貧乳(になりたい)同盟。   作:石黒ニク

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シン・2話「おっぱい」

「で、おっぱい大きい4人が私になんの用なの?」

「あうぅ。あんまりおっぱいおっぱい連呼しないでください……!」

「まだ1回しか言っていないよ。緊急事態ってことだから、あれかな。汗疹?」

 

 ――ぺし。

 知佳に弱い力でビンタされた。赤ちゃんみたいに、ちっちゃい手で。

 可愛い。推せる。いや、むしろ推し倒せる。そしてそのまま覆い被さって……妄想の捌け口にするのはやめておこう。ちっちゃくて可愛い――でもおっぱいは規格外な――知佳は愛でるくらいがちょうどいいのだ。

 ともかく。相談ごとというのは汗疹ではないらしい。巨乳は蒸れる夏が大変というのはよく聞くが、今回のケースとは関係ないようだ。じゃあ、なんだろう。腋臭……? 

 いや、知佳に限ってそれはない。あり得ない。天と地がひっくり返っても、知佳が腋臭なんてあり得ない。やめて、知佳でそういうひどい妄想をするのは。最悪の二次創作じゃん。

 

「沙良がなにを言いあぐねているのか分からないけど、ぜったいに違うからね」

「そうそう。あたしらはただ、沙良――あんたみたいな貧乳になりたいだけなんだからな!」

「……うん? いま、なんて言ったの? 私みたいなヒンドゥー? 私の家は無宗教だけど?」

「答えにくい領域に引っ張るなって。ヒンドゥーじゃなくて、貧乳な。自分の胸に聞いてみな」

 

 自分の胸? 赤髪ショートのヤンキー系女子に言われるがまま、自分の胸に触れてみる。

 ――ふにっ。

 と、微かに柔らかい感触がした。こ、これはお、おっぱいだぁ(棒)。まあ、言われなくても分かるけどね。何年ここにあるものだと思っているんだ。伊達に16年も生きていないぞ。

 でも、知佳たちのおっぱいと比べると、2サイズ……いや、4サイズくらい違うというのが、目視でさえ分かり得る。未発達おっぱい。悲し。これじゃあ、まるで私だけ谷やないですか。

 

「沙良。わたしたちね、おっぱいを小さくしたいの。それでどうやったら、そうなれるのか沙良に聞いておきたくって」

「……それで、公開処刑みたいな真似を? 知佳、あなたに無自覚なS――イノセントサディストの片鱗が見えるよ」

 

 ここまで短時間で「貧乳」呼ばわりされたことがあっただろうか。いや、ない。

 友だち間でも1回とか2回とかそのくらいなのに、巨乳ガールズたちは容赦なく言い放ってくる。その攻撃性たるや、巣を守る蜂だ。アナフィラキシーショックで死んじゃうよ。やめて!!!

 

「えっと。わたしが貧乳ってマジ? ほかにおっぱい小さい子とかは居なかったの?」

「居るには居るけど。あんたみたいにメンタル強いやつじゃなかったからな……同じように迫ったら、泣いたり逃げたりされたんだよ。なんでだろーな」

「亜希ちゃん☆ そんなの、一目瞭然だよ☆ 亜希ちゃんの顔が怖いから以外にないよ☆」

「あ? るり、テメー。あたしのどこが怖いって? ちょっとヒトより日焼けしているだけだろ?」

 

 日焼けしているヤンキーが眼前に迫って「おまえ、貧乳か?」なんて言ってきたら、誰だって怖いと思うけどな。正直、貞子よりもホラーだ。いまさら黒髪ロングの幽霊が襲ってきたって、このヤンキーが退治してくれるよ、きっと。

 

「まあ、まあ。るりさんも亜希さんもケンカなど止してください。淑女としての振る舞いがなってないですっ」

「なんだぁ、萌絵(もえ)。沙良以外の子が逃げるのは、あたしだけの問題じゃないと思うぜ。萌絵のそのフィクションじみた爆乳も、忌避剤になっているんじゃないかと思うんだよ」

「ひゃぁっ。ちょ、ちょっと! いきなり胸を触るなんてひどいですっ! もみもみ合戦なら負けないですよっ!!」

 

 なんか急に「もみもみ合戦」なる安易なエロが繰り広げられたが、私には関係ないので傍観者として振る舞っておく。最初は萌絵ちゃんが負けそうになっていたが、自身の乳の大きさを利用して亜希さんの背後に回り、あすなろ抱きの要領で亜希さんのヤンキーおっぱいを弄っている。

 ただ、萌絵ちゃんの乳が大きすぎるあまり、彼女の手がヤンおぱの核――乳首に届いていない気がする。亜希さんのブラジャーの層が乳首への攻撃を防いでいるだけでなく、「もっ、萌絵ぇっ……! フェザータッチをする、な、あっ! 絶妙にもどかしいっだろ……!!」「えへへ。亜希ちゃんにはイケそうでイケない、でもあと少しでイケそうなこちょこちょをしています」

 

「やんっ、亜希ちゃんがトリップ寸前になっちゃってるぅ☆ だらしないカオ☆^~^☆」

「うわああ。女の子同士でこんな……えっつぃだねぇ」

 

 無垢な女の子だと思っていたあの知佳でさえも、安易なエロに毒されて発情気味になっている。エロは世界を救うってホントだったんだね。知佳かわい。思わず覆い被さりたくなっちゃう。

 ――でも。

 こうしてみると、確かに私は貧乳なのかもしれない。少なくとも、制服に彼女たちのような膨らみは見られない。悲しいことにね。

 でもおっぱいは確実に存在している。インビジブルおっぱいが! ここに! 確かにあるのよ!?

 ……あるの。私のおっぱいは。

 

 

 ……信じてよ……。

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