ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
「……はい、リーリエ様、アローラリーグへの登録が完了致しました。優勝目指して頑張ってください!」
「はい!ありがとうございます!」
リーリエはラナキラマウンテンの頂上にあるポケモンリーグの会場に辿り着くと、早速受付にてアローラリーグ登録を完了させていた。
カントーリーグではジムバッジを登録することでリーグへの参加が承諾されていたが、このアローラ地方にはジムバッジが存在しない。そのため、図鑑に登録したしまキング、しまクイーンから貰える4つのZクリスタルを見せることで登録が完了する。Zクリスタルこそが島巡り突破の証、として認められるのである。
リーリエは受付を済ませると、空いているテレビ電話の元へと小走りで駆けていく。ここまできたのだから報告したい人物がいると、リーリエはその人物の電話番号を入力して通話状態にする。
暫くするとテレビ画面が映し出され、その人物の顔が映る。その人物はリーリエの顔を見ると、嬉しそうに手を振って答えた。
『リーリエ!どう?元気してる?』
「お母様!はい!この通りです!」
その人物とは彼女の母親、ルザミーネであった。少し前にネクロズマの件で会ったばかりだが、折角アローラリーグ参加への切符を手にしてここまで辿り着いたのだ。母親には連絡しておきたいという想いで急いでテレビ電話を繋いだのだ。
『ところでリーリエ、急に電話してきてどうしたの?』
「今私、アローラリーグの会場に着いたんです!」
『という事は、大試練は全部突破したってこと?すごいじゃない!さすが私の娘ね!』
「も、もう、お母様ったら……」
リーリエは恥ずかしそうに照れているが、どこかまんざらでもない様子である。以前までの状況を考えると、素直に褒められたことがなかったため心の中では嬉しいのだろう。
『私も当日はエーテル財団代表として会場にいくのよ。』
「そうなんですか。私たちのバトル、ぜひ見届けてくださいね!」
『ええ、楽しみにしているわ。あっ、それとね。』
「?はい、なんでしょうか。」
『頑張りなさいね。』
「っ!?はい!頑張ります!」
二人は軽い会話を交わしたあとに通話を切る。それだけの会話だが、母親に応援の言葉を贈ってくれたことがリーリエには嬉しかった。
母親の言葉でリーグ大会もより一層頑張ることができる、そう胸を昂らせた時、彼女の肩に誰かがトントンっと軽く叩いてきた。リーリエは誰だろうと振り返ると、そこには見覚えのある女の子が笑顔で小さく手を振って立っていた。
「リーリエさん!お久しぶりです!」
「ヒナさん!」
その人物とはかつてリーリエが出会った新米トレーナー、ヒナであった。リーリエがシンジに憧れたのと同じように、ヒナはリーリエに憧れて島巡りに挑戦する決意をした。そして今、アローラリーグにいるという事は……。
「ヒナさんも大試練、突破できたんですね!」
「はい!今アローラリーグ参加の受付を済ませてきたところです!」
「という事は、私とヒナさんはもうライバルってことですね!」
「ライバル……はい!リーリエさんと私はライバルです!」
ライバル、と言う単語の響きにヒナはトキメキのような何かを感じる。初めて憧れた人物にライバルと認められれば、トレーナーとして嬉しいと感じるのは当然だろう。
リーリエとヒナは久しぶりの再会で色々と語り合いたいこともあるだろうが、話し込むならここよりも最適な場所があるだろうと、受付の会場を後にするのだった。
「わぁ……もういっぱいの人が集まっていますね。」
リーリエとヒナがやってきた場所には、すでに大勢のトレーナーたちで賑わっていた。そこはバトルの会場でもある大きなフィールド場であった。
何故彼女たちを含むトレーナーたちがここに来たのかと言うと、これからここでリーグ大会の説明が行われるのである。どのようなルールで催されるのか、予選はどのように行われるのか、そして大会前のトレーナーたちの交流など。大会前から戦いは既に始まっている、と言うことである。
「おっ?リーリエ!」
「リーリエー!久しぶりー!」
「ヨウさん!それからハウさんも!」
リーリエを見つけ手を振りながら近づいてきたのは彼女のライバルであるヨウ、ハウの二人であった。リーリエも二人の呼びかけに答えて笑顔で手を振り迎え入れる。
「ん?リーリエ、そっちの子は?」
「は、はい!私はヒナと言います!えっと、一応大会参加者のトレーナーです!」
「そっかー。おれはハウ!それとこっちがー」
「ハウの幼馴染のヨウだ。よろしく、ヒナ。」
少し緊張気味に答えるヒナに、ヨウは少し苦笑しながら自己紹介する。ハウはいつも通りの朗らかな笑顔であるため何を考えているか分かり辛いが。
「ヒナもここまで来たってことは腕利きのトレーナーってことだろ?ライバルとしてお互い全力でがんばろうな。」
「は、はい!よろしくお願いします!」
