「はぁ…はぁ…やっと倒したか……!」
全身で息をしながら恨み言のように漏らすルーネスは、ようやく沈黙したランドタートルを睨みつけている。
亀の化物――の死骸は、程なくして黒い光となって消える。体液すらも消え失せて、まるで存在していなかったかのようだ。
「あ……」
凶悪な魔物を退けた安心から一気に疲労感に襲われる。もはや立っている理由もないので、ルーネスは石畳の上に尻もちをつく。
そういえば、洞窟に入ってからここに来るまで頭の中で響いてた声はいつの間にか聞こえなくなっていた。
「なんだったんだ……」
大地震。クリスタルの沈降。いるはずのないモンスター。何かが起きてる。とてつもない異変が世界を襲っている。その一端に触れてしまった恐ろしさから、ルーネスは身震いする。
しかし、こいつが無事で良かった、とクリスタルに目を向けた時――
――クリスタルの戦士よ
どこからともなく声がする。いや、頭の中に直接語りかけてきている。だが、さっきの声とは違う。
「なんだ……?」
不気味な現象に思わず叫んでしまいそうだったが、そんな力すらルーネスには残されていなかった。
――希望の光を持つものよ
「俺のことか……?」
不思議な声の言うことに心当たりはない、がこの場にはルーネスしかおらず、そもそも声は直接ルーネスの頭の中に伝わってきている。
――今、光と闇がお互いを飲み込もうとしています
光?闇?なんのことだ。クリスタルの光と巨亀を生み出した闇のことか?
――このままでは、世界が誕生する前の何もなかった頃、すなわち「無」が訪れます
無?なんのことだかさっぱりだ。世界がなくなるということだろうか。
――貴方には仲間がいます。同じ希望の光を持った仲間が
仲間、ウルの村の友達のことを言ってるのか?
――その仲間を見つけ出してください。さすれば、私は最後の光を貴方達に授けます
「な、何を言ってるんだ!お前は誰なんだよ!」
――私は風のクリスタル。悠久の風を司る、世界の力
「クリスタル?このクリスタルが喋ってるのか!?」
声の主と思われるクリスタルに目を向けると、その輝きが力を増し、この空間を白く満たす。
「ここは……」
気がつくとルーネスは洞窟の外にいた。時間としてはさほど経っていないはずだが、この風景が酷く懐かしい気分だ。
頬を撫でる風が、いつになく気持ちよかった。