まずはこのお話!
「「「―――――――!!!」」」
最前線から大きく離れた階層のフィールドで三体の『ソールマンティス』の雄叫びが響く。
その大きな鎌を持つカマキリと戦っているのは5人のプレイヤー集団。
「す、スイッチ!」
リーダーと思われるプレイヤーから指示が飛ぶ。しかしそのタイミングもはっきり言っておかしなタイミングであり、さらにメンバーノ動きに俊敏さがないため、タイミングがさらにずれて完全に無駄なスイッチとなる。
前衛が一人しかおらず、槍使いの二人が突いては引き、突いては引きを繰り返し、意味のないスイッチ、そして後退を繰り返すうちに新たなモンスターをひっかける。
戦い始めた当初こそ、1体しかいなかった『ソールマンティス』も気づけば7体にまで膨れ上がり、その上近くにいた『ハイゴブリン』まできて 完全に絶体絶命になっている。
大きな木を背にし、一か所に固まってかまえる5人。錯乱しているのかスキルも使わず、使おうとしてもうまく発動しない。普通の攻撃をしているためなかなか減っていかないHP。その間にも壁となっている2人のプレイヤーのHPが削られていく。
フィールドに出るプレイヤーの多くは転移結晶というアイテムを常備している。転移結晶はフィールドから瞬時に安全圏である主街区に飛ぶことができるアイテムだ。HPが危険地域を示すイエローになったら転移で避難するというのが大半で、レッドまでいったら即転移というのがここでの常識になっていたりする。レッドだろうがなんだろうが敵に向かっていくようなのはキリトやユージといった人たちだけだったりする。
しかし彼らは運悪く転移結晶を切らしていた。
そもそもこのアイテムはモンスタードロップ品であり、相場が高くなる傾向にある。そのため一度使い切ってしまうと補充に時間がかかったりする。攻略組のプレイヤーはまず間違いなく切らすことはないが。
そしてついに前衛のHPがレッドになった。ほかのメンバーも全員がイエローだ。
(やられる!)
リーダーがそう思った次の瞬間、『ソールマンティス』と『ハイゴブリン』の体が止まった。そしてポリゴンとなって消えた。
いったい何事かと疑問に思ったが、モンスターがいなくなった先にはこの階層には珍しい『刀』をこれまた珍しく『鞘』にしまうプレイヤーの姿だった。
?「危なそうに見えたからつい手を出してしもうた。大丈夫だったかの?」
短い髪の一瞬女性プレイヤーかと見間違うような顔つきのそのプレイヤーはなんともほんわかとした雰囲気で尋ねた。
ケイ「あ、ありがとう。モンスターを多く引っかけすぎてしまって対処しきれなかったんだ。あっ俺はケイタ。一応リーダーをしてる」
?「わしは
ケイ「こっちからお願いするよ。メイス使いがテツオ、槍使いの男がササマル、盾持ちの片手剣がダッカー、でうちのギルドの紅一点のサチだ」
こうして、ヒデヨシは中層プレイヤーの小さなギルド『月夜の黒猫団』と出会った。
ケイ「さて、じゃあサチのレベルアップと、恩人のヒデヨシさんに乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
街に戻った6人は小さな宿の中のレストランでわいわいと騒いでいた。
ケイ「あらためて、俺はギルド『月夜の黒猫団』のリーダーをしてるケイタだ。さっきはありがとうなヒデヨシさん」
ヒデ「ヒデでよいぞい。わしは『FA騎士団』に所属しとるヒデヨシじゃ。たまたまあのフィールドで素材集めをしとってのう。偶然お主らを見かけたのじゃ」
テツ「FA騎士団っていやぁ攻略組のトップギルドじゃないか!ヒデってもしかして噂の≪居合斬≫か!?」
テツオが驚いて声を上げた。
ヒデ「そこまで驚かんでもいいじゃろうに。わしらは結構いろんな階層を回っておるし、わしはギルドの中でも実力は下の方じゃ」
ケイ「それでもあそこのフィールドでソロで狩りができるのはすごいな。さすがは攻略組か。ところで…」
ケイタがばつが悪そうに聞いた。
