Full Bloom 〜満開の歌声を〜 作:grasshopper
テストがあったので中々書く時間がなかったです。
side優人
朝、目が覚める。
朝は気温が寒い季節から涼しい季節に移り変わっていた。梅雨が明けたの。
俺はゆっくりとベッドから起き上がって窓に向かう。カーテンを開け、更に窓を開ける。すると、なんとも爽やかな風が部屋に入ってくる。空気を喚起すると同時に俺の気分も爽やかにしてくれる。
夏だ。
しかも明日からは夏休み。
普段できない事をやろう。最近は凝った料理を作ってないから、何か時間をかけて豪勢な料理でも作って誰か招こうかな。運動もしたいし。最近はバスケしてないからやりたいな。中学はバリバリやってたのにな。
あとはやっぱ練習だよな。フェスにも3つくらい出るから忙しいんだよな。商業デビューしてないのにもかかわらず、こんなにオファーが来たのは嬉しい事だけど。
朝からのバイトでも、ずっとこのことばかり考えていて、気づけば登校する時刻になっていたほど浮かれている。
学校に着き、教室に入る。クラスメイトとも当分会えなくなる。そういえばクラスでどこか行くって冬夜が言ってたな。それも楽しみだな。
そんなこんなで濃いい夏休みになりそうだな。
なのに……。
「咲野。丸山。貴様らは夏休み最初の1週間補習だ」
終業式が終わった後の
「んなっ……!ちょっと待ってください先生!自分で言うのも何ですが、俺はテストで赤点取って無いし、総合順位も高かったんですけど!」
「貴様の場合は授業態度だ。提出物は遅れる、出さないのが当然。居眠りなんかは世の中の常識と思っている。終いにはサボりの常習犯ときた。これを見逃す教師はいないからな。生徒指導にならなかっただけでも感謝するんだな」
「そんな理不尽な……」
俺は思わず呟く。しかし、聞こえないように言ったつもりだが、先生には聞こえていた。
「ほう、なら今か貴様を生徒指導室に連行しても敵わんのだぞ」
「補習に行かせていただきます!」
俺は綺麗な90度に腰を折る。全く、先生という生き物はなんでこんなにも卑怯なのだろう。俺は結果は出しているんだ。だから妥協してくれてもいいはずだ。
ん?そういえば丸山は?
「丸山、お前は何で補習なんだ?」
俺は勢いよく立った反動で倒れてしまった椅子を直しながら、隣の席の丸山に聞く。
「えっ!いや、私はちょっとしくじっちゃって……」
「へえ、因みに何の教科だ?」
「……」
「え?ごめん、もう一回言ってくれないか?」
聞こえなかったのは事実だ。だけど、明らかに声が小さい上、早口だった。だから聞き返しただけだった。
なのに、なぜ丸山はこんなにも震えているのだろう。なんか聞いちゃまずかったかな?それにしてもスッゲー震えてる。ケータイのバイブ並みに。
「で、なんだったんだ?」
次に丸山の口から出た単語はというと。
「数学……です」
なるほどな。なんで震えてたかも、敬語を使ったかもわかったよ。
丸山は明後日の方向を向く。今から起きる事を理解したようだ。
「おい丸山よ」
「はい」
「俺の家で勉強会したの覚えてるか?」
「はい」
「俺、数学を教えてやったよな?」
「はい」
「俺が教えた所は理解してたんだよな?」
「……はい」
「じゃあなんで赤点取ったんだ?返答次第では雷が落ちるから気を引き締めろよ」
「えーっと。その、これはー……」
しかし俺は丸山の話を遮る。
「丸山。話してる相手の顔を見なきゃ失礼だぞ」
未だにこちらとは真逆の方向を見ていたので、声を極力まで低くして促した。恐る恐る。こちらに向き直る。俺の顔を見ると、泣きそうになる。え?俺は今、そんなに鬼の形相なの?
