「ねえ、知佳。聞きたいことがあるんだけど」
放課後の帰り道。幼馴染の知佳と並んで歩きながら、帰路に着く。あの個性的な三人の巨乳ガールズは居ない。
「どうしたの、沙良?」
「あのさ。胸を小さくしたいってことで彼女たちが集まったのは分かるけど。知佳も、胸の大きさに悩んでいたの?」
「う、うん。ごめんね。今まで言えなくて」
知佳は幼馴染で、小さい頃からいつも一緒に居た。そんな知佳が、胸の大きさに悩んでいたなんて、あのときまで知らなかった。むしろ、わたしは彼女の胸が羨ましかったというのに。
少しのあいだ、わたしたちの時間は風に流されて静かだった。周りのオレンジ色の風景を眺めたり、自分の心を落ち着かせるのに使われた。いつまでも無言でいる訳にはいかなくて私のほうから話を切り出す。
「知佳の胸が大きくなり始めたのって、中学のときからだったよね?」
「う、うん。身長は伸びないのに胸だけ大きくなるから、身体測定のときなんか周りの女の子が羨ましくて。沙良だってスタイル良いし、その身長を分けてほしいよ」
こっちからしたら、その胸を分けてほしいのだけど。でも、それは金銭的な余裕がないから難しくて、たとえ余裕があったとしても豊胸手術なんて御免だ。それはあくまで最終手段。
「もしかしてだけど、知佳の胸が大きくなったのって、わたしのせい?」
思い当たる節がある。知佳の可愛らしい童顔に似合わない、そのふたつの果実はたぶん、わたしが丹精込めて育てたものだ。そうなら、罪悪感が凄い。
「そ、そんなことないよ。確かに私の胸が大きくなりだしたときに、よく揉んできたのは沙良くらいだけど」
ああ、やっぱりそうだ。知佳が気を遣って否定してくれているのが分かる。わたしの、この手が知佳の、未熟だった果実をたわわにしてしまったのだ。
出会い頭にぱふぱふ。後ろからぱふぱふ。正面でぱふぱふ。抜き足、差し足、忍び足コンボでぱふぱふ。とにかく、中学時代は知佳の胸を触っていた記憶しかない。
「ごめんね、知佳。まさかここまで育つなんて思ってなかったの!」
胸の成長は彼女のほうが少し早かった。それが羨ましくて、至るところで嫉妬をぶつけてぱふぱふしてきたのだけど、完全に裏目に出た。彼女の胸は体型に見合わない大きさまで肥大化していた。知佳は俗にいう、ロリ巨乳と化していた。
「ううん、沙良は悪くないよ」
「でも。わたしが揉まなかったら、知佳のおっぱいはそんなに育たなかったかもしれないし」
昔やってしまったことは変えられないし、想像を膨らましても仕方ないけど。成長期にぱふぱふして知佳みたいに育つなら、わたし自身にやっておけば良かった。
「中学のときにおっぱい揉まれただけでこんな風になるなら、沙良に仕返ししておけば良かったな……それなら、沙良に嫉妬することもなかったかもだし」
「わたしに嫉妬?」
「ほら。私って胸だけは大きいのに、身長は全然でしょ。でも、沙良は身長も高くてスタイルも良いし、私の理想の女の子だよ」
スタイルが良いったって、出るべきところが出ていないというのは、女の子としてあまりに致命的だと思うけど。第二次性徴が中学生から高校生にかけてのゴールデン期間だとしても、知佳や他の女の子に比べて、わたしの双丘は主張が控えめ過ぎる。
「違うよ、知佳。女の子っていうのは抱き心地が良くて柔らかいものなんだよ。わたしみたいに遊びのない女の子は理想系じゃないよ」
遊びがないと言い切ったら語弊を生むから訂正するけど、わたしの胸はそこそこの弾力があって、大きさに不満があるものの、胸としての機能は普通にある。
「遊びがないって、そんなことないよ。確かに沙良の身体にはおっぱいが足りないかもだけど、まだ沙良の身体には、いっぱい魅力があるじゃん」
「魅力なんて、どこにあるっていうのさ」
自分が貧乳だということにおいて自虐的に振る舞えたけど、第三者目線の、しかも巨乳の知佳におっぱいが足りないって言われると、堪えられないものがある。ちょっと泣きそうだ。
「もちろん、ここだよ!」
そう言った矢先に彼女が手を伸ばしたのは、わたしの身体の、あるところだった。短めのカーテンの奥にある、トップシークレットの果実をわしづかみにしてきた。
「ちょ、知佳!? どこ触ってんの!?」
あまりに不意を突かれて、かなり驚いた。まさか、夕暮れの街並みを背景に、幼馴染で親友の女の子にお尻を揉まれるとは、はたして、だれが予想できただろうか。
「えへへ。沙良のお尻触るの、なにげに久しぶりかも。中学卒業してからまだそんなに触ってなかったよね?」
「もー。知佳! 道行く人が見てるからやめてよね!!」
背後からお尻を触られているから、姿勢的に彼女の胸を揉み返すことはできない。やられたらやり返すことをモットーにしているわたしにとって、それは辛いことだった。
