竿魂   作:カイバーマン。

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スマブラのせいで最近執筆時間が減っています……おかげで締め切りが近くて日々焦りに焦ってます

書けないのは私が悪いんじゃない、面白いゲームを作る任天堂が悪い


第六十四層 そびえ立つ頂

己が最強と名乗るのは簡単だ、たとえそれが井の中の蛙であり大海を知らぬ無知なる者だとしても

 

己だけが選ばれた存在だと自惚れ、頂に到達したと周りを見下しながら一人で勝手に名乗ってればいい。

 

だが他者から最強だと呼ばれるにはそう簡単にはいかない。

 

圧倒的な武勇と底知れぬ力を披露し、「奴に勝てる者はいない」と誰もが口を揃えて評価する程に強くならなければならい。

 

人が本当の意味で「最強」という存在になるには、自他共にそう呼ばれる明確な理由が必要なのである。

 

誰もが敵わないと跪き、挑む事さえ出来ずに折れていく程の威圧感。

 

負ける事は許されず、ひたすらに勝ち続けて来た者だけが得られる自信とプライド

 

何人たりとも寄せ付けない強さを手にした者こそが、初めて「最強」という称号を手にする。

 

そして

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

闘技場にて大衆の面前で雄叫びを上げて必死に斬りかかる銀時の目の前には

 

その最強という称号に相応しい男が立っていた。

 

彼との戦いが始まってほんの数分にして、銀時は彼の底知れぬ強さをその身で実感する。

 

男の名はヒースクリフ、SAO型最強、EDO最強、仮想世界最強、等と多くのプレイヤー達から呼ばれる彼は

 

徐々にこの世界に慣れ現実世界と大差ない動きが出来た銀時さえも

 

「いい動きだ、筋が良い」

「!?」

 

一切寄せ付けないポテンシャルと風格を持っていた。

 

銀時の二つ刃を軽くバックステップしただけで避け切り、そこから左手に持った大きな盾を強く突き出して彼を弾き飛ばす。

 

「だがまだ、”こちら側”に来れる力は身につけていない」

「く!」

 

防御に使うべき盾で強引に自分の態勢を崩しに来たヒースクリフに、銀時は弾かれながらもその目はただ相手の動きだけに集中。

 

よろめく態勢で彼が次に見た光景は、相手からの鋭い斬撃

 

「んにゃろぉ!」

 

初撃は縦振り、次は横振り、それを目にも止まらぬ速さで繰り出し、十字に斬り付けて来たヒースクリフに銀時は右手に持った二つ刃のビームサーベル、仙封鬼を回転させながら受けきる。

 

しかし最強の攻撃はこれだけで終わらない。

 

「君の持つその剣は防御に特化してるみたいだな、上手く使いこなせているし悪くない武器だが、本来はメイン寄りに使うべきではない」

「ちょ! ま! おい! ちょっと! タンマ!」

「そうやって耐えるだけでは勝負に勝つ事は出来ないぞ、銀時君」

 

 

フェンシングの様な動きで繰り出す無数の突きが銀時目掛けて襲い掛かる。

 

以前アスナがキリトと戦っていた時と同じ攻撃方法に似ているが、それとはまるで次元が違う、彼女より速く、そして的確に死角を突いて来る。

 

ありとあらゆる方向から現れる剣先を寸での所で得物でガードしつつも、銀時は徐々にHPバーをジワジワと削られていく。

 

しかもそれを繰り出すヒースクリフは、未だHPを8割残したまま涼しげな表情を浮かべ、更には対戦相手の銀時んにアドバイスを送れるほどの余裕っぷりを見せつけて来る。

 

「ナメやがって、そうやって調子こいてると……」

 

だがその余裕を取ってるかのような態度こそが隙だと睨んだ銀時は

 

得物を振り回しつつも地面を踏み抜いていた片方の足をかろうじて浮かせ

 

「足元すくわれるぜッ!」

 

タイミングバッチリの見事な奇襲だった。

 

右足から繰り出す銀時からの足払い、武器だけを頼っている二流プレイヤーではこんな真似できない。

 

攻撃を受けながらもまさかの体術によるカウンターを狙っていた銀時、コレで少しは不利な状況も変えられるかもしれない。

 

しかし

 

