竿魂   作:カイバーマン。

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一週間休ませてもらってましたが、晴れて竿魂再開です。

そしてそして、またまた春風駘蕩さんが集合絵を描いて下さりました。


【挿絵表示】


原作万事屋トリオ+SAOキャラが総出で登場しております。描くの大変そうです……
中には未だ本編には登場してないキャラも……

このまま続けていればその内登場するやもしれません。

大変素敵なイラストを描いて下さりありがとうございました。



第十三層 嘘から出た本心

夕日が差して空が紅く染まる頃

 

かぶき町は本当の姿へと成り代わる

 

多く立ち並ぶ飲み屋にはのれんが掛けられ

 

キャバクラの呼び込みが次第に増え始め

 

普段はお目にかかれないであろう異色あり濃い男女、もしくは”真ん中”が、我が物顔で歩いて行く。

 

夜ともなれば更に活気が湧き、更に物騒な地帯へとなり、更に濃いキャラが現れる町となるであろう

 

そんなゲームの世界にも近しい非現実的な場所を

 

桐ケ谷和人は橋の真ん中に立ちながらぼんやりと眺めていた。

 

「流れに流れて遂にかぶき町へと来てしまった……」

「始めてきたこの町の感想は?」

「現実世界なのに仮想世界に来た気分」

 

丁度かぶき町と隣町を繋ぐ橋の手すりにもたれている和人に、隣に立っているユウキが声を掛ける。

 

彼女に対しボソッと短く呟くと、ユウキと挟む様に自分のもう片方の隣に立っていた銀時が「あ~」とけだるそうに声を出した。

 

「ゲームの世界とはちと違うな、言っておくがかぶき町ではHPゼロになってもコンテニューは出来ねぇぞ、一度やられたらケツの毛一本残さずむしり取られる、それがかぶき町で生きていく上の試練だ、隙を見せたら命はねぇと思え」

「……EDOで例えるならPK上級者が集う第三十層のGGOの占有地区みたいなモノか?」

「そういやあそこってかぶき町に似てるね~、姉ちゃんあの地区に住むのが夢だったんだ」

「何も考えずに突っ込んだだけで蜂の巣にされるような街によく住もうと思ったなその人」

 

ゲームの話を交えながらかぶき町の事を銀時達に聞いた後、和人は橋にもたれながらガックリと項垂れる。

 

「まさか口から言った出まかせのせいでこの町に赴く事になるとは思わなかったよ。エギルには絶対こんな町に近づかないって啖呵切ってたのに」

 

志村姉弟と妹との話を終えて、和人は彼等と一緒に家に戻るのも嫌だったので、とりあえず銀時達と一緒に一度かぶき町を見ておこうとここまで足を運んだのだ。

 

前にEDOでエギルにかぶき町に来てみないかと誘われた時に、絶対にイヤだと断固拒否したが、まさかこんな形でやってくる羽目になるとは夢に思わなかった。

 

するとユウキが、嬉々した表情で人差し指を立てながら一つ提案してくる。

 

「あ、だったら今からエギルのお店行く? あそこ私の為にちゃんとガソリン用意してくれてるんだよ」

「客にガソリン出す店って普通どうなんだ……?」

「ふざけんな、俺は行かねぇぞ」

 

リアルでも知り合いらしいユウキの為にとエギルが店に用意してくれているのだろうか?

 

店のメニュー欄に並ぶ酒類の中でそっと「ガソリン・ジョッキ一杯600円」と書かれているシュールな光景をイメージする和人だが

 

エギルの店と聞いて銀時はフンと不機嫌そうに鼻を鳴らしながらユウキ手の提案を断る。

 

「この前いい加減ツケ払えって言われて命からがら逃げだしたばっかりなんだ。次に行ったらきっと嫁さんが出てくる、つまり間違いなく俺は殺される」

「殺されはしないでしょ、片手一本持ってかれるのは確実だけど」

「甘ぇよ前にあのハゲが怒らした時は凄かったんだぞ。あのハゲ海の底に重り付けられたまま蹴落とされてさ、それ見て爆笑してた俺も沈められた」

「……アイツの嫁さんヤクザ?」

「まあ仮に俺達がやってるゲームでラスボスだと称して目の前に現れても、俺は一切疑問持たずにすぐに受け入れられると思うね。そしてもしその時に戦闘に入ったら俺はお前等を置いて全力で逃げ出す」

