後方に控えてたたずんでいた巨大な三つ首のモンスター『クワトロケルベロス』。背丈はおそらく5から6メートル。赤色の首の左右にそれぞれ黄色と緑色の顔がある。そしてHPバーは2本。このサイズにしてはバーが少ないが、毛皮におおわれた体にどれほどのダメージが与えられるのかはわからなかった。攻撃力に関してはあの巨体からくるダメージ量はそうとうなものだと想定できる。
ユーコ「はぁはぁはぁ、アスナ、リズあれは任せたわよ…。私も回復し次第参戦するから」
リズ「あれ二人ってきついわねー。というよりいけるの?あれフロアボスクラスじゃないの?」
アスナ「ううん。さすがにそこまでの強さはないみたい。よくてももう少し上で出てくる中ボスってとこ。それでもかなりきついよ」
ユーコ「普段なら明久かキリトが前衛やってるからね。今防御高い前衛がいない。アスナ、あんた前衛たてる?」
アスナ「あいつの素早さ次第かな。さすがにあの大きさで早かったらさばききれないから」
ユーコ「ならさっさと回復しないとね…ここで回復結晶クリスタル使えないのが痛いわね」
アスナ「結晶無効化空間なんたからしょうがないよ。いずれボスの部屋がこうなるのかな…」
リズ「それこそ洒落にならないわよ。それより、くるわよ」
ユーコが急いで距離を取る。回復中に狙われては危なすぎるのでタゲをとられない位置まで逃げたのだ。
想定通り、タゲはアスナに向いた。三つの首が同時にアスナを食い殺そうと襲いかかる。それをバックステップをしながら瞳を狙ってレイピアを放ち、攻撃を躊躇わせることで防ぐ。
幸いにして攻撃速度はそれほど早くなく、アスナはそれ以降もなんとかさばいていた。リズも攻撃しようと振り上げた足とは反対側の足を『アッパー・スウィング』などではじきバランスを崩させて防いでいた。
そこに回復を終えたユーコが合流した。
アスナを援護する形で三つの首のうち二つを七本の槍で押さえる。やはり、生物の本能と言うか反射と言うか、瞳を狙われると若干動きが止まる。それをうまく使って攻撃を防ぐ。
何度もダメージを与えているが、なかなか目だったダメージがない。アスナの『神速』のスキルも、リズとユーコの攻撃もちまちまとしかバーを削れていない。
しかし、塵も積もれば山となるとばかりに攻撃を繰り返し続けた結果、ついにバーを一本削りきった。
「グガァァァアアアア!!」
クワトロケルベロスが雄叫びをあげる。
空気を震わせる非常に大きな声の雄叫びだ。つい耳を塞ぎそうになるがなんとかとどめる。もし塞いでしまえば両手が塞がってしまう。そうなれば格好の隙になる。
アスナ「なんて…声なの!?」
ユーコ「簡単には終わりそうにないわね」
リズ「えー?なんだって?きーこーえーなーいー!!」
そして不意に雄叫びがやんだ。三人にはまだ耳鳴りが残っているがそれでも雄叫びがやんだ影響は大きい。
姿形は一切変化がなかった。大きくなったり色が変わったりといった変化がみられない。能力が変わっている可能性はあるが、今の段階では判断できなかった。その時は。
耳鳴りもやみ、攻撃に転じようとしたとき、変化が生じた。それぞれがタゲをとったのだ。それも一人ではなく、3人同時に。
三つの首がそれぞれを狙う。赤はアスナに、黄はリズに、緑はユーコに噛みつこうとする。そのスピードは先程より早く、咄嗟にガードしたものの、全員が少しダメージをおってしまった。そこで三人はこのモンスターの恐ろしさを知った。
ユーコ「毒!?私毒耐性のスキル800近いのよ。どんだけ強力なやつなのよ!」
アスナ「私はスキル封印…。すごくまずい!」
リズ「私の方は
三つの首のそれぞれがもつ状態異常付加能力、毒とスキル封印と
麻痺で固まっているリズめがけて三つの首が襲いかかる。咄嗟に二人がかりで首を防ぎ、リズをかばう。それを繰り返していくうちに麻痺と毒が抜けた。しかしスキル封印は未だとけなかった。
アスナ「もしかしてこれってこいつ倒さないと外れないタイプかな?」
ユーコ「もしかしなくてもそうっぽいわね。私とリズのは時間だったからよかったけどアスナがスキル封印はきつすぎるわ」
アスナ「リズが重要になってきたね」
リズ「私!?無理よ無理!」
ユーコ「そうはいっても私とアスナの通常攻撃だけじゃ微々たるダメージなのよ。リズのスキルが重要になるのは当然じゃない」
リズ「そう言われても…」
アスナ「大丈夫だって!リズならできる」
リズ「何を根拠に」
アスユー「「信頼」」
リズ「………」
ユーコ「あんたなら大丈夫よ。私たちがサポートするから。あれに思いっきり喰らわしなさい」
アスナ「そういうこと」
リズ「………しょーがないわね。やってやろうじゃないの!!」
戦い方が決まった。
前衛にアスナとリズ、後衛がユーコ。それ事態は変わらないが、攻めかたが変わった。
