海賊団員を船に残して森を進んでいくと石造りの巨大な建造物――風の神殿へとたどり着く。
「風の神殿の一階にタイクーンの駐在部隊がいるはずです。まずは彼らに話を聞きましょう」
「神殿の中は大丈夫なのか?」
「とりあえず、一階は大丈夫だと思います」
へぇ、とファリスが興味深そうにレナを見つめる。レナが飛竜との意思疎通を行っている場面をバッツは目の当たりにしていたのでレナは人間以外の生物に対しても感覚が鋭い人なのかとは思っていたが、想像以上の能力かもしれない。
レナの言うことを信じて一行は神殿へと入る。
神殿に入ってすぐ左の小部屋にレナの言うとおりタイクーンの兵士が駐在していた。
「レナ様!それに、カイン様!」
タイクーン兵がレナとカインの顔を見るなり驚いて入り口まで駆け寄る。
「神殿の状況は?」
「それが――ご存知かと思われますが、突然風が止まり…その直後魔物が神殿へと侵入してきました。お陰でクリスタルの様子を見に行くこともできずにいたところ、陛下がおいでになったので共にクリスタルの間へ向かっていたのですが、途中で魔物によって分断され、私達はここまで追い返されてしまいました。申し訳ありません」
「なるほど、父はまだ戻ってないのですね…?」
「はい…」
自分たちの不甲斐なさからか、タイクーン兵たちの顔が曇る。
「わかった。あとは俺達に任せておけ」
「カイン様…!」
「皆さん、やはりクリスタルに何かあったようですね。そして、魔物たちがクリスタルを狙っている…もしくは、クリスタルに引き寄せられている…?とにかく、この先はおそらく危険です。気を引き締めていきましょう」
レナがバッツ達を振り返って、今までより一層思いついた表情を見せる。
「魁は俺、殿はセシルが務める。行くぞ!」
カインの号令に各々が気合の声を上げ、クリスタルがある最上階を目指す。
「これは…」
道中、胸を貫かれている魔物の死骸がいくつも転がっていた。
「叔父上だろう。流石だな」
カインが感心する通り、おそらくほぼ全てが一撃でやられている。あまり気持ちのいい光景ではないが、タイクーン王の武人としての実力が窺える。
神殿を進んでいくと、タイクーン王より後に神殿に入ってきたと思われる魔物が徘徊していた。クリスタルのところに行かずにこんなところをウロウロしているのは既に目的を果たしたのかそれとも行けない理由でもあるのか。
魔物の殆どをカインが蹴散らしながら先へ進んでいく。
「そろそろ、クリスタルの間です――あれは…!」
上へと続く階段の前に、今までの魔物よりも一回りも二回りも大きい猛禽類のような魔物が立ちふさがっている。まるでクリスタルの守護者のように。
「魔物たちの親玉ってところか…?」
船の時から武器を替え、湾曲した刃を持つ刀――カットラスを持ったファリスが一歩前に出る。
鳥の魔物もこちらに気づいたようで、翼を大きく開き雄叫びを上げて威嚇してくる。
「行くぞっ!」
カインが大きく音を立て床を蹴り、一気に最高速に加速して怪鳥へ突撃する。
怪鳥はそれを迎撃すべく開いていた翼を大きく振る。カインは槍を横に薙ぎ翼撃を弾くと、槍を振るった勢いそのままに身体を横回転させ、後ろ回しに石突を怪鳥の身体に突きこむ。
「GU…GA…!」
相当効いたようで、怪鳥がその巨体を蹌踉めかせながら後ろに下がる。
カインが地面を蹴って魔物から離れるのと入れ違いにバッツ、ファリス、ガラフの三人が前進。怪鳥が今度は両翼で迎撃を試みるが、バッツとファリスがそれを押さえ込み、ガラ空きの胴体にガラフの斬撃が叩き込まれる。
流石に連続で攻撃をもらったためか、たまらず後ろに飛び退くと翼に篭もるように丸くなる。
「効いているな――更に攻めるぞ!」