「俺の中のお妙さんみたいなモノか……末恐ろしい、世の中の女はどうなってんだ」

「それがわかれば男は苦労しねぇよ、ゲームのモンスターよりもおっかねぇ連中だからな」

 

女性に対してはやや距離を置いている和人と同じく銀時もそこら辺はよくわかっていないらしい。

 

「あのさぁ、女はみんなモンスター扱いしてる所悪いけど、こっちだって男の勝手気ままな性格には苦労してるんだからね?」

 

しかしそれは逆もしかり、女性もまた男性特有のめんどくささに苦労しているのだと、ユウキは静かに反論する。

 

「ボクだって銀時と相当長い間付き合ってるけどさ、未だにボクには言えない秘密の一つや二つ抱え込んでるでしょ? そういうのイヤなんだよね、隠し事なんかせず堂々と教えてくれればいいのに」

「じゃあお前の姉ちゃんと一緒にいた時の事をよりばっちり詳細に教えてやろうか?」

「……ごめん、そういうのは秘密にしておいて、なんか聞きたくない事聞かされそうで……」

「隠し事……」

 

ため息交じりに銀時に対して愚痴をこぼすユウキに対し、和人は思い出したかのようにふと彼女に対して顔を傾ける。

 

 

「じゃあユウキ、それなら俺からもちょっと聞きたい事あるんだけど?」

「え、なに?」

「喫茶店でお前の行動を見て思ったんだけどさ、お前ってもしかして……」

 

聞いていいのかどうか迷いはしたものの、やはり気になるので和人は思い切って聞いてみる事にした。

 

それは

 

 

 

 

 

 

「身体が”からくり”で出来てる、とか?」

「……」

「……」

 

和人の思い切った問いかけにユウキだけでなく銀時も無言で固まっていると

 

少しの間を置くと二人は口を大きく開いて同時に

 

「「な、なんでわかったぁぁぁぁぁぁ!?」」

「むしろどうしてわからないと思ってたのアンタ等!?」

 

一緒に驚きの声を上げるユウキと銀時に、和人が負けじとツッコミを入れると、銀時は頭を抱えながら恐ろしいモノを見るような目で和人を凝視する。

 

(な、なんて野郎だ……! 喫茶店でのユウキの些細な行動を見ただけでそこまで察知する事が出来るとは……! 一体あそこでどう見ればそこまで辿り着ける推理が出来たんだ……コナン君や金田一の孫もビックリだよ! とんでもねぇ名探偵だよコイツ!)

「なんか驚きつつ頭の中で俺の事を過大評価してる所悪いんだけど、普通にわかる事だろ! ガソリン飲んだり首取れたり! どう考えても人間の構造から逸脱してんだよ!」

 

ちょっと前に喫茶店で目撃した数々のユウキの奇行と、それを無理矢理隠し通そうとする銀時の行動を見れば大体検討が付く。

 

隠し通せた筈だとなんの疑いも無く思い込んでいた銀時が、バレた事に焦っているのを尻目にユウキは「いやー」と言いながらポリポリと頭を掻きむしる。

 

「君には色々と驚かされるね、でもボクの身体そのものがからくり仕掛けな訳じゃないよ」

「ああ、それは俺もわかってたよ。姉もいたって事だし何より感情性は人間そのものだからな」

 

自分を指差しながらユウキはあっさりとした感じで答えてくれるので、和人は内心安堵しながらも話を続けた。

 

「人間の真似事しか出来ないAIじゃ再現不可能な事まで出来るし、つまり人間であってからくりの身体……」

「まあそれで合ってるよ、この体は仮の器みたいなもので、本当の身体は別の所にあるの」

「仮の器、さすがにそこまで把握してなかったな……てことは今ユウキの本当の身体は別の所にあるのか?」

「そう言う事、まあ流石にどこにあるかは教えられないけど、これってあまり人に言いたくないんだよ、気味悪がられるし」

「俺はいかにもSFっぽくて好きだけど……でも一体どういう経緯でそんな事する羽目になったんだ」

 

