竿魂   作:カイバーマン。

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空洞虚無様からの「竿魂」の支援絵です。


【挿絵表示】


マヨネーズで釣りを勤しむ土方と、それを見守るアスナ、そして余計な事を言った名も知れぬマヨライダー……

その昔、コロコロコミックで鉛筆をルアーに改造して魚を釣り上げるとかいう漫画があったけな……。

懐かしい記憶を思い出させるイラストを描いていただきありがとうございました!



第五十七層 神器造りだよ! 全員集合!!

ここは第四十八層にある「リズベット武具店」

 

もうとっくに店を開いている時間帯にも関わらず

 

店内は薄暗く不気味なほど静かだった。

 

そしてカウンターの上につっ伏してさっきから何度もため息をついて悲観に暮れているのは

 

この店の店主ことリズベットである。

 

「神器……全然完成しねぇ……」

 

カウンターから顔を起こした彼女は酷くゲッソリした様子だった。

 

目の下にくまも出来ていて自慢のピンクの髪の毛もボサボサ気味で頬は軽くやつれている。

 

彼女が酷くグロッキーになっているのは恐らく、ここへ突然フラリとやって来たとあるお客からの依頼が原因であろう。

 

神器の素材となる金木犀の枝を使って、己の全てを賭けてこの世に二つとない最高の神器を造る。

 

そう意気込んでからかれこれ数週間、最初はやる気に満ち溢れていた彼女も、幾度も現れる壁に何度もぶち当たってしまった事で、精神的にも肉体的にも相当参ってしまっているらしい。

 

「過去に名のある鍛冶師が何度か造ったケースはあるみたいだけど……その製造方法は極秘扱いされていてレシピさえも手に入らないのよね……やっぱり私みたいな一人前に成り立てのペーペーじゃ造れないのかしら……」

 

友人のアスナ曰く「ノー天気な所はあるけれどすっごいポジティブな子で、見ているだけでこっちも頑張ろうと思える」という印象を持たれているのだが

 

今のリズベットは一人ぼっちで自暴自棄になりながら虚空を見つめたままブツブツと呟き続けるだけで、ぶっちゃけ見ているだけでこっちの気が滅入りそうな雰囲気しか放っていなかった。

 

「おーい、生きてるかー?」

 

するとそんな近寄りがたいオーラを醸し出すリズベットの所へ、一人の人物がドアを開けて中へと入って来る。

 

自称・アスナの子守り役、沖田総悟である

 

「お日様は昇ってるっていうのに、ここは相変わらずジメジメしてて嫌になるぜ」

 

長い楊枝を口に咥えたまま平然と店の文句を行った後、言い返す気力すら起きずに無言でこちらをジト目で見つめて来るリズベットの前に立つと、沖田は肩に担いでいた大きな袋を彼女の

 

「おらよ、テメェが用意して欲しいって言っていた素材だ」

「うごッ!」

 

丁度頭の上にドンッ!と落とした。

 

「アンタねぇ……痛みは無いけど衝撃はあるのよこの世界……」

 

リズベットは頭を抱えながらその袋を脇にどけると、恨めしそうに軽く沖田を睨みながら袋の中を確認する。

 

「オーイシペンギンの剛毛、スケットシノハラの鋭爪、アソーサイキの大角……EDOじゃ極めて遭遇率の低いレアなユニークモンスターのドロップ品を良く集めてくれたわね……感謝するわ」

「俺の部下に全部任せただけなんだけどな、あのメスガキ共の腕を上げさせるには持って来いの相手だったぜ」

「アンタ部下なんていたの? しかもメスガキって……」

「見た目はガキじゃねぇけどな、中身はまだ実戦もよく知らねぇ小娘共よ」

 

どうやら沖田はリズベットに依頼されて希少な素材品を持って来てくれた様だ。

 

その事に感謝しつつも、こんな男にコキ使われている部下達が可哀想だなと思いつつ、リズベットは自分のメニュー画面から金貨が詰まった袋を一つ取り出して沖田に差し出す。

 

「はいお疲れ、約束の依頼金よ、ちゃんと働いてくれた部下にもあげなさいよ」

「そいつはねぇな、俺はわざわざアイツ等に戦闘の技術を叩き込んでやってんだ、コイツは授業料として全額俺が貰っておくぜぃ」

「アスナの言う通りホント性格悪いわねアンタ……」

 

