「マナト...おいマナト!しっかりしろ!」
マナトの背中には短剣が浅くはないほど刺さっていた
他の皆も俺の声とマナトの異常に駆け寄ってくる
「くっ....っ、....っ..」
「どうすれば...そうだマナトっ!魔法を!」
「......そっか」
マナトは右手を額に当てた。これでなんとかなるマナトが元気になってオルタナに帰る。全員がそう思ったとき、そんな幻想は崩れ落ちたのはマナトの手が力なく地べたに落ちたときだ
「.....だ、だめ、だ、あ、あぁ....ま、魔法つかぇ、な、ぃ....ぅ......っっ.....」
「しゃ、しゃべるんじゃねぇよ!ら、楽にしろ、楽に.....ってどうやるんだよ!?」
ランタはそう叫んで慌てている。モグゾーはあまりの出来事に全身を硬直させ、でっかい置物みたいになっている。シホルは俺の対面でナイフに手を伸ばして指先にふれると、顔を真っ青にした。しかしそれ異常にマナトの顔色は悪い白いとかいうレベルじゃない
「ど、ど、ど....」
ユメは髪の毛をぐちゃぐちゃにした。
「.....ど、どうした、ら?」
「どう....って...」
どうすればいいどうすればいい?!考えろ。何かあるはずだろ。ないわけなんてないだろうが!教えてくれ誰か...マナト。
しかしそのマナトはひゅう、ひゅう、と浅くて心許ない息をしている。
「マナト、だ、大丈夫だか、ら...な?しっかり、しっかりしろ、マナト、なんとかなる....」
マナトは目だけ動かして俺をみた。
「.....ハル、ヒロ」
「な、何?どうしたんだ?マナト、」
「...ご....め...っ...な...」
「え?何?ご、ごめん?なんで?何がごめんなんだ?」
「....く...そ....あぁ...なん、で...お、れ....ハル、ヒロ....たの、む」
「頼む?頼むって?何を?おれに?ていうか、そんなマナト、そんな俺なんかに何を...」
「...み、みえ....みえ、な....みえな...く...っ...みん、な....そこに、い...」
「いるって!みんないるよ!マナト!ここいるから!行くんじゃねぇよ!」
「......ぁ......お.......し......っ.....」
「行くなって!マナト!行っちゃだめだ!行くなよ!頼むから、マナト......!」
マナトの胸に手を当てる。
「心臓、動いて...ない」
「じ、人工呼吸だ!」
ランタがそう叫ぶとそれだけで全部解決した気分になった。みんなでああだこうだ言い合いながら人工呼吸した。ナイフを抜いて仰向けになっていたマナトの胸を押したり口から空気を送り込んだりもした
「....も、もう、やめない?ま、マナトくんが、か、かわいそう」
「じゃ、じゃあどうすれば...そ、そうだ!神殿に、ルミアリス神殿に行けば!」
俺がそう言うと行動が早かった。モグゾーがマナトを背負い、神殿に走った。
中に入ろうとするとマナトと同じような白地に青いラインが入った神官服を着ている男たちに制止された。その中の人が他の男に「ホーネン師をよんでまいれ」
そういうと奥からホーネン師?がきた
「━━お、お願いします、マナトを、俺たちの仲間を助けてください!おれ、なんでもするんで、どうか!頼みます...!どうか...!」
「愚かな!
輝かしき光明神ルミアリスといえども、死したものを救うことはできぬ!マナト、なんたる愚か者だ!稀に見る前途有為の若者と見込み、丹精込めて教育つかまつったものを!あたら若い命を散らすとは何事ぞ!」
「そんな...マナトが...治せない...そんな...」
「てめえ...!」
ランタがホーネン師につかみかかろうとして、ユメに「やめぇや!」と止められた。
シホルは神殿の冷たい床に座り込んで泣いてしまった。モグゾーはマナトを抱きかかえたまま微動だにしない
「このうえは」
「せめて丁重に葬ってやることだ。
「.....それって、マナトを燃やせってこと?」
「然様。オルタナの外に焼き場がある。呪いに蝕まれぬよう亡骸を炎で浄化したのち、岡の上の墓場に葬るのだ」
「っ....」
人が死んだのになんの変化もみられないホーネン師に飛びかかろうとしたがホーネン師は俺たちに見えないように涙を流していた
「一つ、訊いてもいいですか?」
「何だ」
「それも、金とられるんですよね」
「持ちあわせがなければ、わしが払おう」
「いや」
俺はため息をついた。大きなそして深いため息だった。怒りと悲しみ、その他もろもろを含んだため息のあと、
「....いいよ。金はないわけじゃないし。もし足りなくても、どうにかするし。マナトは、おれの━━俺たちの、仲間だから」
神殿の片隅に寝かされたマナトをもみんなで囲んで、みんなで夜を明かした後にマナトを言われたところで埋葬して丘の上というより中腹あたりのあいた場所に穴を掘って、白布にくるんだ骨を埋める。
どこから入ってきてどこから出たかは覚えていない。どうでもいい。何もかも。どうだって
焼き場で五十カパー、墓場で五十カパー。合わせて費用は一シルバー。とりあえず俺が払おうとしたがシホルが半分だしたので、二人で五十カパーずつだした。
人が一人死んでたったの一シルバー...か、
「変だよな、おかしいだろ。こんなの....みんなもそう、思うだろ」
いつの間にか声に出してしまっていたようだ。しかし誰も何も言わない
「マナトが言ってたな
まるでゲームみたいだって。俺もそうだなって思ったんだけど、何だよゲームって。わかんねぇーよ。でもこれだけは言える....ゲームなんかじゃないよな。違うよ。おかしいって、絶対。ふざけんなよ。......ふざけるな!」
俺は何を言いたいのかわからなくなった。これからどうすればいいんだ。それしか思い浮かばなくなってきて...