「ハハハ」と笑いながら言うユウキに和人は遠慮がちに尋ねると

 

そんなやり取りを黙って見ていた銀時が彼女の代わりに口を開く。

 

「随分昔にコイツと姉は両親共々厄介な病気にかかっちまってな。それで数年後にコイツの両親がポックリ死んじまった後、残った姉妹にどこぞのお偉い科学者が持ちかけて来たんだよ、人の意識をからくりに移すっつう手術をやってみないかってな」

「な! それって確か数年前から可能だと立証された、人体の足りない器官をからくりで補うとかいうアレか!?」

「そう、俗にいう”サイボーグ”って奴だね。ちなみにボクがその手術を初めて受けた人」

「そうだったのか……確か人間の魂をからくりに移し替えるって研究をしてた江戸でも名の知れた発明家・林流山が、ある人物と共同で設計したとは聞いていたけど……」

 

林流山は和人もよく知る有名な発明家だ。

 

江戸にはもう一人有名なからくり技師がいるが、彼もまたその者と並ぶ程称される数々の功績を持つ人物。

 

その功績の中の一つが、人間における様々な部分を、からくりで義体を作って補うというサイボーグ化だ。

 

「ユウキがその手術の最初の被検体って事か、でも姉妹に持ちかけられたんだよな? それじゃあお姉さんの方は……」

「……アイツはもう時間切れだったのさ、ユウキよりもアイツはずっと病の浸食が早かった、とてもからくりで補えきれねぇぐらいにな。だからアイツは言ったんだ、「妹の方を優先してくれ」ってな」

「……」

 

 

最後の最後に僅かばかりの希望の光が降り注いだのに、それすらも既に間に合わなかったと知らされた時のユウキの双子の姉は一体どんな心境だったのだろうか……。

 

表情は変わらないが何処か思いつめた様子で彼女の事を話す銀時に目をやりながら、和人が神妙な面持ちで話を聞いていると、ユウキが苦笑交じりに口を挟む。

 

「まあそんなこんなで色々と大変だったけどさ、姉ちゃんの代わりにボクはこうして無事に大手を振って外を歩けるようになったって事」

「なんつうか、思った以上にシビアな過去持ってるんだな……ていうかからくり仕掛けの体の時点で既に大変か」

「確かに普通の食事も出来ないし激しい運動も出来ないし何かと不便は多いけどさ、EDOの世界に入ればボクもご飯食べられるし戦う事も出来るから、窮屈に感じる事はあまり無いよ」

「現実世界での不自由な環境を仮想世界で補っている……そうか、君はある意味向こうの世界の住人なんだな……」

 

VRMMOの世界では例え視力を失ってる者でも視覚する事がができ、両足を失っている者であろうと作ったアバターに足があれば、また歩く事が出来る

 

こういった現実で深刻な障害を持つ者が、仮想世界にフルダイブして何の不自由も無い身体を堪能する事が出来るとなって、近年では医療機関も積極的にVRMMOに注目している。

 

「ユウキがほぼ毎日ログインしているのも、現実よりも仮想世界の方が自由に動き回れるって事か」

「コイツはサイボーグになる前は姉と一緒にずっと寝たきりだったから、リハビリみたいな感じでずっとあのゲームやり込んでたんだよ」

「それはユウキの剣の腕を見れば納得だな、きっとプレイ時間なら余裕で俺を超えてるんだろ」

「まあね、ちなみにボクよりも姉ちゃんの方がもっと強かったよ、現実世界の銀時より強かったかも」

「アイツは現実でも俺より強かったよ」

 

少々自慢気に亡くなった姉の事を話すユウキに、銀時が横からポツリと口を挟む。

 

「最期は目も見えず体を動かす事も出来なかったが、それでもこの世界を恨まずに笑って死んでいった。俺が心底敵わねぇと思ったのはアイツともう一人だけだ」

「そうだね、やっぱり姉ちゃんが一番強いや」

「……」

 

