンとは結ぶもの……特に、ツインテールを引き立たせるには無二の存在。あなたのその神々しきツインテール属性…僭越ながら私の属性力(エレメーラ)によって()()()()いただきました」

「っ! ま、まさか俺の力をコピーしてるってのか!?」

 

  慌てふためくレッドに、フォクスギルディは優雅な動きで首を左右へと振る。では一体なんだというのか。

 

「まさか。鏡に写した程度のこと。シミュレートしただけの、ただの人形です。ましてリザドギルディほどの強大な人形属性(ドール)を持たぬ私では、自ら動かすこともできません」

 

  そこまで聞いたところで、レッドはふとトゥアールの話の一つを思い出した。属性力(エレメーラ)は一人一つではない。それは正斗が文字通りバグスターたちの存在で〝体〟現している。特定の属性力(エレメーラ)を核として結晶化したエレメリアンでさえ、複数の属性力(エレメーラ)を持った個体もいるのだ。

 

  そう考えると、目の前のフォクスギルディはリボンの属性力に加え人形属性(ドール)の属性力も使っていることが手に取るようにわかる。

 

「ですが……外見だけはこの通り、ほぼ忠実に」

 

  壊れ物に触れるようにそっと、人形のフォースリヴォンに触れるフォクスギルディ。その表情は庭で戯れる孫を慈しみの目で見つめる老人のそれ。あまりにも優しく、しかしだからこそ精神はある程度熟している当人(レッド)にとっては……

 

「ひ、い、い………」

 

  ……恐怖以外の何者でもあるまい。あまりにもおぞましい光景に鳥肌が立ち、無意識に後ずさってしまう。しかしそんなレッドに構わず、凶行は容赦なく続く。

 

「はっ!」

 

  気合い一閃、爪先立ちで回転したかと思うと恭しくフィギュアの手を取り、ダンスを踊り始める。レッド…総二の会長への第一印象からして、やはりツインテールとダンスの親和性は高い。今回は化け物とフィギュアの戯れだが、あまりのイメージ力が周囲の空間に影響を及ぼしたのかとても幻覚とは思えないようなリアルな舞踏会場が後ろに見えた。

 

「うっぎゃあああああああああああ!!!」

 

  絶叫に合わせてレッドのツインテールも跳ねる。自分にあれは人形、ただの人形と言い聞かせるが結果は無意味。自分と瓜二つの顔をした人形が変態(テキ)と手を取り踊っていると考えると、変な冷や汗さえ出てくる。

 

「ふぅ……」

 

  ダンスが終わっても、悪夢までは終わらない。精神を研ぎ澄まし、両腕を顔の前で交差して濃厚な息を吐くフォクスギルディ。まるで心まで自然に溶け込ませるように。

 

 が、本質は…

 

「フッ……これ、走ってはいけません。まだ身体を拭き終わってないのですから。湯冷めしてしまいますよ」

 

  最悪だった。もうこれ以上ないくらいに、変態だった。溶け込んでいたのは妄想という名の自然だったのである。おそらく、妄想の中のレッドは確実に服を着ていないだろう。もはや漏らしそうになるレベルの気持ち悪さだ。

 

「想像の中で俺に何してんだてめえええええええええええええ!!!」

 

  絶叫をあげるレッド。しかし追い討ちをかけるように今度はアイスキャンディーでベトベトだの何だの言い出すフォクスギルディ(変態侵略者)。ついにレッドは頭を抱えて地面を転がり始めてしまった。

 

『総二様!そんなまがい物、構わず粉々にしてしまえばいいんです!』

 

  そこへ、見兼ねたかのようにトゥアールから通信が入った。その後ろで愛香のキャーキャー!という悲鳴も聞こえる。最愛の彼女の声を聞いたおかげで、少しだがレッドは冷静さを取り戻した。

 

「あ、ああ…そうだな、そうさ……」

『今こそテイルギアの装備、属性玉変換機構(エレメリーション)を使う時です!』

「属性玉変換機構…あの、属性玉(エレメーラオーブ)の力を使えるっていう……」

属性力(エレメーラ)で作られているそれは人形。ならば、リザドギルディの人形属性(ドール)が有効なはずです!』

 