ヨウの寛容な言葉にヒナの緊張も程よく解け、優しく微笑むヨウとハウに安心したヒナ。その時リーリエは一つ気になることを彼らに尋ねた。
「そう言えば、ミヅキさんはいないのですか?」
「ああ、ミヅキは今回審判として出るらしい。」
「それもしまクイーンの仕事だってー。」
彼女の親友でもあるミヅキの姿が見当たらなくて気になったリーリエだが、よく考えてみると今のアローラリーグは島巡りトレーナーたちに与えられた最後の試練。アローラポケモンリーグ協会に所属している扱いとなっているしまキング、しまクイーンにはアローラリーグ参加資格が与えられていないのである。
その代わり、しまキング、しまクイーンは公式から四天王への挑戦権が与えられており、四天王にはチャンピオンへの挑戦権が与えられている。アローラポケモンリーグへの申請が通りさえすればいつでも自分より上の存在へと挑戦することができる。そのため、1年に1度行われるアローラリーグ参加資格のあるトレーナーにとって、チャンピオンに挑戦できる数少ないチャンスである。このチャンスをものにするため、全てのトレーナーが死に物狂いで大会に挑むことだろう。
実際この場にいるトレーナーたちは誰もが緊張などから引き締まった顔立ちで、この大会に対しての意気込みが感じられる。
「さて、そろそろ始まりそうだな。」
時刻は間もなく夕暮れ時に差し掛かってきた。大会への受付も終了し、いよいよリーグ戦の詳細に関する説明が開始されようとしていた。
壇上に立ったのはカントーリーグ設立に貢献し、主に主催としても活躍しているククイ博士であった。ククイはマイクを手に取り、大きな声でトレーナーたちに呼びかける。
「みんなー!アローラ!!」
『アローラ!』
アローラ地方特有の挨拶から始まり、トレーナーたちはその声に返事をする。アローラには“分かち合う”と言う意味が込められており、トレーナーやポケモン、様々な生き物と生命や自然の恵みを文字通り分かち合うアローラ地方にとって、これ以上ぴったりな挨拶はない。
「今日はこの場に集まってくれて、ボクはとても嬉しく思う。島巡りを経て、様々なトレーナーと出会い、ポケモンと出会い、経験を積み、試練を乗り越え、そして今、色々な想いを重ねてこの夢の舞台に立っていることだろう。」
ククイの言葉に、島巡りを突破したトレーナーたちは今までの思い出が昨日の出来事であるかのように脳裏に過っていく。
「このアローラリーグに参加し、優勝することがみんなの願いであるのは確かなことだろう。しかし!その上で優勝したトレーナーは、アローラ初代チャンピオンへの挑戦権を得ることができる!」
その言葉にトレーナーたちの心はヒートアップしていく。アローラにおいて最も強いトレーナーであるチャンピオンに挑戦することはトレーナーとして夢見ることは当然のこと。この場にいるトレーナーは、誰もがチャンピオンへの挑戦権を目指してこの場に立っている。どんな試練であっても乗り越えて見せる覚悟が彼らにはある。
「ではアローラリーグ予選方法を発表する!」
ポケモンリーグ本部であり、最も施設が大きいとされているカントーリーグでは予選がなかったが、本来ポケモンリーグは参加人数が多すぎるため、地方によっては予選がありその予選方法が異なる場合がある。他の地方では1対1でのバトルで本戦出場を決めるリーグもあるそうだ。
「アローラリーグでは、バトルロイヤル形式を採用する!」
バトルロイヤル。他の地方では殆ど見ることの無いバトル形式で、ロイヤルドームにて行われているアローラ特有のバトルである。本来4人で行われるバトルロイヤルだが、アローラリーグではそのバトル形式を応用する形となる。
「ルールは簡単。1匹のポケモンのみを使用し、この大会に参加する全てのトレーナーでバトルをしてもらう。Z技の使用、他のトレーナーとの共闘、卑劣な手でなければどのような戦術を使っても構わない。そして16人になった時点で予選終了だ!」
現在は100人を優に超える大人数が参加している。これだけの人数が本戦で争ってしまえば出来立てでバトル会場の少ないアローラリーグでは時間がいくらあっても足りなくなってしまう。そこでアローラでも人気の高いバトルロイヤル形式を使い、一気に本戦参加の人数を絞り込もうという算段である。
「大会予選日は明日。それまではバトル前にトレーナー同士交流を深めるもよし、明日に備えて休むもよし、明日は万全の状態で大会に臨んでほしい!ボクからは以上だ!みんなの島巡りでの経験をフルに活かし、もえつきるほどのオーバーヒート級のバトルを期待しているぜ!」
『おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!』
ククイの熱い演説に熱が入ったトレーナーたちも最高に燃え上がっている。そんな意気込んでいるトレーナーたちをチャンピオン、シンジは上から見下ろし、今年のリーグ大会を今から楽しみにしているのだった。
