忙しかったってのもあるんですけどこういう会話中心の展開だとなかなか筆が進まず…………
Scene:ミシディア
「クリスタルの戦士達よ。ようこそおいでくださいました」
案内人に連れられてバッツたちがやってきたのは「祈りの館」と呼ばれる施設。ミンウがバッツ達を迎える傍ら、ミシディアの魔道士達数人が奥の部屋に向かって祈りを捧げている。
「この奥には…」
「ええ、ミシディアのクリスタル―水のクリスタルがあります。本来なら、客人を招くような場所ではありませんが、クリスタルの力を授かった方々であれば話は別です。さあどうぞ…」
そう言って先にクリスタルがあると云う奥の部屋へと入るミンウ。
魔道士達がクリスタルのある部屋ではなくその前の大広間で祈りを捧げ手いる様子を見るに、恐らくこの先は魔道士たちにとって特別な場所なのだろう。そのような場所に日夜祈り続けている魔道士達を差し置いて入ってしまってもよいのだろうか、と不安が過るものの彼らはバッツ達を気に留める様子もなく祈りを続けている。
「おい、バッツ。なにしてんだ。早く行くぞ」
部屋の入り口まで差し掛かったファリスが立ち止まっているバッツに気づいて声をかける。
「ああ、悪い!」
ファリスに急かされて入った先の光景は、風の神殿のクリスタルの間と全く同じものだった――元の形を保ったままのクリスタルが部屋の中心に浮かんでいることを除いて。
「これが、クリスタル――」
完全な形のクリスタル。淡い光を放ちながらその場で緩やかに回り続ける巨大な結晶。その神秘的な光景に驚く一方で、初めて見るはずなのにどこか懐かしさを感じる不思議な感覚。
「初めて見るはずなんじゃが、なんとなくそんな感じがせんのぉ」
「まあ、砕けてたとはいえクリスタルは見たことあるし。じーさんの場合は、記憶喪失になる前に見たことあるのかも知んねぇよな。なんだか、クリスタルに無関係でもなさそうだしよ」
「風の神殿で、クリスタルの記憶を見せられたせいかもしれないですね」
ガラフたちのやり取りからも、皆がバッツと同じ感覚に陥ったことが察せられる。
「なるほど、クリスタルの記憶ですか。それはなんとも――やはり、クリスタルの戦士とは世界にとって特別な存在のようですな」
一人何かに納得したかのように頷きながらミンウがバッツたちに声を掛ける。
「ですが、水のクリスタルからは特に何もないようですね…」
「そうだな。目で見なくてもそこに強大な力があるってことはわかるんだけど…」
魔力とは微妙に異なる圧力――もっと根源的な力の塊のような気配をクリスタルから感じる。
「ほら、あん時はクリスタルとしても緊急事態だったし、クリスタルもオレらの体に取り込まれたし、色々勝手が違うんじゃないか?」
「さすがにこのサイズのクリスタルが体の中に入るとは思えんしのぉ…」
風の神殿でバッツたちに吸収された形で力と声を授けた風のクリスタル。それは物質的に彼らの体の中に入り込んだわけではなくあくまでも力――エネルギーのような形で取り込まれたものであり物体としてのサイズは関係ないのだが、完全な形のクリスタルから感じられるエネルギーの大きさは、確かに人の体でそのすべてを受け止められるとは到底思えない程だった。
「あの…クリスタルに、触れてみてもよろしいでしょうか?」
そう切り出したのはレナ。確信めいたまっすぐな瞳でミンウを見つめる。
「クリスタルに…?ええ、それはもちろん構いませんとも。クリスタルとそれに選ばれた戦士たちの間で起こる何か。私も興味があります故――」
ミンウの許可を得たレナが前に進み、クリスタルの前に立って胸に手を当て深呼吸。
「大丈夫か?不安なら、代わりに俺がやるけど…」
「ありがとう、バッツ。でも、大丈夫よ。水のクリスタルが私を呼んでる。そんな気がするの――」
バッツの声に振り返ることなく、レナはさらに前に踏み込みクリスタルに手を伸ばす。レナの手が触れる直前、クリスタルが一瞬その輝きを増し、バッツたちの脳内にとあるイメージが流れる。