貰った金をすぐ懐に仕舞いながら真顔で言いのける沖田に、リズベットがいつも彼に対して文句ばかり言っているアスナの事を思い出していると

 

「それよりそろそろどうなんでぃ? 旦那の神器はもう造れんのか?」

「うーん、アンタが寄越してくれたこの希少素材のおかげで、ようやく半分揃ったって所かしら……」

「おいおい、まだ半分ってお前どんだけ俺にあちこち行かせる気だよ、この世界で認知されてるユニークモンスター全部潰させる気か?」

「仕方ないでしょ、神器を造るのであれば妥協は一切したくないのよ私は」

 

リズベットが沖田に希少な素材を集めさせたのは無論、神器の作成に用いる為だ。

 

坂田銀時が持って来た金木犀の枝だけではまだ完全なる神器は造れない、とにかくあらゆる資材を扱って自慢の一品を造る事こそが彼女の鍛冶師としてのプライドなのである。

 

「ぶっちゃけアンタ以外にも色んな人に依頼してるのよ私、神楽には手が空いた時に手伝って貰ってるし、最近じゃ四十二層で金髪の妖精とゴリラの妖精を連れ歩いている腕の良い眼鏡の厨二剣士見かけたから、そいつにもいくつか頼んでるし、他にもエムって女やMって男とか、それとキバオウって変な奴にも……まあ結構な人数に手伝って貰ってるわね」

 

「そんなになりふり構わず依頼なんかして、金はあんのかお前?」

 

「神器手配の依頼主からたんまり貰ってるからその辺心配ないわ、でも付き合いの長い情報屋に定期的に希少素材の情報流してもらっているから……正直完成する頃には貰ったお金は全部無くなってるかもしれないわ……」

 

銀時の神器作成の為に多くのプレイヤーが絡んでいる、中にはまだこの四十八層にまで辿り着いていない者達にも協力を仰いでいるみたいだ。

 

惜しみなく人件費を出すリズベットに沖田が所持金が底を尽きるのではと尋ねると、案の定この神器作成にはあまり利得は得られないらしく、彼女は自虐的な笑みをフッと浮かべて肩をすくめる。

 

「でもいいのよ私は、利益なんかなくても。この世界で最高傑作と称される程の神器を造る、それさえ出来れば他に望む者は何も無いんだから」

「本音は?」

「とにかく名を上げて周りにチヤホヤされたい、褒められたり賞賛されたり、あわよくばカッコいいイケメン剣士に告白とかされてリアルの世界でお近づきになりたい」

 

鍛冶師にとって一番の夢は思考の逸品を造る事、というのはあくまで建て前で

 

年頃の女の子であるリズベットとしては自分の腕を周りに認められて羨望の眼差しを向けられる事の方がなによりの重要な事であった。

 

おまけに色恋も覚えたいと来たもんだ

 

「だって普通そうでしょ! こんだけ頑張ってるんだからもっとみんなに認めて貰いたいのよ私は!」

 

「へー」

 

「例えば1年かけて頑張って物凄く良い剣が造れたとするでしょ! それで依頼主に「フ、俺はこれが造れただけで満足だ、金はいらねぇよ……」とかキザな台詞吐ける鍛冶師がまっっったく理解出来ない! 「こちとら1年もかけてやっと作ったんだからもっと金寄越せや! あと俺への感謝の印として道行く人に俺の名を広めてこい!」とでも言うべきだと私は思うのよ!!」

 

「知らねぇよ、勝手に思ってろ」

 

「私は「神器も造れる凄腕鍛冶師のリズベット様」と言われたいのよ! だからこそ一切手を抜かずに至高の神器を造ってみせるって腹決めたの! このチャンスをモノにしないと私はこの先ずっと「可愛い鍛冶師のリズちゃん」のままなんだから!」

 

「今自分で自分の事可愛いつった? すげぇムカつくんだけど、斬っていい?」

 

店の中には沖田しかいないのを良い事に、内に秘めたる野望を大声で吐き出すように叫ぶリズベット

 

唯一聞いてやっている沖田はしら~っとした表情を浮かべながら腰に差す刀の柄に手を置こうとしていると

 

「おい、なんか店の中随分暗いけどちゃんとやってるよな?」

 

「あぁ!? 今ちょっと立て込んでるから後で来てもらえます!? 今度重なるストレスが原因で絶賛爆発中なんですよこっちは!! ってアレ?」

 