「心配してくれてありがとう、だが私にそんな気遣いは無用だ」

「!?」

「君の方こそ気を付けた方が良い、絶好のタイミングを見計らったつもりなんだろうが……」

 

足元を狙った銀時の足から突如おびだたしい出血が噴き出る。

 

見るとそこには自分の足の甲から鋭い剣が深々と突き刺さっていたのだ。

 

「中々面白い動きをしてくれるが、まだまだだな」

「チッ!」

「おっと」

 

貫通ダメージを食らった足に注意を向けたのはほんの一瞬の間だった、すぐに銀時はその体制のまま右手に持ったビームサーベルを彼目掛けて横に振り払う。

 

それを間一髪の所で盾で受けるヒースクリフ

 

「傷付きながらもなお攻撃を止めないか、面白い、まだ戦える気力があるならもっと見せてくれ」

(コイツ……!)

 

自分の足から剣を引き抜くと、今度はいかにもわかりやすい大振りを繰り出して来たので、銀時は後方に飛んで簡単にそれを避ける。

 

しかし足を斬られた事によって部位ダメージが発生し、妙に足元がフラ付き始めていた。

 

(やべーなチクショウ、こっちの攻撃を全く通させないだけでなく、反撃で的確に俺のHPを削って来やがる……)

 

遂には相手を前にして片膝を突く銀時、すると観客席からは「さっさと立て!」とブーイングの嵐

 

そんなアウェーな中でも銀時は彼等の声も聞こえていない様子でひたすら目の前の相手に集中する。

 

(戦い続けて数分か……その間に俺のHPは3割、あの野郎はまだ8割……)

 

戦い始めた当初は銀時が優位的に推していた

 

始まってすぐに襲い掛かって相手に考える暇も与えずに猛攻を繰り出し

 

盾と剣の隙間を狙って彼の身体を何度か斬り付ける事は成功した。

 

しかしそこで相手の動きは一瞬にして変わった

 

このまま推せば普通に勝てるのでは?と銀時が思ったのも束の間

 

ヒースクリフは完全にこちらの攻撃をガードし、更にはそこから派生して剣技を駆使して反撃に打って出たのだ。

 

まるで最初からそういう段取りだったかのように

 

(最初に相手の動きを見切ってそこから本腰を入れるってか……)

 

わざとこちらの攻撃を誘い、パターンを読み取り相手の行動を読む。

 

後はこちらから動いて徐々に追い詰めていき、相手の全力を悟ると一気にトドメを刺す。

 

こちらが片膝を突いているのに追撃さえせずに立ち上がるのを待っているヒースクリフを見上げながら

 

銀時は彼がどういうタイプなのか段々わかって来た。

 

(最強と呼ばれてるクセに、自惚れることなくここまで堅実な手で戦う奴ってのは現実世界でもそう見た事……いや一人いたか、あの長髪のテロリスト)

 

いわゆる生粋の武人と呼ぶべきなのだろうか、相手の力量を計りながら自分の力を上手く調整して引き出す。

 

常に余裕を保ったまま戦うというヒースクリフの戦闘スタイルを概ね把握すると、銀時は手に持っていた得物をフッと消した。

 

「武器を仕舞うという事は降参かな?」

「いんや、アンタのお望み通りの事をするまでさ」

「ほう……」

 

周りの騒音には耳を貸さないがヒースクリフの声だけははっきりと聞き取れた

 

追い込まれているというのに軽口を叩きながら銀時が立ち上がると同時に、彼の右手に切り札が握られていた。

 

推定三尺(約100cm)の、普通の刀に比べて異常なほど長い太刀。

  

翆色に輝くその美しき刀身にはまるで飛行機の翼の様なモノが搭載され

 

飛行機の飛行速度をコントロールする為に上下して揚力を発生させる為のフラップが逆刃の方に付いており

 

刃の部分にも風のまま靡いて空気抵抗を減らす為のスラットがある。

 

物干し竿、亡き恋人藍子から引き継いだGGO型専用特殊刀だ。

 

「遂にその刀のお出ましか、フ、いよいよ本番って所かな?」

 

「長い前座に付き合わせて悪かったな、こちとらHPを削って貰わないとコイツを装備出来ないんでね」

 

「いいとも、元々最初からそれを手に持ってもらう為にこちらも調整して君のHPを削っていたんだ」

 