「良いじゃん、ちょっとくらい! あ、やっぱり肉厚で揉み心地良いね」
すれ違う人、特に男の人から奇異な目で見られる。それはまるで公開処刑だ。同性の女の子にお尻を揉まれている姿というのは、電車の中で痴漢されるよりも恥ずかしくて、あまり顔を見られたくない。痴漢はまあ、されたことはないけど、なんとなく引き合いに出してみた。
「解説しなくていいから、早く離れてよ! 皆見てるってば」
スカートの奥に手を入れられるのは同性の幼馴染とはいえ、やはり抵抗がある。そんなの、ほとんどデリケートゾーンに侵入しているようなものだし、幼馴染という関係性がなかったらそれは貞操に関わる、危ない行為でしかない。
「ねえ、沙良。もしかして、なんだけどさ」
ふいに、知佳の手が止まった。そこから快感を得ようとする前に止めてくれて助かった。いや、快感なんて要らないけど。道端でそんなことしたら、ただの痴女だから。
「どうしたの、急に。そんなに畏まっちゃって」
「あのね。これは私の推測なんだけど、聞いてくれる?」
「推測、っていったい、なんの?」
ここまで真面目な表情の知佳は見たことがない。珍しく凛々しい顔つきをしている。ロリがそういう表情をすると、なにか新しい癖に目覚めそうで怖い。
「沙良のお尻が大きくなっちゃったのってさ、私のせいなのかなって」
「そ、そんなことはないと思うけど。確かにわたしのお尻が大きくなりだしたときに、よく揉んできたのは知佳くらいだけどさ」
知佳のおっぱいが大きくなりだしたのと同時期に、実はわたしのお尻も大きくなりだしていて。わたしは知佳の上の果実を、知佳はわたしの下の果実を育て合っていた。
もちろん、そこには一切の性的要素はなくって。女の子同士の、ちょっとした触れ合いみたいな感覚で、まあ、今思えば変態的なコミュニケーションだけど。
「ごめんね、沙良。まさかここまで育つとは思わなかったの!」
わたしも、育ってほしい胸よりもお尻のほうが早熟するなんて思わなかった。保健室の先生には安産型とか言われちゃうし、男の人には今みたいな目で見られるし。わりと良いことがない。
「ううん、知佳は悪くないよ」
「でも、私が揉まなかったら、沙良のお尻はそんなに育たなかったかもしれないし」
それはまあ、うん。控えめな胸が目立つくらいにはお尻のほうが育ってしまったけど、知佳にも同じようなことをしてしまっているし、意外と両成敗で良いのかもしれない。
「中学のときにお尻をしこたま揉まれただけでこんな風になるなら、世の中の女性は皆安産体型だよ。ほら、そういうのはさ、きっと遺伝とかの問題なんだよ!」
言っていてそのまま、空しくなった。それが世界の真理だとしたら、わたしの胸はお母さんやおばあちゃんみたいな壁で、だけどお尻は外国人に負けないナイスな感じの膨らみを維持するだけで、理想すら叶わないことになってしまう。
わたしはもはや、おっぱいがほしいのに、お尻を手に入れてしまった可哀想な女の子だ。
「それは違うよ、沙良。仮に遺伝だったら、私のお姉ちゃんはどうなるのさ?」
「あ、それもそうだね。じゃあ、未来に期待できるね」
知佳のお姉さんが居てくれて助かった。彼女はわたしみたいな体型だから、遺伝という説はまったくの見当外れだ。もしかしたらこの先、わたしの胸が知佳みたいになる可能性は決してゼロではない。望みはまだ残っている。
だから、わたしが巨乳になれる日だって、知佳が巨尻になれる日だって。いつかは分からないけど、きっとやってくるはずだ。そう遠くない未来に、たぶん。
「それが分かったところで、そろそろ私のお尻から手を離してくれないかな、知佳」
もうそこの成長は要らない。必要なのは上の果実の膨らみだけ。どうせ揉んでくれるなら、お尻じゃなくて胸を揉んでほしい。もちろん、性的要素などなく、純粋なお願いとして。
「えー。だって、沙良のお尻の感触、気持ち良いんだもん。簡単に手放したくないよー!」
「だったら、知佳。等価交換と行きましょう。わたしはお尻を差し出すから、あなたは胸をこちらに差し出しなさい」
これでひとまずは手打ちにするべきだと思う。そして場所が場所だから、果実を触れ合うための別のフィールドが必要になる。それはどちらかの家で良いとして、問題は知佳が対価を払ってくれるかどうかに掛かっている。
「これ以上私の胸が育つのは良くないことだけど、まあ、沙良のお尻を堪能できることに比べたら些細な問題だよね……分かった、その条件を呑むよ」
わたしもちょうど同じことを考えていた。知佳と同じようにわたしも、自分のお尻が成長しようがしなかろうが、彼女の胸の感触を楽しめるのならどうだっていい。
「じゃあ、場所はわたしの家でいいかな?」
静かに頷く知佳を確認して、わたしたちは夕暮れの街を背に、目的地へと歩いていった。