ギィッとドアを静かに開けて覗き込む様に誰かが店へと入って来た。

 

イライラですっかりヒステリック気味なリズベットが噛みつくようにその人物の方へ振り返ると、ふと我に返って素に戻る。

 

「アンタ確か……神器依頼しに来た天パの連れの……」

「キリトな、その男もいるって事は店開いてるんだよな、だったら客として入っていいか?」

「ま、まあ別に良いけど、接客はしないわよ?」

 

どこかで見覚えのある自分とさして年も変わらない見ための全身黒づくめの男、キリトが締まりのない顔で現れるとツカツカと店の中へと入って来た。

 

こっちは今神器を造るので忙しいしってのに……そう思いつつもこのまま無下に彼を追い出すのも悪いなと考えて仕方なさそうにため息をつくリズベット

 

しかし店にやって来たのはキリトだけでは無かった。

 

「うーす、おいピンク頭、そろそろ俺の武器造れたよな? いつまで待たせてんだコノヤロー」

「やっほーリズ、銀時の神器造れたかな?」

「うげ……」

 

彼が入って来るとすぐにまた開いたドアから二人の男女が入って来た。

 

リズベットに神器を依頼した張本人の銀時と、誰とでも仲良くなれそうな親しみのある少女、ユウキ

 

二人の登場、特に銀時が店へやって来た事にリズベットはややバツの悪そうな顔を浮かべ始めた。

 

「い、いや……悪いけどまだ満足する品は提供できないのよ……も、もう少しで完成なんだけどね~ハハハ……」

 

「もう少しっていつだよ、この前催促しに来た時ももう少しって言ってたよな、いい加減出すモン出せよコラ、毎度無駄足使わせられるこっちの身にもなれや」

 

「へ、へぇすみません……いずれ約束通りキッチリご満足して頂けるであろうブツを用意しておきますんで……」

 

「なんか借金取りに催促される負債者みたいだよ、今のリズ」

 

舌打ちしながら苦々しい表情を浮かべて睨み付けて来る銀時に、リズベットは頬を引きつらせて無理矢理笑みを浮かべながらペコペコと頭を何度も下げる。

 

ここん所彼はちょくちょく顔を出して神器はまだかと催促してくる

 

彼曰く、神器そのモノはそこまで欲しいとは思っていないが、月夜の黒猫団というここに来るまで色々とお世話になったギルドの者達に、完成した神器を早く見せてやろうと思っているのだとか……

 

意外と義理堅いんだなと思いつつも、未だ神器造りは難航している状態のままなので、毎回ここに足を運んで催促しに来る彼に申し訳ないという気持ちでつい腰が引けてしまうリズベットなのであった。

 

「アレ? お前あのお嬢様の所のドS野郎じゃねぇか、もしかしてお前もここに武器依頼してんのか?」

「お久しぶりでさぁ旦那、俺は客じゃねぇですよ、俺ならもっとマシな武具屋で装備揃えるんで」

「……」

 

リズベットを尻目に銀時は店に沖田がいる事に気付いて軽く挨拶を交える。

 

この二人、何故かちょくちょく偶然顔を合わせる機会が多いのだ。

 

「ここの店主に希少素材取って欲しいって依頼されてたモンでして、それで約束の品を持ってきてやったって訳です」

 

「ふーん、そういやこの前オメェの所のお嬢様とチャイナ娘に会ったぞ」

 

「そうですかぃ、旦那に失礼な事しませんでしたか? なんなら俺がアイツ等に焼き入れておきますぜ」

 

「いやいいよ、別に大した事も言われてねぇし」

 

ホントはただアスナを闇討ちする為の口実でも作りたいだけだろと沖田のブラックな薄ら笑みを見て銀時は察し

 

彼の誘いをやんわりと断りながら彼はリズベットの方へ再び向き直る。

 

「おい小娘、神器の件はもうちょっとだけ待ってやるからさっさと作っておけよ、さもねぇとオメェに出した金返してもらうからな」

 

「わ、わかってますってば……本当にもう少しで完成するんで返金だけはご勘弁を……」

 

「ねぇリズ、なんか凄い疲れた表情してるよ、髪もボサボサだし、もしかして現実世界であまり寝てないの?」

 

「あはは……大丈夫よー、私は至って健康体よー、心配してくれてありがとーユウキちゃん」

 

「目が銀時より死んでる状態で言われてもなー……」

 

 

