明久一行のSAO   作:コクトー

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わしと月夜と黒い猫2

 

 

 サチが消えた。

 それは月夜の黒猫団全員をパニックにさせるには十分だった。ギルドメンバーが居場所を特定できないのは一人で迷宮区にいるからだという結論に至った。

 この世界ではプレイヤー同士だといくつかの条件のもとで居場所を特定できる。

 たとえばフレンドだったり夫婦だったりギルドメンバーだったりと様々だ。しかし、全プレイヤーが知っていることだが、場所が特定できない場所も存在する。迷宮区だ。そこに入ってしまえばそこにいる間は場所が分からなくなる。そのため、そのままポリゴンとなってしまい、後日碑に確認に行って判明するなんてことはある程度の階層に行くまでよくあったことだ。途中からは安全マージンをしっかりとするようになった人が多くそれは減ったのだが、0になったわけではなかった。

 

 ギルドのみんなは慌てて全員で探しに行こうということになり、止めるヒデの言葉も耳に入らず宿から飛び出していった。

 

ヒデ「待てと言うとるじゃろうに。ここの階層でどこかにいると考えると…………あそこじゃな」

 

 コウタやアルゴという凄腕の情報屋をギルド内部に抱える彼らには、あらゆる階層のデータが集まっていた。アルゴが集めた情報をもとに、危ないところや未知の場所は彼らが直接赴き確かめるといった確認作業をしつつ確実なものにしていったのだ。

 その中にこの階層のものも当然あった。この階層には迷宮区以外にただ一つ、居場所を知られることのない場所がある。明久がたまたま見つけた場所だが、ユーコが急にマーカーの消えたのを見て大慌てで飛び出していったのを覚えていた。

 

 できる限りのスピードでヒデは街を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 ヒデは街のはずれの水路に来ていた。この水路はモンスターやアイテムがドロップするわけでも、イベントクエストのNPCがいるわけでも特別な道具を売っているNPCがいるわけでもない。

 ただ単にマップからマーカーが消えるだけの場所だ。プレイヤーは基本訪れない。そのため情報屋もここの情報は書かないことが多い。プレイヤーにとって何か利益があるわけでもないここを書く酔狂な情報屋はあまりいない。

 

ヒデ(たぶんこの水路の奥に…)

 

 水路を奥まで進むと、サチはそこにいた。隠蔽能力のあるマントをはおり、座り込んでいた。

 

ヒデ「サチ……」

 

サチ「ヒデ…どうしてここがわかったの?」

 

ヒデ「勘…じゃな。なんとなくここにいる気がしたのじゃ」

 

サチ「そう…。ねぇヒデ、一緒にここから逃げよ」

 

ヒデ「逃げるってなにから?」

 

サチ「この街から。黒猫団のみんなから。モンスターから。そして………SAOから」

 

 SAOから逃げる。

 それが意味することはただ一つ。いくら現実世界でFクラスというバカの集まりの中の一人であるヒデでもそれがわからないほど愚かではなかった。

 

サチ「……ううん、ごめん、嘘。そんな勇気があるならこんなところに隠れてたりしてないよね。…立ってないで座ったら?」

 

 ヒデはしばしの沈黙の後サチの隣に座った。

 

サチ「……私、怖いの。死ぬのが怖い。怖くて、夜あんまり寝られない」

 

 サチは震える声で続けた。

 

サチ「ねぇ、何でこんなことになっちゃったの?なんでゲームから出られないの?なんでゲームなのにほんとに死ななくちゃならないの?あの茅場って人は、こんなことして何の得があるの?こんなことに…何の意味があるの?」

 

 それぞれの問いに対する答えをヒデはすでに結論付けていた。正確にはヒデだけじゃない。FA騎士団全員が各々の答えを導き出していた。だが、今のサチがほしいのはそんな答えじゃない。そう感じていた。

 

ヒデ「たぶん…何の意味も、得も、理由もないのじゃ。このゲームが始まった時点で、そういったものはすべてなくなってしまったのじゃ」

 

 ヒデにできるのは曖昧とも取れる『嘘』だけだった。今にも泣きそうな女の子に対してすることではないのはわかる。だが、ヒデにはそれ以外にできなかった。

 

 そして振り絞るように一言、『嘘』をついた。

 

ヒデ「……サチは死なないのじゃ」

 

サチ「なんでそんなこと言えるの?」

 

ヒデ「黒猫団はこの階層で見れば十分強いギルドじゃ。たとえわしがいなくても十分に安全マージンは取っておるし、連携の訓練も多く積んで様になってきておる。このまま安全マージンをしっかり取っていれば大丈夫じゃ。あのギルドにいる限りサチは大丈夫じゃよ」