脇目も振らずに自由奔放に勝手気ままに生きるちゃらんぽらんであるこの坂田銀時であっても

 

ハッキリと自分より強い女性だったと評価するそのユウキの亡き姉とは一体どれ程の人物であったのだろうか。

 

物凄く気になった和人は彼を見つめながら「聞いてみたら教えてくれるかな?」と思いながらゆっくりと口を開きかけたその時

 

突如銀時が手をポンと叩いて先に口火を切った。

 

「あ、そうだ。晩飯はラーメンにしよう。なんかアイツの事思いだしたらラーメン食いたくなった」

「へ!? 何で急に晩飯の話!?」

「いやアイツってば昔からラーメン好きでさ、倒れる前はよく俺と一緒に食ってたんだよ。美味そうに食ってるアイツの顔思いだしたら急に腹減って来た、さっきからずっと晩飯何にするか考えてたから丁度いいや。という事でラーメン屋に行くぞ」

「えぇ……この流れでまさかのラーメン屋行くってアンタ……」

 

やはり自由奔放で勝手気ままな所は相変わらずであった。死んでしまった恋人を思い出してしんみりしてるのかと思いきや、今晩何を食べようかと同時進行で考えていたらしい。

 

和人が呆れてため息を突いている中、銀時はかぶき町の方へと目をやりながら話を続ける。

 

「北斗心軒とかいう店はちゃっちいが美味いラーメン屋あっただろ? あそこ行こうぜ」

「ああ、確か女性の店主と住み込みで働いてる女の子の二人でやってる店だよね、ボクあそこの店好きだよ、何も食べられないけど」

「なんで何も食べられないのに好きなんだよ」

「銀時が食べてる間一人でヒマにしてると、よく店の人が話しかけてくれるから。いやーあの眼鏡を掛けた女の子、一見近寄りがたい雰囲気あるんだけど話すと結構喋るんだよー」

「そういや俺もあの小娘となら何度か話した事あったけ? コイツと同じぐらいの年だろうに働き者だよなぁホント」

 

ユウキとそんな話をしながら行くべき場所を決めつつ、銀時はチラリと横にいる和人に目をやる。

 

「つー事でお前もついて来い、お前とさほど年の変わらねぇ子がまともに社会人としてラーメン屋で汗水垂らして働いてる姿を見て勉強して来い」

「いや行くなら行かせてもらうけどさ……俺も腹減ってるし何より今家に戻りたくないって所もあるし」

「じゃあお前の奢りな」

「は!? なんで!?」

「仕事の報酬だ、お前の為に妹や知り合いの姉弟を上手く一芝居売って騙してやっただろうが」

 

自然な流れで勝手に自分の財布を当てにしてきた銀時に和人が問いかけると、彼は平然とした調子で答える。

 

「嫌ならいいんだよ? その代わりお前の事あの三人に全部バラすから」

「く、これが侍のやる事か……! わかったよ、ラーメン一杯奢るぐらいなら安いもんだ」

「話が早くて助かるわ、んじゃ行くとしますか」

 

自分より年下の、ましてや無職の相手にたかるとはなんて男だ……

 

内心毒突きながらもここで迂闊な真似をすれば今日ずっとやって来た事が全て水泡と帰す。

 

渋々了承すると銀時は機嫌良さそうに彼の肩に手を置いてかぶき町へと誘おうとする。

 

 

 

だがその時だった

 

「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

 

行きつけのラーメン屋へ行こうとする三人組に対し

 

背後から大きな叫び声が飛んで彼等を呼び止めた。

 

その声にどこか聞き覚えのある和人は嫌な予感を覚えつつ後ろへ振り返ると

 

「全て聞かせてもらったよ和人君! やっぱりその男とはグルで僕等を騙してたんだな!」

「うげ! 新八! お前なんでこんな所に!」

「どう考えても怪しいと思ってコッソリ尾行させてもらったのさ!!」

「あーあ」

「バレちゃったー」

 

現れたのはなんと、先程喫茶店にいた人物の一人、志村新八であった。

 

