――などと、調子に乗って靴下を選んでいたら、画面が勝手にスクロールされ。
「ふたりきりじゃないのかよ!?」
反射的に叫んでしまっていた。バックボーンでお母さんの怒鳴り声が聞こえるが、聞こえない振りをしよう。いまわたしが大切にしないといけないのは、お母さんではなく知佳たちなのだから。
「天野さんはまた用事か……意外と忙しいんだね?」
今日も用事があると言って先に帰ったくらいだし。はっ、まさか他校に殴り込みだったりして。美乳ヤンキーさんはたったひとりで、数多の不良たちを掻っ捌いていくんだ。己の拳のみで。
なーんてね。妄想はここまでにしよう。あまり冗長に繰り広げているとトークを読み飛ばしてしまう可能性がある。できたてほやほやの乙女トークをさくっと頂かないなんて、溶けたアイスを舐めるようなものだ。
まあ、個人的に溶けたアイスのほうが好きだけど。食べやすいし。
「うん? 花城さんに続いて知佳と御園さんが……『いけず~~』?」
もしかして、これはそういうノリなのだろうか。ほとんど無意識に私の手はスマホの入力画面へ――。
「……おっと! 危ない、危ない。思わず原文ママの『いけず~~』を打ち込むところだったあ!」
寸前で罠だと気付いたから良かったものの、女子同士の空気に気圧されていたら、完全に読み専としてのあらゆるプライドをかなぐり捨ててしまうところだった。ふう、セーフセーフ。これは冷や汗ものだ。
いまだから言える。こんなの、見え透いたトラップだ。勝者の余裕といったところ。この『貧乳(になりたい)同盟。』が穏やかなグループで良かった。これが女子中学生による険悪な集団だったら、明日からいじめの標的にされていた。個室トイレに閉じ込められて、上から汚い水とかバッシャアアアアアアアアってされたり?
「知佳はともかく、みんながそんなことするはずないよ。微乳差別する花城さんは置いといて、天野さんと御園さんがねえ、日陰虫みたいに陰湿な嫌がらせなんかする、はず……ない、よ、ね?」
急に不安になってきた。おかしいなあ、私ってメンヘラちゃんだったっけ。リーチだらけのビンゴカードもしくはユーチューバーの収入みたいに、メンタルが不安定になってきた。
「いやいや、落ち着け。なに被害妄想で絶望しているんだ……超高校級の読み専を舐めるんじゃないよ、まったく!」
既読無視は前へ進むんだ。明らかに陰湿な希望だけど、私は気にしていない。