「目が覚めたか、マスター」
少年は理解する。自分の知らない世界に飛ばされても、思考回路は至って正常。
「カルナか……」
どうせなら、パッションリップとか、源頼光とか、乳上が良かった。せめて、女性でと少年は思う。
「これって、聖杯戦争なのか?マスターって言われてもな、俺魔力補給とかできないぞ」
だが、カルナはサーヴァントのなかでも、最強クラス。
「それなら、心配ない。魔力補給は聖杯がしてくれている」
確か、聖杯は願望で、魔力補給なんてできないはず。元の世界の知識を探っている。
「それなら、カルナが俺をマスターと呼ばなくてもいいと思うんだが」
魔力補給もしていない人間と英霊の関係。
「今回の聖杯戦争の勝利条件が、オレとマスター以外の参加者の排除となっている。だから、マスターで問題ない」
やっぱり、堅苦しいな。青のランサーなら、もっと会話が弾むだろう。失礼にも、少年はそんなことばかりを考えている。
「それはそうとして、今からどうするかだ。今回が初陣の俺には分からないことが多すぎる」
知識として、娯楽としては体験しているが、それとこれとは話が違う。少年は赤子と大差ないのだ。
「マスター次第ではあるが……近くの町に行く休息をとればいい」
少年とカルナが出会った場所から約三キロのところに、中世ヨーロッパ風の町がある。人口が少なく、食料や
水不足の心配もない、平和な町だ。
「案内を頼むよ」
「三キロくらい歩くぞ」
三キロメートルを普通に歩くと四〇分程度。
「遠いな。なんか一瞬で行けたりできないの?スキルとかで」
「スキル?…あれのことか。残念だが無理だ。今回の聖杯戦争では、全ての参加者が己が実力の三分の一も発揮できないようになっている。宝具も一回打てればいいくらいのレベルだ」
カルナも含める参加者のサーヴァントには、マスターのプロフィールが送られている。もちろん、この世界の情報についても同じだ。
「なるほど……。他の参加者って誰がいるか分かる?」
未知な世界に対して、少年はカルナからの情報を必死で覚える。
「残念だが、分からない」
「そうか……」
しばらく歩いて二人を包むのは、気まずさだ。
カルナを堅いやつと思い、少し距離をとっている少年。少年もあまりコミ力は高くない、元の世界では半分ニートだったからというものもあるが。
だが、町が見えてきた瞬間その気まずさは消える。
「うわ、すごいな!TVとゲームとかのイメージそのまんまだな」
はしゃいで、歩くスピードをあげて、二人は町に入っていく。
「なんかさ、喫茶店とかない?」
「あぁ。あそこだ」
カルナが指さす店に少年はおそるおそる入る。知らない町だからか、少し慎重だ。
「いらっしゃいませ」
この違和感。少年は目の前の女性を見るまで、忘れていた。当然の疑問。
「なぁ、カルナこの世界って日本語なのか?お金は?」
自分よりも高い位置を浮いているカルナに小声で問う。
「心配はない。この世界では、日本語が通じるし、お金も大丈夫だ」
その言葉を信じて、店の入り口すぐの席に座り、淡々と注文をする。そのメニュー表は日本語だった。
「だいたい、この世界のことが分かってきたけど、随分とヌルゲーだな」
母国語が通じて、お金の心配もない、さらには最強クラスのカルナ。
「とりあえず、今日は安むか」
少し食べて、店を後にした少年は、カルナから聞いた宿屋に泊まる。
「カルナ、寝ずらいからさ、俺が呼ぶまで寝てくれていいぞ」
「分かった」
その一言で、カルナは視認できなくなる。
「英霊にも、睡眠がいるのか、飯は食べてなかったのにな」
遠慮しているだけって可能性もあったと思う少年。
「さてと、カルナも大してこの聖杯戦争についてはしらなそううだな」
ま、考えてもしょうがない、カルナが他の参加者の場所が分からない以上、向こうもこちらの場所は分かるまい。少年は寝る前に、そう思い色々起きたことを記憶するため、疲れた体を休めるために、深い眠りについた。