「で、先に何点だったか言ってみ」
「……点」
こいつ、また声を小さくしやがったな。どうせ言わなくちゃいけないんだから、腹くくれよな……。
「もっ回言ってくれ」
「37点」
Oh……。これは由々しき事態だな。つっても怒っては無いんだけどな。だが、取り敢えずはキレとくか。
「丸山ァ!お前は……」
しかし、
「おい、補習組!まだホームルーム中だ!静かにしろ!」
担任教師がキレた。多分、また目をつけられたんだろうな。まあ、丸山への説教もそろそろ終わろうと思ってたしな。
そうしてホームルームが終わり、放課の時になった。俺は席を立つ前にスマホを開く。
「うわっ。キモっ!」
スマホを開くと、999+もの通知が来ていた。こんなん見たことないな。人生初めてこんなに連絡が来たのに、なぜか嬉しくない。
恐る恐る、某無料通話アプリのアイコンをタップし、開く。
見てみると3人から通知が来ていた。
主に香澄……999+件
沙綾……2件
おたえ……13件
開くのが怖いんだけど。もうね、アレだよ。嫌な予感しかしない。絶対内容ヤバイやつだよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。
取り敢えず香澄のを開こう。1番多いのを最初に消化しておきたいからな。そう思って香澄のトークルームを開く。
内容はというと。
『優人先輩‼︎』
『優人先輩‼︎』
『優人先輩‼︎』
・
・
・
『優人先輩‼︎』
何この必要以上な俺へのコール。しかも最後まで何が言いたいかわからなかったし。こんな物で容量とらせんなよな。つかなんでこいつらは俺のL●NEを知っているんだ?沙綾か?沙綾が教えたのか?
「ポピパの子達に優人のアカウントを教えたのは私だよ」
春がいつのまにか俺の机の前まで来ていた。というか、
「何ナチュラルに人の心を読んでんだよ。いや、この際それはどうでもいい。なんでこいつらに教えたんだよ!香澄からの通知を見てみろ!どこぞのチェーンメールなんかよりもよっぽどタチが悪いぞ!」
「うーん、なんで教えたかって言われてもねー。……気の迷い?それとも血の迷い?」
「なんで『?』がつくんだよ。あと、意味わかんないことばっかり吐くな」
でも、これだけで終わってよかった。なぜなら後2人は通知数は少ないけれど、なんかありそう。
だけど俺は沙綾のルームを見る。おたえはどうせ内容がクレイジーなはずだから、メインディッシュにしておく。
『先輩、今日はSPACEのライブに出ます!』
ああ、そういえば朝のバイトでもそんな事言ってたっけか?香澄が言いたかったのはこれのことか。
何がともあれ、内容がまともで良かった。
と、思ったのは束の間だった。俺はもう1つの沙綾から送られてきたメッセージに目を通す。
『来なかったら…………わかってますよね』
うーーん。怖い!沙綾ちゃん、可愛さのかけらも、いや、女子力のかけらも無いね!お兄さんちょっとビビっちゃったな☆
さて、ここでおたえの出番だ。Poppin' Party1の異端者こと花園たえは一帯俺にどんな連絡を……。つっても、どうせライブのことだろうけど。そんなノリで開く。
『優人先輩‼︎』
入り方が香澄と寸分たがわず同じという異例を成し遂げたな。
『今日SPACEでライブですよ‼︎』
あーはいはい。知ってる知ってる。
『見に来てください‼︎』
うんうん。そこまで言われたなら行ってやろう。
さて、後10件だな。そう思って、下へとスクロールをする。
『見に来てくれますよね』
……なんだい、そのヤンデレみたいな言い方は。もう不穏な匂いがプンプンするな。
『おーい』
『あれ?』
『先輩?』
『まだ授業中ですか?』
『そんなわけないですよね』
『無視しないでください』
『ホントは見てるんじゃないんですか?』
『ねえ、見てるんでしょ』
もはや下にスクロールするのに大分勇気が必要になって来たな。指先がトラウマ抱えるぞ?
