竿魂   作:カイバーマン。

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第六十七層 隙あらばあなたを改造手術

突如朝から不法侵入して家へとやって来た上に銀時と添い寝までした謎のからくり娘・アリス・ツーベルク。

 

銀時達は、ユウキの身体のメンテするという事もあって、アリスの案内の下、平賀源外のいる研究所へと向かうのであった。

 

「ほらみんな、私に離れず付いて来てね。道草食わずに真っ直ぐ行くから」

「見た目は子供なのにやたらと仕切りたがるなこのからくり娘……」

 

江戸では場違いなフリル付きのスカートをなびかせ、輝く金髪を揺らしながらアリスは楽しそうに街中を歩いている。

 

そんな彼女の後ろから眺めながら、和人はふと隣を歩くユウキの方へ視線を泳がした。

 

「ユウキに至っては随分とテンション低いし……」

「いやぁ前にも話したけど、ボク苦手なんだよねあの子……」

 

アリスが家にやって来てからユウキはちょっと無口になっている。

 

トボトボと歩きながらもあまり行きたくないという様子で、仕方なくアリスに付き合ってあげている感じだ。

 

「メンテナンスに言ってなかったのもさ、あの子とあんま顔合わせたくなかったからなんだよねぇ……」

 

「お前がそこまで言うなんて珍しいな、確かに変わった子ではあるがそこまで嫌がる相手か?」

 

「嫌がってる訳じゃないんだけど、妙にボクの世話を焼こうとしたりするから相手すると疲れるんだよ、それに」

 

以前初めてアリスと出会った時は、彼女にまるで妹みたいな扱いを受けるという苦い体験をした覚えのあるユウキ。

 

そして彼女がアリスを苦手としている理由はもう一つあって

 

「なーんかウチの人に興味津々だったから余計に警戒してたんだ、現にあの子、初めて会った日に一緒に寝始めたり、挙句の果てには現在進行形で、銀時の手を握って街中を歩かせる羞恥プレイを強要させている真っ最中だし」

 

「あー、アレ通報したら一発で逮捕だな」

 

「おいテメェ等! さっきからヤバいと思ってんなら助けろよ!」

 

ユウキと和人が視線を前に戻すと、前を歩くアリスの右手には銀時の左手を強引に掴んでおり、半ば引っ張る様な形で歩かされている感じであった。

 

決して手を離そうとしない彼女に引っ張られながら、銀時は必死にユウキ達の方へと叫ぶ。

 

「コイツ見かけによらず力半端ねぇんだよ! さっきから手を振りほどこうとすると、ゴリラみてぇな握力で俺の手を握り潰そうとして来やが……イデデデデデデ!」

 

「ほらほら、無駄話してないでさっさと行きましょう、おじいちゃんが待ってるんだから」

 

 

「わかった! わかったから一旦手を離そう! あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

アリスの事でわかった確かな事、それは可愛らしい見た目とは裏腹にとんでもない怪力の持ち主だという事。

 

仕事の手伝いをする為に必要なのかもしれないが、大の大人を引きずり回せる上に握力は人の手を簡単に握り潰せるレベルだ。しかしいささかオーバースペック過ぎないだろうか……

 

銀時が手を離そうとしたのでアリスは彼の手を更にグッと力強く握るも、表情は以前ニコニコと笑ったままだ。

 

「レディーが勇気を振り絞って殿方と手を繋いだというのに、それを無下にしようとする上にゴリラ呼ばわりするなんてダメよ?」

 

「なにが勇気を振り絞ってだよ! 玄関からずっと俺の手を握り潰そうとしてるクセに! おかげでご近所さんから白い目で見られたんだぞこっちは!!」

 

「白い目で見られようが黒い目で見られようが関係ないわ、周りの視線なんて気にせずありのままの自分を曝け出せばいいのよ」

 

「世間はそんなに甘くないんだよ! 周りを気にせずオッサンがロリっ娘を連れて街中を歩いていたら、それはもうさながら周りに「僕を通報してブタ箱にぶち込んでください」アピールしてるモンなんだよ!」 

 