どうやら物陰に隠れてずっと自分達の会話を盗み聞きしていたらしい。

 

彼の登場に焦る和人をよそに銀時とユウキはすっかり他人事で眺めていると

 

「フン、どうせこうだろうとは思ってたけどね私は。お兄ちゃんが真っ当に働く気なんて更々無い事ぐらいお見通しなんだから」

「えぇ直葉! お前まで!」

「私も新八さんと一緒に橋の下でずっと三人の様子を伺っていたの」

 

新八の隣に歩み寄って現れたのはこれまた和人の妹、桐ケ谷直葉。

 

全てを見破った表情で、明らかに怒ってる眼差しで和人をキッと睨み付けている。

 

「だってその二人明らかに胡散臭いんだもの! そんな怪しい人達が裏表なくお兄ちゃんを仕事に誘うとかおかし過ぎる!!」

「怪しいんだって俺達」

「あっれ~? どこかおかしい所あったかな~?」

「全身くまなくおかしいんだよアンタ等!!」

 

直葉のごもっとな言葉に対し首を傾げる銀時とユウキだが、すかさず新八が彼等に指を突き付けてツッコミを入れる。

 

「ガソリン飲んだり首取れたりとかどう考えても変だとは思ってたけど! まさかアンタがサイボーグだったなんて!!」

「え? もしかしてその辺のボク等の会話も全部話聞いてたの? てことは姉ちゃんとの思い出やボクと銀時のお涙頂戴の悲しい過去も?」

「その辺を聞いてしまった事にはマジですんませんでしたぁ!!! いやホント! 何も知らない僕等が聞く話じゃなくて!!」

「橋の下で盗み聞きしてる自分達が恥ずかしいと思ってました! その件については私も全力で謝ります!!」

「いや別にいいんだけどさ、あまり周りに言い触らさなければ」

 

橋の下で銀時達の会話を盗み聞きしてやろうと思っていた時は、まさか深刻な話なんてしないだろうと思っていたのだが……

 

銀時とユウキの昔話を、なんの縁もゆかりもない自分達が聞いてしまった事に対して、新八と直葉は素直に反省しつつ深々と、特に気にしてない様子のユウキに向かって頭を下げると

 

新八は急に顔を上げて、今度は銀時に対して指を突き付ける。

 

「悲しいサイボーグ誕生秘話を聞いてしまった事に関しては悪いと思ってるけど! それでもそこの木刀腰にぶら下げた天パが和人君と結託して僕等を騙した事は紛れもない事実な事に変わりはない!」

「いやいや俺もそっちと同じく和人君に巻き込まれただけだから」

「最初からおかしいとは思ってたんだよ! そもそもこんな胡散臭い奴今まで見た事無い! しかも万事屋とかこれまた怪し過ぎるし!」

 

死んだ目で適当に言い訳する銀時に対し、新八はそれを耳にも通さずに激しく彼を糾弾し始める。

 

「こんな銀髪天パで年中死んだ魚の様な目をした怪しい風貌した男の下で働いたら、きっとロクな人生待ってないよ! 給料未払いも当たり前! 手に入れた報酬も全部パチンコで消し去って! 家賃も払えず貧乏なクセに年中ダラダラしてそうなこんな男と一緒になったらきっとダメになるって決まってるよ!!」

「おい眼鏡、なんなのお前? どうしてそこまで会ったばかりの俺を把握してる様な感じなの? まるで俺の下で働いてたみたいな口振りなんだけど?」

「こんな男の下で働き続けてもただのツッコミ役に回されて、延々と叫びながら一人で頑張っても! 周りのキャラに埋もれて人気順位も常に微妙な位置に立ち続ける悲しい人生を送るだけなんだよ!」

「おいだからなんなんだよお前、どうしてそこまで先の事を予測できるんだよ。お前本当に俺と会ったの初めてか?」

 

まるで体験してきたかのようにかなり詳しく語り出す新八に、銀時が腕を組みながらしかめっ面を浮かべつつ。

 

不思議と初めて会った気がしない彼に疑問を持っていると、今度は直葉が新八の口の前に手を出して遮る。

 