  確かに、妄想の依り代である人形さえ破壊してしまえばこの生き地獄から生還できるだろう。フォクスギルディが先ほど言った通り、リザドギルディの人形属性(ドール)ならば人形への影響力は格段に上のはずだ。早速破壊を試みようと、レッドはフォクスギルディへと目を向ける。

 

「破、壊……」

 

  フォクスギルディは依然として妄想を続けている。隙ありというのもおこがましい、完全な無防備だ。おそらくパラドクスがいれば容赦無くマテリアライズスマッシャーが顔面に突き刺さっていたことだろう。とにかく、あれを早く破壊しなければ精神を蝕まれ続けてしまう。

 

「はっ、はっ……」

 

  レッドの呼吸が途端に荒くなった。確かに、人形は外観は完璧と謳うだけあってツインテールもかなりの再現度だ。本物の神秘的な輝きには到底及ばないだろうが、人形としては十分以上の及第点。レッドの両目の網膜に、フォクスギルディの闘気に煽られそよぐツインテールが焼き付いてしまう。

 

「くっ……」

 

  レッドの足が震えた。まるでとりもちにかかったかのように粘つき、地面に張り付いて離れない。あんな人形、指一本で破壊できるというのに。破壊しなければこちらがやられるというのに。それでもなお、レッドは躊躇う。

 

 簡潔にいうとーー

 

「ーーうおおおおおできねぇぇぇぇ!俺にはツインテールを壊すなんてできねぇぇぇぇ!」

 

  …まあ、そういうことだった。たとえ紛い物であったとしても、悪意に満ちたものであったとしてもツインテール自体に罪はない。それを自らの手で裁くなどという傲慢が許されるのかという、レッドのツインテール脳は通常ならありえない迷いを叩き出す。

 

  そんなレッドに、感嘆するような様子でフォクスギルディが話しかけた。

 

「やはりあなたは本物だ」

「何!?」

「そう。これはただの人形です。ですがあなたには破壊できない。ツインテールを愛する者……最強のツインテール属性を持つあなたには、ツインテールを滅することはできないのです!!」

「く……!」

『総二様!?』

 

  まるで肉体が精神に逆らうかのように伸ばした手は力なく降ろされる。ついには、レッドは地面に膝をついてしまった。そして訪れるのは戦意を失った無様なものへの代償。容赦のない、妄想劇の始まりだーー

 

 

 ●◯●

 

 

  その頃、戦いの様子をモニターで見ていた愛香は悲鳴をあげながらトゥアールに縋り付いていた。こういう時陽気に場を和ませるパラドがいればもう少し落ち着いていられただろうが、あいにく彼女は今正斗とともに会社の会議室の中だ。

 

「どうしよう!このままじゃそーじが!こっからミサイルとか打ち出せないわけ!?」

「っ、こうなったら、もう………」

 

  トゥアールは悔しそうな表情で右手を握りしめる。美しい白磁色の手の平がやぶれ、ポタリ、ポタリと血が落ちた。しかしそんなことに構わず、彼女は苦渋の決断を下す。

 

「………一つだけ。一つだけ、手があります。これは愛香さんにしかできないことです」

「何!?なんでも言って!」

 

  さらに詰め寄る愛香に、トゥアールは白衣のポケットからあるものを取り出して彼女に握らせる。それは、レッド…総二が今装着しているものとは対照的に鮮やかな青色のテイルブレスだった。

 

「これって…!?」

「もしもの時に開発してあった予備です。まだ調整もできていないので、渡すのは非常に心苦しいのですが……」

「…トゥアール。これーーー()()()()使()()()()()()()()()()()?」

 

  不意に真剣そのものの表情とともに放たれた核心をつく質問に、トゥアールはびくりと肩を震わせた。そして美しいサファイアブルーの瞳をどちらとも見開き、恐る恐るといった様子で愛香を見上げる。

 

「………知って、いたのですか?」

「…ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだけど」

 

