"元"イッセーとフェニックス 作:ば☆あ☆る
「ん……」
冥界、フェニックス領にあるフェニックス家の館。
その自室のベッドで、俺は目を覚ました。
頭の横にあるのは枕より少し固くて、しかし弾力のあるもの。
横を向いていた顔を回し、上を見ると微笑む一誠の顔があった。
「ふふ… おはよう、ライザー。」
「おはよう。 一誠、なぜ俺の部屋に?」
「あれ、覚えてない? あんなに激しかったのに…」
「…ああ、そうだったか。」
昨晩のことを思い出しながら、起き上がり、ベッドから降りる。
正座をして俺の頭を太ももに乗せていた一誠も俺とともに床に降りた。
「今日はグレモリーさんの所にお話つけにいく日だよ。」
「わかっている… まったく、父上も面倒なことを…」
「あはは、でもいずれはそうなってたのが早まっただけだよ。 僕も一緒に頑張るから、さ。」
「…ありがとう。」
「ふふっ、どういたしまして!」
一誠は俺が着替えを終えた途端に左腕にくっついてきた。
同じ部屋で寝た日はいつもこうだ。
「お前も、偽物に会うことになるな… 嫌ならここに残っていても…」
「構わないよ。 赤龍帝… ふふ、ふふふ… もう、僕は兵藤一誠はいらないから。 一誠さえあればそれでいいんだよ。」
「…そうか。」
悪魔の俺から見てもドス黒くて底冷えするような笑顔を浮かべる一誠。
「それでも憎いんだよねぇ……… 壊さないように… 注意しなきゃ。」
「ああ。 現魔王の妹のその眷属を殺してしまったとあれば大事になりかねん。 つーか絶対なる。」
本当に父上も面倒なことを持ってきたと思う。
一応は許婚に当たるリアス・グレモリーとの結婚を早めるなど。
「駒王町… 懐かしいなぁ…」
「ああ、俺も… あの一回だけだが… お前と会った場所だ。 だからあの町は好きだ。」
「嬉しいこと言ってくれるね。」
♢
「部長の… 婚約者ですか…」
俺---兵藤一誠はわざと驚いたような表情と声色作って部長に返事をする。
そして頭の中でほくそ笑んだ『原作通りだ』と。
転生者である俺にとって、このイベントは予測可能なものでありこの先メインヒロインであるリアス・グレモリーを俺に惚れさせるために必要なものなのだ。
前世では凡才で顔も普通で、一人のまま死んだ俺が、今世ではイケメンで才能に溢れた少年となれたのだ。
原作主人公のようにハーレムを作り、幸福を掴むために原作主人公と成り代わり、そしてこれまで生きてきた。
幼馴染キャラとのフラグ立てもバッチリだ。
そもそも俺は原作主人公が嫌いだ。 非才でエロくて甘ったれていて、それでも女性にモテるだと? そんなの嫌いになるに決まってんだろうが。
「そう、その婚約者がもう少しでここに来るのよ… 話をしていたら、現れたようね。」
オカルト研究部… 俺たちグレモリー眷属の隠れ蓑であるその部の部室の床が赤く光り、炎が漏れだす。
ライザー・フェニックス。 これが原作通りならばそれが部長の婚約者の名であり、自らの眷属でハーレムを作る変態である。
眷属というのは主人の手によって悪魔に変えられた者、もしくは悪魔に変えられる術を施された悪魔のことを指す。
それは駒の名の通り、チェスの駒と同じ数だけあり、それぞれにチェスの駒と同じ特性がある。
「…待たせたな、リアス。」
「久しぶりね、ライザー。」
部長は魔法陣の炎の中から現れた赤のスーツを着崩した男に返答をする。
その婚約者… ライザー・フェニックスの後ろには十何人かの女の子がいた。
ライザーは部長の向かいのソファーに腰掛ける。
俺たちグレモリー眷属と相手のフェニックス眷属が、間に机を置いて向かい合う形になる。
「まずここにきた要件だが…」