親子には見えないオッサンと幼女が街中を手を繋いで歩き回っている、こんなの傍から見れば誰がどう見ても怪しい。

 

現にこうしてアリスに連れられながら歩いている銀時は、さっきから聞こえる周りのヒソヒソ声に敏感に反応し、焦りながらひとまず研究所に避難しようとやや早歩きで向かうのであった。

 

そしてその道中で銀時はふと自分の手を離そうとせずに鼻歌交じりに歩いているアリスを見下ろしこう思った。

 

このからくり娘……仮想世界にいた”彼女”と見た目も性格もどこか似てるような気がすると……

 

「本当に別人なんだよな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いて数分後

 

金髪ロリっ娘と仲良く手を繋ぎながら銀時はようやく平賀源外の研究所前に着く。

 

その間ずっと黙ってついて来ていたユウキは顔をしかめてジト目で銀時に

 

「会ったばかりに随分とその子と仲良くなったね、今度は真撰組屯所の前を二人で歩いてきたら?」

 

「ふざけんな、それは俺に死刑宣告してるのと一緒だぞコラ」

 

軽く嫌味を言ってくれる彼女を銀時が機嫌悪そうに睨みつけていると、一緒に付いて来ていた和人の方は「へ~」と興味津々の様子で源外の研究所を見上げる。

 

メカメカしい外見かつ内部から鳴り響く騒音、ちょっと古めのイメージのある研究所といった感じであった。

 

「ここがあの江戸一番のからくり技師・平賀源外の研究所か……なんか思ってたのより随分とボロッちいな」

 

「誰がボロッちいだコラ!! ケツの青いガキが人の研究所にケチ付けてんじゃねぇぞ!!」

 

「うわ!」

 

本当に思った事をつい漏らしてしまった和人だがすぐに驚きの声を上げた。

 

研究所の中かいかにも頑固そうな老人が、乱暴な口調で怒鳴り散らしながらスパナを手に持ったまま現れたからである。

 

「いきなりやって来て誰だテメェ等! またお登勢のババァが騒音を撒き散らしてるとかで文句を言いに来やがったのか!? かぶき町の住人がちょっとデカい音ぐらいでビビってんじゃねぇよ!」

 

「いや別に苦情に来た訳じゃ……あれ? もしかしてアンタが……平賀源外?」

 

「ああそうだよ、なんだお前、俺の事知らねぇでここに来たってのか?」

 

「俺はただのユウキの付き添いで見に来ただけだって」

 

「ユウキ?」

 

どうやらこの老人があの江戸一番のからくり技師と称される凄腕の発明家・平賀源外らしい。

 

出会って早々和人に喧嘩腰になりながらも、彼の問いかけに答えつつふと彼の隣にユウキがいた事に気付く。

 

「ようやく来やがったかポンコツ娘、使いを出したかいがあったぜ」

 

「今度からあの子じゃなくてじいちゃんが直接来てくれたら嬉しいんだけど……」

 

「そんなめんどくせぇ事出来っかよ、そもそもお前が直接ここに来ればわざわざ手間かけねぇんだよこっちも」

 

後頭部を掻きながらバツの悪そうな顔を浮かべるユウキにフンと鼻を鳴らすと、源外はまだ銀時と手を繋いでいる様子のアリスの方へと振り返る。

 

「おい! からくりのクセになにサボってんだ! 今からコイツのメンテやるから手伝え!」

 

「サボってなんかないよ! ちゃんとユウキを連れて来たでしょ!」

 

「うるせぇ! ゴチャゴチャ言ってるとスクラップにすんぞ!!」

 

「むぅ~……」

 

軽く脅しつけながら再び研究所の中へと入っていく源外に不満そうに頬を膨らました後、アリスは名残惜しそうに銀時から手を離す。

 

「ごめんね、ユウキのメンテナンスが終わったらまた一緒にお話ししましょう」

「いやアイツの用事が済んだら俺達すぐ帰るんだけど……」

「ほらユウキ、早くおじいちゃんの所へ行くわよ、怖がらなくて大丈夫だから」

「別に怖がってないって……」

 

名残惜しそうにしてない銀時に対して軽く頭を下げると、そのままアリスは微妙な表情をしているユウキを優しく中へと連れて行った。

 

