FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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お久しぶりです


A.「大男」

Main Character:バッツ=クラウザー

Scene:ファブール城下町

 

 煌びやかな街並みを眺めながらファブールの城下を歩くバッツ達。投入された資財の大小で言えばミッドガルには遠く及ばないであろうが、あちらは都市機能──つまりは、利便性や安全性などの実利に振り切った、極めて規格化された最先端の都市である。

 ファブールはその真逆と言ってもいいだろう。絢爛な見た目とは裏腹に、生活のための機能は必要最低限。ファブール教の信徒としては、過ぎたる利便性はむしろ邪魔なものであり、その分浮いた財貨で見た目をこれでもかと設えることで、街そのものを観光資源とかしているように見える。布教という目的を考えれば、ファブールの都市構造はミッドガルとは違ったアプローチで合理性を実現していると言える。

 

 そんな人の興味を引くように作られた街並みに気を取られていたバッツは、進行方向の何かに思いっきり衝突して尻もちをつく。

 

「っ──」

 

 壁にでもぶつかったかのような衝撃。しかし、見上げた先にいたのは大男。

 特別な肉体鍛錬こそは行ってはいないものの、旅にて培われたバッツの足腰は常人とは比較にならないほど強い。そんなバッツとの衝突をものともせずに受け止め跳ね返す程の強靭な肉体。バッツはすぐにファブールのモンク僧に思い至るが、目の前の男にはモンク僧と決定的に異なる点がある。

 

 普通に髪が生えているのだ。

 

 ファブール教のモンク僧は髪をすべて剃り上げる、若しくは後頭部以外を剃り上げて残った頭髪を三つ編みにして垂らす──後者は"辮髪"と呼ばれる──独特な見た目をしている。

 

「バッツ!?」

 

 驚きのあまり混乱を抱えたまま目の前の男の素性を探るのに気がついていたバッツだったが、駆け寄ってくるレナの声でふと我に返り、大事なことを忘れていたのに気がつく。

 

「すみません…!前見てなくて…!」

 

「いやいや、こっちこそ気づかなくて悪かったな」

 

 大男はバッツがぶつかってきた事を気にする様子もなく、満面の笑みを浮かべながら手を差し出す。バッツがその手を握り返すと、男は腕の力だけでバッツを引き上げる。

 

「ファブールには来たばっかりだろ?仕方ねぇよな。こんだけギラギラしてたら、目も奪われるってもんだ」

 

「ありがとうございます。貴方も、ファブールの人ではないんですか?」

 

「ん、ああ。修行の一環でちょいとファブールにお邪魔しててね」

 

 修行──ということは、武術家の類だろうか。であれば、バッツを跳ね返しただけの肉体の強さにも納得はできる。などと、また男が何者であるか考えていると、男の方も同じようにバッツを観察しており──

 

「アンタ、中々やれそうだな。詫びを要求するってわけじゃないが、よかったら手合わせ願えないか?」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「ヤン僧長。ちょっと訓練場借りるぜ。今の時間は空いてるよな?」

 

「マッシュ殿か。おや、そちらの方々は?」

 

 大男──マッシュに連れられてファブールの訓練場へと向かっているバッツ達が遭遇したのは、今度こそ辮髪──つまり、モンク僧の男に出会う。バッツよりは少し高いがマッシュよりは低い背丈。しかしながら、巌のように鍛え上げられた身体が放つ存在感はマッシュのものとそう変わりない様に感じる。

 モンク僧長──ヤン=ファン=ライデン。ファブールにおいて最強の戦士である。

 

「えーっと、バッツと……そういや、他は名前聞いてなかったな」

 

 道すがらマッシュとバッツはお互いに名前を聞いてはいたが、レナ達3人は自己紹介するタイミングがなかった。いや、タイミングの問題と言うよりはマッシュの興味がバッツに向きすぎていたのが原因だろう。

 

「ファリスだ」

 

「ガラフじゃ」

 

「──レナです」

 

 別に名前が知りたかったわけではないヤンが何かを言おうとする前に、バカ正直に名乗るファリス。流れのままに続くガラスと、戸惑いながらも自分の名前を口にするレナ。

 

 レナの名前を聞いてピタリと動きを止めるヤン僧長。そして、また彼が何かを言おうとする前にマッシュが口を開く。

 

「桃色の髪に、レナ──もしかして、アンタ、タイクーンの?」

 

「はい…タイクーン王国第二王女、レナ=シャルロット=タイクーンです…」

 

 またも躊躇いがちに身分とフルネームを明かすレナ。バツの悪そうに目を泳がせるマッシュ。そして、鍛錬の一環かと思うほどの深い溜息をつくヤン。

 

「マッシュ殿──」

 

「いや、悪かったって。まさか、王女様がお忍びでファブールに来てるなんて思わなくて」

 

「いえいえ、お気になさらず。元々はバッツがマッシュさんにぶつかったのが悪いので」

 

 レナの発言を聞いて、ヤンが分かりやすく肩を落とす。先ほどまでの迫力はどこへやら、市井の壮年男性と変わらない程に威圧感が消え去る。

 

「じゃあ、レナ王女のお許しも得たことだし、訓練場に行こう」

 

 調子良く話を元に戻したマッシュの後を追うバッツ達が聞いたのは、「全く──」というファブールモンク僧長のボヤきだった。

 

 




マッシュとヤンのダブルモンク登場です。
とは言っても、FFUにおける現代の「モンク」はファブール教の僧侶のことを指すので本作のマッシュはモンクではなく「格闘家」や「武術家」と呼ばれる存在になります。
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