FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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不穏なタイトル


D.「裏切り」

Main Character:バッツ=クラウザー

Scene:ミシディア

 

 バッツ達が祈りの館のから出ると、ざわつくミシディアの人々の向こうには見覚えのある鎧姿の集団――バロンの軍人達がこちらに向かって来ている。

 

 そして、その集団の先頭に立つ人物は――

 

「セシル…カイン…」

 

 予想通り、風の神殿にて共に戦った二人の騎士だった。

 

 引き連れている兵隊は20人余り。飛空艇団の割合が大きく、竜騎士は5人程度のようだ。

 

「これはこれは。バロンの若き軍団長お二人がこのような辺境の村に何用で?」

 

「恍けないでもらいたいな。要件は伝えたはずだ。即刻、我々に水のクリスタルを引き渡せ――と」

 

 作った笑みでバロン軍の前に立つミンウ。フェイスガードを上げた暗黒の兜から覗く、ミンウに向けられたセシルの瞳は酷く冷たいものだった。真面目な奴だという印象は初対面の時から有りはしたものの、今の彼の雰囲気はただ与えられた命令に従う機械のような無機質さを感じさせられる。

 

「おい、セシル!」

 

 セシルの物言いに堪らず、バッツがミシディアの人々を掻き分けて前に出る。

 

「君は――何故ここに……」

 

 セシルは老人の代わりに自分に相対した青年を見て表情に困惑を滲ませる。

 こうなる可能性を考えていないわけではなかった。クリスタルを狙うとなれば、クリスタルに選ばれた戦士達と遭遇することもあり得るだろう。だが、まさか最初の水のクリスタルでいきなりとは流石に思っていなかった。

 

「それはこっちのセリフだ!なんでセシルが――バロンがクリスタルを狙ったりなんか……!」

 

「陛下のご命令だ。クリスタルに驚異が迫っている今、バロンで守護すべきだと――」

 

「ふざけるなよ!だったら、なんでこんな強引に奪いに来るような真似を!」

 

「ふざけてなんかいない!陛下の――オーディン王のご判断だ!」

 

 セシルの反論に食い下がるバッツ。だが、バロンの軍人として、王の命令を受けた以上セシルも引き下がるわけにはいかない。

 

「陛下陛下って――お前はどうなんだよ、セシル!こんなことが、本当に正しいと思ってるのか!?」

 

「陛下の意思は、僕の意思だ――」

 

 ここで二人の問答は終わりを迎える。決して相容れない意見の相違。となれば、残る手段は唯一。

 

「そうかよ。でも、お前に――いや、バロンにクリスタルは渡さない」

 

 バッツは腰の愛剣を引き抜き、その切っ先を暗黒騎士へと向ける。

 

「待って、バッツ!相手はセシルさんよ!?」

 

 バッツに遅れてミシディアの人々の前に出てきたレナが諌める。だが、バッツの意思は固く、レナの声に振り向きもしない。

 

「バッツ……」

 

「まあ、仕方ないんじゃねぇか?みすみすクリスタルを渡すわけにもいかねぇし」

 

 いつもと様子の違うバッツに不安を覚えるレナ。彼女の肩に手を置いて諌めるファリスにも同様の戸惑いはあるが、このまま黙ってバロンの言い分を受け入れるわけにはいかない。以前セシルと手合わせをしたらしいバッツが戦意を見せているのであれば、まずはバッツにこの場を任せてみるというのがフォリスの判断だった。

 

「大した自信だな。今度は勝たせてもらう」

 

 バイザーを下ろし、暗黒の剣を水平に構えてセシルも戦闘態勢に入る。

 お互いがお互いに刃を向け、その場に張り詰めた空気が流れる。バロン城の中庭では中断となった二人の模擬戦。ミシディアの地でその続きが今始まろうとしている。

 

暗黒

 

 先に動き出したのはセシル。負の力(ダークフォース)の奔流がバッツへと迫る。

 

ナイトアビリティ・守りの盾

 

 しかし、それはバッツが呼び出した光の盾に遮られ、かき消される。

 

「見せてやるよ。俺たちの新しい力を!」

 

 柄を両手で握り、剣を垂直に立てるバッツ。瞳を閉じ、意識を集中させる。イメージするは闇に生まれし精霊の吐息。その冷気を自らの剣に纏わせる。

 

魔法剣ブリザド

 

 バッツが剣を天に掲げると同時に刀身が魔力の光を放出。そのまま、バッツの剣を包み込むように収束し刃が淡い青色へと変わる。

 

「あれは、魔法剣――」

 

 バッツが見せた力の何たるかを理解したのはミシディアの長、ミンウだった。

 

