FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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場面は変わりましてバロン側のお話です。FF4組はそこそこ出番はあるのにまだ原作ストーリーに入ってないですからね…


I.「招かれざる者」

Main Character:セシル=ハーヴィ

Scene:バロン城

 

 バッツ達が次の目的地をミシディア国へと定めた日の夜。遠く離れたバロンにて、セシルはクリスタルの4戦士同様に、クリスタルについて思案を巡らせていた。

 

(風のクリスタルが失われた今、残るは火、水、土――風が止まる以外に大きな異変は確認されていないから、まだ無事なのだろうけど――)

 

 クリスタル所有国は国力のバランスを考慮して選定されたという背景がある。バロンがクリスタルの所有国とならなかったのは、当然その強大な軍事力が理由だ。バロンの姉妹国であるタイクーンの風のクリスタルが失われたこのタイミングで、クリスタルの守護のために各国へバロン軍を配置するなどと申し出たところで侵略行為と見做されることは間違いない。

 

(ままならないな――)

 

 バロン軍最強の『赤い翼』の最年少団長と持て囃されていても所詮は人の子。自分の力では世界の驚異に対して、そもそも行動を起こすことすら出来ないのかと、己の無力に歯噛みするセシル。

 

(いや――必ずバロン軍の力が必要になるときは来る。僕は、その時にこの剣を振るうだけだ――)

 

 自室の壁に掛けられた暗黒の剣を見やりながら、セシルは己が為すべきことを胸に誓う。

 

 ふう、と一息付き思考を落ち着かせ、就寝前の文書作成に取り掛かろうとした次の瞬間――未だ嘗てないほどに強大で禍々しい気を感じ取るセシル。

 

 (負の力(ダークフォース)!?一体誰が――いや、何だこの圧倒的な出力は――)

 

 負の力(ダークフォース)ではセシルを凌駕する暗黒騎士団長アルバート=ノートですらここまでの圧力を放つことはない。そもそも、セシルが感じ取った負の力(ダークフォース)の質は、アルバートのそれとは似ても似つかないものだった。

 

 セシルは自室からバルコニーに飛び出して辺りの様子を探る。バロン城の中庭、城下町、それらを囲うように広がるバロン平原、何れにもこれと言った異変は見られない。

 

(城内――侵入者か!)

 

 セシルは寝間着のまま暗黒剣だけを手に取り駆け出す。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 「セシル君、キミも――」

 

 謁見の間前の広間にたどり着いたセシルは、アルバートと鉢合わせる。その様子から、やはり先程の負の力(ダークフォース)は彼のものではなく、セシルと同じく異様な気配を感じ取りここまでやってきたのだろう。

 

 ここまで来ればはっきりとわかる。先程の負の力(ダークフォース)の使い手は、この先――謁見の間にいるということが。

 

「ええ、間違いないです。我々の知らぬ暗黒騎士が、謁見の間に――狙いは、やはり……」

 

「行くよ!」

 

 ということは、謎の負の力(ダークフォース)の使い手はバロン王を襲いに来た可能性が高い。その気配が今、謁見の間に感じられると言うことが何を意味するかはわからないが、これ以上無駄口を叩いている暇がないことは確かだ。セシルとアルバートは、普段の入室の儀礼を行わずに謁見の間に突入する。

 

「ほう――まさかここに来る者がいるとは。なるほど、暗黒騎士か――」

 

 謁見の間にで待ち受けていたのは、二人が普段身につけている物に良く似た黒き甲冑――つまり暗黒騎士の鎧を身に纏う者だった。だが、二人と決定的に違うのは、その者が武器を持っていないことだ。

 声からすると、その人物は男であり、武器を持っていないことから暗黒魔道士であると推測される。

 

「キミは一体何者だ。いや、何が目的で此処に?」

 

 落ち着いた問いかけとは裏腹に、暗黒剣の切っ先と共に凄まじい殺気を甲冑の男に向けるアルバート。歴戦の騎士の殺気に負の力(ダークフォース)の圧力まで加わったアルバートの威圧感。そんなものを向けられれば並の戦士であれば正気を保っていることすら不可能であるが、甲冑の男は意にも介さぬ様子。それだけで、この男が只者でないことがわかる。いや、そもそもこの男が放つ負の力(ダークフォース)の圧力は本当に人間かどうかも疑わしい程のレベルのものだ。

 

「別に私は貴様らと此処で事を構えるつもりはない」

 

 甲冑の男が言葉を発するだけで、心が――体が――負の力(ダークフォース)に侵されてゆく。暗黒騎士が故にセシルとアルバートにとってはただのプレッシャーとして耐えられているが、これ程までの負の力(ダークフォース)に当てられればあのカイン=ハイウインドですら――いや、バロン王国最強の騎士であるオーディン王ですらも身体に異変の一つや二つ生じても不思議ではない。

 

「ふざけるな!だったらさっきの負の力(ダークフォース)は何だ!!」

 

 暗黒の剣を肩の高さに水平に構え、セシルが吠える。だが、まだ負の力(ダークフォース)は発していない。

 

「いや、なに――私はただ挨拶に来ただけだ。その用も終わったがね」

 

 甲冑の男がゆっくり腕を横に伸ばすと、その手の先に厚みのない円形の暗黒の渦が出現する。そして、甲冑の男は暗黒の渦に向かって歩を進め、その中へと入ってゆく。

 

「待て!!!」

 

「セシル君っ――」

 

 アルバートの制止よりも先に、セシルの暗黒の剣から漆黒の波動が放たれる。波動は暗黒の渦に入っていく最中の男を襲うが、男の1メートルほど手前で霧散してかき消える。

 

(なっ――)

 

「良い負の力(ダークフォース)だ――しかし、私には届かんな」

 

 そのまま男は暗黒の渦と共に完全に姿を消す。あれほど不快だった負の力(ダークフォース)の気配も、綺麗さっぱり残滓すらも感じられなくなっていた。

 

 




そろそろバトル展開を……ということでFF5組の移動中にFF4の話を進めようと思っていたのですが、結局殆どバトルがなくなってしまいました…!
セリフの通りですが、よくよく考えると甲冑の男としてはドンパチやる理由が特にない、と言うよりは下手に事を荒立てるのは都合が悪いのでこのような展開になりました(セシル達がやってきてしまったのは本当に想定外だったみたいです)。
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