あぁ神様、RING   作:猫毛布

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変わった過去の未来

 ゴポ……

 

 目の前の気泡が、上に昇り、消える。

 子供と言って言い程の体躯の少年が目を覚ました。

 円柱型のガラス管の中で、彼は目を覚ました。

 

「おはよう、ユウ」

 

 ガラス管の前に一人の男が立ち、悠々と彼に挨拶をする。

 髪色は紫。その目は軽い狂気に犯されている、そんな金の瞳。

 ぼんやりと少年はその姿を見て、どうしてだか知っていた念話という魔法で男に言葉を掛ける。

 

『おはよう…博士』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 アレから時は少し過ぎ、少年は少年の体躯で外にいた。

 両手に持ったスーパーの袋持ち、少しだけダボついた黒いパーカーを着ている彼は、言ってしまえばショタコン垂涎の姿であった。

 そんなショタは手首に引っ掛けたスーパーの袋を軽くあげて手に持った一枚の紙を見て呟く。

 

「……ミソが、ない」

 

 そう、ミソがないのだ。

 ミッドチルダ、それも管理局から少し離れた大型スーパーでありながら味噌が無いのだ。

 ちなみに彼はこれを言いながら会計前にアッチにフラフラ、こっちにフラフラ、と彷徨い、それはもう、

 この世界はみんなショタコンでいいじゃないか?

 いいだろう?

 みんなで襲えば怖くない。

 なんてココに務める店員及び一部のお客様達に見られていた。知らないところで身の危険があるのは全ての人間に平等らしい。

 ともあれ、少年は結局味噌を買えることなく溜め息を吐いて、隠れ家らしい自宅に帰ることになる。

 

 帰る。つまりは帰路に着くわけだが、少年の帰路は些かおかしかった。

 まず、少年を追いかけていたショタコン代表、いや、ショタコンとしてあるまじき行為をしようとしていた代表が彼を追いかけて路地裏に入った。路地裏に入った、のだが、目の前にはスーパーの袋が三つ。ネギと大根が飛び出ている。

 

「………追手は、排除」

 

 そんなショタの声を聞いて尋常じゃないスピードで上を向いた彼女は…はたして幸運だったのか。否、不幸だったのだろう。

 まるで無表情な少年がその手に銀色のナイフを持ち、自身の上から落ちてきたのを確認してしまってるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……博士、ただいま」

「あぁ、おかえりユウ」

「……調子は?」

「まぁまぁ、といったところか。以前の君であるならば私の研究も分かってくれたのだろうが」

「……以前?」

「いや、いい。ソレを消してしまったのは私だ」

「……博士」

「どうかしたかね」

「…ソコ、間違えてる」

「………ククッ、フフフ、フハハハハハハハハハハハハ!!やはり、やはり君はそうでなくてはならないッ!!」

「……博士」

「どうかしたかね!!次はどこを指摘してくれる!?」

「味噌……なかった…」

「…………」

 

 

 

 

◆◆

 

 少年、正確に言うならばユウと呼ばれる彼には七人の姉がいる。

 もっとも、その内一人は隠れ家に居らず、偶に帰ってきた時、もしくは彼が彼女の元に行く時にソレはもう名状し難い、というか彼女の名誉の為にあまり言えないようなブラコン振りを発揮する。

 ともあれ、そんな一人の事は後々に説明するとして、食卓を囲むのは六人の姉、そして親と言ってもいい博士。

 食卓を一緒にしていない彼は、別段ハブられている訳ではない。当然だ。むしろ彼は一人だけの弟としても、なんていうか、溺愛とかされてる。

 作者側から言わせてしまえば、彼なのに!!彼なのに!!と何度でも呪詛の言葉を抱く程度に、溺愛されている。

 

 そんな溺愛されている彼が食卓を囲んでいない理由。

 

「ユウ、おかわり」

「私も頼むわ」

「私も」

「………」

 