さっきまで騒いでいた観客席が、銀時が持つ得物を見てざわざわとどよめき始める。

 

誰もこんな奇抜なデザインの刀を見た事が無いのであろう。

 

しかしヒースクリフはその刀を見て待っていましたと言わんばかりに顔をほころばせていた。

 

「いいだろう全力で掛かって来なさい、そんな君を倒してこそ、本当の意味で私は君と”彼女”に勝った事になる」

 

「カッコつけやがって……まあいいや、こっちもお前の手の平の上で踊らされるのも飽き飽きしてんだ」

 

彼の言い回しに銀時は軽くイラッとしながらも、銀時は最も信頼している得物をチャキッと構えて戦いに挑む。

 

「こっからはオメェが俺の前で踊る番だ、エグザイル並の華麗なダンスを期待しているぜ」

「フ、ダンスは苦手だな……」

 

未だ底が知れないヒースクリフに、こちらから襲い掛かるというのは愚策かもしれないが

 

これ以上戦いを引き伸ばして彼の思うがままに翻弄されるのは個人的に耐えれないと、銀時は地面を足で蹴った。

 

「いやいや恥ずかしがらなくてもいいんじゃないの!?」

 

右手に持つ物干し竿がキラリと刀身を輝かせる。

 

片手で軽々と持ったまま銀時は得物を強く握りしめると、ついテンション高まった様子で歯をむき出して笑みを浮かべ

 

「さっさと踊りやがれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

距離を一気に縮めて彼の領域に自ら踏み入れると、銀時は豪快に物干し竿を振るった。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「これは……参ったな」

 

構える盾さえも斬るのではないかというぐらい鋭い一撃を浴びせる銀時。

 

受けた手から衝撃でビリビリと痺れるのを感じながら、ヒースクリフは面白そうに笑みを浮かべる。

 

「もう軽口を叩ける余裕が無くなってしまった」

 

もはや盾一つで防ぎきれることは不可能だと悟った、それほどまでに銀時の攻撃は一気に苛烈さを増していたのだ。

 

銀時が片手一本で扱うその長刀は、飛行機の翼をモデルとし、風の抵抗を一切受けずに振り抜くことが出来る不思議な刀。

 

そんな得物を振り回しながら銀時は、とにかく反撃の隙さえも与えないと怒涛の攻めを一心不乱に繰り返す。

 

(与えるな、コイツに反撃のチャンスを……!)

 

自分にそう言い聞かせながら銀時は正面からだけでなく、ヒースクリフを中心に円を描く様に回り始めた。

 

動きつつも一切攻撃を緩めることなく、だがそれでも相手はまだこちらに有効打を与えさせてくれない。

 

ヒースクリフは盾だけでなく、冷静にこちらの剣筋を左右の目で読み取りながら直撃だけは避けていく。

 

血盟騎士団の象徴たる赤い鎧と白いマントを斬り付けられてもなお、彼は至って冷静に銀時の動きを観察していた。

 

「む!」

「オラぁ!」

 

だが観察の途中で彼に取って予期せぬ行動を銀時が起こした。

 

手に持っていた物干し竿が一瞬にして先程使っていたビームサーベルに切り替わったのである。

 

「クイックチェンジ……つ!」

 

その瞬間、長刀から二つ刃による攻撃となり、ブォン!と音を鳴らしながら何事も無かったかのように攻め続ける銀時。

 

 

武器の高速切り替えを可能とするクイックチェンジ、EDOではあまり人気のないスキルを所持していた銀時に、ヒースクリフは初めてその顔を強張らせた。

 

「いやはやコレは本当に驚いたぞ、得物が違えばその振り方も大きく変わる、だからこそ本来プレイヤーは一つの武器に絞るというのに……!」

 

EDOには数えれきない程の膨大な武器が存在する、それ等にはそれぞれの立ち回りと動きがあり、プレイヤーはその中で最も自分に見合った得物を選びそれだけを極める、というのがこの世界での常識だ。

 

しかしヒースクリフの目の間にいるこの銀髪の男は……

 

「く!」

「チッ!」

 

その常識はまるで意味をなさない。

 

例え得物が切り替わっても、銀時はどれもこれも見事に使いこなしていた。

 