「ふぅ……今日は緊張しました。」
「あはは、そうですね。今でも私心臓がバクバクしてます。」
ポケモンリーグが用意したホテルの一室に戻ったリーリエ。二人一部屋という事でヒナと同室となり、やっと一息つけるとフカフカのベッドに腰を下ろした。
「それにしても、参加者の皆さん強そうでしたね。」
「はい。リーリエさんはカントーリーグにも参加したことはあるんですよね?その時もこんな感じだったのですか?」
「そうですね。あの時は今以上に緊張していましたし、周りの人も自分より強そうだなって感じて少し弱腰になってました。でも……」
「でも?」
「ある人に言われたんです。バトルはどんな時でも楽しんでやった方がいい、って。その方が実力も出せるし、何より本来の自分を出し切ることができるから。」
「それって、一緒に旅をしていた彼氏さんですか?」
リーリエは当時のことをそう語りながら思い出す。その言葉をくれた彼の顔を頭の中に浮かべながら。
「だから、ヒナさんもバトルを楽しみましょう。そしてバトルロイヤルを勝ち抜いて、必ず本戦で戦いましょう!」
「は、はい!私も頑張ります!頑張って、絶対にリーリエさんと戦います!」
リーリエとヒナはお互いライバルとして、拳を突き合わせて大会での健闘を誓い合う。そして今日の緊張とこれまでの旅の疲れを癒すことに専念する。そして翌日。遂に待ちに待ったアローラリーグ大会当日がやってきたのであった。
アローラリーグ大会当日。再び参加トレーナーがバトル会場に集まり、今か今かと大会の時を待ち焦がれていた。今にも滾る炎が爆発してしまいそうな雰囲気が観客たちにも伝わるほどであった。リーリエやヒナもその一員で、緊張と同時に楽しみにも感じていた。
そして昨日の様に壇上にアローラリーグ主催、ククイ博士が立つ。さらにアローラリーグ会場全体を見渡せる一室には、アローラが誇る大企業、エーテル財団代表のルザミーネ、空間研究所の所長であるバーネット、アローラリーグ四天王であるハラ、ライチ、アセロラ、カヒリ、そしてアローラ初代チャンピオン、シンジがトレーナーたちのこれから行われる熱いバトルを見守っていた。
「ではトレーナーの諸君!ポケモンを!」
その言葉と同時にバトル開始のカウントダウンが10、9……と開始される。そのカウントダウンに合わせ、トレーナーたちは自分のポケモンたちを繰り出していった。
「お願いします!シロン!」
「行きます!ドレディアちゃん!」
『コォン!』
『ディア!』
リーリエが繰り出したのはシロン、ヒナが選んだのは以前初めてゲットしたチュリネが進化した姿、ドレディアであった。
8、7、6……
「頼む!ガオガエン!」
「行くよー!ジュナイパー!」
『ガオォ!』
『ジュッパ!』
ヨウとハウはそれぞれの相棒であるガオガエン、ジュナイパーを選択。他のメンバーも続々とポケモンを選出していき、次第にカウントダウンが進んでいく。
5,4、3……
そして遂に……
2、1……
「アローラリーグ予選、バトルロイヤル!開始!」
パァン!
空高くスターターピストルが撃ちあげられ、皆が待ちに待ったアローラリーグが開催される。ピストルの音と同時に、トレーナーとポケモンたちが一斉にチャンピオンへの挑戦権を賭けて戦いを始めるのであった。
カントーリーグと同じ展開だと面白くないと思い、アニポケ形式を取らせていただきました。メインキャラも少ないのでいいかなと。しかしバトルロイヤルは初の試みなので割と無謀かも……。
ポケモンUNITEの最終レートは2016でした。
アンケートの件ですが、自分が一番好きなブイズを選んでもらっても構いません。その中から主人公の選出ポケモンを選抜し、バトル構成を練っていくつもりですので。投票数の多い順から4匹となります。
シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)
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シャワーズ
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サンダース
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ブースター
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エーフィ
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ブラッキー
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リーフィア
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グレイシア