FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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CHAPTER 3 「別れ征く道―Faith―」
プロローグ


「それで――アナタ達はのこのこのこのこ帰ってきたというわけですかぁ?」

 

「面目も…ございません…」

 

 ガストラ帝国、ベクタ城――その地下の尋問室にて帝国魔道士ケフカ=パラッツォによる尋問を受けているのは、敵国の兵士ではなくガストラ兵二人――ビッグスとウェッジ、氷漬けの幻獣捕獲の任務に失敗した帝国兵達だった。

 

「面目なんかどーーーでもいいんですよォ!幻獣!ボクチンが欲しいのは、げ・ん・じゅ・う!!」

 

 ジドールのオペラ劇場かゴールドソーサーのGOLD STAGEでしか見たことがない道化師(ピエロ)のような格好をしているケフカは、その白塗りの奇妙な顔を帝国兵に近づけ、二人を怯えさせる。

 

「やはりここか!ケフカ!」

 

 尋問室の扉を勢いよく開けて中に入ってきたのは帝国将軍セリス=シェールだ。

 

「おやおやセリス将軍?アナタがここに何の用ですかァ?」

 

「何の用ですか、ではない!二人は私の部下だ。勝手なマネはよしてもらおう。それに、貴様には将軍相当の権限が与えられてはいるが、人事権は持たないはずだろう!」

 

「はてはて、そうでしたかなァ?ハーッハ、これは失礼しました〜☆」

 

 ケフカは終始人を舐めたような態度を貫いたまま尋問室を後にする。

 セリスが尋問室の扉を閉めてから、二人の部下に対して頭を下げる。

 

「すまない、二人とも。私というものがありながら――」

 

「いえっ――幻獣確保に失敗したのは、紛れもない事実ですので」

 

「報告書は読んだ。青い装束の男がティナを連れ去り、魔導アーマーは金髪の大剣使いに破壊されたのだったな」

 

 セリスはケフカへの剣幕のせいで乱れた金の長髪を整えながら、机を挟んで二人の正面に座る。

 

「この大剣使いはソルジャー――しかも、クラス:1stのザックスか。私やレオ将軍ですら手に余るかもしれない大物だ。仕方がないさ。敵戦力の見立てが甘かった――」

 

 セリスの表情に悔しさが滲む。

 

「まあ、お前達があのザックスを相手に生きて帰ってこられただけでも、私は嬉しいよ、ウェッジ、ビッグス」

 

 とりあえず今はその悔しさは忘れ、無事な帰還を喜び、二人に微笑むセリス。

 セリスに笑みを向けられた二人の帝国兵は頬を染めて視線を泳がす。無理もない、ガストラ帝国のセリス=シェールと言えば、オペラ劇場の若手人気女優マリアにも負けず劣らずの美貌を持つと言われている女性だ。その膂力も魔導技術によるブーストの恩恵によるものの為、体つきも一般的なティーンエイジャーの女性と何ら変わりはない。そんな美しき乙女に優しい言葉と笑みを向けられて動揺しない男などいないだろう。

 ただ、帝国兵二人が落ち着かない理由はそれだけではなかった。

 

「あ、あの――大変、失礼ですが――ウェッジとビッグスではなく、ビッグスとウェッジです」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ビッグスとウェッジに暫くの休暇を命じて、逃げるように尋問室から出てきたセリスは手でパタパタ顔を扇ぎながらベクタ城内を歩いている。

 

(は、恥ずかしい――)

 

 部下の名前を正確に記憶していないのは部隊をまとめる将軍としては失格なのだが、如何せんあの二人は兄弟でもなんでもないのに顔というか、雰囲気が似すぎている。事実、同じシェール隊の帝国兵達も彼ら二人を確実に見分けられるのは片手で数えられるほどだった。

 

「セリス将軍、こちらにおいででしたか」

 

「ん、私に何か用か?」

 

 セリスに話しかけてきたのは、シェール隊所属の帝国兵。つまり、セリスの部下の兵士だ。

 