 もう、何て言うか、姉達の食欲がすごいのだ。

 確かに、彼が生まれる以前は、ソレはもう酷かった。食卓なんて無くて、栄養だけしか考えられていない食べ物、極めつけは全員が大概外出していると。

 そんな中、稼働時間の少なかった彼は、何故か決まった時間にキッチンに立ってしまうという謎の行動理念が既に定着していた。

 自身にわからない事にあたふたして、涙目で一番近くに居た長女のウーノに事情を説明したのは、既に何年か前になる。

 頼られた長女は冷静に、そして迅速に、彼を抱きしめてしまった事は、あえて語らない事にしよう。

 

 その後、二転三転、もちろん彼とキッチンの話では無くて、やれウーノがユウを取っただとか、やれクアットロがユウを攫っただの、やれチンクがユウに刃物を触らせていただの、大して関係ない事が続き、博士が戯れ程度に言ってしまう

「ふむ、じゃぁ、作ってみなさい」

 という言葉がなければ、先に起こる事となる事件が先送りになっていたことだろう。

 ともあれ、無事にキッチンに立ち、鍋を振るう事数時間。今までの料理とは一変した、彩鮮やかな、所謂家庭料理が机に並んだ。

 何故かやりきった感を出してホッコリしている彼。そして机に並ぶ料理達を見ながら、生唾をゴクリと鳴らす姉六人。

 

「ま、まぁ、美味そうに見えるじゃないか」

「み、見えるだけの話でしょう?」

「…では、私はいただきましょう」

「なッ!?」

 

 と、予定調和の如く牽制し合うトーレとクアットロに対し、自分だけ悠々と席に座るウーノ。そして箸を器用に使い、一口。

 咀嚼して、飲み込んだ。

 そして、何も言わずに更に箸を進める彼女に唖然とし、そして我に返ったように残り四人の姉達は各々席に座り食卓を囲むことになる。

 ようやく食べ始めた姉達に満足しながら、自身も箸をつけようと席に座った彼。

 

「ユウ、おかわりだ」

 

 そんなトーレの茶碗を差し出す手を、少し思考停止して見ながら、言われた通りに茶碗にご飯を盛る。

 盛って渡して、席につこうとした。

 

「私も、おかわり」

 

 次は眼帯をした小さな姉、チンクから茶碗が渡される。もちろん、彼は嫌な顔一つせずに茶碗にご飯を盛る。

 

「あ、アタシもよろしく!」

 

 彼は嫌な顔一つせずに、ご飯を盛る。もうなんていうか、どこぞの野菜人よろしくご飯を盛る。盛って渡せば顔を輝かされ、そして言われる不平不評。

 やれどうしてセインだけあんなに!

 やれ私にもあれほど盛れ!

 クツクツ嗤う博士を放置して、ワーワーギャーギャー騒ぐ姉達を見て彼が悟るのに、時間はいらなかった。

 

 

 あ、僕は後で食べることになるのか。

 

 そんな事があり、彼は立って、まるで良妻の如くしゃもじ装備で常に炊飯器や鍋の前にいたりする。

 

 

 

 

◆◆

 

 

 赤い炎が辺りを照らす。

 煌々と彼の中に赤い炎がゆらゆらと揺れている。

 

「ユウ、何してんの?」

「………なんだろう」

「んー?偶によく解らなくなるよね、ユウって」

「……セイン、レリックの回収は?」

「この通り終わったよ」

「……じゃぁ、先に帰ってて」

「あ、ちょっと!!」

 

 黒いフードを目深に被り、少年は炎の中に入る。

 炎はまるで彼の行く先を遮らないようにフワリと彼を避ける。

 

「…周辺防御壁なんて使えたんだ……」

 

 と関心しているセインは少しだけ考えて、冷や汗をダラダラと流す。

・ユウが目の前で消えた。

・これで怪我をさせたら自分の責任になる。

・クアットロから嫌味を言われる。

・ウーノからネチネチと、そしてクドクドお小言、それも終わらないお小言が待ってる。

 つまり、オワタ。

 

「うにゃぁぁぁぁぁあああああああ!!マズイ!!やばい!!あ、これ私殺されるんじゃない!?ていうか、あのご飯をもう食べれなくなるのは嫌だァァァァァァ!!」

 

