FINAL FANTASY Union   作:緑汁

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ようやく本編です。二つ名(?)サブタイトルは序章だけにするつもりだったのですが…


A.「風の旅人」

Main character:レナ=シャルロット=タイクーン

Scene:タイクーンの森・隕石周辺

 

 

 

 

「っ………!」

 

 土の上で目を覚ます。初めての経験だった。

 

「あっ…!」

 

 体を起こそうと地面についた手が土で滑り、再び体が地面に叩きつけられる。こうやって土に触れたのは何年ぶりだろうか。母なる大地との触れ合いへの感傷を抑えて、レナは今の状況をもう一度整理する。

 

 風の異変を感じ取った父が風の神殿へと向かった。その直後、風が止まった。風の神殿――正確には、その最奥に佇む風のクリスタルに何か異変があったのでは、とそこへ向かった父の身を案じて単身で飛竜に乗り風の神殿へ向かう途中、突如飛来した謎の隕石がタイクーンの森へ落下した衝撃で気絶し自身も森へ落ちたのだ。

 

 その隕石は今レナの前に鎮座している。隕石が巻き上げた砂埃のせいで、空気が淀んでいるように感じる。だが、隕石の落下からあまり時間は経っていないということだろう。

 

 そう長くは気絶していなかったことがわかり、とりあえず落ち付きを取り戻すレナ。今すぐにでも風の神殿へと向かいたいところだが、風の異変と隕石の飛来、これらが無関係だとは思えなかった。

 今度こそ立ち上がり、隕石を見上げる。輪郭はハッキリしないが、タイクーンの森の木々をゆうに超える大きさだ。

 

(これだけの大きさの隕石が降ってきて、この程度の衝撃で済むのかしら…?)

 

 レナは隕石が空のさらに上――宇宙から降ってくるところを目撃したわけではない。だとしたら、この隕石は宇宙から飛来したものではなく超常的な力で空に出現したものではないだろうか。

 

(ひとまず、タイクーンに戻って調査隊を派遣させなくては…)

 

 これだけの隕石が落下したのだから、流石にタイクーンにもこの異常事態は伝わっているはずだ。先程は勢いで城を飛び出してしまったが、自国の領内で事が起きた以上その対処が最優先である。レナは父を信じて、自分はこの隕石の調査を行うことにした。それに、風の異変とこの隕石が無関係でないとすれば、王の助けにもなるかもしれない。

 

 そうと決まれば一刻も早くタイクーンへ帰還しなければならないが、そういえば乗ってきた飛竜――アベルの姿が先程から見当たらない。まさか、隕石の下敷きになってしまったのだろうか。血の気が引くのを感じたが、その考えを振り払って今はタイクーンとその民を優先することにした。

 

(ごめんね、アベル…必ず探しに来るから)

 

 レナは痛みの残る身体で歩き出す。幸いなことに脚のダメージは大したことがなく、そう時間もかからずにタイクーンに戻ることができるだろう。

 

 そんなレナを嘲笑うかのように、木々の間から甲高い声が響く。

 

「GIGIGIGI!!」

 

 声に数秒遅れること、レナの前に3体の魔物が現れる。ゴブリン、成体で人の子供程の大きさであり、枯れ木色の肌にギョロリとした大きな黄色の瞳。四肢は骨と皮しかないと思えるほど細く、簡単な布製の衣服を身に纏っている。ゴブリンが衣服を着用する理由は諸説あるが、彼らの器用さの証左であることは間違いない。

 

 レナは腰の短剣を引き抜いてゴブリンらと対峙する。ゴブリンたちは随分興奮しているようだが、森に起きた異変――隕石を見に来たのだろう。目を覚ますのが遅かったら、と背筋が凍るような想像をしながらレナは短剣を握りしめる。

 

(この傷でまともにやり合うのは厳しいわね――)

 

 ゴブリンたちの一番の興味はおそらく隕石である。上手く逃げ出せば追ってくることはないだろうとレナは考えていた。

 

「GYAAAAAAAAA!」

 