「皇帝陛下がお呼びです」

 

「ありがとう。すぐに向かう」

 

「ハッ!」

 

 セリスの部下の兵士は、セリスに敬礼をした後直ちにその場を去る。

 

(要件は何だろうか。やはり、幻獣捕獲作戦の件だろうか)

 

 どうせすぐにわかることだ、と考えるのをやめ、セリスは謁見の間へ入る。

 

「セリス=シェール、ただいま参上いたしました」

 

 セリスは口上を述べ、90度に曲げた腕を水平にしながら片膝を付き皇帝陛下の前に頭を垂れる。

 

「表をあげよ、セリス」

 

 ガストラ皇帝の重く強い声が響く。

 

「此度のナルシェの幻獣確保の任務については、誠に残念であった。この件については、また改めて作戦の通達を行う。次こそは確実に――」

 

「ハッ!」

 

「で、今回貴殿を呼び出したのは別件だ」

 

 まさか、幻獣の確保以上に優先する事項があるとは予想もしておらず、セリスの表情に驚きの色が現れる。

 

「先日、バロン王国より使者が訪れてな。会談の申し出があってな、これを受けようと考えておる。して、その会談にはセリス将軍――貴殿に参加して貰いたい」

 

「承知致しました。では、陛下はご出席なさらないということですか?」

 

「うむ。会場はバロン城という指定でな、流石にワシが城を離れてバロン城に赴くわけにもいかんのだよ」

 

「そういうことでしたか。しかし、使者が来ているというのであれば、ガストラでの開催でもよかったのではありませんか?」

 

 なぜ二度手間となるような真似をするのかわからず、つい疑問を口にするセリス。

 

「ワシもその使者殿に聞いたのだが――どうも、バロン側はどうしても王の居る場での会談をご希望のようだ。まあ、大国の余裕――驕りであろうな」

 

 セリスもガストラ皇帝と同意見だ。

 

「なるほど、お話はわかりました。では、バロンの使者が来ているということは、その使者と飛空艇に同乗してバロンに赴けばよろしいのでしょうか?」

 

 流石にガストラからバロンまでとなると、徒ではどれほどかかるか分かったものではない。

 

「それがの、セリス。バロンの使者殿は転移魔法が使えるということでな、飛空艇を先にバロンに帰らせたのじゃよ。恐ろしいことよな」

 

 皇帝が恐ろしい、と言ったのは恐らくセリスが同様にそう感じたのと理由は同じであろう。国から別の国まで飛べるほどの空間転移など、普通に考えて人間が扱えるような代物ではない。そんなことが出来るのは、世界の法則に干渉ができる上位の幻獣や時空間操作に長けた中級幻獣くらいのものだ。

 しかも、それを魔法については他の国の後塵を拝しているバロン王国の人間が可能であるとなれば、最早バロンに弱点など存在しないということになる。

 そのように力を見せつけられながら会談の申し出となれば、ガストラ皇帝も邪険には扱えないだろう。

 

 何故、バロンの使者がガストラとの往復をそれぞれ違う手段で行うのか、理由は色々考えられる。やはりそれだけの大魔法、そう何度も使えるとは考えられない。仮に可能だとしても、膨大な魔力反応は誤魔化せないだろう。魔導の力を持つガストラの将軍であれば即座に感知できる。会談の申し出の前に余計な揉め事はバロン側としても避けたいはずだ。

 そして、帰りに飛空艇を使わないのも単純な話、バロンの戦力の要である飛空艇を、軍事行動でもないのに長々と他国に置いておく理由はない。可能な限り手元に置いておきたいはずだ。

 

「では、早速バロンの使者との面会を果たしたいと思います。使者殿は何処へ?」

 

「客室で貴殿を待っておるよ。あちらも中々急ぎのようでな、そのまま使者殿とバロンに向かってくれて構わぬ」

 

「ハッ!」

 

 セリスは再度皇帝に敬礼をし、謁見の間を後にする。

 

 

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