「私とあなたの婚約のことでしょう? …私は大学卒業までは自由にさせて貰えると聞いていたのだけれど。」
「ああ、俺もそう聞いていた。 しかし父上とサーゼクス様の話し合いの結果、それが早められることになったらしい… それと、話はもう一つあってな… 一誠。」
自分の名を呼ばれ、ライザーを睨み返すとそいつは『お前じゃない』と言い返して来る。
俺でないというのならばこの場にいる誰が一誠なのだろうか。 兵藤一誠は、原作主人公は俺一人のはずだ。
「何かな? ライザー。」
「…赤龍帝と話がしたかったんだろう?」
「ああ、そうだったね。 お心遣いありがとう。」
「気にするな。」
ソファーに腰掛けるライザーの1番近くにいた少女が歩み出る。
その子が一誠なのか、とその少女の姿を注視して初めて気づいた。
「お前… 誠二か…!?」
「誠二? 誰のことかな? 兵藤誠二は8年程前に死んだよ。 今ここにいる僕は一誠だ。」
「…お前はまだそんなことをほざいていたのか!」
「どうしたの、急に声を荒げて… 赤龍帝くん、久しぶりだね。」
その姿は、少し成長してはいるが俺の弟で、8歳の頃に失踪した俺の弟であった。
恐らく彼は、俺が兵藤一誠の中に入ったことにより追い出された元の兵藤一誠の中身だ。
「羨ましいなぁ… 僕の場所を奪って、僕を蹴落としちゃってさ… そんな君が、才能に溢れていた君が赤龍帝にまで恵まれて、そして今ここに生きているのがちょっぴり気にくわないかな。」
「ここは俺の場所だ! 兵藤一誠は俺一人だ!」
「うん、だからその場所はもう君にあげるね。 僕は今、ここにいるから。 …うーん、それでも気に喰わないや。」
誠二はニヤリと笑いながら、ふらふらと体を揺らしてこちら側に来る。
部長が止めようと立ち上がり、近づいた時、誠二が部長の顔を見て、笑った。
「え… あ…?」
「部長!?」
それだけで部長は、足元の地面が消え去ったかのように崩れ落ちてしまう。
不味い、と思い俺の
他の眷属たちも臨戦態勢をとった。
「お前! 部長に何をした!」
「んー? ちょっぴりだけ、怖ぁくさせてあげたんだよ。 うーん、強めにかけはしたけど… 思ったより脆いなぁ… これだけで転んで、立ち上がれないなんて、さ。」
ますます気持ち悪い笑みを深めた誠二が近づいて来る。
そしてもう少しで手の届く距離に来る、という所で俺と誠二の間に金髪のシスターが割って入った。
「アーシア…」
彼女は少し前に俺が助け出した子で、新人の悪魔だ。
原作ヒロインの一人で、順調に俺に惚れてくれている。
「…イッセーさんに、手は出させません!」
少し震えながらも、アーシアはそこを退かない。
アーシアの頭の上から見える誠二の顔が一瞬、ほんの一瞬だけ無に戻り、そして誠二はアーシアの顔を掴んで引き寄せた。
「おい! 何をしている!」
「…ふーん、うん、いい子だね。 僕に対する敵意はあっても、害意は見当たらない。 お前には勿体無い、いい子だ。」
「…あ… あぁ… あ…」
アーシアが目に見えてガタガタ震え始める。 俺は明らかな異常を察して、アーシアから誠二を引き剥がす。
「…ふざけんな!」
「ふざけてなんていないさ。 それに、僕はあの… アーシアちゃん? の目を見ていただけだよ。 僕は何も悪く無い。」
「それでもこの子が怯えてるだろうが!」
もう我慢できない。 赤の籠手に覆われた左手で、誠二を殴りつける。
完璧に捉えたと、そう思った拳は誠二に当たる直前で何か黒いモヤのような物に止められていた。
「ふふふふふふふふふ…………」
誠二は不気味に笑いながら、俺と目を合わせる。 そう、目を合わせてしまった。