だが、俺はスクロールをする。おたえは大丈夫だ。バカだから大丈夫だ。天然だから大丈夫だ。そう念じながら。
『返信しろ』
「怖い!怖いよー。おたえさん、もう感想が怖いしかないよ。今度から話しづれーよ。怖ーよ。あと怖い」
「返信しなくていいの?」
春が聞いてきた。誰かに話しかけられただけでビビる体質にならなくてよかったよ。
「ああ、別にいいよ。どうせすぐに会うんだし」
「じゃあSPACEに行くんだ」
「当然だろ。ポピパだけじゃなく、Aftergrowやグリグリも出るしな」
「あとRoseliaも大トリで出るって」
ムムッ。あいつらも出るのか。なんか、行く気失せたな。行かなきゃダメか?でも行かなかったら沙綾からの腹パンは確定演出だし。おたえからも絶対なんかあるし。仮に何もなかったとしても、それはそれで怖い。てか、全部春がいけないと思う。沙綾に俺の駆除方法をしこんだのも春だし、おたえに俺のアカウント教えたのも春だし。そういうことなので、取り敢えず春を睨むことにした。
「優人、感情がもろ顔に出てるよ。すっごく嫌そう」
おい、そこ。俺の睨みを無視するなよ。
「そりゃあ、嫌だろ。わかってるだろ?俺達Full BloomとRoseliaの中の悪さを」
「いや、それは優人だけだよ。というか、そろそろ行かないと陸君との待ち合わせに遅れる!ほら、優人行くよ!」
「お、おう!」
そうして俺達は階段を駆け下りて行く。脱靴場で外靴にはきかえて、正門までそのままダッシュ。しかし門がゴールではなくスタートだ。てか、ホントに時間ギリギリなのかよ!ならもっと早めに言えよな。俺のL●NEのトーク内容なんてどうでもよかったでしょ!特に香澄!
そして俺と春はSPACEの最寄りの駅に着いた。そこには陸の姿があった。
「あ!おーーーい!」
陸がこちらに気づいた。俺達は駆け寄る。
「悪いな、遅れちまって」
「ううん。僕も今来たところだよ。それより春……大丈夫?」
「ハァハァ……うん、全……然……大丈……夫……ハァ」
こいつ、運動できないくせにあんなペースで走るから。俺でも合わせるのがキツかったんだぞ。すると陸が近くの自販機に150円を入れる。そしてヨーグ●ーナを買って春に差し出す。
「はい、これ飲んで」
陸君や、イケメン過ぎないか?そんな風に微笑みながら言われたら、世の中の女子を全員落とせちゃうよ。
「あ、ありがと、陸君」
春は受け取り、キャップを開ける。いい飲みっぷりだった。もはやアラサーのOLが居酒屋で飲んでるみたいになってるな。これが学校1の美少女か。中身残念すぎるだろ。
「よし、そろそろ行こうか」
陸が促す。
そうして俺達は再び足を動かす。
ほんの数分でSPACEに着いた。そこには大勢の人間で溢れかえっていた。名言から引用すると、人がゴミのようだ!そんな中、オーナーを見つけた。
「こんにちわ」
陸が挨拶をする。なので、俺も続けることにする。
「チワス」
春も同様に挨拶をした。
「ああ、来たのかあんた達。自分達の練習はしなくていいのかい?」
「ここには俺の後輩がお世話になってるし、今日も出演するから見にこないわけがないですよ」
「フッ、せいぜい楽しんでいきな」
そう言い、オーナーは離れて行く。
俺達は店内に入る。軽く挨拶にでも行こうと思い、楽屋に向かう。もちろん許可は取ったからな。
「失礼します」
ここは春に先陣を切ってもらう。着替え中だったりしたら、俺と陸は犯罪者になるから。
中から視線が集まる。が、1秒後には敵意は無くなった。春は中にズカズカと入って行く。そしてどこかのグループを引っ張って来たようだ。それはなんと先程言ったRoseliaだった。
俺達とRoseliaに交流はある(と言っても、向こうは最近結成したのだが)。陸は一様5人全員と顔馴染みだし、春も殆どのメンバーとは話したことがあるそうだ。それに引き換え俺は、図書室に行った時に白金と会ったら世間話するか、あこに駄々をこねられてゲーセンに連れて行ってやるくらいだ。しかし、1人だけよく知っている人物がいる。
