最近、息子の母親…妻の1人がカルデアにやって来た。
服のセンスは少々変わっているが、其れでも文句なしに地元の女性では最強格の1人であったし良い女であり、良い母だった。
まあ、自分は不老の癖に、明日自分が死んでも惜しくないと見えるくらいに子煩悩だったアイツと、俺の子供を殺したのは、
俺自身だった。
其処には師匠の思惑とか、その妹であるアイツの誓約とか幾つも理由はあったんだろうが、事実として俺は息子を殺した。
うじうじと悩むのはらしくないだろうが、
流石に息子を溺愛していた元妻に再会して、どんなふうに話しかければいいかなんて考えても居なかった。
噂では、死者の魂を狩り集めて息子の蘇生を行おうとして失敗したとか、その儀式の代償で、それ以後子供を持てない身体になったとか、
幾つか聞いている。
後はその後、最大火力を以って師匠と激突したとか…。
アイツは此処に来てから俺以外のサーヴァントには、子を作る以前のような人格で接している。
俺には―――向こうからは一切俺に話しかけてくる事は無い。
情けないが、こちらから話しかけようと思っても、それを何時も足踏みしてしまう。
叔父貴やフィン・マックールやディルムッド・オディナなど、民族的に関係するものには慕われ、
それ以外の戦士達にも、実戦を主体とした理詰めな戦闘術の講義は評判が良い。
師匠の取り敢えず生き残れといって襲い掛かってきたり放り出される教育方法とは、大きく違う。
後は作家勢のサーヴァント達にはよく本を借りに行っているようだ。
その多くが児童書というのが、息子が此処にやって来た時の事を想定しているのが容易に想定できる。
性格がひん曲がったのが多い作家勢も、自作の童話を子供に読み聞かせたい母親には無碍にできない様子だ。
基本的に民族基準では内向的な女戦士だが、カルデアではそれで丁度良い感じに回っている。
時折、民族的な常識のすれ違いはあるが、
それでも師匠と比較されて『まだマシな方のケ○ト女性』と呼ばれている辺りそういうものなのだろう。
後、ヘクトールに投げた槍の進行先にあるものをやっぱり破壊したくないと思った時に、
後から途中で地面に方向を修正して不発に終わらせる
清姫っていうお嬢ちゃんに、相手が大切な人の場合、自身の放った攻撃で傷を付けなかった事にする付与魔術とか、
正直、俺への当て付けみたいな技術を多く教えていることに関しては言いたいことが無いでもないが、
それでもこちらから話しかけていい理由にはならない。…いや、俺が勝手に尻込みしているだけなのはわかっているが、な。
ん? ああ、叔父貴か、どうした?
「いや、そろそろ話しかけたりしなくていいのか?」
…ああ、丁度それについて考えていたところだ。
「そうか、でもあまり時間をかけるのが良いとは言えないだろうな。
アイツらも魅了の特性を無効化する彼女だからこそ逆に踏み込んで接している様子だ。
それに、あの服の趣味が悪くても脱がしてしまえば問題ないだろう? 現にあの時お前だってそう思ったんだろう?
寧ろ俺なら今からだってそうするし、今だってそうしようかと考えているくらいだ」
そういう叔父貴は珍しく、少々意地悪げな顔をしていた。
「お前が自分の所有物だと主張しないなら、彼女はフリーということだ」
叔父貴は本気で不甲斐ない俺から奪おうと考えているわけでは無い…、いや、そう言う部分が無い訳ではないのが叔父貴だろうが、
これは息子の様な俺に発破をかけてくれているのだ。
視線を彼女の方に向けると、後輩に当たる戦士たちに手取り足取り槍捌きを教えている。
…ガキどもめ、一丁前に照れくさそうにしやがって。
叔父貴、ありがとな。
少し、覚悟が付いた。
「ん? 何のことかわからんがまあいいんじゃないか?」
とぼけやがって、…全く、叔父貴には、
いや育ての親の1人には頭が上がらないな。全部お見通しだ。
ああ、此処で何時までも芋ひいてたら息子に笑われちまうかもな。
猛犬らしく所有物の主張でもしにいこうか。ああ、猛犬らしく、な。
一体、旦那さんって誰なのでしょうか?(棒)