残された銀時と和人も、とりあえず外で待つよりマシだと中へと入る事にした。

 

「さっきのじいさんがあの平賀源外か……結構な年な筈なのに随分と元気そうだったな……」

 

「あの年でまだ現役で働いてるぐらいだからな、ウチのババァが言うには昔からあんな感じだったんだとよ」

 

「昔と変わらないってのはいい事かもしれないけど、もうちょっと落ち着いた方が良いんじゃないか流石に?」

 

「年中落ち着かずにバリバリ動いてるからああして仕事出来るんだよ」

 

二人でそんな会話をしながら中へと入ると、これまた普段お目にかかれないような光景が目に飛び込んで来た。

 

「うわぁ、やっぱからくりばかりなんだなぁ」

「からくりっつうかガラクタじゃねぇのコレ?」

 

そこら中に雑に置かれている腕やら足やらの部品、壁にはいくつもの2メートルぐらいの古臭いからくりロボが飾る様に置かれている。

 

少々からくりに詳しい和人から見れば宝の山とも呼べるが、からくりにはてんで疎い銀時からすればゴミの山と言った感じだ。

 

「おいオメェ等、中に入っても構わんがその辺のモンに触るなよ」

 

そしてそれらを造ったであろう源外はというと、何本ものケーブルが接続された数台のモニターを同時起動させて、カタカタとキーボードを押しながらこちらに振り向こうともせずに銀時達に注意する。

 

「それにしてもお前さんがこっちに来るなんて珍しいな銀の字、柄にもなくテメーの女が心配になって来たのか?」

 

「そんな訳ねぇだろ、テメェの所のからくり娘に無理矢理ここへ連れてこられたんだよ」

 

「アレか……そういやユウキから話を聞いてから随分とお前さんに興味持ってやがったな……からくりのクセに特定の相手に興味を持つなんて、やっぱあの野郎が作ったモンはよくわかんねぇや」

 

銀の字、とクラインみたいな江戸っ子風味の感じで銀時の事を呼びながら、源外はモニターを確認しながら傍にいるアリスに指示を始める。

 

すると彼女はユウキを電気椅子みたいな所に強引に座らせ始めた。

 

「キツいんだけど……」

「これくらい我慢しなさい」

 

座り心地が悪いと文句を垂れるユウキの言葉も無視して、アリスが彼女が動けない様にと手首や足首にベルトを慣れた手つきで巻いて行く様を見つめながら、源外は今度は和人に対し

 

「それでそこの小僧は初めて見るが、何モンだ?」

「コイツは最近ウチにやってきた居候だ、桐ケ谷和人、童貞だ」

「なるほど、童貞か」

「童貞の情報はいらんだろ……」

「ん? 桐ケ谷……あ~どっか聞き覚えのある姓だな」

 

銀時の説明の仕方に和人がジト目でツッコミを入れる中、源外は桐ケ谷という彼の姓に聞き覚えがある様子だった。

 

「もしかしてお前、ちょっと前にくたばったあの桐ケ谷の親戚かなんかか?」

「ちょっと前に……ああ、祖父なら数年前に亡くなったけど?」

「あの野郎の孫だと? それにしちゃ随分と顔付きが似てねぇな……」

 

始めて和人に興味を持ったかのように源外は和人の方へ顔を上げてジッと見つめる。

 

ゴーグルの様なモノでじっとこちらを凝視して来るので和人は立ったまま怪訝そうに見つめ返す。

 

「まあ似てないってのは新八の親父さんからも言われてたけど……もしかしてアンタ、ウチの祖父と知り合いだったり?」

 

「まあな、あの野郎がお前さん位の年の頃は、よく二人でバカやってたモンだぜ」

 

「は? いやいやウチの祖父はバカやる様なタイプじゃないと思うんだけど……」

 

「そりゃガキだった頃のアイツの事を知らねぇからだよ、奴は俺より少し年上ではあったが、俺なんかよりもずっと……おっと」

 

和人に対して亡き祖父の武勇伝でも聞かせてやろうかと考えていた源外だったが、モニター画面に異変が生じたのですぐにそっちに視線を戻した。

 