 先頭のゴブリンが耳障りな雄叫びをあげながらレナに迫る。それに2体のゴブリンが横並びで続く。

 

 先頭のゴブリンを回避し、左右に展開した2体のうち1体を攻撃し、怯んだ隙に逃げ出す。そのために、ゴブリンの間合いに入るまでじっと待って引きつける――つもりが、先頭のゴブリンは突如乱入した黄色の物体に弾き飛ばされてしまった。

 

 「GA……A……!」

 

 飛ばされた先で、手足を震わせながら途切れ途切れに声を漏らすゴブリン。

 レナは吹き飛んだゴブリンを追っていた視線を、残った2体のゴブリンの前で止まった黄色い物体へと戻す。チョコボと茶髪の青年。まさか、自分を助けてくれたのだろうか。

 

「大丈夫か…お嬢さん」

 

「え、ええ…」

 

 青年は、チョコボから降りると剣を引き抜いてゴブリンたちへ向ける。挑発行為、あるいは宣戦布告と受け取ったのかゴブリンたちは激しく声を上げながら青年へと飛びかかる。左右からの同時攻撃。しかし青年は慌てる様子もなく、その場で腰を落とし横薙ぎに剣を一閃。2体のゴブリンはほぼ同時に青年と違いざまに鮮血――人間とは違い緑色の――を迸らせながら上半身と下半身を分離させてそのまま地面へ落ちた。

 

(強い――)

 

 レナは青年の剣技に見惚れていた。疾風――青年の剣技は風のように軽やかだった。

 

「あのっ…!」

 

「ん、どうした…?」

 

「助けていただいてありがとうございます。私は、タイクーン第二王女、レナ=シャルロット=タイクーンです」

 

 普段であれば誰ともわからぬ相手においそれと身分を明かすような真似はしない――そもそもそんな状況が殆どない――が、今はそうすることが自分を助けてくれた青年に対する礼儀だと思った。

 

「王女様…?なんでこんなところに…」

 

「それが…一刻も早くタイクーンへ戻らなくてならないのです。それで、助けて頂いたばかりで失礼は承知の上ですが、チョコボでタイクーンまで送っていただくことはできませんか?」

 

 青年は目を丸くしている。当然だ。助けた相手が王女で、しかもいきなり城まで送ってくれと言われてきっと軽く混乱しているだろう。だが、レナもなりふりかまっていられる状況ではない。口にした通り、失礼迷惑は承知の上だ。

 

「わかったよ。オレもちょうどタイクーンへ向うつもりだったんだ」

 

 しかし、青年はレナの予想とは裏腹に――だが、願望どおりに――頼みをあっさり引き受けてくれた。タイクーンに用事があるというのは気になるが、それは後で聞けば良い。

 

「ありがとうございます。えっと――」

 

「ああ、悪い。バッツ=クラウザーだ。相棒のボコと一緒に宛のない旅をしている――」

 

「クエー!」

 

「ありがとうございます。バッツさん。では、すみません…タイクーンまでお願いします」

 

「じゃあ、レナ様。先に乗ってくれ」

 

 レナがチョコボに捕まってその背に乗ろうとしたとき、ガコンと大きな音が背後から聞こえた。レナとバッツが同時に音の鳴る方――隕石へ振り返ると、先程まではなかったはずの大きな穴が隕石に空いていた。

 

 バッツがレナを庇うように立つ。レナの動物との交感能力は魔物相手にも僅かながら発揮され、魔物の存在を、普通の動物からは感じられないドロっとした生暖かい粘液が絡みつくような嫌な感覚として捉える。

しかし魔物の気配は感じられない。

ならばあの穴は何なのだろう。何かが出てくるわけではないのか。

 

「オレが見てくるよ」

 

 バッツが慎重に隕石へと近づく。穴の正面、少し離れたところで腰の剣に手を当てて数秒程待つが、やはり何かが出てくる様子はない。穴に近づいて中を確認したバッツが血相を変えてこちらを振り向く。

 

「来てくれ!ボコ!レナ様!」

 

「どうしたんですか!?」

 

 明らかに余裕のないバッツの声。レナが慌ててバッツの方へ駆け出すとその後ろをボコがついてくる。

 