渇いた笑い声を上げながら上の空気味に返事するリズベットにユウキは顔をしかめて怪しんでいた。

 

データ上のアバターにもここまでハッキリと疲れが見て取れるという事は、リアルでは相当過酷な状態なのではなかろうか……

 

 

「さてと、じゃあ今度は俺からの話を聞いても良いかな、神器を造れる店主さん?」

「は?」

 

ユウキが心配そうに彼女を見つめていたその時、店の中を物色し終えたキリトがゆっくりとカウンターの前へと寄って来た。

 

話があるというが自分は特に彼と接点は無かった筈だが?とリズベットが目を細めているとキリトはメニュー画面を取り出してピッピッと操作をし始める。

 

「神器が造れると言われているアンタに是非コイツでやって欲しい事があってさ」

「……」

 

過剰に神器が造れる事を繰り返して言うキリトに、リズベットは無言で目を逸らしていると

 

二人の間に置かれたカウンターに突如あるモノが現れ出たのだ。

 

それは漆黒と呼べる程に濃い黒色をした一本の枝……

 

リズベットがそっと彼が取り出したモノに目をやるとすぐに「ん?」と呟き怪訝な表情を浮かべていると

 

 

 

 

 

「神器の素材取って来た、だから俺の分も1本頼むわ、神器」

「……」

 

淡々とした口調でキリトが言った事にリズベットは時が止まったかのように固まった。

 

(え? 今コイツなんつった? 一つの神器を造る為にロクに眠れず疲労で頭もおかしくなって来ている自分になんつった?)

 

1本の神器を造るだけでもかなりの労力が必要になると身に染みてわかった。

 

なのに今目の前にいるこの男は、そんな地獄のような経験を現在進行形で体験している自分に向かって……

 

「欲を言えば刀が良いな、黒の刀」

「……」

「ああ、金の事ならこれから頻繁にこの店に通って払うってので良いよな? 丁度今金欠状態だからまとめ払いできなくてさ、ローン払いという事でここは手を売ってほし……」

 

落ち着いた感じで言いながら神器の要望やお金の払い方について相談を始めるキリト

 

しかしそんな彼に対し、ひたすら耐えるに耐えていたリズベットが遂に

 

「ざっけんなゴラァァァァァァァァ!!!」

「でんぷしッ!!」

 

思考も停止した状態で彼女が行った次の行動は、とにかく面倒事をまた一つ増やして来たキリトへの理不尽な一撃であった。

 

右手からの渾身の拳でキリトの顔面を殴り抜けて華麗に吹っ飛ばすリズベット。

 

度重なる疲れと不満が爆発し、理性というタガが勢い良く外れてしまったのだ。

 

「ふざけんじゃないわよ!! こちとら初めての神器作成に必死に頭を捻らせまくってロクに寝れてないってのに!! その後に及んでもう一本神器造れだぁ!? アンタ達どんだけ私を寝かせたくないのよ! 二人揃って神器の素材取って来るとか頭おかしいんじゃないの!?」

 

「初めて?」

 

ぶっ飛ばしたキリトに向かって目を血走らせながら怒鳴りつけているリズベットに、ふと二人をただ傍観していただけの銀時が彼女の言葉にピクリと反応する。

 

「ちょっと待てよ、お前今なんつった? ひょっとして今まで神器造った事ねぇの? 依頼頼む時は散々神器なんて簡単に作れるとかドヤ顔でアピールしてたくせに」

 

「あ……」

 

「酷いやリズ、ボク等に言っていた事は全てウソだったんだね、ぶっちゃけあの時から薄々はそうなんじゃないかと疑っていたけど」

 

「いやえっと……」

 

「あーらら、自分でバラしてやがんの、バッカでーコイツ」

 

「……」

 

 

ついうっかり失言してしまった事でようやく我に返って顔色悪くさせていくリズベット

 

周りからの視線を一点に受けながら非常にまずい状況だと気付いた彼女が次にとった行動は……

 

 

 

 

「リズ、神楽ちゃんから聞いたんだけど希少素材集めてるんですって?」

 

その時、店のドアを開けて一人の少女が慣れた感じで店内へと入って来た。

 

リズベットの古い友人であり血盟騎士団の副団長を務める鬼の閃光ことアスナである。

 

「水臭いわね、他人にお金払って依頼せずとも私が全部やってあげ……てぇぇぇぇ!?」

 

「すんませんでしたァァァァァァァァァ!!!!」

 

