南中吹奏楽部へようこそ!   作:千歳灯

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部活紹介

 中学入学二日目。今日は一日が長いホームルームと部活動説明会で終わる。

 午前は課程や学校の説明に各施設の案内。午後はまるごと体育館での部活動説明会だ。

 大吉山南中学校は部活動に力を入れている。生徒の部活動への所属を推奨していて、その活動を先生方だけではなく保護者会やOB・OG会もサポートしてささえている。そのためか、南中の部活はどこも生徒のやる気が高く、高校に行ってからも活躍する生徒が多い。

 それは運動部だけでなく、文化部も同様で

、吹奏楽部なんかは長年のライバルと目されている北中と並んで府内でも強豪校として有名になるほどだ。

 

 そんな説明を受けてからの学校案内を終えたお昼休み。朝の演奏で仲良くなれた私とみぞれは同じ机を囲んでお弁当を食べていた。

 

「中学校って教科書とか多いんだね……バッグがぱんぱんになっちゃった」

「大きいの持ってきてて良かった」

「……や、私のは肩掛けだけどさ。みぞれのは手提げでしょ。大丈夫なの?」

「?うん」

 

 至極簡単に頷かれた。どうやらみぞれは見た目からは想像できないが、力があるらしい。儚さを感じる容姿に平均より少し小さい華奢な体。それで全く問題はなさそうなのだから、実はスポーツ少女だったりするのだろうか。

 ……どうしようかな。吹奏楽部に誘ってみたかったけど。あとで話をきいてみるかな。

 

「私は肩掛けでもへとへとになりそうだよ……体力欲しいなあ」

「運動、苦手?」

「時々運動するよ。でも体力付かないんだよ……」

「がんばって」

「ふふ、うん、がんばる」

 

 小さくガッツポーズをするその仕草が可愛い。朝と比べて雰囲気がぐっと明るくなった。気を許してくれたのだろうか。こうしてお話している今が、すごく楽しい。

 

「かなで」

「ん、なに?」

「オーボエのこと、おしえて」

「お。興味ある?いいよいいよー。何でも教えたげる」

「じゃあ……」

 

 お昼休みはそのままオーボエの話で過ぎていった。すこし話し過ぎたかなーとも思ったけれど、みぞれのほうも楽しそうにしていたので、良かったと思うことにした。

 

 

 

「野球部はッ!この夏のッ!甲子園をッ!目指しますッ!」

 甲子園ねーだろ、と内心ツッコミつつ、先輩達の発表を眺める。

 ステージの上での部活紹介は様々だ。運動部はわかりやすいようにか、球技ではキャッチボールやドリブル、武道は演舞をしながら活動内容や実績を紹介している。文化部はステージ上での紹介くらいかな、とは思っていたのだが、各自様々な趣向を凝らしていた。

 たとえば書道部。ステージの上方に大きく表示されている「平成23年度 大吉山南中学校 部活動紹介」の看板は書道部員が書いたものだという。

 華道・茶道部はこれもステージに飾られている(運動部紹介のときは避けられていたが)フラワーアレンジメントを作ったりだとか。

 美術部も学校の各所に飾られているポスターの製作やらで、これらの部活は色々な行事で大活躍しているとのことだ。

 そして、最後の音楽系の部活だが。声楽部、軽音部、吹奏楽部が合同での紹介となるようだ。壇上に多彩な楽器とパイプ椅子が持ち込まれている。

 楽器を並べ終わったあと、三人の生徒がステージの前方に出た。

 その三人の姿を目にした瞬間、新入生がざわついた。その三人の胸元には、それぞれでっかく「三好」「三月」「三塚」と書かれた紙が貼ってある。その三人の格好も半袖ハーフパンツの体操着だ。しかも何故か紅白帽を被っている。なんだ、あれ、胸のはもしかして名字なのか?

 

「えー、声楽部部長の三好です。これから、声楽部、吹奏楽部、軽音部の合同紹介を行います」

「吹奏楽部部長の三月です。各部で1曲ずつ演奏をして、最後にそれぞれの部活内容を説明します」

「軽音部部長の三塚でーす。演奏は今の、声楽部、吹奏楽部、軽音部の順番でやります。じゃーまず、声楽部、よっろしくぅー!」

「はーい、みんな、集合ー!」

 

 部長の声掛けに、声楽部の生徒たちがステージに現れ、整列して礼をした。そのうち一人がピアノの下に向かった。

 部長以外の9人は皆制服だ。部長達、その格好には触れないのか。もう何人か新入生が笑ってるぞ。

 

「では、声楽部の合唱です。天使にラブソングをから、ヘイルホーリークイーン」

 