「あら、誰かと思えば優人じゃない」
その人物から声をかけられる。
「ああ、友希那か。お前らもライブ出るんだってな?」
「ええ、私達の音楽を直接肌で感じて欲しいもの。それに対して貴方達は、未だにネットに動画を上げて楽しんでるようね。そんなにお金が欲しいのかしら?陸、春、こんな男とはすぐに解散することをお勧めするわ」
「はあ?何ほざいてんだよ孤独の歌姫こと湊 友希那さんよ。俺はただ純粋に俺らの音楽を聴いて欲しいだけなんだ。あんたと一緒だよ。それに、少しでも多くの人に知ってもらいたい。俺達のことを応援して欲しい。そう思って何が悪いんだよ」
「考え方そのものよ。そんなに色んな人に聴いて欲しい理由がわからないわ。自分で動画を上げなくても、真に人気なアーティストは人気が自然に出るものよ」
「でも、その逆もまた然り。俺らは動画をネットにアップする。人気が出る。ほらな、順番が逆さになっただけだろ。実際このやり方で人気の出たアーティストもいるのは事実だろ?」
「そういう人間は確かにいるけど、ごく限られてるわ。そもそも貴方の場合は無計画すぎるわ。これだから頭真っ白な人は嫌いなの」
「は?無計画じゃないから。実際に、俺らはメジャーデビューしてないのにワンマンライブ何回もしてるから。それにもし俺が頭が真っ白だとして何が悪いんだ?純白じゃないか。そうだ!俺は潔白だ!それに対して友希那は……ああ。『黒でもいい』だったか?いやー!自分の性癖を綴るなんて俺には真似できませんな!流石だな!」
「そんな訳ないでしょう!それに貴方こそいつも真っ黒な服を着てるじゃない。まるでゴミを漁るカラスね。いえ、一緒にされたカラスがかわいそうだわ。ごめんなさい、カラス」
「は?お前もステージ衣装は全部暗色じゃねーかよ!それにお前、いつもはクールぶってるけど猫好きなんだってな!」
「な!……誰からそれを!?」
「それは言えないな。クライアントの情報は流さないのが俺の主義でな」
「ッ……!そんな卑怯な手口をするなんて、貴方はやっぱり下衆ね!」
「それはブーメランになるぞ」
「「ぐぬぬ……!」」
まあ、察して貰った通り、俺ーー咲野 優人と湊 友希那は引くほど仲が悪い。目を合わせただけでいつもこうだ。
「まあまあ2人共、そこまでにしといたら?」
陸が仲裁に入る。これもいつも通りの流れだ。
「「陸が言うなら……」」
俺と友希那は揃って言う。ホントそれが気に食わなくて睨む。すると向こうも睨んでた。しかし、また口論が始まるわけではない。俺達は陸の言葉が絶対なのだ。俺と友希那は考え方は違えど、同じ陸のファンだからな。陸には逆らえないし、逆らうつもりも無い。
「さて、僕らはそろそろ出ようか。ここに居座っても迷惑だし」
「そうだね。じゃ!みんな頑張ってね!」
陸と春が続けざまに言った。
「ま、せいぜいガンバレ」
俺もそう言い残して退室した。
さて、ポピパはどこだ?楽屋にはいなかったし、……トイレ?と思ったら、
「お前らはなんでそんなところでパンを食べてるんだ?」
そう、ポピパのメンバーを見つけた。見つけたのはいいんだが、こいつらはなんかすごい場所にてパンを頬張っていた。つか、いつからいたんだ?気づかなかったぞ。
すると香澄が立ち上がって。
「あ!優人先輩!さっきなんでスルーして楽屋に行ったんですか!?」
「えっ!さっきからいたのか!?マジで気づかなかった……」
すると、おたえも続けて、
「春先輩と陸先輩は気づいて手を振ってくれたのに……。優人先輩はなんて薄情者なんですか」
ごめん、ホントにごめん。だからもうそれ以上は言わないでくれ。心のダメージがヤバイから。
「それはそうとなんでここで食べてるの?楽屋に入るの緊張しちゃった?」
春が上手く話題を変えた。てか、なんでそんなに微笑みながら聞けるの?君、そんな人だった。ついさっきまでのOLは何処へ?
