バッツ達は風の神殿から海賊のアジトを経由し、セシルの飛空艇でタイクーン城へ戻ってきた。
ファリスの動向は気になったが、とりあえずタイクーンに来てくれることになった。
「レナ様、お帰りなさいませ。エドガー様から親書が届いております」
「エドガー様から?」
レナが飛空艇から降りてくるなり、補佐官が出迎える。エドガー、確かフィガロの国王の名前がそうだったか。
「わかりました、後で確認します――ところで、お父様は…?」
「陛下は――まだお戻りになられておりません」
「そうですか……」
タイクーンの森で出会ってから、何度見たかわからないレナの悲しげな表情。きっと、異変が起こる前はもっと笑顔の絶えない明るいお姫様だったに違いない。いや、そうであってほしい。
「風の異変は世界中に広がっているんでしょうか」
セシルは城の周りに立つ木々を見つめる。葉を微動だにさせず並び立つ樹木は、まるで時の流れから切り取られて存在しているようだ。
「それはわかりませんが、とりあえず私達は今後について話し合おうと思います。カイン兄様達は――」
「そうだな。俺とセシルはバロンへ戻って今回の件を報告せねばならん」
「それだけどさ、俺もバロンに連れていってくれないか?」
一瞬沈黙が訪れる。どうやら自分が突拍子もないことを言ってしまったらしいことに気づいたバッツが言葉を続けて――
「いや、だってセシル達は今回の件を報告しに行くんだろ?だったら、クリスタルの力を授かった俺がいた方が説明もしやすいかなーと思って」
「それは、僕達としても助かるけど…いいのかい?」
セシルはバッツに聞きながら、ちらりとレナを見る。
「ああ、俺は構わない。タイクーン王も戻ってきてないみたいだし」
「そうですね。どうせ私達もクリスタルについてはわからないことばかりですし、バロンとの情報共有を優先しましょう。お願いできますか、バッツさん」
「おう、任せとけ!」
己の無力さ、タイクーンの人間ではない旅人のバッツに重要な役割を任せる不甲斐なさから苦い顔を浮かべるレナ。
バッツはレナの後ろ向きな気持ちを吹き飛ばすように明るく自信に溢れた声で応える。
「では、バッツさんはバロンへ。ガラフさんとファリスさんはタイクーンに残ってもらえますか?」
「どうせ、行くところもないしのぉ」
「もちろん構わねぇぜ。そのつもりで子分たちにアジトの留守は任せてきたしな」
相変わらず申し訳なさそうなレナに、ガラフとファリスは笑って返す。
「早速僕達はバロンに戻るよ。バッツの準備が終わり次第ね」
「あー、じゃあボコにバロンに行ってくるって言ってからでいいか?」
「うん、もちろんだよ」
セシルはボコが何者かはわからなかったが、何であろうとバッツがここで済ませるべき用事は待つつもりだったので気にせず承諾する。
「ありがとな!」
バッツはセシルに向けて軽く手を上げて、チョコ房の方へ駆け出していく。
流石に今後の展望がないのはマズイので、1章が終わったら少し更新が途絶えるかもしれません。