  愛香自身、まさかこうも早く露呈するとは思わなかった。しかし最愛の人の危機と盗み聞きした事実、天秤にかければどちらを選ぶかなと明白だ。むしろ天秤に書ける必要性すら感じない。

 

「…でしたら話は早いです。確かにこれは以前、私が使っていたものです。旧式であるが故に改良をしていたのですが、まさかこんなすぐに出番が来るなんて」

「とりあえずそーじを助けられるならなんだっていいわよ」

 

  そう言いながら何も臆することなく、ブレスを腕に通す愛香。そして一度拳を握りしめ、何かを確かめるように目を瞑る。

 

  瞼の裏に浮かぶのは、運命の二文字。自分のツインテールは、ただ一人のために磨いてきた。その思い入れは何よりも、誰よりも強い。だからこそ、これでツインテールの戦士に変身できない程度の属性力ではたまったものではない。そうならないよう、愛香は強く願う。どうか自分に、総二の隣に立てる力を与えて欲しいと。

 

「ーーテイル、オン(変 身)ッ!」

 

 

 ーーカッ!

 

  その思いに、ブレスは答えた。二つの意味を持つ変身機構起動略語(スタートアップワード)を受け、繭状に形成された光の帯が愛香の体を包む。おびただしい量の光の粒子をほとばしらせながら一瞬で変身完了し、目を見開いた時には愛香はレッドのものより鋭い攻撃的なデザインのスーツをまとっていた。ついでに言うとレッドより少し露出が多い。

 

「……よしっ」

「……無事に帰ってきてください、愛香さん」

「当たり前よ!」

 

  今一度拳を握りしめ、確かにそこにある力を確かめると地下基地最前に設置されたケージ型の出撃用空間跳躍カタパルトに向かって走り出し、そして最愛の人(総二)の元へと飛んでいった。視界が極彩色に覆われる。しかしそれは一瞬で、すぐにビルの屋上に転送された。

 

 ピコン、ピコン

 

「よっと、ん?」

 

  力強くコンクリートの床を両足で踏みしめた愛香は、ふと自分の首元で何かが音を立てていることに気がついた。そこをみれば、なぜか服同様変わっているはずの『マイティアクションX』の主人公マイティ型のネックレスが露わになっている。

 

「…なんで?」

 

  思わず動揺しながら触れると、一瞬発光したかと思うとネックレスが消え、代わりにいつの間にか手の中に一つのゲームカセットのようなものが握られていた。キャラクターの描かれた白い基盤、鮮血のように赤いスイッチと取手、深い青色の本体。本体には、青と銀の全身タイツのような軽装を纏った男が赤い槍を投げるイラストが描かれており、それとともに荒々しい文字でこう書いてあった。

 

 

 《BLUE BEAST LANCER》と。

 

 

「………ん?」

 

  いきなり現れた正体不明の機会に謎を深めていると裏に紙が張り付いているのに気がついた。そこには、『君の誕生を祝福する、新しきツインテールの戦士よ。これはお前専用のガシャットだ。存分に使え。 正斗より』と言う短い文が。

 

「…あんのお人好しめ」

 

  口より先に手が出る愛香でも、すぐに察した。おそらく正斗はすべて予想していたのだろう。いつか総二がピンチに陥ることも、愛香がそれによって戦う選択肢を選ぶことも、全て。だから一体いつやられたのかはわからないが、ネックレスにこのガシャットを隠していたのだ。下手に選択を強制しない、それどころかいつも背中を押してくれる幼馴染に感謝の念を送りながら愛香は強く地面を蹴り跳躍した。それはまるで、飛翔の如く。

 

「待っててね、総二…!」

 

  戦闘機もかくやと言うスピードで空を切り裂き、風に青くなったツインテールをはためかせながら彼女はつぶやいた。その姿は蒼き天空を支配した王女のように威風堂々としているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後に出たオリガシャット、なんだかわかる人いますでしょうか?
前編後編に分けたのには理由があり、そろそろ正斗の会社での姿を描写したかったからです。
感想をいただけると嬉しいです。
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