 そんな絶叫が火事場に響く。

 頭を抱えて、ヘビィメタルバンドよろしくのヘッドバンキングをしているセイン。

 再三言うようだが、火事場である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、なんで君はこんな所にいるの?」

「え?」

 

 火事場の中泣いていた少女は彼に声を掛けられた。

 黒パーカーを着用して、フードを目深に被った少年。火事場だというのに、炎が彼を嫌った様に避けていく様はさながら彼女にとってまるで妖精の様に見えた。

 

「……そこ、崩れて危ないよ」

「あ、」

 

 フッと彼が消えたと思えば、すぐ近くにいて、腕を軽く引いている。

 彼が見上げていたのは、何かを象った柱。しっかりしているモノだ、しかし、それはぐらりと揺れていた。

 

「……まぁ、どうでもイイ事だけど」

「あのッ!!」

「……?」

「お姉ちゃんを…お姉ちゃんを助けてください!!」

 

 少女にしてみれば、自分を救うことの出来た妖精に頼んでいる感覚なのだろう。しかしながら彼は妖精でも何でもない。

 妖精でも、何でもなく、彼は単なるお人好しなのだ。

 

「……わかった」

 

 途端に彼の足元に魔法陣が描かれる。

 ミッド式の円形でも無く、かと言ってベルカ式の三角でもない、もはや知ることの出来ない歪な五角形の魔法陣。

 それは煌々と朱い光を放ち、そしてそれは数秒で止む。

 

「……じゃぁ、君はココにいるんだよ?」

 

 彼は少女に向かって指を向ける。すると座り込んでいた彼女の下に円形の魔法陣が描かれ、彼女を包む。

 その姿に満足した彼は、来たときと同じように炎の中に入っていった。

 

 

 数分後、少女は白い魔導士に助けられ、姉も助けられたが、姉は少年を見ていないという……まるで本当の妖精だと、後の親友に語る話になる事を、少女はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

「よかったぁ、これで助かる」

「……アッチの女の子助けたい」

「ほほぉ、女の子ねぇ」

「?」

「まぁいいけど、流石に顔を見られちゃいけないから私の能力で潜って行くよ」

「…了解」

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

「むぅ……」

「なによ、珍しく本を見ながら唸って」

「いやぁ、学生の時も探したんだけど、改めて探せば見つかるかなぁって」

「また例の魔法陣の話?」

「ウン!!」

 

 機動六課の一室には異常な程本が収集されている所がある。

 もちろん、その一室には主がいる訳でスバルはちゃんと許可を得てここにいる訳だ。

 

「うーん、ないなぁ」

「ある訳無いでしょ。五角形だなんて、自分で作成でもしない限り」

「五角形……?」

 

 ベッドからムクリと起き上がった紫色の髪の女性は眠そうに欠伸をして反応した。

 

「あ、月村准陸尉、スイマセン」

「いいよ、テキトウに寝れたし。ソレと階級で呼ばれるのは嫌いなんだ。身にそれほどの力があるわけじゃないし」

 

 そんな事を言いながら彼女は苦笑する。

 そんな上司を見ながら、

『ライフル片手に嗤いながら敵を墜とす様が噂されてますよー』

 とは絶対に言えないティアナも思わず苦笑い。

 

 実際、月村すずかはこの世界、魔法世界においては異端だ。

 質量兵器の形をした魔導ライフルを担ぎ、そのライフルの魔力は、空中に残留している魔力をかき集めて、圧縮したモノになる。

 ここまで聞いて管理局の人間は『そんなモノがあるのなら魔法使えない俺たちでもサイキョーなんじゃね?やったね!!』なんて思考に陥った。

 しかしながら結果は最悪。

 魔力をかき集める事が出来ないのだ。しかし、月村すずかは出来る。

 彼女としては、コツも何も無く、ただ引き金を引いているだけの話になるのだけど……ともあれそんな彼女は『オンリーワン』だとか揶揄されたりしている。

 

