ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
リーリエたちが建物内に侵入し奮闘している一方、外ではコウタ、コウミの二人がRR団として暗躍していたザオボーとの戦闘を繰り広げていた。
ザオボーと共に戦っていたRR団員の下っ端たちの大半は片付けることができたが、それでもまだ数名だけ残っている。その上相手にはザオボーの操るメガフーディンまで残っている始末。いくらコウタ、コウミのパートナーがメガシンカを習得できたとしても、体力には限界がある。
メガリザードンとメガバシャーモはまだ戦闘を継続しているが、かなり長時間時間稼ぎを行っているため相当疲労を感じてしまっているようだ。二匹の額からは汗が滴り落ちており、肩で息をしていて体力が尽きてしまうのも時間の問題である。
「大人しく降参した方がいいかと思いますが……あなたがただけでは私を倒すことはできないでしょうしね。」
ザオボーは不敵な笑みを浮かべながらまだまだ余裕がある様子でそう答える。悔しいが現状を見るとザオボーの言う通り、コウタとコウミに勝ち目は低いだろう。しかしそれでも親友に頼まれた手前、ましてやポケモントレーナーとしてバトルをあきらめることなどできるはずもない。
この状況をどう覆そうかと頭を必死に回転させ打開策を考える二人。だがその時、突然彼らにとって最大の好機が訪れた。
「っ!?一体どうしたことだ!?」
ザオボーが目を見開いて驚きの声をあげていた。それもそのはず。なんと、先ほどまで周囲にいたはずのRR団員たちが突如として姿を消してしまったのだ。それもまるでここには最初からいなかったかのように跡形もなく、である。
しかし理由がどうあれ、追い詰められていたコウタたちにとってこれは好機でしかない。相手がザオボー一人であるならば、追い詰められている現状でもなんとかなると、二人は目を合わせて頷き息を合わせて攻め立てる。
「リザードン!かえんほうしゃ!」
「バシャーモ!かえんほうしゃ!」
『ザァド!』
『バッシャ!』
「くっ!?フーディン!サイコキネシスです!」
『フディ!』
リザードンとバシャーモは同時にかえんほうしゃを放った。同時に放たれたかえんほうしゃは交差して威力を増す合体攻撃となるが、相手もまたメガシンカし能力が大幅に上昇している。サイコパワーが増したサイコキネシスでかえんほうしゃを打ち消した。だがその隙を見てバシャーモが即座に動き出していた。
「バシャーモ!ブレイズキック!」
『シャモッ!』
バシャーモはかき消された炎から飛び出し燃え盛る脚で蹴り抜ける。フーディンはサイコパワーで自身を空中に浮かせることでその攻撃を回避するが、その先にはリザードンが先回りして攻撃の構えを取っていた。
「リザードン!ドラゴンクロー!」
『ザァ!』
『フディ!?』
リザードンは鋭く尖ったツメでフーディンを切り裂いた。双子の息の合った連携攻撃によって、フーディンは地面に叩きつけられ大きなダメージを受ける。メガシンカしたとしてもフーディンは耐久力の低いポケモンであるため今の一撃だけで瀕死の重傷を受けてしまう。
「なっ!?フーディン!?」
「今だ!リザードン!」「バシャーモ!」
『かえんほうしゃ!』
再びリザードンとバシャーモのかえんほうしゃがフーディンに襲い掛かる。瀕死の重傷を受けたフーディンは当然回避することができず、パートナーであるザオボーとともに大きく吹き飛ばされていた。
フーディンは大きく吹き飛ばされ戦闘不能となったことによりメガシンカが解除される。また、フーディンに指示を出していたザオボーもまたフーディンとともに目を回して倒れていたのだった。
「よし、なんとか片付いたな。」
「でもどうして急に他の人たちが消えたんだろう。」
その答えは当然コウタにも分かるはずがない。しかし状況としては間違いなくこちら側にとっては好都合であるためそれ以上考えることなく、建物内部へと侵入していくのだった。
「こ、このポケモンさんたちは……!?」
リーリエとヒナの前に現れたのは超古代ポケモンと呼ばれているホウエン地方より伝わる伝説のポケモン、グラードンとカイオーガであった。通常のポケモンとは異なり、対峙しているだけで押しつぶされてしまうのではないかと錯覚してしまうほどの威圧感を二人は感じている。