「あーこりゃ左腕の方に相当負荷かけやがったな、付け根の部分が取れかけてるじゃねぇか」

 

「マジ? そういえば最近雑に振り回してた事あったけ? ロケットパンチ出るか試そうとして、直るの?」

 

「簡単に言うんじゃねぇ、まあ直るっちゃ直るが、いっその事新調するってのもあるぞ?」

 

「新調?」

 

固定された椅子で動けないでいるユウキに、源外はふと腕を取り換えてみたらどうかと提案する。

 

「最近面白いアイディアが浮かんでな、腕をサイコガンに改造しちまうって奴だ、どうだ興味あるだろ?」

 

「いやそれ浮かんだっていうか単にコブラ読んだけでしょ! 嫌だよサイコガンなんて! あんなの日常生活に支障が出ちゃうよ!」

 

「じゃあ機械鎧はどうだ? 傷の男に壊される事はあるが耐久性は高いぞ、錬金術だって出来る」

 

「傷の男って誰!? 錬金術なんて出来ないし普通の腕でいいんだよ普通で!」

 

どこぞの漫画でも読んで覚えた技術をユウキを使って実験しようと試みる源外だが、被検体である彼女の方は誰がやるかと本気で嫌がっているご様子。

 

そんなやり取りを見ながら和人は思わず頬を引きつらせてしまう。

 

「随分と無茶苦茶な事をやらかそうとするジーさんだな……これが江戸一番のからくり技師か……」

 

「おいジーさん、ユウキの腕よりもまず首をどうにかしてくれよ、最近すぐ取れっからよ」

 

「首? ああ~そっちもガタついてんのか、こりゃボロボロじゃねぇか、何があった……」

 

随分とイメージが違うなと彼が困惑する中で、銀時の方は彼女の首をどうにかしろと提案。

 

すると源外は首の付け根もマズイ状態だという事に気付くと軽く舌打ちをし

 

「こりゃもう、いっそ体全部替えちまった方が良いかもしれねぇな」

 

「体!? 嫌だよそんなの! この体が気に入ってるのに!」

 

「安心しろ、こういう事もあろうかとお前さんの予備の身体を造っておいたんだ、おい、ちょっくらアレ持って来てくれや」

 

「だから嫌だって!」

 

嫌がるユウキを無視して源外はアリスに指示すると、彼女はすぐに奥の倉庫へと引っ込むと、すぐに両手で担いで何かを持って来た。

 

「これでしょおじいちゃん」

「え、ちょっと待って、ボクどっかで見た事あるんだけどそれ……」

 

やや太めの黄色いボディ、丸い手足、首の付け根に鈴、お腹の部分には謎のポケット……

 

「良かったな、コレでお前さんも猫型ロボットに……」

 

「なるかぁぁぁぁぁ!!! 青い方じゃないからまだマシだけどそんな体になりたくない! 銀時もなんか言ってよ!」

 

「そうだよジーさん、流石にこればっかりは俺も一言言わせてもらうわ」

 

首から下をそんな体にされたくはないと椅子に縛り付けられたまま暴れるユウキ、すると彼女のピンチに流石に銀時も顔をしかめて

 

「どうせやるなら頭も替えろ、それと四次元ポケットも本物にしろ、秘密道具も入れてくれ」

 

「銀時ィィィィィィィ!! 君はそれでいいの!? ヒロインがドラ〇ちゃんになってそれでいいの!?」

 

「いやそろそろこの作品にもそんぐらいのインパクトが必要なんじゃないかなと思って、斬新だろ、ここでヒロインがドラ〇ちゃんになるとか」

 

「インパクトあり過ぎでしょ! 独裁スイッチで消されるよこの作品!」

 

ここでまさかの裏切り行為に走る銀時にユウキがキレて必死の形相で源外に訴える。

 

「新しい体とかいらないから元の体をなんとか修理してよ! ドラ〇ちゃんになるのだけは勘弁して!」

 

「仕方ねぇな、だったらこれからはもっとテメーの身体を労われよ」

 