「まあ新八さんが何言ってるかは私もわからないけど、とにかく私はそんな嘘で私達を騙しながら適当な仕事に就くって事には反対してるの、という事でお兄ちゃん、今から家に帰って母さん交えて家族会議やろうね」

「家族会議!? それは引きこもりにとって最も恐ろしい仕打ちだぞ! 身内による魔女裁判を始めるつもりか!」

「いや母さんだけじゃないや、お妙さんも入れよう」

「既に処刑執行人を用意した上で!? 絶対行きたくない! 処刑台に立たされた状態の裁判なんてまっぴらごめんだ!!」

 

淡々とした口調でサラリと和人に対して効果てきめんな事を言い出す直葉に、和人は反射的に銀時の後に隠れながら抗議する。

 

「別に働くって決めたんだからいいだろ! 万事屋だろうが、天パの侍が上司だろうが! 働く場所なんか俺の自由だろ!」

「いや僕等だってこうして和人君の就職に文句点けたくはないんだけどさ、流石にかぶき町で、しかも廃刀令のご時世に木刀を腰にぶら下げた胡散臭い侍に君を任せるのは……」

「ったくさっきからお前、この人の事をずっと怪しいだの胡散臭いだのって言ってるけどな……」

 

新八にとっては銀時は見るからに不審な点の多い輩だ。一応木刀を腰に下げているのだからそれなりに剣の使い方を知っているのだろうが、そのやる気のない表情のおかげでどうも強そうに見えない。

 

そんな何も知らない彼の評価に対し、和人は後頭部を掻きながらやれやれと首を横に振ると

 

「はっきり言ってお前なんか相手にならない程強いと思うぜ、いやもしかしたら……」

 

ふと頭の中で一瞬思い浮かんだ人物を想像しつつ、和人はフッと笑みを浮かべた。

 

「道場で俺達ガキ共に稽古つけてくれた”あの人”よりも強いんじゃないか?」

「!」

「お兄ちゃんそれどういう事!」

 

和人が放った言葉によって、新八は目を見開き驚きの表情を浮かべ、直葉は本気で怒ったかのように食って掛かる。

 

「その人があの人より強いなんて本気で思ってるの!?」

「どうだろうな、何せもう二度と比べる事は出来ないし。何せもうとっくの昔に死んじゃったしな」

「お兄ちゃん!」

「直葉、俺だってあの人の強さは知ってるよ。結局一本も取れないまま勝ち逃げされたんだからな。けどあの人はとっくの昔に過去の存在となった人だ、それぐらいわかってるだろ?」

 

彼女と新八の前で「あの人」を銀時よりも格下扱いにする事は酷な事だというのはよくわかっている。

 

それもそうだ、自分にとっても彼は常に目標だったのだから。

 

EDOの世界で剣を振り続けたのも、ひたすら彼の剣へと追いつく為であったのだから

 

しかし銀時と出会ってから自分の中で徐々に心境が変わりつつあるのも事実

 

どれだけ剣で敵を斬り捨て、どれだけの戦いに勝利しようと

 

過去の記憶でしかない存在、幻影と勝負する事はもうできない。

 

だから自分は過去を振り返らずに前を見た

 

するとそこにいたのは新たな目標である男の背中があったのだ。

 

EDOは自分よりもずっと初心者でゲームに関してもてんで知識がないにも関わらず

 

かつていなくなったあの男の様に、笑みを浮かべながら何の疑いも無くひたすらに真っ直ぐに進む銀髪の男の背中が

 

「だから俺はこの人と、坂田銀時さんと一緒に行く事にした。あの人の事はずっと思い出として覚えておくけど、俺はもう後ろばっか見るのは疲れたんだよ。こっからは前を見て歩く事にする」

「……」

 

それは紛れもなく和人の本音であった。

あの人の事を忘れようとは思ない、だがずっと引きずっていてはこのまま永遠に自分で作った殻の中に閉じこもり続けるのだろうと薄々わかっていたのだ。

 

ならいっその事、彼への未練を断ち切ろうと決めたのだ。

 

このまま流れに身を任せて思うがままに突っ込むのも悪くない

 