ケイ「しばらくうちのギルドにいてくれないか?見てわかると思うんだけどうち前衛が一人しかいなくてさ。さっきみたいに少しずつ下がっていくうちにモンスターをひっかけちゃうんだ」
ヒデ「別にユージに連絡を入れればよいからかまわんが、しばらくいたところでわしが抜けたら元に戻るだけじゃぞ?」
そう。いつまでもいるわけにもいかないのだ。幸いまだボス部屋は発見されておらず、迷路のように入り組んでいる迷宮区のせいで攻略はあまり進んでいない。それにうちの方針ではとくにノルマもないしボス戦の参加も基本自由。嬉々として参加しに行く明久やユージ達と違い、POHはオーラルと遊ぶのを優先して不参加だったり、情報集めやスキル上げのためコウタも参加しないことが多い。コウタに関してはここ最近はユニークスキルの『手裏剣術』があるため参加することが多いが、以前はダメージ量の低さから外れていることも多かった。
ケイ「実はさ、今うちって槍使いが二人いるんだけど」
ケイタは言いながら黒髪の少女サチの頭に手を置く。
ケイ「サチのほうが熟練度低いしまだ取り返しつくから今からでも盾持ちの片手剣に変えさせようと思ってるんだ。だけどこいつ怖がりでさ」
サチ「もう、今まで後ろから槍で突っつく役だったのに突然そう言われても怖いに決まってるよ」
ぷぅとほおを膨らましてちらりと舌を出して笑った。
ケイ「だからさー、盾の陰に隠れてりゃいいって言ってるじゃんかー」
ヒデ「むぅ…じゃがわしらのギルドで盾を使う者はほぼおらんし教えるのは厳しいと思うぞ」
FA騎士団はユージや明久、それからキリトといったふざけたような前衛が多くいるため盾を必要としないのだ。ユージは拳で攻撃をはじくし、明久も幻影ではじける。キリトはこれまではかわして切るという形だったが二刀流になってからは片手でうけながらもう片方で切りまくるようになった。となると必然的に彼らが盾替わりをするようになって盾持ちはいなくなったのだ。FA騎士団メンバーで盾を持っているのを見るのはエギルかゲーム開始初期の明久くらいだった。
ヒデ「それなら槍とスイッチのタイミングをしっかりしてコンビネーションを上げたほうがよいぞ。それなら姉上を見てきたからわしも教えられる」
サチ「私槍のままでいいの?」
ケイ「そんな方法があるならその方がいいな。僕達もいずれ攻略組として前線で戦いたいしね。ヒデは僕達と攻略組と何が違うと思う?」
ヒデ「うーむ…レベルや装備といった違いはあると思うが、基本的には経験とコンビネーションの精度かのう。先ほどたまたま見たときに思ったのじゃが、いらぬところでのスイッチや指示の後のタイムラグが目立っておったのじゃ。上に行けばいくほどそういった一瞬のすきをついてくるようなモンスターもいるのじゃ。それこそ瞬きをした瞬間とかの」
ケイ「そうなのか……ならヒデ、コンビネーションの訓練につきあってくれるか?」
ヒデ「もちろんじゃ!わしでよければ力になるぞい」
それからヒデヨシと月夜の黒猫団の生活が始まった。
ヒデヨシが入ってからの彼らの動きは大きく変わった。スイッチの指示を出すたびに「まだじゃ!」というヒデヨシの声が響いたり、リーダーであるケイタが慌てていても落ち着いて槍を使う二人にタイミングの指示を出したりケイタにスイッチのタイミングを教えていた。
本人が前衛を務めていることもあり、彼らは安心して狩りに挑むことができ、これまで同様和気藹々とした雰囲気のまま以前より強くなっていった。
そんな生活が続いてあと少しで1月になろうかというとき、事件は起きた。
その日の夜、サチが宿屋から姿を消した。
どうもコクトーです。
ついに始まりましたサブストーリー第一段
『わしと月夜と黒い猫』
とある二文字のSさんことサチさんの物語です。
今後どうなってほしいとかいう風に考える方もいると思いますがすでに決まっています。とゆうかその辺を大雑把にですがすでにかいてたりしてます。
他の二作品を優先に投稿していくのでこちらは遅れてしまいますが少しずつ書いていくのでどうぞお待ちください。
ではまた次回