すると、グリグリもやって来た。今日でこのSPACEでのライブも最後なのに、来ようと思って来れたメンタルがすごいな。
「「「こんにちわ」」」
俺達3人はポピパが気づく前に挨拶を済ませる。
「あ、3人とも来てくれたんだ〜。ところでりみ達は?」
「すぐそこにいますよ」
「……すごいところにいるね」
ゆり先輩、その下りはもう終わりましたよ。
すると、おたえがヒナコ先輩に髪をわしゃわしゃされていた。まあ気にしない。
「と言うか、有咲は?」
春が言った。おそらく、ヒナコ先輩はトイレだと気づいたようで、市ヶ谷の元に行こうとしたようだが、リィ先輩にハウスを喰らった。
「あ、そろそろ入場できる時間だから行こうよ」
春が自身の腕時計を確認して俺と陸に伝える。
「そうだね。じゃあ皆さん、頑張ってください」
陸はそういう風に応援の言葉をポピパやグリグリにかけた。
俺達は早速入って、前の方を陣取る。Aftergrowのみんなにはまだ会ってないけど、終わってから会いに行けばいいだろう。
すると、俺達に続いて何人ものお客さんが入ってくる。通常のライブの10倍単位だろう。閉店するというだけでこんなにも来るなんて、この店が愛されている証拠だ。
それから10分経ったか経たないかくらいの時間でライブが始まった。1番手はGlitter Greenだった。トップバッターは会場を一気に盛り上げないと、その後の出演者にも続かない。なので、このSPACEにおいて人気のあるグリグリが1番なのは妥当だ。
「SPACE!遊ぶ準備はできてますか!……OK!行くよ!」
グリグリの演奏と歌は流石としか言い様が無かった。
ギタリストのキャリアとしては俺の方が先輩に当たるのだが、ゆり先輩を見るとやはり凄みを感じる。正直な話、技量は俺の方が上だろうが、今日のグリグリの演奏は100点中200点あげたくなる程心に響いた。自分達の思い出の場所での最後のライブだからやる気は当然普段以上だとはわかっていたが、予想以上だった。
グリグリのステージが終わった後も俺はその余韻に浸っていた。
次に登壇したのはCHiSPAだった。
地味に初めて聞くんだよな、こいつらの演奏は。何度か相談やらなんやらは受けたがこうして実力をみることは無かった。さて、見せてもらおうか。
「ありがとうございました!」
これもまた、素晴らしい出来だった。どうやら、最近の学生バンドは粒揃いが多いらしい(ブーメラン)。もしかしたら、俺達やRoseliaに追いつくバンドも出かねないな。今日からまた気を引き締めて練習をしよう。
すると、ステージ袖から、
『ポピパ!ピポパ!ポピパパ!ピポパー!』
と、掛け声が聞こえてきた。わかりやすずぎる。
「あはは、考えたのは香澄かおたえかな?」
「ははは、きっとそうだろうね」
春と陸は苦笑いしながら会話していた。
そして、ステージに現れる5人の少女。ポピパの曲もフルで聞くのは初めてだろう。文化祭は最初を聞き逃したからな。しかもその曲が最後の曲だったし。あ、そういえば、チョココロネがあった。あれはフルで聞いたな。うん、あれだろ。
そうこうしてると、彼女らの自己紹介が始まる。まずは一人一人名前を言ってゆく。
「バンドを初めて、だいたい2ヶ月!」
「「「「えっ?」」」」
香澄以外の4人が声を合わせ、驚きの色を見せる。
その後の5人の話は正に俺や春が見守ってきたストーリーだった。今思うとこんなにもあの5人は輝いていたのか。まるで、フィクションの世界の主人公だ。それに比べて俺は……。
「聴いてください!『夢みるSunflower』!」
香澄の曲紹介ののち、おたえの指が滑らかに動き、青いギターの弦をなぞる。そして、4人も入ってくる。Aメロに入り、香澄の歌声が届く。
「この曲は多分、あの子達のストーリーそのものなんだろうね」
陸が独り言なのか、それとも俺達に投げかけたのか、いまいち掴めない発言をする。
「きっとね。この3ヶ月であったことをSPACEで歌いたかたんだと思うよ」
春は陸の言葉に繋げた。しかし俺は繋げなかった。いや、
そうしていると、もうサビに入ってしまった。
「悪い、俺ちょっと外出てくる」
「えっ!あ、うん」
陸は驚いたようだが、止めはしなかった。春も驚愕した目で俺を見ていた。
俺はドアを開け、外の空気を吸う。
何故か見ていられなかった。きっと……見るのが辛かったんだ。戸山 香澄という人間は俺と正反対の人間で、俺はあいつの事が苦手だった。しかし今ではポピパのメンバー全員に少し引け目を感じている。
理由は簡単だった。
あいつらは俺と違って強いからだ。Poppin' Partyのメンバーはみんな誰かの手を借りつつも立ち上がってみせた。
「なんで……なんでそこまでできるんだよ。また挫折するのが怖くないのかよ」
沙綾もおたえも牛込も市ヶ谷も、香澄がきっかけをくれたから、今、ステージに立っているんだ。だけど、その香澄も一度は挫折して、声が出なくなった筈だ。
「なんで声が出なくなってたのに、そんなに歌えるんだよ。俺なんかは……」
久しぶりなので、話し方とか曖昧だったんですけど、大丈夫でしょうか?もし、おかしな点があればご指導のほどよろしくお願いします。