 魔法とは、自身の理解するこの世の現象を魔力という資源に乗せて世界に伝達し、世界の記憶の再現として様々な現象を引き起こす技術である。現象に対する自身の理解と世界の理解を一致させるための技法として詠唱の研究が重ねられた結果、現在の魔法体系が確立している。

 

 魔法剣も根本の考え方は魔法と同等である。イメージを乗せた己の魔力を武器にまとわせる事で、その一振り一振りが魔法に於ける詠唱に相当する行為となる。ただし、単に魔力を武器に纏わせれば良いというだけの代物ではない。

  

 詠唱という言葉による伝達方法を用いないという事はつまり、自身の動作を以て世界に現象のイメージを伝えなければならない。体内のエネルギーの流れ、そしてそれにより引き起こされる自身の動作を正確に把握しなければ、イメージが世界に正確には伝わらず、現象を再現させるには至らないのだ。

 

 つまり、魔法剣には魔法技術の習熟と身体操作の正確さが要求されることになる。加えて、魔法技術と武器・格闘による戦闘技術はそれぞれ独自に発展し高度化したため、実用に耐えうる魔法剣の習得には更に高度な技術が要求される。有り体に言えば、習熟効率の悪い戦闘技法という扱いになり、次第に使い手の数を減らすこととなった。

 

 今や古い文献に存在を残しているのみとなったため、目の前で起きている事の重大さをこの場で理解しているのはミンウただ一人である。

 

(剣が青く……『ソウルイーター』と似たような技か?)

 

 正体不明の技に警戒を強めるセシル。だが、その警戒心の奥に潜む恐怖という感情こそが負の力(ダークフォース)の源である。

 

 負の力(ダークフォース)を操る暗黒騎士に求められる資質は恐怖に打ち克つ心を持つことであるが、それは恐れを知らぬということではない。暗黒の力を操るために必要なのは、恐れを知った上で尚も引き下がらぬ勇気である。

 

「行くぞ、セシルッ!」

 

 地面をえぐりながら駆け出すバッツ。セシルの眼前に、青い光をまとった剣が振り下ろされる。

 

「ちいッ!」

 

 暗黒の剣を構えたまま後退するセシル。バッツの剣は空を切り、逆にセシルの黒刃の切先がバッツへと向けられる。

 

(この距離なら逃れられまい!)

 

ソウルイーター

 

 剣を振り下ろした無防備な体勢のバッツに暗黒の刺突が迫る。

 

バキンッ

 

――が、それはバッツには届かず、先程のバッツの剣撃の軌道から伸びるように出現した氷塊に阻まれた。

 

「何ッ――」

 

 剣に纏わせていた負の力(ダークフォース)を放出して氷塊を霧散させ、再度体勢を整えるセシル。だが、それはバッツ=クラウザー程の使い手相手には致命的すぎる隙となった。

 

「終わりだ」

 

 セシルが剣を構え直すより早く、バッツの剣がセシルの暗黒の鎧の上から胴体を薙ぎ払う。更に一瞬遅れてバッツの剣を後負いするかのように氷の刃が出現し、セシルを襲う。

 

「ぐぁっ!」

 

 魔法剣の2連撃を受けて堪らずカインの元まで後退するセシル。

 今のバッツ=クラウザーの強さは異常だ。バロン城の中庭で戦ったときとは比べ物にならない。あの時は手を抜かれていたのか。それとも、"新しい力"によるものなのだろうか。考えても答えは出ないが、セシル一人でこのバッツを倒すことは不可能。それだけは間違いない。

 

「すまない、僕一人ではどうにもならなさそうだ」

 

「今のアレには俺達二人がかりでも――いや、ここにいるバロン軍が束になっても勝てんだろう」

 

 それに、バッツ以外のクリスタルの戦士達もいる。仮にバッツ一人を打ち負かすことができたとしても、同等の力を持った相手をあと3人倒すことは流石に不可能だ。

 

「くっ――だったら、撤退するしかないのか……?」

 

「ああ、そうだな。だが、バロンに帰るのはセシル、お前一人だ」

 

「カイン?それはどういう――」

 

 一人?どういうことだ。まさか、カインは自らが殿を努めて他の仲間を逃がすと言っておるのか。そんなことをせずとも大人しく撤退すればバッツ達は見逃してくれるはずだ。

 

 カインの不可解な発言に振り向くと、そこには自分に槍を向ける親友の姿があった。

 




裏切りといえばこの男!
それにしてもちゃんと決まることがない技、ソウルイーター。
2回とも撃ってる相手がバッツなのが悪いんですけどね…
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