「行くわ、オレ」
「......どこ行くん?」
「ハッ....どこだっていいだろ。とにかく.....いつまでもここにいたってしょうがねぇ。今さら、どうにもなんねーんだからよ!」
「あほうっ!」
ランタは何も言わずに行ってしまった。俺はランタを追いかけた。後ろからモグゾーも着いてきて...後ろを振り返るとユメはシホルの肩を抱いていた。ユメが頷いたようなのをみて俺はランタを再度追いかけた
ランタが向かったのはシュリーの酒場といわれる場所で、一階だけではなくて二階もある大きな店だった。大勢の話し声と笑い声が絶えず響いて、ときおり怒鳴り声がまじる。給仕女の威勢のいい声が飛び交っている。
ランタは一人で酒を飲んでいたが俺たちを見ると酒を頼んだ
「ビール三つ」
「.....おれ、酒なんか飲む気分じゃないんだけど」
「じゃあ、牛乳でも飲むっつーのかのかよ」
「で、でもこういうときにお酒、なんて...」
「バーカッ。こういうときだから、だろ
....マナトの野郎、何回かここに飲みに来てたっつー話じゃねーか。だけどよ、あいつはもう、あれだからよ。だから代わりに....ってわけじゃねーけど。そうじゃねーけどよ....」
「そう、だな」
給仕女に、金を払って受けとると三人で乾杯した。
喉が乾いていたせいか、苦いのにうまかった
「最悪だぜ。最悪だっつーの。マジで、やってらんねーよ。オレァなあ、もういやだぜ。冗談じゃねーんだよ。もともとこんなの、やりたくてやってるわけじゃねーしよ。こんな思いしてまでやってられっかよ。お前らもそうだろ?
何が戦士だ、
何が盗賊だ、
何が暗黒騎士だよ!
何が....何が神官だよ。もうやめだ、やめ。ぜんぶやめだ。今日限りでやめてやる!」
「やめて....どうするんだよ」
「どうもしねーよ。いいだろ、べつに。何かしなきゃなんねーのか?誰が決めたんだよ、そんなこと。もしそう決まってるんだとしても、オレは従わねーからな!」
「従うとか従わないとかじゃないだろ。やるしかないから、どうにかみんなでやってきたんじゃないか!」
「知ったこっちゃねーんだよ」
「知ったこっちゃなくないだろ、どう考えたって!」
「考えられっか馬鹿らしい」
「あの、や、やめて二人とも....喧嘩は、ね?」
とモグゾーが止めてくるが流石に今回はオレは止まらない
「生きるためなんだぞ!」
「だいたいなぁ!やるだのなんだのつーけどな、どうやってやるんだよ?!これからどうしろってんだよ!?あいつがいねーんだぞ!?」
「わかってるよ!お前なんかに言われるわけでもなく、そんなことは!」
「そうかよ、だったら答えてみろよ!あのときだって怪我しまくってあいつに助けてもらったおまえが、あいつなしでこの先やれんのか?!あぁ!?どうなんだよ!?」
「それは━━っ」
「もとはと言えば、お前がやられまくってあいつに魔法使わせすぎたから、それでこんなことになったんじゃねーのか!」
「.....ランタ、おまえ、そんなふうに思ってたのかよ」
「違うのかよ!?オレはなんか間違ったこと言ってるのか?!あぁ?!」
「間違っては....ない、けど」
確かに俺が...
