バロン王国八軍団の各団長とバロン王の作り出す厳粛な雰囲気に、バッツは気圧されていた。
「いやー、模擬戦が終わって直ぐだというのに、バッツ殿には申し訳ない」
朗らかに笑うバロン王オーディンにバッツは幾分か緊張が解れたのを感じる。
「右腕はどうですか?大丈夫ですか?」
白魔道士団長のローグ=バルトルは柔らかな笑みを浮かべてバッツに訊ねる。
「ああ、この通り」
バッツは突き出した右手で数回拳を握り、ローグがかけてくれた回復魔法が完璧だったことを示す。
「それはよかったです」
バッツの魔力では
「それにしても、凄かったね。まさかセシル君と互角に渡り合える旅人がいるとは思わなかったよ」
バッツを好奇の目で見る暗黒騎士団長のアルバート。セシルと同じく漆黒の鎧を身に纏っている。
「いやあ、アレはクリスタルの力があったからで…」
「バッツ殿はいつまでバロンにおられるのだ?よければ私ともお手あわせ願いたいものだが」
陸兵団長のグレア=ヴィーザルは褐色の肌から白い歯を覗かせて通りの良い低音を会議室に響かせる。
「皆様、雑談をするために集まったのではありませんよ」
苛立ちが含まれた声で、黒魔道士団長のノーティス=スルトルが眉を顰める。
「えっと……それでは、クリスタルの調査任務についての報告をさせていただきますね?」
ノーティスによって作られた静寂を見逃さず、セシルが本題を割り込ませる。
「以上が報告になります」
バッツやカインの補足を交えながらセシルが報告を終えると――いや、報告の途中から会議室はざわついていた。
竜の引く船に興味を示す海兵団長フェリーレ。セフィロスの名前が出た途端に目の色を変えたアルバートとグレア。バッツ達が魔法を使えるようになった事に関心を見せたノーティスとローグ。
ベイガンとバロン王オーディンは終始同じ表情で――その表情は対照的だったが――セシルの報告を聞いていた。
「皆様それぞれ気になることはあるでしょうが、重要なのは謎のご老人と砕けたクリスタル。そしてクリスタルの力を授かったバッツ殿達でしょうか。セフィロスの動向は気になりますが…」
軍団長達が好き勝手騒ぎ出す前にベイガンガ釘を刺すように話をまとめる。
「奴に関しては手掛かりがなさ過ぎる。あの様子からして、その辺を彷徨いてるとも思えんしな」
「かと言って、無視するわけにもいきませんが」
フッ、と笑うカインをセシルがフォローする。
「ところで、バッツ殿が聞いたクリスタルの声とは?」
「ああ、そうだった。確か、正しき心を持つものにクリスタルの力を授けるだとかなんだとか、そんな感じだったと思います」
「ふむ…その目的や理由などについては…?」
「特になかったかと思います…ですが、あの状況と感じたクリスタルの意思から、クリスタル崩壊の阻止なのではないか、と考えています」
「なるほど…」
ノーティスはバッツの話を聞いて何かを考えるように俯く。
「ところでよ、海竜なんて手懐けられるもんなのかよ」
場が停滞した隙を見てフェリーレが己の興味の対象について言及する。
「竜騎士ならば可能だろうな」
それに対してカインはキザな笑みを浮かべて返す。
カインの態度が気に入らなかったのかそれとも返答に納得がいかなかったのかその両方か、フェリーレは苛立ちを見せる。
「あ?海賊は竜騎士じゃねぇだろうがよ!」
「父親が竜騎士だったとか、そんなところだろう」
フェリーレの威圧感にも臆することなく平然としているカイン。
とりあえず、どうやら自分には海竜を従えることができないと分かった海兵団長は舌打ちしながらカインから視線を外す。
「ふむ……クリスタルに危機が迫っているとなれば、クリスタルに選ばれた戦士だけではなく各国が手を取り合ってその脅威に対抗せねばならんな。その手はずが整うまでは平時体制で任務にあたってくれ。今回はこれで解散とする」
八軍会議が解散となり、団長達が会議室から出ていくのをバッツは眺めていた。
この場に残る最後の軍団長となったセシルが席を立ち、バッツに目配せをして会議室をあとにする。
「ありがとう、バッツ」
「いや、助けになったのならよかったよ」
セシルに続いて会議室を出ると、セシルとバッツは握手をかわす。
「ところでカイン――ファリスの親父さんは竜騎士なのか?」
「さあな、そうでなければ海竜を従えていた理由がわからんというだけだ」
バッツは会議室でのやり取りを思い出して、セシルとバッツが出てくるのを待ってくれていたカインに聞く。ファリスの父親について言及していたので、てっきり個人的に知っている相手だったのかとも思ったが、単純に竜騎士の理屈を述べただけだったらしい。
「じゃあ、ファリスはなんで海賊なんかやってんだ?」
「それは本人に聞けばいい」
「それもそうだな」
竜騎士――竜を従えることができる血筋は非常に珍しい。一軍が成せる程に竜騎士の家系が存在するのはバロンとタイクーンくらいのものだろう。
力を絶やさぬためにも竜騎士の家に生まれた者はその殆どが竜騎士になると聞いたことがあるが、飛竜の減少も相まって近年ではそういうわけでもなくなってきているのだろうか。
「さてと、僕はバッツをタイクーンまで送っていくけど――カインはどうする?」
「そうだな、俺も行こう。レナとも話がしたい」
「相変わらずだなぁ、カインは……」
「俺は一人っ子だから」
臆面もなく従妹愛を見せるカインに、バッツはどこか落ち着かない気分だった。
カッコいいという理由で出したはいいけど全く上手くやれてないという…
政治的な部分はできるだけ誤魔化したい気持ちはありますが、どうせ趣味で書いてる小説なのでわからないなりにやってみるのもいいのかもしれないですね。
もっと創作的なハッタリを効かせるのが上手くなれるといいんですけどね