FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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CHAPTER 2 「動き出す世界―The Beginning―」
プロローグ


「へえ、ここがバロン王国か」

 

 バッツは初めてのバロン王国にテンションが上がっている。空の旅から解放された嬉しさも多分に含まれているが。

 

 入城手続きを済ませたバッツはセシルとカインについてバロン城に入る。赤い絨毯に迎えられるのは落ち着かないが、慣れないことへの動揺すらバッツには楽しみの一つだった。

 

「早速バロン王へ報告しに行こうと思うけど、大丈夫かな?」

 

「おう!」

 

 気を遣うセシルに、いつもの調子で返すバッツ。

 

 

「おかえりなさいませ。セシル様、カイン様」

 

 謁見の間の扉の前に立つ二人の兵士がカインとセシルを見るなり声を揃えて頭を下げる。一瞬バッツに怪訝な視線を向けるが、入城証を持っているのを確認するとすぐに元の表情に戻る。

 確かに軍人ばかりの城ではかなり浮くとは思うが、セシルとカインに連れられているのだから疑わずともよくないだろうかと苦笑いする。

 

 兵士が扉を開け、セシルとカイン、そしてバッツが謁見の間へと入る。

 

「お待ちしておりましたよ。セシル殿、カイン殿」

 

 赤を基調とした派手めの鎧の騎士がセシル達を出迎える。

 

「ありがとうベイガン」

 

「こちらの方は……?」

 

 もちろんバッツのことだ。扉の前の兵士達ほど嫌味な感じはしなかったが、それでもベイガンと呼ばれた騎士はバッツを不思議そうに眺めている。

 

「今回の任務の協力者だよ。まとめて話すから」

 

 失礼しました、とベイガンが深く頭を下げて横に一歩ずれる。

 それに合わせるようにセシルが一歩前に出る。

 

「セシル、カイン此度の任務ご苦労であった」

 

「「ハッ!」」

 

 バロン王――オーディンの老成した重く深い声が謁見の間に響く。セシルとカインは素早く絨毯の上に片膝をついて頭を垂れる。一瞬遅れてバッツが慌てて二人の真似をする。

 

「ハッハッハ、青年よ、そう畏まらずともよい。貴殿はバロンの人間ではないのだから」

 

「い、いえ…とんでもございません…」

 

 バッツの明らかにぎこちない声に、セシルとカインの肩が僅かに震える。

 

「青年、名は?」

 

「バッツ=クラウザーでございます」

 

「クラウザー…確か、タイクーン王の知り合いにドルガン=クラウザーという者がおったが…」

 

「おそらく、私の父です」

 

「なるほど……」

 

「陛下!」

 

 バッツとオーディンの会話をセシルが遮る。

 

「あの、そろそろ報告させて頂いてもよろしいですか?」

 

「うむ、そうだな。宜しく頼む」

 

 

 セシルはタイクーンについてから起きたこと、知ったことをバロン王へ報告する。時折、カインの補足を挿みながら。

 隕石のこと。記憶喪失の老人のこと。海竜を擁する海賊団のこと。セフィロスのこと。クリスタルのこと。そして、クリスタルの力を授かった戦士達のこと。タイクーン王のこと。

 黙って全てを聞き終えたバロン王が口を開く。

 

「ふむ――色々ありすぎてさっぱりだのぉ……」

 

 オーディンは自慢の白髭を撫でながら眉間に皺を寄せる。渋い声と発言内容のギャップにバッツの顔が僅かに緩む。バッツを見るベイガンの表情が固くなった気がしたので、慌てて顔を引き締める。

 

「セシル、カインそしてバッツ殿、下がってよいぞ。明日にでも八軍会議を開くとするか…」

 

「「ハッ!」」

 

 ガシャンと鎧の音を響かせながら二人が立ち上がり、ぴしゃりと指を伸ばした右手を左胸に当てる。バロン流の敬礼なのだろうか。

 二人が振り返ったのを見て、バッツはバロン王にお辞儀をしてセシル達と並んで謁見の間を後にする。

 

 

 

「ふーっ、緊張したー…!」

 

「だから、大丈夫かって聞いたのに」

 

「準備したところでどうにかなるもんでもないだろ?」

 

「それもそうだね」

 

 ありがとう、と付け加えてセシルが苦笑いする。

 

「なに、あの方は仮にお前が無礼者だとしても腹を立てるような人ではない」

 

 カインが口元を歪めながらバッツに顔を向ける。

 

「へえ、いい人なんだな」

 

 レナと出会ったときも思ったが、王族ってのはもっと偉そうな人――威厳のあるバロン王はそういう意味では偉そうではあったが――ばかりだと思っていたが、案外そうでもないのだなと認識を改めることにするバッツ。