「おい、本気で土下座するならもっと頭下げろや、床と一体化する気持ちで必死に擦り付けろ」

 

「旦那、それだけじゃダメですぜ、もっと誠意を示してもらう為に焼けた鉄板の上で土下座させましょうや」

 

彼女が店の中で最初に目撃したモノは

 

親しい友人が涙目で銀時に向かって必死に土下座のポーズを取って謝っているというショッキングな光景であった。

 

しかもその隣には沖田が立って彼に無茶苦茶な提案をしている。

 

「な、何やってるのよアナタ達! 私の大切な友人になんて酷い真似させてんのよ!!」

 

「あ、アスナだ、やっほー、こんな所で会えるなんて奇遇だね」

 

「あらユウキもいたの、本当にこんな所で会うなんて奇遇ね、実はこの店って私の友人が経営してるからちょくちょく顔を出していて……ってそんな和やかに会話してる場合じゃない!」

 

手を振りながらこちらに無垢な笑顔を見せるユウキに一瞬和んでしまうも、アスナはすぐに目の前でまだ土下座しているリズベットの方へ振り返って急いで歩み寄る。

 

「コレって一体どういう状況なのよ! もしかしてリズがあなた達になんか悪い事した……あれ、まさか神器の件でリズの嘘がバレたんじゃ……」

 

「そのまさかだよ」

 

「!」

 

冷静に状況を観察しながら、もしかしてリズベットがやった事無いに、神器を造れるというガセ情報を嬉々として自らばら撒いていた事が銀時にバレてしまったのではと推測するアスナに

 

リズベットにぶっ飛ばされ壁に打ち付けられていたキリトが、後頭部を摩りながらやれやれと言った感じで話しかけて来た。

 

「どうやらおたくも知っていたみたいだなアイツがパチモンの神器作成者だって、この世界の治安を護る為に攘夷プレイヤーを追いかけ回している血盟騎士団の副団長様は、友人が詐欺をやっていても黙って目を瞑ってたんですか、へー」

 

「出たわね黒夜叉、よくもまあ平気で私の前にツラ出せたわね。なんなら今この場であなたを燃えないゴミに出してやってもいいのよ……」

 

「久しぶりの再会だってのに相変わらず俺に対しては敵意丸出しだなコイツ……」

 

キリトに対してすぐにゴミを見る様な目をしながら殺意を滾らせるアスナ

 

久しぶりにこっちの世界で会ったというのに、いつも通りというかやはり相容れない関係の様だ。

 

「リズのウソの件を黙っていたのはいずれボロを出して痛い目を見るだろうってわかってたからよ。自分でやった始末は自分でつけて欲しかったの、けどよりにもよってこの人が神器持って来るとはね……流石にリズも可哀想だわ……」

 

「アンタ、あの人が神器の素材持ってたの知ってたのか?」

 

「リズから聞いて本人にも直接教えてもらったわ、前にあなたがいない時に」

 

「じゃあ俺が最近神器の素材を手に入れた事も?」

 

「いやそれは初耳………………えぇ!? アナタまで神器の素材を!?」

 

銀時が持っていた事は前々から知っていたが、キリトまでも神器の素材を入手していた事には驚きを隠せないアスナ。

 

そしてすぐに彼の方へ振り返ってジト目を向けながら詰め寄った。

 

「どこでよ!」

「……五十層にある森林地帯の奥にある森の中、そこにあるギガスシダーっていうデッカイ木から採取したんだよ、一人じゃ無理だった所を偶然その場にいた奴に協力してもらってなんとかゲットした」

 

「えぇ……確かにそんな木があったのは前から知ってたけどアレも神器の素材が取れるポイントだったの……? いやそんな事よりも、攘夷プレイヤーのあなたなんかに神器を手に入れられたら非常に困るわ、その素材をこっちに寄越しなさい、抵抗すると断罪よ」

 

「相変わらず滅茶苦茶な事言ってくれるな……」

 

こちらにズイッと顔を近づけて神器の素材をこっちに差し出せと強引に脅し取ろうとして来るアスナに

 

至近距離で彼女の顔を見た時思わずちょっとドキッとしつつも、キリトは警戒する様に一歩後ろに下がる。

 

「けど俺は例え手足千切られようが神器の素材だけは絶対に渡さん、なにせ神器は攘夷だのなんだの関係なく全プレイヤーが夢見る最強クラスの武器だからな、例え自称正義の味方さんであろうとその夢を阻むのはどうかと思うんだが?」