バッツとファリスがそれぞれ左右から回り込むように接近し、ガラフは振り抜いた剣を構え直して直進。三人同時に剣を叩き込むが、金属音を響かせて翼に弾かれる。
「硬っ…!」
「もう一度だ!」
ファリスの声に合わせて、再び三人がタイミングを合わせて剣を振りかぶる。
「みんな!下がれ!」
セシルの怒号に三人は剣を振り上げたままバックステップ。直後、怪鳥の足――鋭い爪がガラフを捉える。
「ぐっ!」
ガラフは咄嗟に剣で怪鳥の脚を斬る。怪鳥が脚を引いたのと剣で斬った反動でガラフの体は怪鳥の爪から離れる。
「ガラフさん!」
急いで駆け寄ったレナが腹部から血を吹いているガラフにポーションを振りかける。
「セシルが叫んでくれなかったら危うく戦闘不能になるところじゃった…」
傷が塞がったのをを確認するかのようにガラフが腹を擦って立ち上がる。
「カイン!」
「ああ!」
先程と同じくカインが怪鳥へ向かって跳躍。鋼の翼に槍を突きこむと表面に阻まれるが身体を僅かに後ろに押し込む。しかし、怪鳥は物ともせずに再び爪のカウンター。
カインは自分に迫りくる爪を蹴って今度は垂直に飛び上がる。
射線からカインが外れたセシルは隙かさず
暗黒
闇の波動が怪鳥を飲み込む。
「GA…A…!」
闇に蝕まれ、苦悶の声を漏らす怪鳥。が、勢い良く翼を広げて突風を巻き起こす。
「っ…!」
セシルの暗黒を散らした突風はバッツ達を吹き飛ばし壁に叩きつける。
「くっそぉ…厄介だな…」
叩きつけられた衝撃で脳が揺れる。バッツは剣を杖にしてゆらりと立ち上がる。
怪鳥は既に翼を閉じた防御態勢。
「どうしたらいいんだ…」
「みんな、下がってくれ!」
剣を担いて切っ先を魔物に向けるセシルが叫ぶ。まさか、突風と打ち合いをするつもりなのだろうか。
バッツ達が攻めてこないとみると、怪鳥は再び翼を開いて突風を巻き起こす。
暗黒
バッツの予想通り、セシルは突風に向かって暗黒波を放つ。威力はセシルの攻撃が上のようで突風の壁を突き破るが、範囲に勝る怪鳥の攻撃は一部をかき消されただけでバッツ達に迫る。バッツ達は顔の前に腕を十字に組んで腰を落とし、突風から身を守る。攻撃を終えたばかりのセシルとその後ろにいるカインを除いて。
「カインッ!!!」
「ああっ!!!」
剣を担いだ体勢のままセシルが横にずれると、セシルがいた場所を電光石火で通過するカイン。そのまま暗黒波が切り開いた道を突き進み怪鳥へ肉薄する。
怪鳥の無防備な巨体にセシルの暗黒とカインの槍撃が立て続けに炸裂する。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
槍が深く突き刺さった怪鳥は断末魔の悲鳴を上げると、翼を垂れさせ後ろに倒れ込む。
ガシャン、と金属の落ちた音がする。セシルが膝をついている。
「セシルさん!」
サポートに回っていたレナがセシルに駆け寄って兜を外す。防御態勢を取らなかったセシルはおそらく先程の突風をまともに食らったので、それが原因だろうかと思ったが、すぐにそうではないことに気づく。
セシルは、唯でさえ色白な顔を更に青白くさせ額からは滝のように汗を流していた。
「だ、大丈夫ですか…!?」
「暗黒の力の反動です…少し、無理してしまったみたいですね…」
肩で息をしながら、膝に手をついてセシルがゆっくり立ち上がる。レナがポーションを差し出すが、それを手で止める。
「傷とは違いますから…大丈夫です…」
「そうですか…」
何もできない自分が悔しいのか、レナは歯噛みする。
「よし、クリスタルはもうすぐだ。行こう!」
皆の心配を突っぱねるようにセシルはいつもの調子で先に進むように促す。
序盤のイベントで弱体化か離脱かさせられるお助けキャラみたいになってますね、カインさん。