 

 

「あら、カイン、セシル…何してるの?」

 

「ローザ」

 

 金髪の美女――セシルにローザと呼ばれた女は笑みを浮かべながらこちらに歩いてくる。魔道士なのだろうか、人目につく場所を歩いてるにしては少々露出が多い気がする。どうやらバッツのことに気づいたらしいローザが目を丸くして――

 

「そちらの方は?」

 

「ああ、彼はバッツ。今回の任務で僕達に協力してくれたんだ」

 

「まあ、そうだったのね。私はローザ、セシルとカインの幼馴染です。二人がお世話になりました」

 

 淀みない所作でお辞儀をするローザに、バッツも真似して頭を下げる。

 

「それにしても、二人の任務に協力って……バッツさんも結構お強いのかしら?」

 

「そうだね、剣の技量で言えば僕と殆ど差はないと思う」

 

「あら、それは中々……お若いのに!」

 

 そんなに変わんないだろ、とツッコミそうになるのをこらえるバッツ。

 

「でも、セシルの強さは暗黒騎士の力――負の力(ダークフォース)とそれに負けない心の強さよ」

 

 立てた人差し指を顎に当てながら、ローザが柔らかく笑う。まるで、ウチのセシルが負けるはずない、とでも言いたげに。幼馴染同士大変仲がよろしいようで、とセシル贔屓なローザを前にしてバッツの表情に僅かばかり困惑の色が浮かびあがる。

 場の空気を察したのかバッツの表情を見たのか、カインが――

 

「ああ、この二人は恋人同士だ。そういうことだ」

 

 バッツには耳打ちする。それを聞いたバッツはニヤニヤしながら

 

「なんだよ、セシルも隅に置けねーな」

 

「う、うるさいな!」

 

 セシルが白い顔を赤くして目を逸らす。バロンのエースも人の子である。

 

「で、さっきの話だけど、バッツの力も剣術だけじゃないんだよ」

 

「そうなの?」

 

「まあ、すぐに解ると思うよ」

 

 セシルは話しながらローザに向けていた優越感を含んだ笑みのまま、目だけでバッツを見る。

 

「フッ――」

 

 それを見たカインも短く笑う。二人とも幼馴染をからかって楽しんでるのだろうか。

 

「そうなのね、楽しみだわ」

 

 何かを理解したのか、ローザはあっさりと納得して――

 

「じゃあ、二人とも――あ、バッツさんも、疲れてるでしょうから、今日はゆっくり休んでね?」

 

 じゃあね、と肩の高さで軽く手を振ってローザが去っていく。

 

「じゃあ僕はバッツを客室に案内するけど、カインは」

 

「俺も行こう。バッツはお客様だからな」

 

「なんか悪いな」

 

 バロン王国最強の二人に部屋まで案内されるのも贅沢だなと嬉しさ半分戸惑い半分のバッツ。

 

「それにしても、カインもセシルも強いよな」

 

「俺の本気はあんなもんじゃないさ。でなければ、偽物に遅れを取るはずがない」

 

 偽物――異形の姿に変化して消えていったセフィロスのことだ。

 

「やっぱり、カインもそう思うかい?」

 

「ああ、奴が放っていた気は、確かに恐ろしかったが――あれは人間のものじゃない」

 

「クリスタルのことも、何か知っていたみたいだし…」

 

 セフィロスだけじゃない。わからないことだらけだ。

 

「セフィロスが世界の敵になったというのなら、いずれ戦うこともあるだろう。その時は――俺が殺す」

 

 カインの殺気が膨れ上がる。龍の兜の赤い目が鋭く光ったように見えた。近くを通ったバロンの兵士がカインの気にあてられて肩を震わせる。

 

 

 

「ここがバッツの部屋だ。好きに使ってくれ」

 

 セシル達に案内された部屋は、城の造りからしてそうだったがタイクーンの客室と似た感じだった。

 

「悪いな。二人とも疲れてるだろうに」

 

「構わないさ。じゃあ、バッツ。また明日」

 

「ああ、セシルもカインもありがとな」

 

 セシルは何か含みのある笑みをバッツに向けると部屋の扉を外から閉める。

 

 

「あー……!」

 

 ベッドに倒れ込む。タイクーンのときと同じ柔らかさがバッツを包む。

 

(今日も色々あったな…!)

 

 昨日と同じように――だが、昨日の比ではない程密度のあった今日を振り返る。そういえば、風呂に入らずにベッドに来たのも昨日と同じだ。とまで考えたところで、バッツの意識は沈んでいった。

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