「うん? なになに……わたしを読み専から引きずり下ろすだって? やれるものならやってみなさいな。ふふふ」
なんとも可愛らしい思い付きだ。なんとなく保育士を目指したくなった。
でもこんなにいろいろ種類に富んだ可愛いが溢れているのに、わたしよりおっぱいあるんだよね。なんかそういうの、残酷だと思う。やめてほしい。
「まあ、でもおっぱいは大きさだけがあればいいってものじゃないから!」
って、誰に言ってんだか。またお母さんに怒られちゃう。『まーた、あんたは部屋にひとりでいるのに叫んじゃって!』みたいな感じで。やかましいわ、って反論しちゃうけどね。
「それより、砂糖だ。砂糖を寄越すがいい! わたしのワンダーランドは永久に不滅なんだ!」
わたしが見ているのを知っていて、彼女たちは見え透いた作戦会議をしている。手の内がまるで分かる攻防戦なんて、彼女たちにとっては圧倒的に不利だというのに。
「花城さん……ギャルのくせに鋭いことを言うね。いや、ギャルだからこその発言なのかも?」
書き込みたくなるほどのインパクト、か。たとえばだけど、さすがに全員からスタンプを連続で投稿されたら、打つ手なしであることは必至。通知地獄でマジギレカーニバルもあり得る。
まあ、わたし……こういうSNSとかって、基本的に通知を切っているんだけど。ちなみに通話機能もオフにしてある。トークをするなら生声派なんだよね。電話とかメールとかめんどいし。
「あはは。御園さんってば、真面目だなあ。横断歩道を渡るときに手を挙げて渡るタイプかな?」
そんなことをするのは小学校低学年の子どもたちくらいだと思っていたけど、御園さんくらい真面目なヒトにも該当しそうだ。ということは、未だに夏休みの朝に近所の公園でラジオ体操とか行っているのかな。
なんて幼稚な思考を巡らせていたけど、そういえばこの子……御園財閥の令嬢だったね。
徒歩で横断歩道よりかは、ひとり優雅にモノレールで高みの見物だろう。それに、ラジオ体操ではなく高貴なクラシックでも聞き流していそうだ。都合よくオトナな妄想に塗り替え、随時更新されていくグループトークに目を向ける。
「……うん?」
思わず声が出た。それが本当にわたしの妄想でないか確認するために頬を抓ったが、ふつうに痛かった。衝撃的なメッセージを打ったのは知佳だ。愛くるしいマスコット的な存在で、彼女の胸はわたしが育てた。
まさか……こんなことがあっていいのか。知佳がわたしをデートに誘うだなんて。
これはもう、あれだよね。両思いってことでいいんだよね? 赤い糸が小指同士で繋がっちゃっているってことなんだよね!? 勝ち組人生ってことだよね? ね? ね?
ほら、わたしの脳内イメージで、糸の形状によっては数字の6にも見えるし、フリーメイソンの陰謀みたいになっちゃうことも考えられるし! よし、明日はお気に入りの靴下を履いていこう。