 

サチ「ほんとに?ほんとに私は死なないの?いつかほんとに元の世界に帰れるの?」

 

ヒデ「うむ。君は死なないのじゃ。このゲームがクリアされるまでの…」

 

 サチはヒデの左肩に体を倒し、顔を伏せると泣いた。静かに流れる水の音だけが響く水路に、一人の少女の泣く声が響いた。

 

 

 

 

 

 それから少ししてケイタ達にメッセージを飛ばし、二人は宿屋に戻った。

 みんなにめちゃくちゃ心配されたサチもわずかに笑っていた。

 

 翌日の夜からサチは夜が更けると、必ずヒデの部屋にくるようになった。なんでも一人でいるとまた怖くなるらしい。ヒデに『君は死なない』と言ってもらうとなぜか安心し眠れるのだという。

 

 その日もヒデが部屋にいるところにサチはきた。

 

サチ「ヒデ…今日も…その…」

 

ヒデ「かまわんのじゃ」

 

サチ「ありがとう」

 

 サチはヒデの座るベッドに寝転んだ。ヒデは今まで見ていたアイテムの一覧を閉じ、その隣に向かい合うようにして寝転んだ。今なお多少の気恥ずかしさは残るが、お得意のポーカーフェイスで隠し通した。

 

ヒデ「大丈夫じゃ。君は死なない」

 

サチ「……うん」

 

 それからほどなくしてサチは眠りについた。服の袖をつかみすやすやと寝ているサチを離すわけにもいかずヒデもそのまま眠りにつこうとした。

 

 しかし、そこに一件のメッセージが届いた。ユージからのメッセージだ。

 

『昨日ボス部屋が見つかった。情報クエはもうクリアされたらしい。いけるとふんだ『血盟騎士団』連中がすでに偵察戦は済ましたみたいだ。明日ボス攻略会議がある。今回はオーラル以外は参加するらしい。これそうか?』

 

 ボス部屋が見つかった。それはプレイヤーにとってはよろこばしいことだった。しかもすでに偵察戦もすんでいて情報もある。早くても明日か明後日にはボス戦が始まるだろう。普段であればヒデも迷わず参加と言っているだろう。FA騎士団のメンバーの中の戦闘員は全員が参加するというのだ。自分も参加しないわけがない。普段ならば(・・・・・)

 

 ふとメッセージから視線を外しサチの方を見る。

 一人でいられないほど恐怖している少女。今自分がここ黒猫団から抜けたら彼女はどうなるだろうか。ほかのメンバーが自分の代わりに彼女を癒していくのだろうか。それは考えられなかった。今の自分のレベルは彼らと比べて10、20いやそれ以上に高い。その自分だからこそという部分もあるはずだった。

 

ヒデ「…………………ボス戦………」

 

 ヒデはメッセージを開いてユージに送信した。

 

 

 

 

 『不参加』と。

 

 

 

 

 そして次の日の夕方、無事ボスは倒されたと情報が回った。ヒデは安堵した。同時に自分がここを離れた時のことを想像していた。

 

 

 それからしばらく、安全な狩りが続いた。それぞれのレベルも上がったことでより狩りやすくなったフィールドで、彼らはだんだんとスキルも上げていった。

 

 そして、サチがヒデの部屋に行くようになって一か月足らずのある時、

 

ケイ「みんな、聞いてくれ!」

 

 狩りが終わってみんなでご飯を食べていた時、ケイタが満面の笑みで言った。

 

ケイ「実は、今日の狩りで目標にしていた金額までコルがたまったんだ!それで、明日、ギルドホームを買いに行こうと思う!」

 

 前々からケイタが話していた『月夜の黒猫団』のギルドホームの購入。そのためにコルをためていたのだ。みな何年かかることかとあくまで高すぎる目標としていた。それが、最近の急成長で狩りの量も増え、予定より早くたまったらしい。

 

テツ「すげえじゃん!それでどこにあるんだ!?」

 

ササ「まぁ落ち着けよテツオ。でもギルドホームかぁ」

 

 その日は少し遅くまで騒いでいた。

 

 そして次の日、ケイタはギルド共通のコルほぼ全額をもって目的のギルドホームがある街へ向かった。

 

 

 




どうもコクトーです

なかなか書けません…
といっても原作キリトの役をほかのメンバーがしているだけなんですが…

たぶん次でおしまいになると思います
この次は誰のを書こうかな…
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