「そうだぞ、今度またボロボロになったらマジでじーさんにドラ〇ちゃんに改造してもらうからな」

 

「だからなんで銀時はそっち側なのさ! なんでそんな頑なにボクをドラ〇ちゃんにしたいの!?」

 

源外はともかく銀時まで腕を組みながら偉そうに言ってくるのでユウキがツッコミを入れていると、そんな彼女にアリスが歩み寄って優しくポンと肩を叩き

 

「大丈夫、もしユウキがドラ〇ちゃんになったら、私がドラ〇もんになってあげるから」

 

「いや全然嬉しくないんだけど!? なにその励まし方!? そこで君がドラ〇もんになっても!ドラ〇ちゃんにされたボクの心の傷は癒えないからね!?」

 

微笑みかけてくれるアリスだが、彼女の提案は全く持って自分にとっては無意味な事であった。

 

同情で同じ猫型ロボットになってくれても全く嬉しくない。

 

「やれやれ、仮想世界のアリスといいユウキは、どっちのアリスにもたじたじだな……」

 

アリスのぶっ飛んだ性格に押され気味なユウキを眺めながら、すっかり他人事で苦笑すると、和人はおもむろに周りを見渡し始めた。

 

「さて、ユウキの体を修理してる間になにか面白いモンでも探してみようかな……ん?」

 

ここはからくりの山だ、興味があるモノならそこら中にある。

 

和人は早速後ろに振り返って、何かないかと探してみると、すぐにあるモノを見つけた。

 

しかしそれはからくりではなく、あまり使われていない物置に置かれていた、埃を被った写真立て……

 

「……」

 

その中に一枚の写真が入ってるのを見つけると、和人はおもむろに歩み寄ってそれをヒョイと掴み上げる。

 

そしてパッパッと手で埃をはたくと、入っていた写真が鮮明に映し出される。

 

「コレって……」

 

そこに映っていたのは今とあまり変わり映えしない平賀源外と数人の人物が映っていた。

 

真ん中で不機嫌そうに座り込んでいる源外だけ作業着に身を包み、他の者達は皆白衣を着て立っている。

 

「もしかして研究仲間か……? あ!」

 

そしてその白衣を着た人物の中の一人に、和人は目を見開き釘付けになってしまう。

 

写真に写っているメンバーの中で一番若い見た目の青年、線の細い体付きでありながら背は高めの男性……。

 

和人は見覚えがあった、マスコミ嫌いで滅多にメディアに顔を出さない人物だったが、雑誌のインタビュー記事で彼の顔を何度か見た事がある……

 

「おいガキンチョ、お前さんなに見てんだ?」

「うわ!」

 

不意に後ろから話しかけられて和人は思わずその場で飛び上がってしまう。振り返るとそこには源外の姿が

 

「なんだそれ、写真か? んなもんどこで見つけた?」

「いやここに埃被って置いてあったから、つい気になっちゃって……」

「ふーん……ああ、だいぶ前にあの若造に呼ばれて手伝ってやった時の奴か」

「その、もしかしてその写真に写ってる一番若い人って……」

「コイツか? コイツは一応俺の、弟子みてぇなモンだ」

「!」

「いや今となっては弟子だったのかどうかもわからねぇな、なにせコイツは俺なんかよりもずっと天才だったしよ、元々コイツは発明家の俺と違って学者だし」

 

 

和人はこの人物の事を良く知っていた、かつて彼がある功績を立てて様々なメディアに取り上げられた時は、片っ端からそれらの記事を探し回ったことだってある。

 

物理学者にしてゲームデザイナーであり、和人が強く尊敬するあの人物、その名は……

 

 

 

 

 

「茅場晶彦、お前さん知ってるのか? コイツの事?」

「……ああ、よく知っている、若くしていくつもの功績を立て、天才科学者と呼ばれた本物の傑物、そして……」

 

 

 

 

 

「究極の仮想世界を体験出来るVRゲーム・『EDO』を造り上げた男だ」

 

エターナルドリームス・オンラインプログラマー・茅場晶彦

 

他でもないこの人物こそ、自分達が今までプレイしていたEDOを立ち上げた人物なのだから。

 

 

 


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