「ふー、死んだかと思ったぞい」
セシルが飛空艇から呼んできたバロンの女性白魔道士に回復魔法『ケアル』をかけてもらうと、ガラフはすぐに目を覚ました。
「ガラフさんが余計なことするからだろ?」
「うっ、頭が…記憶喪失じゃ…」
随分と都合の良い記憶喪失だな、とバッツは呆れた顔でガラフを見る。
「じーさんが目を覚ましたなら、早速行こうぜ」
性分なのか、今しがた風の神殿へ同行することが決まったファリスがバッツたちを急かす。確かに、今はガラフのセクハラなど些細なこと――と言ったら流石にレナどころか世の女性を敵に回しそうだが――なので、ファリスの言う通りさっさと風の神殿に向かうことにする。しかし、バッツたちでは船の動かし方がわからないのでファリスに先導してもらわなければならない。ファリスはそれがわかって自分が仕切るような真似をしたのだろう。
部屋から出てすぐのところに停泊している船の前までやってきたファリスは、後ろについてくるバッツたちを振り返る。それを見たバッツ達は足を止めて船を見上げる。
「はー、近くで見るとでっけぇなぁ…」
「そうだね…僕達の乗ってきた飛空艇よりも一回り大きいね」
興味津々に海賊船を眺めるバッツの横に来たセシルも同じく船を興味深そうに見ている。飛空艇も船体は普通の海上船とほぼ同じだから気になるのだろう。
「それで、どうやってこの船を動かすんですか?」
やはり何度見てもただの帆船だ。レナも同じように感じたのだろう。未だに解消されない疑問が彼女の口を出る。
「まあ、見てなって。シルドラ!」
ファリスが自慢げな顔をして聞き慣れない名前を呼ぶ。風がなくても船を動かせるくらい優秀な操舵手でも出てくるのか、などバッツが的はずれなことを考えていると、バッツたちの目の前の水面が大きく盛り上がる。何が起きたのか。カイン以外の四人は思わず後退りする。
水面の隆起から水のベールが剥がれ落ち、現れたのは長い首を持つ竜の顔。
「ほう、海竜か」
竜の気配を感じ取っていたのか、カインは驚くことなく興味深そうに呟く。
「俺の相棒のシルドラだ。風が止まっても俺たちの船が動くのは、シルドラが引っ張ってくれてるからさ」
ファリスの紹介を受けて、シルドラは飛竜によく似た声で鳴く。やはり竜なのか。
「ファリスと言ったな。こいつはお前が従えているのか?」
「ああ、そうさ。お陰で俺は実力を認められてここのボスになれたってわけだ」
「そうか。ファリス――貴様、竜騎士になる気はないか?」
カインはファリスが海竜――シルドラを従えたということに興味を持ったらしい。
「そいつはできねぇな。可愛い子分たちもいるしな」
「フッ、そうか。まあ、そもそもバロンの竜騎士は世襲制だからな。すまない、ちょっとした冗談だ」
初めから断られている事がわかっていたようで、カインは特に驚く様子は見せない。というか、もしファリスが竜騎士になりたいって言ったらどうするつもりだったのだろうか。
「まあ、気が変わって竜騎士になりたくなったら。タイクーンの兵士になるのもいいだろう」
「いや、だからならねぇって」
不毛なやり取りだ、とでも言いたげに顔をしかめるファリス。バッツも同意見だ。カインの意図が全く読めない。こういう難しい冗談を言うタイプの人間ってだけの話だろうか。
「えっと…では、そろそろ出発しましょうか…?」
見兼ねたレナがおずおずと前に出ながら二人の問答を終わらせる。申し訳なさそうに自分の髪をくしゃくしゃに掻くファリスと、フッとキザに口元を歪めるカイン。何だこれ。
船にはレナ達五人とファリス、そして海賊団員が三名搭乗する。セシル達と共に来たバロンの兵士らは飛空艇の留守番ということでここに残ることになった。
「よーし、出発だー!」
ファリスの勢いのある号令にシルドラが応え、海賊船が動き出す。
よくよく考えると、現在出てるメインキャラの半数以上が人間以外の生物と意思疎通が可能なんですね。まあ、FF5の原作キャラがそうなのでしかたないんですけど。