和人をただ無言で見つめながら立ちすくんでる直葉、しかし新八の方はしばらく無言で黙り込んでいた後、ゆっくりと顔を上げて口を開く。

 

「和人君、それが君が行くと決めた新しい道なんだね、今の言葉はしっかりと僕の胸に伝わったよ、嘘偽りのなく本当にその男と歩むと決心したんだね」

「ああ、今回はホラでも誤魔化すつもりでもない偽りのない俺自身の言葉だ」

「君も色々と迷いに迷いながら長い時間を過ごしていたんだね……なら僕も決めたよ」

 

思えば幼馴染である彼とこうして顔を合わせて長く会話するのは何時振りだろうか……いやもしかしたら初めてなのかもしれない。何せ自分にとっての新八は剣の腕も自分より未熟で、ただ泣いてばかりでいつも姉や父親に叱られている弱虫だったのだから。

 

そんな彼を道場に通っていた頃の小さな自分は、ずっと格下扱いして小馬鹿にしていたのは間違いない。

 

しかし今の彼は、そんな弱虫だった頃とは別人と思えるぐらい鋭い眼差しを眼鏡の奥から向けて来る。

 

そして新八は和人から目を逸らすと、突然銀時の右方へ顔を上げてスッと指を突き付ける。

 

「こんな事に巻き込んでしまってすみません、ですが僕はまだアンタがあの人より、『一兄』より強いとは認められません。だから僕や姉上、直葉ちゃんと和人君にとってたった一つの目標だったあの人よりもアンタが強いかどうか、僕に確かめさせてください」

「ふーん……どうやって?」

 

小指で鼻をほじりながらけだるそうに問いかける銀時に対し、新八は真剣な表情でビシッと指を突き付けた。

 

「言葉で語るより剣で語るのが侍、その腰にぶら下げた木刀が見掛け倒しじゃないと言うのなら、今この場で僕はアンタに決闘を申し込みます」

「は?」

「桐ケ谷和人は我が天道無心流の門下の一人、それを連れて行くのなれば、跡取りである僕がそれを黙って渡す訳にはいかない」

 

思わず口をへの字にして固まる銀時をよそに、新八は彼に指を突き付けながら大きく深呼吸した後……

 

 

 

 

 

「なれば白黒付ける為に剣と剣でぶつかり合うのが筋! 万事屋・坂田銀時! 和人君を連れて行きたいならこの僕を倒していけぇ!!」

「ええ、新八さん何考えてんの!? 今時決闘なんて!」

「止めるな直葉ちゃん! こんな見た目ちゃらんぽらんな天パ野郎が一兄より強いとかふざけんじゃねぇ! 僕がこの男に勝ってそれを証明してやる!! やってやるよドチクショウ!!」

「ああ……やっぱりお兄ちゃんに言われた事に腹立ってたんだ……」

「かかってこいコラァァァァァァァァァ!!!」

 

驚きの声を上げる直葉の制止を振り切って、新八は血走った目を向けながら完全にキレた表情で、銀時だけでなく和人に対しても怒鳴り声を上げる。

 

 

まさかの道場の跡取り息子、志村新八に決闘を申し込まれてしまった坂田銀時。

 

だが特に反応せずにただボリボリと頭を掻きむしりながらはぁ~とどっと深いため息

 

 

 

 

 

 

「なんでこーなるの?」

「大変だねぇ銀時」

「……なんかすまん、更に変な事に巻き込んじまって……」

 

次回、志村新八VS坂田銀時による橋の下での決闘開始。

 

果たして勝者は……

 

そしてそんな彼等の戦いを、橋の上から眺める者達とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




待っててくださった読者の皆様、ありがとうございました

待ってますと感想を書いてくれた方達も感謝です。

そして前回の話の感想がほぼユウキについての事だった事には驚きを隠せません……
仕方ないので申し訳ないですが、返信も所々他の方達と被らせて頂きました。

彼女に負けず新八には是が是非にでも目立って頑張ってもらいます。

次回は銀時と新八が一対一で戦うお話。原作主人公と原作準主人公の対決ですね。

ではまた
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