「おまえなんか、たいした戦力にもなってねーくせによ!あっさりやられて足引っ張ってんじゃねぇ!おまえのせいで....!」
「やめろ!」
怒声が轟いてオレの思考は途中で止まり、店内が一瞬、静まり返った。誰が怒鳴ったのかと確認するとどうやらモグゾーらしい眉をつり上げて激怒している
「こんなときに喧嘩なんてするな!仲間割れなんかしてる場合じゃないだろ!あたま、冷やせ」
「....ごめん」
「いや、つーかよ。おまえも頭冷やしたほうがいいんじゃねーの?...キレすぎだろ」
モグゾーに睨まれるとランタは縮みあがった
「す、すみません。い、以後気おつけるんでマジで。
怒らすとなえーのかよ、こいつ」
「....この先、どうしよう、ね」
「...だよね、何もしないにしても金もないと駄目だし。食って寝るだけで金はかかる。他の仕事でも探す?」
「まあ、それも一つの手だな」
「いや、ランタお前...無理だろう。暗黒騎士って他の職に鞍替えしたくってもギルドを抜けられないだろ」
「あ...ま、まぁオレはな?ずっと暗黒騎士だし?こ、この先ずっとな?
...クッソなんで俺、暗黒騎士なんかに」
こいつ忘れてたのかよ
「おっ!」
そこで聞き覚えのある声がした。そっちに目をやると、見覚えのある男が、手を振りながら近づいてきた
「おお!おお!おお!おまえらじゃん!名前とか忘れちったけど、しっさしぶりじゃんなぁーヘーイ、元気か~い!青春してっかよ!」
「あ、キッカワ」
このチャラそうな顔。間違いない。チャラ男のキッカワだ。でも板金で補強された鎧を身に付け、柄頭に飾りのついた剣を腰につけているので分からなかった。すごく見違えたなぁ
「ビールビール!ビールねーッ!ビール」
と給仕女に注文した。
「で?それでそれで?どう?ダムローの旧市街通っちゃってるとか?聞いたよ聞いたよー。前ここきてさ、ほら、マナトっちに会ってさ。聞いたよー。で?で?というかマナトっちは?」
「マナトは...ちょっと...その、」
「えっ?!まさか、まさかのぉっ!?け、結婚....?!」
「なわけないだろ!」
と言いわりとマジで後頭部をはたいた。
「ぐげぶふぉっ?!」
「...そうじゃねーよ
死んじまったんだよ、あいつは。昨日、な。まだ昨日なんだよな」
「そいつはゴメンちゃい。ゴメン。マジ、ゴメーンね?いや悪気とかは全然なくてさ。そんな、ねぇ?まさか死んじゃうとか思わなくない?マナトっち、できる男って雰囲気だったしさ
お、ここでビール登場!ビールビールッ!よぉーしかんぱーい...はしないよね勝手にいただきまーす。ぷはー」
「....キッカワは元気そうだなどっかのパーティーに入れてもらったの?」
「うんトキムネって人のパーティー。いいヤツなんだ、これが、あ、紹介する?店に来てるよ?しちゃう?」
「いや、今はちょっと、いいかな」
「そっかぁだよねぇマナトっちって神官だよね?パーティーの要だよなぁ。死亡率一番高いってきくよね?まぁ神官は狙われやすいし?」
「え?、キッカワそれって本当なのか?」
知らなかった。狙われやすいっていうのも、それに死亡率が一番高いってのも
モグゾーもランタもどちらも驚いていた
「あったりまえじゃーん━━神官が
「....ぼく、守れなかった。助けてもらって、ばかりで」
「まぁまぁ、失敗は誰にあるしね?そんな気ィー落とすなって」
「...でもマナトくんはもう、戻ってこない」
「まーねぇでもさぁ先のこと考えるしかなくない?いや、俺ちゃんはさあ?仲間なくしたことないから言えるのかもしれないけどね?前向きにやろうよ前向きに」
「前なんか向いてもな...神官がいなくなっちまったんだぞオレらのパーティーは」
「探せばよくない?新しい神官
あ、ちょっと待ってあれでしょ?見習いの俺たちに入ってくれる神官なんているのか?って。あ、ちなみに俺ちゃんはもう見習いじゃないけどね?買った断章、見る?見たい?」
「はぁ、いや見せなくていいから
でもその通りだよ。おれらのパーティーに入ってくれる神官なんて「いないこともないと思うよ?」え.....」
「俺ちゃん、こう見えて顔が広いからさ。けっこうね、いろーんな義勇兵知ってんの。で、いるよ。知ってるよ。おまえらでもスカウトできそうな神官」
「誰だよそれ」
ランタが身を乗り出した
「そ、の、前、にぃー
おまえらの名前って何だっけ?考えてみたけど、やっぱりどぉーしても思い出せないんだよねぇゴメンね?話してれば思い出すとかおもってたんだけどねぇ~
教えてクレッシェンド?」
次はついにメリィ登場です!
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