アスナとユーコはひたすら攻撃を防ぐことだけに集中していた。それにたいしてリズは二人がはじいた頭に『アッパー・スウィング』や『トリニティ・アーツ』でひたすら攻める。アスナとユーコのHPバーがガリガリと削れていくが二人を信じて攻め続けた。攻撃がリズにまわることはなかった。すべてユーコの槍とアスナの細剣が防ぎ続けた。
そして数分後、ついに終わりはやって来た。
ユーコの槍の一本が耐久限界で砕けた。そこを狙うクワトロケルベロスだったが、その牙がユーコに刺さることはなかった。すぐ目の前で固まるクワトロケルベロス。
そしてその身体は、パリィィンという音を響かせ、砕け散った。
ユーコ「……終わった…」
リズ「あー疲れたー」
アスナ「お疲れさま。なんとか耐えきったね」
ユーコ「あぁ…槍が」
リズ「私がまた打ってあげるわよ。ほら、あの奥見てよ」
リズが指差した先には、巨大な水晶体があった。高さ三メートルほどの水晶体の山。見るものすべてを引き付けるようなその輝きは、3人をしばし魅了した。
アスナ「あっ、そういえば…」
リズ「あーこれはこれは…」
アスナとリズがアイテム欄を確認する。先程のモンスターからドロップした品を確認していた。
ユーコはすでに確認を済ましていた。『毒槍』。敵に毒の状態異常を一定確率で与える槍。この槍があればさらに攻撃のはばが広がると喜んではいた。しかし、先程の戦いで失った槍を思い、素直に喜べなかった。
アスナ「はい、ユーコ」
リズ「あと一本はあれで打ってあげるわ」
ユーコの目の前にトレードの申請が2件現れた。アスナとリズからのトレード申請。開いてみると二人ともが出したものは『槍』。アスナの方は『ホロウスピア』。アストラル系統のお化けモンスターに大ダメージを与える槍。リズの方は『雷槍』、敵に
ユーコ「………いいの?」
この2本があれば残すはあと一本。正確には予備を含めて3本なのだが、あと一本でソードスキルが使えるようになる。
しかし、この2本とも普通に売ればかなりの財産になる。アスナなら細剣を強化するための素材なんか大量に集まるし、リズも大量にインゴットの確保ができる。それだけにユーコは素直に受け取れなかった。
リズ「なーに気にしてんのよ。インゴットならあれがたくさんあるし、それにあんたらに依頼すればいいだけじゃない」
アスナ「それにユーコが更に強くなれば私も楽できるしね」
ユーコ「二人とも…」
二人とも本心から言ってるわけではない。そのうらに違った思いがある。ユーコはそれを口にこそ出さなかったがわかった気がした。
そしてそれらを受け取った。
ユーコ「さーて、あれとってさっさと帰りましょ。帰ったら早速打ってもらうからね!」
リズ「えー少しは休ませなさいよー。大変なのよ打つのって」
アスナ「もう少しがんばろ。後で誰かにマッサージでもしてもらえばいいって」
ユーコ「ほう、アスナはキリトにいつもマッサージしてもらってるのか~」
リズ「いいことを聞きましたな~」
アスナ「なっ…//」
アスナの顔が赤くなる。完全に墓穴をほった結果だ。
アスナ「何いってるのよ~~!!!」
その後少しの間おいかけっこが続いたあと、無事インゴットを回収してリズベット武具店に戻った。
しかしアスナはアルゴに今回の件の情報を流してもらうためギルドに戻った。
もともとのお目当てであった『リトネリウム』の他にも多くのインゴットが集まった。それこそしばらく素材集めの依頼を出さないでよくなるくらいに。
カン、カン、カン、カン…
リズは早速リトネリウムで槍を作り始めた。結局休憩もできなかったが、仕事に妥協はしない。一回一回精魂をこめて叩く。
プレイヤーのなかには、ただ叩くだけと適当に叩く鍛冶屋も多くいる。実際、決められた回数たたくだけなのだが、リズは本気でやらなければいいものはできない。という持論を持っており、一回一回真剣に叩く。そして10回をを越えて少したったとき、リズは叩くのをやめた。
槍が完成したのだ。
リズ「ふぅ。『オルグレイブ』POW重視の槍ね。私の最高傑作クラスよ」
ユーコ「ありがとうリズ。やっぱりリズに頼んで正解だったわ!」
リズ「あんな冒険はもうごめんだけどね。今日はもう休みたいし店を閉めるわ。また後日ね」
ユーコ「ええ。また『無限槍』の槍さばきを見せてあげるわ」
そういってユーコは帰っていった。
店にはリズ一人が残った。
リズ「大変な一日だったわ。でも…」
ゆっくり深呼吸をした。
リズ「すっごい充実した一日だった!!」
こうしてリズの長い長い一日は終わった。
次の日から武器作成の依頼が大量にきて結局素材集めの依頼をだしたのはまた別の話。
どうもコクトーです
これにてリズ編完結です
次はだれがいいかな……
今回出てきた槍の名前は結構適当だったりします
いいアイデアがあればぜひ!
もしかしたら採用するかもしれません
しばらくは他の作品になっちゃうかもしれませんがのんびりいきますのでお待ちください
ではまた次回