 

「他人の事もお構いなしに無茶苦茶に暴れ回るような輩に、夢を語る資格なんて無いわよ。 ところでさっき誰かに協力して素材を手に入れたとか言ってたけど、それって誰の事? 黒夜叉のあなたに手を貸すって事はその人も攘夷プレイヤーとかじゃないわよね」

 

「違ぇよ、ホントにただ偶然バッタリ会っただけだっての、ったく思い込みの激しい正義バカはこれだから……」

 

自分だけでなく今度は別のプレイヤーにも矛先を向けようとするアスナを見て、キリトは正義とはなんなのだろうと密かに疑問を抱いていると……

 

「こんにちわ、えーと、キリトっていう人からここの店が神器の扱いを行えるって聞いてお伺いしたんですけどー」

「「!」」

 

そこへ突然またもやドアを開けて中へと入って来る新しいお客。

 

しかも彼の腰には眩く輝く青い剣

 

咄嗟に振り返って現れた客の得物を見て、アスナはすぐにその剣がなんなのかわかった様子でハッとする。

 

「あ、青薔薇の剣ですって……!?」

「良かったら僕の神器の手入れをして欲しいなと……あれ? ていうかなにこの状況、なんか女の子が大人二人に向かって土下座してるんだけど……」

 

店に入って早々目の前で銀時と沖田に絡まれて土下座を強要させられている店主のリズベットを見て困惑する少年。

 

この少年こそが神器・青薔薇の剣の所有者であり、キリトの為にギガスシダーの枝を斬り落とす事に一役買ってくれた人物・ユージオである。

 

その少年、というより彼が持っている青薔薇の剣を見てアスナが思わず呆気に取られていると

 

それに気付いたキリトがすぐに彼を指差して

 

「あ、そいつが俺に協力してくれた人です正義の騎士さん」

「なんですって!?」

「うわビックリした!ってキリトじゃないか! どうして君がここにいるの!? あ、もしかして神器を造って貰う為に素材を渡しに……」

 

アスナが声を上げたのでそちらに振り向くとすぐにキリトの存在に気付くユージオ

 

そして彼がここに来ている事を推測し始めると突然……

 

「失礼します」

「ぐえぇ!」

「「!?」」

 

何者かが勢い良くドアを蹴破って店の中へと乗り込んで来たのだ、ただ開けるのではなくドアその物を前に踏み潰して

 

壊されたドアにそのまま押し潰されて下敷きになってしまうユージオ

 

その光景に驚くアスナとキリトを尻目に、下敷きにされているユージオをドアごと踏んで中へと入って来る綺麗な女性が一人

 

「失礼します、ここに銀髪天然パーマの男が中へ入って行くのを確認しました」

 

金髪碧眼の誰もが素直に美女と認めるであろう堅物電波お転婆女騎士・アリスであった。

 

「今すぐその男を私に差し出しなさい、さもないとこの店を潰します」

「って今度はお前かぁぁぁぁぁぁい!!!」

「リズ……あなたのお店随分と繁盛する様になったのね……」

 

沖田から始まり続いてキリトに銀時にユウキ、そしてアスナとすぐにユージオとアリスがご来店。

 

一つのあまり流行っていない店に一癖も二癖もあるメンバー達が揃いも揃って集合する事態に、キリトとアスナも仲良くこの状況に頭を抱えて軽く混乱する。

 

そしてこのメンバーが偶然やって来たこの場で顔合わせした事によって

 

リズベットの神器造りがまさかの夢から現実に変わる事は

 

本人含めてここにいる者全員まだ気付いていなかったのであった。

 

 

 

 




リズベットみたいな感情のままに喋り出すキャラは書いてると楽しくなるので大好きです。

以前書いてたまどマギSSの美樹さやかとか、銀魂×劣等生の千葉エリカとか

ぶっちゃけ人気は出ないし読者からもそんな注目されないけど、ギャーギャー喚いて作品を引っ掻き回して盛り上げてくれるので、書き手としてはかなり重宝されるタイプなんです。

それとどうでもいいトリビア

沖田は意外とリズベットの事を気に入ってます。

彼曰く、調子乗って最終的に痛い目見てばかりの彼女は見ていて面白いかららしいです。

次回はみんなで銀さんの神器造り、そして彼等が探すべき素材を持つモンスターは……

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