 ピアノの伴奏が入り、アカペラの合唱が始まる。綺麗な女声三部合唱だ。うっとりとする歌声。そして、足タップと手拍子から入るピアノも入ったアップテンポ。部長が何故か前に出てくる。なんであなたハイテンションなんですか。

 部長のパートはソプラノ。まさか、まさか、とは思いながら聴いていたが、予感が的中した。印象的なソプラノのソロパート。それをデロリスばりの身振りで歌い上げている。凄く上手い。すんごく綺麗な歌声なのだが、笑えるのがもう辛い。

 伸びやかな高音で合唱が終わる。声楽部員達が礼をすると、大きな拍手が湧いた。

 いやー、おもしろかった。1発目でこれ。吹奏楽部と軽音部もなにかしでかすのだろうか。

 

 声楽部と入れ替わるようにステージに出てきた吹部の部長は、体操着姿に赤いジャケットを羽織っていた。

 

「次は吹奏楽部です。吹奏楽部はー……」

「まーぁてぇい!ルパーン!」

 

 部長の声をかき消すように野太い声が響き渡る。茶色いロングコートと帽子を被った男子生徒と、青い帽子をかぶった部員たちがぞろぞろと現れ、それぞれ指揮台とパイプ椅子に向かった。

 

「ルパーン!逮捕だー!」

「ひえぇ!ルパン三世のテーマ、いっきまーす!」

 

 寸劇を繰り広げていた吹奏楽部員たちは、銭形警部が指揮棒を振り上げた途端、楽器を構え、静粛する。銭形警部に背を向けてステージの一番前に一人で立つ部長も生真面目な顔でサックスを咥えた。格好でひどく台無しだが。

 指揮棒が振り下ろされる。途端、溢れるように流れるイントロ。そしてサックスを中心としたメロディが流れる。

 素直に格好いい、そう思う。特にソロでの演奏はアドリブを効かせたもので、技量が中学生離れしている。

 ソロパートを終えてもところどころにアドリブを入れて演奏を膨らませている。もうほんとに格好いい。服装が残念だが。残念すぎて一周回って面白い。

 そして演奏が終わる。途端、

 

「あーばよー!とっつぁーん!」

「まてーぃ!ルパーン!」

 

 部長が逃げ出した。銭形警部と(多分)警官たちがそれを追っていく。体育館が笑いで包まれた。

 

「最後に軽音部!いくぜー!」

 

 ルパン達が出ていった反対から、軽音部が出てきた。体操服の部長は顔を白塗りにしていた。もうそこで察した。

 

 

 

 部活紹介が終わって教室に戻ったあとのホームルームで、先生から希望する部活がある場合は1週間後まで届け出をするようにと説明があった。

 そんな放課後。教室では同級生たちが部活の話題で盛り上がっていた。話題の中心は音楽系の3つの部活だ。結局最後まで名札の事には触れられなかった。まあ、ウケを狙ったのだろう、多分。私も笑ったしね!

 

「ねえ、みぞれ。みぞれはみぞれは部活、どうするの?」

「んっと……かなでは?」

「私は勿論吹奏楽部!んー……みぞれ、良かったら、一緒に入らない?」

「……うん、吹奏楽部、入る」

 

 少し勇気を出して誘ってみた。断られたらショックだったけど、良かった。うん、嬉しい。みぞれともっと、一緒にいられる。

 

「ねえねえ、吹奏楽部入るの?」

 

 そこに、元気な声がかけられた。見上げると、ポニーテールをした快活そうな少女が見つめてくる。

 

「えっと、笠木さん、だっけ」

「うん、笠木希美!私も吹奏楽部に入ろうと思ってるんだ!フルート、やってみたくて!」

 

 そう無邪気に話す様子は楽しみで仕方がないと、主張しているようだ。

 

「ふふ、吹奏楽部仲間が増えた。よし、じゃあ一緒に見学に行く?」

「うん!えーと、冷泉さんに、鎧塚さん、だよね。うん、よろしくね!」

「…………」

 

 こくりと頷いたが、どうやら、というか、やはりみぞれは人見知りする質らしい。さっきまで柔らかい雰囲気だったのが無表情になった。そして私の袖をきゅっと掴んでくる。可愛い。

 今日半日ほどの付き合いですっかりと懐かれたようだ。とても可愛い。

 

「よーし、じゃあ行こう!」

 

 笠木さんが元気よく声を張り上げる。この子はリーダーシップがあるようだ。二年後には笠木さんが吹奏楽部の部長になっているかもしれない。そうしたら、明るい雰囲気の部活となるだろう。それも楽しみだ。

 

「うん。みぞれ、行こ?」

「……うん」

 

 さてさて、強豪校の吹奏楽部。普段はどんなところなのだろう。楽しみだ。

 ……部長のキャラだけが、少し心配だけれど。




大体ラノベなノリです
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