FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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タイクーン出発から風の神殿攻略、そしてバロン王国までが一日の内の出来事だったんですね!びっくりびっくり!!


A.「暗黒騎士と旅人」

Main character:バッツ=クラウザー

Scene:バロン城・中庭

 

 バロン城の中庭、とは言っても何もない空間――何もないからこそ、バッツとセシルの二人はここにいる。しかし、何もないが誰もいないわけではない。

 各軍団長――セシルに聞いたが、ベイガンは近衛兵長らしい――を始めとしたバロン兵達、顔や衣服が黒く汚れているのは飛空艇技師だろうか。いつの間にか役人らしき人達までやってきている。そんなバロン城の人々が作る輪の中にバッツとセシルは立っていた。

 

「随分と集まったのぉ」

 

 人混みの一箇所がさっと開いて、そこからバロン王オーディンが輪の内側へと入ってくる。

 

「二人とも準備はよいか?」

 

「「はい」」

 

 二人は王の顔を見ることなくお互いに目を合わせながら王へ答える。

 

「それでは、セシル=ハーヴィとバッツ=クラウザーによる模擬戦を開始する!」

 

 バロン王が勢い良く腕を振り下ろすと同時に、セシルは剣を水平に構え、バッツは左腰の鞘に納まった剣の柄を握る。

 

 バッツとセシルが中庭にいるのは、バロン王発案の模擬戦を行うためだった。

 名目上はバッツが得たクリスタルの力の実演のためとなっているが、セシル曰くどうやらバッツがオーディン王に気に入られたらしい。

 クリスタルの力のついでに自慢のセシルと戦っているところがみたいというのがオーディンの本音だとかなんとか。

 

 バッツは提案をあっさり承諾した。突然手に入れたクリスタルの力の感覚を掴む必要があるし、一介の旅人が軍事国家の一師団長と剣を交えるなど願ってもない貴重な機会だ。

 

 

 

 バッツとセシルは睨み合ったまま動かない。一見、暗黒が使えるセシルの得意な間合いだが、そうとわかっていればバッツほどの実力があれば避けるのは難しくない。そんな相手に、使用者を蝕む諸刃の剣である暗黒は乱用はできない。

 

 先に動き出したのはバッツだった。

 

 バッツは剣から手を離し、目の前に樫の杖を出現させてそれを手に取る。バッツは杖を両手で握りしめ――

 

"岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち――"

 

「させるか!」

 

暗黒

 

 詠唱中のバッツにセシルの暗黒が迫る。バッツは詠唱を中断して横っ飛びに回避する。

 

「あっぶねー…」

 

 バッツの何処か余裕がある声にセシルはハッとする。乗せられた。セシルは一瞬苦笑を浮かべると、すぐに元の表情に戻って剣を構え直す。先ほどと同じ、剣を水平に切っ先を敵へと向ける暗黒騎士特有の構え。

 

 こちらの思惑に気づいていないのか。バッツはもう一度詠唱を始める。魔力が緑色の光として視認できるほど高まったのに合わせるように、負の力(ダークフォース)が黒いオーラとなってセシルの体を覆う。負の力(ダークフォース)が剣に集中したのを確認し、バッツは再び詠唱を中断して暗黒波が飛んでくる前に回避する――が、闇のオーラは放たれることなくセシルの剣を覆ったままだった。

 

「かかったな!」

 

「げっ…!」

 

 剣を引きながらセシルは宙に浮いたままのバッツに向かって駆け出す。カインほど鋭い突貫ではなかったが、バッツが着地するまでに剣の間合いまで詰め寄って――

 

ソウルイーター

 

 漆黒を纏った剣の刺突――

 

ナイトアビリティ・護りの盾

 

 を、バッツの光の盾が受ける。

 直撃は免れるが、バッツの身体が後ろへ大きく吹き飛ばされる。

 

「がっ…!」

 

 勢いを殺しきれず石床の上を転がる。その勢いを利用し、バッツは石畳を手で押して飛び起きる。バッツのアクロバットに歓声が起こる。

 

「なるほど、そういう使い方もあるのか」

 

「その盾、厄介だな」

 

 お互いが相手の力に感心していると、バッツは心臓を握られたような感覚に襲われる。胃の内容物が逆流しそうになるのを堪えてバッツはセシルを睨みつける。

 

「だが、もう使えないだろう?」

 

 バッツは歯噛みする。セシルの言う通りだった。

 

 バッツが授かった古の戦士の力は、クリスタルが司る希望、それをもつ心に宿った力である。負の力(ダークフォース)の本質は怒りや悲しみ、恐怖といった負の感情である。クリスタルの力とは対極にあると言っていい。今の一撃でバッツはそれを理解した。