「じーさんが倒れてるんだ!」

 

 そう言うと、バッツは隕石の中に入ってしまう。危険だ、とレナは思ったが、バッツが言うには既に老人が中にいるらしいので、人が入るのには問題がないのだろう。

 レナとボコが隕石の前で待っていると、バッツが老人を抱えて出てくる。老人は頭から血を流してバッツの腕の中で全く動かずにいる。まさか、死んでしまっているのだろうか。

 

「死んじゃいない。気絶してるだけだ」

 

 余程酷い表情をしていたのか、老人の命がまだある事をレナに教えてくれたバッツは老人を地面に寝かせる。意図を汲み取ったらしいボコが自分に下げられている布袋から器用にポーションを取り出してバッツに渡す。バッツが老人にポーションを振りかけると頭の傷は塞がったようだ。しかし、流れ出た血までは戻らず、老人の顔は青白いままだ。

 

「どうしようか。タイクーンに連れて帰るのがいいと思うけど――」

 

 バッツはチラリとボコの背中を確認する。レナもそれにつられてボコに視線を向ける。3人――しかも内1人は気絶している。流石に全員でボコに乗るのは厳しそうだ。

 

「飛竜がいます――私が乗ってきた飛竜がいるんです。隕石の下敷きになっていなければ」

 

「ボコ、わかるか」

 

 ボコがレナに鼻を近づけると細かく顔を振りながら息を鳴らす。そして隕石の方に歩いていき、先程レナにしたのと同じような行為を隕石と地面の境界に向けて行っている。匂いで確かめようとしてるのか。

 チョコボが特別鼻が効くという話は聞いたことがないが、元が野生動物だから人間よりは匂いに敏感でもおかしくはないし、何よりバッツに言われてボコがそうしたということはそうなのだろう。

 

「クエッ!」

 

 ボコが明るい声で首を横に振る。ということは、隕石の下敷きになったわけではないのだろう。レナは胸を撫で下ろす。零れた涙を指で拭う。

 

「場所まではわからないかしら――」

 

 レナは不安の色を帯びた声でボコに問いかける。先程のボコの仕草を考えると、そう遠くの匂いまでは判別できないのだろう。それに、レナの言葉が理解できるのかもよくわからない。

 

「クエ…」

 

 しかし、ボコはレナの意図を汲み取ってくれたようで、森の奥を見つめるようにしながらゆっくり首を旋回させる。

 

「クエ!」

 

 そして、ボコは森のある一点を数秒ほど見つめたあと、その上空を見つめる。ボコにつられてレナとバッツも点を仰ぎ見る。視界の端で木々が揺れると、レナ達の視界に大きな影が飛び込んでくる。

 

「アベル!」

 

「クルキュルルー!」

 

 レナの飛竜――アベルだ。アベルは翼を大きくゆっくり羽ばたかせながらレナ達の前に降下する。

 

「コレが飛竜か。実物を見るのは初めてだな…」

 

「クエー…」

 

 バッツは好奇と困惑の入り混じった目をアベルに向ける。ボコもそんな表情をしている気がする。

 

「よかったアベル…無事で…」

 

 レナがアベルに向かって手を伸ばすと、アベルもレナに向かって首を伸ばす。レナはアベルの首を抱いてそっと撫でるとすぐに手を離す。

 

「アベル、出てきてすぐで悪いけどタイクーンに戻らなきゃいけないの…」

 

 レナの話を聞いたアベルは背中を向けて姿勢を低くする。

 

「えっと…そのご老人は…」

 

 アベルとボコのどちらに乗せたほうがいいのだろうか。

 

「ああ、じーさんはボコに乗せていくよ。高いところから落ちたら大変だし、もし目が覚めていきなり空にいたらびっくりしちまうだろ?」

 

 このとき、レナは初めてどこか浮世離れした雰囲気を纏うバッツから苦笑いという年相応の青年の顔を見た。

 

 

 

 




ボーイミーツガールアンドオールドマン。主人公なのにメインキャラクターになれないバッツくん。申し訳ない…
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