青白い甲冑を身に纏った何かと、それに対峙する四人の戦士。
「今のは…?」
「ティナの時みたいに…」
「これもクリスタルの記憶なのか…?」
またも身に覚えのないイメージを頭の中に流されて困惑するクリスタルの戦士たち。だが――
「あれは…ワシじゃ…」
ガラフだけは他の皆とは異なり、先程のイメージに心当たりがあった。
「ってことは、さっきのはクリスタルの記憶じゃなくて、ガラフの記憶なのか?」
「はっきりとは思い出せんが、アレもクリスタルの記憶じゃろう」
バッツの問いを否定するガラフ。言葉の通り、流れたイメージの出来事を思い出したわけではないが、以前の自分がクリスタルに何かしら関係のある人間あったということは確信した。
「じゃが、先程のイメージに出てきた者たちの名はわかる。青白い甲冑の魔道士はエクスデス――そして、それに対峙する四人の戦士は、ワシ、ゼザ、ケルガー、ドルガン」
最後に出た名前を聞いて、バッツとレナの表情が一変する。ドルガン――バッツの父親と同じ名前。
「ガラフ、今…ドルガンって…」
「ああ、あの四人の戦士の中で一番若い男がドルガン――ドルガン=クラウザーじゃ」
「クラウザーって…バッツの…?」
ドルガンの名を知らなかったファリスがここで驚く。
「ん、そうか…クラウザー――バッツと同じ姓じゃの。もしや、おぬしの父親は――」
「ああ、俺の親父はドルガン=クラウザー――今、ガラフが口にした名前と同じだよ」
「そうか…じゃが、思い出せるのは名前だけじゃ。何故ワシらがエクスデスと対峙しておったのか、何故クリスタルがそれを知っておるのか、何故ワシとドルガンが共に戦っておったのか――それが全く思い出せんのじゃ」
未だにはっきりしない記憶に、眉を顰めるガラフ。
や
「でも、ちょっとでもガラフの記憶が戻ったならよかったよ。それに、水のクリスタルが俺たちに新しい力を授けてくれたみたいだぜ?」
クリスタルが授けてくれたのは過去のガラフの記憶だけではない。風のクリスタルを取り込んだ時と同様に、古代の戦士の力が新しくバッツたちに宿っているのがわかる。
「レナ様が水のクリスタルに触れたことで何かが起きたようですな。私からはわかりませんでしたが、この場に立ち会えたことを光栄に思います」
クリスタルの戦士たちと同じ体験はできなかったが、それでも彼らに何かが起きたことをミンウは察しており、ミシディアの魔道士としてこの貴重な場を共にすることができたことに感謝してバッツたち、そしてクリスタルに向けて頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとうございます。ミンウさんのおかげで、私たちはまた新たな力を手にすることができました。そして、私達クリスタルの戦士が戦うべき相手も――」
「エクスデス、か――」
ガラフ曰く、先程のクリスタルの記憶に出てきた甲冑の魔道士の名はエクスデス。ただ記憶の断片を覗いたに過ぎないが、アレが世界に禍をもたらす者だという事だけは確かに感じられた。
「ミンウ様!!」
ミシディアの若い魔道士が一人、慌ててクリスタルルームへとやってくる。
「何事じゃ」
「それが……バロン軍――『赤い翼』と竜騎士団がいきなりやってきて……水のクリスタルを寄越せと……!」
「何じゃと!?すぐに行く!申し訳ございません、レナ様。緊急事態のようで…」
余りにも予想外の来訪者の余りにも横暴な要求驚きのあまり声を荒げ、クリスタルルームの外へと駆け出すミンウ。
「『赤い翼』と竜騎士団って……まさか、セシルさんとカイン兄様?」
「そうかもしれない。俺達も行こう」
バッツの言葉に頷く3人。そして、直ぐにミンウを追って祈りの館の外へと向かう。
驚きの展開!次回は一体どうなるのやら!!みたいな引きですけど、こうなるのは皆様わかってましたよね……(笑)