 さて、ココで小さなネタばらしを織り交ぜてしまうと、ライフルの製作者は『名も知れた研究者』ことアリシア・テスタロッサである。機構など、ある程度は月村すずかも手を出していいるのだけれど、原型を作成したのはアリシアである。

 ならば、設計及び理論を作成したのは誰か?表でいけばアリシアである。

 彼は多彩な事を思い浮かべ、もしかしての可能性を考えた。そして出来上がったのがその理論。彼女の意思に反応し、彼女の為だけの理論。

 もちろん、使うことがないことが一番なのだけれど、それでも彼女は使う道を選んだ。

 彼を殺した魔法という存在に触れる為に。

 

 ともあれ、話は戻る。

 武装局員として、そして研究員としてある程度の地位を保っているすずかは彼の遺品である本たちと生活している。

 知識保有とも言っていいのだけれど。

 

「五角形の魔法陣なんて…やっぱりないんですかね?」

「……本当に、見たの?」

「はい。それは確実に言えます。小さい時の記憶ですけど……朱い光の五角形でした」

「朱い……空港の火災事件の時かな?」

「あ、はい…知ってたんですか?」

「あの場所にはいなかったけど、フェイトちゃんやなのはちゃんが朱い防壁に守られたアナタとお姉さんを見てるって聞いてたから……少し詳しく聞かせてくれるかな?」

「あ、いいですよ。といっても、夢みたいな話なんですけど」

「うん、余計に聞きたくなった」

「すずかさんってこう言う話好きでしたっけ?」

「昔は結構好きだったよ?今は幻想的なものより現実的なモノばっかり読んでるけど」

 

 クスクス笑いながら、すずかはスバルの話を聞くことになる。

 フードを目深に被った少年の話を。

 

「………そっか、少年…か」

「…どうかしたんですか?」

「ううん。私の思い違いだったみたい。力になれなくてごめんね?」

「いえ、大丈夫です」

 

 グッと背伸びをしてすずかは上着を羽織る。そして更に上から白衣を羽織り、彼女は相棒である銃を担ぐ。

 

「ちょっと、メンテナンスしてくるね」

「はい、いってらっしゃい」

「たぶん、夕方には戻ると思うけど…一応なのはちゃんに言伝よろしくね」

 

 少しだけ重い足取りで彼女は自分の部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

「……」

「あぁ、やっぱりいいわぁ…」

「……」

 

 少年は抱きしめられていた。いや、うん。作者としても、どうしてこうなった非常に知りたい訳だが、ともかく、彼は抱きしめられていた。それはもうテディベアよろしく。

 事の顛末を話そう。

 別段、二万数千年前の話でも、一万五千年前の話でも、明日の話でも、昨日の話でもなく、数分前の話になるのだけれど。

 

 彼は管理局勤めの次女にお弁当を届けにきた。

 抱きしめられた。

 今ココ。

 

 ドゥーエとしては潜入諜報の多い自分が溺愛している弟に会える貴重な機会であるから、ブラコンで言われる弟分を補給しているわけなのだが……、傍から視れば、危ないお姉さんである。

 というか、クールで憧れも多いだろう秘書さんが自身の弟を抱きしめて、ハートを乱舞させている様は見ていて、なんというか、お巡りさん、あの人です。

 まぁそのお巡りさんのお偉いさんの秘書なのだけど。

 

 

 お弁当を目の前で食べられ…というか、『アーン』とかさせられたり、もう、書いていて作者が思わずファイルを消してしまいそうなので、その辺の描写は省かせてもらう。

 そんなこんなでドゥーエさんには舞台から早々に降りていただく。後ろでもっとイチャイチャさせろだとか、×××だとか、スイマセン、それ禁止用語ですなので、それ以上叫ばないでください。

 

 ドゥーエと別れ、テクテクとテキトウに、それこそ解析することもなく本局内を歩いていた彼。

 そんな前の向いていない彼と、白衣を着て長いケースを背負っている彼女がぶつかる事で、物語は加速的に進むこととなる。

 

 

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