物干し竿で攻め続けて来たと思いきや千封鬼に切り替えてこちらの動きを読まれない様にしている。

 

そしてヒースクリフが初めて彼からの一撃を右頬に掠めたその瞬間

 

「!?」

 

銀時の手からまた得物が消えた途端、また別の得物が彼の左手に収まる……

 

しかしそれに気づいた時にはもう……

 

「ぬぅ!」

 

急いで剣で防ごうと思ったが、既に銀時はこちらの懐に入ってきたところであった。

 

至近距離からでは長い得物を扱うのは難しい、だからこそ彼がこの土壇場で選んだ武器は

 

「脇差し……」

 

自分の腹部から違和感を覚えたヒースクリフはすぐに原因に気づいた。

 

分厚い鎧を力任せに強引に突き刺さっているのは、この緊迫した戦況の中で到底出番があるわけない筈の小刀であった。

 

『今剣』

確かこれは、第一層のフロアボスでラストアタックボーナスを行ったプレイヤーのみが、低確率で入手出来ると言われている、長い期間扱うことができる脇差しの中の一つ。

 

この土壇場でコイツを持ち出してくるとは……

 

「とことん驚かせてくれる……!」

 

腹部に刺さった脇差しを抜く事無くヒースクリフは目の前の相手に素直に感心するも

 

彼のどてっ腹に穴を空けた銀時はもう既に別の得物を装備し終えていた。

 

その右手に収まるのは

 

戦いを終わらせるのに最も相応しい物干し竿……

 

「そろそろ決着つけようぜ、最強さんよ……」

「ようやくわかったよ、君はこの世界では滅多にいない複数の武器を操るプレイヤー……」

 

次から次へと高速に武器を切り替え、トドメと言わんばかりに切り札をこちらに振り上げ死の宣告をする銀時を見て

 

ヒースクリフは悔しがる事無く微笑を浮かべた。

 

「”マルチウェポン”、いかなる武器も手足のように扱う者……それが君の戦闘スタイルか」

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その瞬間、ヒースクリフが押されている事に困惑してどよめいていた観客席から声がピタリと止んだ。

 

銀時の振り下ろした刀が

 

ザンッ!とあの勝てる者などいないと最強と称される男の左腕を勢いよく切り落としたのだ。

 

盾を握った手ごとボトリと空しく地面に落ちる左腕

 

それでもなお、ヒースクリフは何事もなかったかのように目の前の相手を射抜くような視線を向けながらまだ笑っている。

 

「良いモノを見せてくれた、礼を言おう銀時く……んぐ!?」

「はいここで追い打ちィィィィィィ!!」

 

ヒースクリフが敬意を表して称えていたというのに、銀時は彼に向かってやった行動は

 

まさかの刀の先からほとばしる醤油での視界封じ

 

黙り込んでいた観客席は「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」と一斉に声を上げる。

 

顔面に突然醤油をぶっかけられたヒースクリフがさすがに面食らった様子で怯んでいるのを、銀時は見逃さない。

 

「いっくぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

目に入った醤油を残った右腕で拭き取ろうとする相手にめがけて、躊躇することなく銀時は物干し竿を突き付けたまま一気に突っ込む。

 

そして

 

 

 

 

 

 

「ハハハ、醤油を顔面に浴びせられたのは”二度目”だな、参ったな本当に」

「!?」

「懐かしい体験と久方振りの緊張を与えた君を称え、ちょっとだけ私の”本気”を見せてあげよう」

 

刹那のその瞬間、ヒースクリフは笑みを絶やさずに銀時のほうへ顔を上げた。

 

すると銀時は自分の身に突然違和感を覚え始める。

 

(な、なんだ……! 体の動きが突然鈍く、いや俺だけじゃねぇ……!)

 

数歩前に歩けば相手を倒せるという絶好の機会であるのに、銀時の視界は灰色になり、しかもまるでスローモーションの様に動きがゆっくりになってしまう。

 

しかしそれは彼自身だけではない。

 

(周りも、観客席にいる連中の動きも遅く見えやがる……!)

 

目だけを動かし周りに視点を向けると、観客席の動きもまたスローに見えている。

 

これは一体どういうことかと銀時が困惑していると

 

「ありがとう銀時君、ここまで私に付き合ってくれて」

(!?)