 セシルの暗黒波(恐怖)がバッツの光の盾(希望)を打ち砕いた。故に盾はもう使えない。

 バッツは心にまとわり付く嫌な感じを振り払うために、自分の胸をドンと殴る。

 

「よし…!」

 

「まだ終わりじゃないよな、バッツ=クラウザー!」

 

「当たり前だ!」

 

シーフアビリティ・ダッシュ

 

 バッツが一気に最高速まで加速し、セシルに肉薄する。

 

モンクアビリティ・格闘

 

 躱せないと判断したセシルは前に踏み込み、バッツの拳が勢いに乗る前に当たりに行く。セシルの身体に当たったバッツの突きが一瞬止まる。

 

「おぉっ!!!」

 

 バッツの咆哮。輝きを増す拳の光。そのまま腕を振り抜いてセシルを突き飛ばす。

 力で無理やり押されたセシルは蹌踉めきながらも地面を踏みしめて立ち止まる。

 セシルは相手の姿を確認しないまま剣を振る。剣の軌道を後追いするセシルの視線の先には、上体を反らして前髪を散らすバッツの姿。

 

「ちっ…!」

 

「っ…!」

 

 舌打ちするバッツ。息を呑むセシル。何か一つ違っていれば、今頃どちらかは中庭の床を舐めていただろう。

 負の力(ダークフォース)の影響が僅かに残っているバッツは己の心が恐怖に呑まれかけ――むしろ、その恐怖を原動力とし、何としてもこの暗黒騎士を打ち負かさねばならないと強く思う。

 その意思が、無意識にバッツに連撃を可能とさせた。

 バッツは身体が後ろに流れるのに抵抗せず、倒れ込みながら蹴りでセシルを狙う。セシルは後退してこれを辛うじて避ける。蹴り上げた自分の脚に引かれるように後方に宙返りをするバッツ。膝を曲げて柔らかく着地すると、脚に溜められた力を解放し前進する。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「はぁあああああああああああああっ!!!」

 

 拳と暗黒剣が激突し、激しく音を立てる。剣をバッツの拳に当てたままセシルが一歩前進する。その体勢は、暗黒騎士の構え――

 

暗黒

 

 暗黒の剣から放たれた黒き力がバッツの右腕を呑み込む。力の奔流に任せてバッツは身を翻し、遠心力の乗った回し蹴りをセシルの無防備な腹部へお見舞いする。

 セシルの体は宙に浮き、背中から地面へ落ちる。暗黒波に弄ばれたバッツも体勢を崩して倒れこむ。

 

「そこまで!!!」

 

 バロン王の声が中庭に響き渡る。

 

「バッツ=クラウザー、セシル=ハーヴィ、両者とも素晴らしい戦いぶりであった。続きを見たいという皆の気持ちはわかるが、これより先は命の取り合いとなってしまうであろう…」

 

 バロン王の言葉に、中庭に集った観衆が固唾を呑む。

 

「それでは、これにて解散!」

 

 

 バロンの人々が二人の戦いについて語り合いながらそれぞれの持ち場に戻る中、カインは腕を組んでバッツとセシルの方を見ていた。

 

「こんなものではなかった…」

 

「バロン王国最強の暗黒騎士が、クリスタルの力を持っているとはいえ旅人に負けるわけがないってことかい?」

 

 バロン王国暗黒騎士団長アルバート=ノートがいつもの微笑を浮かべてカインに問う。カインよりも十ほど年上だが、絹のような白い肌がそうは思わせない。暗黒騎士の鎧も相まって、不老不死の魔族を想起させられる。

 

「いや、逆だ――クリスタルの間でバッツが見せた力はこんなものではなかった」

 

 カインは表情を変えず、独り言をつぶやくように単調な声で告げる。

 

「手加減したって事かい?あのセシル君相手に?」

 

 困惑の表情を見せるアルバートにカインは首を横に振る。

 

「恐らくそうではない。クリスタルの力が、あの時よりも弱まっているのだろう」

 

「へえ…」

 

 よくわからない話だが、アルバートはバッツが戦う姿を見たのは今が初めてだ。ならば、カインの言うことを信じるほかはない。

 

「まあ、クリスタルの力がどうであれ、彼の身のこなしは本物だった。剣を使うところも見てみたかったね…」

 

 また薄く笑みを浮かべて、今度は見定めるようにバッツを見つめるアルバート。

 

 その視線の先で、バッツは自身の白魔法で傷を癒やしていた。

 

 

 




先行してCh.1-Gの修正を行いましたが、ジョブの力を発動するときの表記を変えました。
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