誠二の黒い瞳が不気味で、不気味で、目を離そうとしても視線が動かない。
それはまるで、光の届かない程に深い海のようで、果てしない闇のようで、無限の宇宙のようで… その中に一人取り残されたような息苦しさとを感じる。
「あ… あ… あ…」
寒くて、怖くて、恐ろしくて… いや、その感覚を言い表すような言葉は一つしかない。
倒れてしまいそうになった所で、俺の目が何かに阻まれる。
「大丈夫かい!? イッセーくん!」
それは同じグレモリー眷属の木場の手だった。 そのまま後ろに下がらされて、今度は木場が誠二と相対する。
「木場… ダメだ。 そいつは… 本当に…」
ヤバい、とそう口に出そうとした所で再び誠二の目が俺を捉え、声を出すことも出来なくなる。
「なぁんだ。 君も彼の味方? まあ、いいけどさぁ… ほーんとに妬いちゃうな。」
「部長とイッセーくんとアーシアさんに何をしたんだ!」
「だから、ちょっと目を合わせただけだって… 君も試してみるかい?」
「……!!」
「これ以上、手出しはさせませんわ!」
睨み合う両者の間にグレイフィアさん… 部長の家のメイドさんで、魔王様の眷属にして奥さんが割って入る。
「これ以上はやめて頂けませんか? 駄目、と言うのならこちらも武力行使に出させて頂きます。」
「…そ、だったらそれでいいよ。 最後にもう一つだけ言っておくけど… 僕は目を合わせただけだ。 従って、僕は悪くない。 カケラもね。」
誠二が振り返って、ライザーの横に戻ると俺もようやく動けるようになった。
まだ震える足で立ち上がる。
「…驚いたわ、イッセーの知り合いのようだけど… あなたは、何者なの?」
部長は俺と同じようにヨロヨロと立ち上がり、ソファーに倒れこみながら問う。
誠二はまた口の端を歪ませ、部長に歩み寄った。
「僕は一誠。 あそこの赤龍帝の元弟で、本来は赤龍帝だよ。 今はただの一誠。 間違っても誠二じゃないから、よろしくね。」
「…全く、訳がわからないわ…」
「うん、わからせようとしてもいないから… あの可愛いシスターちゃん、えっと、アーシアちゃんだよね? 彼女、中々にいい才能だね。 大事にしてあげなよ?」
「言われなくても、そうするつもりよ。」
誠二は満足気に頷き、再びライザーの隣は戻る。
「悪いな、リアス。 そこの赤龍帝くんとこいつには因縁があるようでな。」
「…構わないわ。 でも、もう少しキチンと躾けておいてちょうだい。」
「それは難しいな。 俺にも少し厳しいよ。」
わざとらしく苦笑するライザーは立ち上がり部長の目の前に行く。
「さて、今回の件だが… 俺も少しばかり性急過ぎると思っていてな。 そこで、です。 グレイフィア殿。 レーティング・ゲームで事を決するというのはいかがだろうか?」
「…元よりそのつもりでした。 話がこじれればレーティング・ゲームにより決することにしろ、とあらかじめ言われていましたので。」
「そうか、ならば都合がいい… そうだな、ハンデとして… 10日だ。 10日間準備期間をやる。 その間に修行なりなんなりして、俺たちフェニックス眷属を倒せるようになれ。」
「随分と優しいのね。」
「ああ、少しばかり早過ぎると思ったのでな。 …では、帰らせて頂こう。」
ライザーがソファーから立ち上がり、パチンと指を鳴らすとまた魔方陣が現れ、フェニックス眷属達は魔方陣から現れた炎に包まれて消えていった。
ちなみに私は原作イッセーくん好きです。
バカでエロくてあまちゃんでワガママですが、バカなりに優しくてエロなりに紳士的であまちゃんなりに優しくてワガママを貫き通せる力を持っていて、後々に拗れを残さないし。
甘いだけのどっかのワンサマさんとは訳が違う…!