 

この灰色の世界で一人だけハッキリと色を付けている者が一人だけいた。

 

目と鼻の先にいる対戦相手、ヒースクリフだ。

 

この世界で彼だけが色を持ち、彼だけは平然とこの世界で動けている。

 

「私に本気を出させたのは、物干し竿の最初の持ち主、ラン以来かな?」

 

(なんなんだコイツ……! もしかしてコイツがこの空間を作ってやがるのか……!?)

 

「そしてここまで追い詰めてくれた君にもまた、かつて彼女に言った手向けの言葉を贈ろう」

 

こっちの動きがゆっくりとなっている中で彼だけは何事もなかったかのように話しかけながら歩み寄ってくる。

 

そして表情を強張らせたままなんとか体を動かそうと必死になっている銀時めがけて、右手に握った剣を後ろに振りかぶり……

 

 

 

 

 

「君はもっと強くなれる」

「!?」

 

銀時の目でさえ捉えきれない程の速さで、最強が持つ本気の一撃が無防備になっている銀時の腹を突き刺した。

 

その瞬間、灰色だった世界は元に戻り、体も普通に動けるようになる。

 

だが銀時がそう感じたのもほんの一瞬だった

 

「ぶへッ!!」

 

ヒースクリフにクリティカルヒットを決められたと同時に、信じられないぐらいの力でそのまま後ろに吹っ飛ばされたのだ

 

背後の壁にヒビが出来る程の力で背中からぶつかると、そのままズルズルと彼はその場で尻もちを着いたまま項垂れる。

 

「テメェは一体、何者だ……」

 

残り少なかった銀時のHPはみるみると削られていき、やがてもう見えなくなった所で

 

最期に呟く銀時に近づきながらヒースクリフはふっと笑ったまま見下ろす。

 

 

 

 

「さあ? 自分でもよくわからない」

「……」

 

その言葉と同時に彼の目の前に『勝者』という文字が浮かび上がり

 

銀時のほうには『敗者』という文字が現れた。

 

 

銀時が最強の化け物の前に敗れ去った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

そしてその光景をずっと後ろの観客席から立って見ている者が一人

 

「全く、えらい騒がしいから、面白か事でもあったのかと来てみちょったら」

 

知り合いの一人から無理やり着せられた全身を覆うフードに身を包んだ男が

 

ヒースクリフの勝利に歓声を上げる周りの客達と違って、ただフィールドの端っこで壁にもたれて倒れている銀時の方え目をやりながらニヤリと笑みを浮かべ。

 

「ほんに面白か事が起こっておったわ! まさかあん男がこっちにも来てておまけにボコボコに負かされる光景を見る事が出来るとは! アハハハハハ!!!」

 

愉快そうに大きくやかましい笑い声を一人上げるのであった。

 

「どれどれ、こげな所で会えたのもなにかの縁ぜよ、かつて同じ釜の飯を食った戦友であるわしが、いっちょ笑いながら慰めにでも……」

 

そう言って男は歩き出して銀時とヒースクリフがいる戦闘フィールドに入り込もうと身を乗り上げる。

 

だがその時

 

「んん?」

 

自分が赴こうとするよりも先に、観客席から銀時の方へ急いで駆け寄っていく者の姿が見えた。

 

「銀時-!」と慌てて叫びながら倒れた彼に近づいていく少女、昔どこかで見たような気が……

 

「女連れとは中々やるのぉアイツ、しかし随分と幼なげな娘っ子を……あ、それはわしも同じか! アハハハハハ!」

 

彼女を見て自分が赴く必要はないと判断すると、再び豪快に笑い声を上げながら身を乗り出すのをやめてクルリと踵を返す。

 

「ま、いずれはおまんと正面から顔合わせる機会もあるじゃろうて」

 

そう呟きながら男は、湧いている観客の間をすり抜けて、闘技場の出口の方へと歩き出した。

 

いつかまた、あの男と再会するだろうと確信した様子で

 

「楽しみにしてるぜよ」

 

 

 

 

 

「金時!」

 

去り際に最後に呟いた男は

 

思いきり名前を間違えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今年ももうすぐ終わりですね、来年は一体どんな年になるんでしょう。

ていうか来年には終わってくれるんだろうかこの作品は……
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