「こ、こんなのが相手なんて……。」
ヒナはまさかのポケモンが登場したことで戦意を失いかけるが、今は一人ではない、大切なものを守らなければならないと思い留まり頭を横に振ってネガティブな思考を振り払う。そんな彼女の覚悟にアオギリはガッハッハと大きく笑っていた。
「中々度胸があるじゃねぇか嬢ちゃん。だが手加減はしねぇぜ?だから嬢ちゃんたちも全力で掛かってきな?」
アオギリは昂ってきたのかリーリエとヒナに対して挑発する。そんなアオギリのことをマツブサは『相変わらずだな』と呆れ気味に呟いていた。
相手が伝説のポケモンであるならばリーリエたちも手加減などできるはずもなく、新たなポケモンが入ったモンスターボールを手に取り投げる。
「お願いします!カイリューさん!」
『バオウゥ!』
「ドレディアちゃんもお願いします!」
『ディィア!』
リーリエはフシギバナに加えカイリューを、ヒナはアマージョに加えてドレディアを繰り出した。それでも相手はあの伝説のポケモンだ。4対2であっても勝てる保証などない。しかし囚われているルザミーネやエーテル財団の人たちを助けるためにリーリエとヒナも退くわけにはいかない。
「グラードン、だいもんじ!」
『グルオオオオォォォ!!』
「カイオーガ!れいとうビーム!」
『キュオオオオォォォン!!』
グラードンとカイオーガの同時攻撃がリーリエたちのポケモンへと襲い掛かる。回避することには成功するが、着弾した衝撃が全員に襲い掛かりそれだけでも伝説のポケモンたちのとてつもない力が肌に直接伝わってきた。
「カイリューさん!グラードンさんにしんそくです!」
『バウゥ!』
「アマージョちゃん!カイオーガにトロピカルキック!」
『アッジョ!』
カイリューのしんそく、アマージョのトロピカルキックがグラードンとカイオーガに直撃する。攻撃力は凄まじいものがあるが、体がデカい分機動力には少々難があるのか動きは少々鈍いようだ。もしくはここが自分たちにとってのホームじゃないから本領を発揮できないのか。
しかしそれでも相手は伝説のポケモン。特にカイオーガに至っては効果抜群の技を喰らっているのにもかかわらず、少し怯む程度で対してダメージを受けている印象は見受けられない。
「ハンッ!カイオーガ!げんしのちから!」
「グラードン、ほのおのパンチ!」
カイオーガはげんしのちからに巻き込むことでアマージョを振り払い、グラードンはほのおのパンチでカイリューを殴り飛ばす。その威力は相当なもので、あのカイリューでさえも軽くあしらわれてしまうほどの攻撃力であった。
だがその間にフシギバナの準備は終わっており、大技を放つ態勢に移行していた。
「フシギバナさん!ソーラービーム発射です!」
『バァナァ!!』
フシギバナは蓄積させたソーラービームの光を一気に解き放つ。強力なソーラービームはグラードンに突き刺さる。しかしグラードンはその攻撃に怯むことなく押し返して歩みを進めた。まさかのその光景にはリーリエ達も驚かずにはいられなかった。
「だいもんじで迎え撃つのだ!」
グラードンはだいもんじでソーラービームを正面から対抗してくる。威力の差は歴然で、フシギバナのソーラービームがだいもんじによって反射されてしまう。そしてグラードンのだいもんじによってフシギバナは焼かれ吹き飛ばされてしまった。
「っ!?フシギバナさん!」
『ば……なぁ……』
フシギバナは力尽きて倒れてしまう。伝説のポケモンであるグラードンのだいもんじが直撃してしまったため戦闘不能になっても仕方がないと言える。しかしそれでもフシギバナが一撃で戦闘不能になってしまうのは予想外であり、それは伝説のポケモンの攻撃力が途方もないことの証明であった。
「お疲れさまでした、フシギバナさん。」
「リーリエさん!くっ!ドレディアちゃん!はなふぶき!」
『ディアァ!』
ドレディアはフシギバナの仇を取るべくはなふぶきを放った。その攻撃はまるでフシギバナを倒された怒りをぶつけるかのように荒々しく、グラードンとカイオーガに襲い掛かった。
グラードンとカイオーガも遂に顔色を歪めて苦しみ始めた。しかし次の瞬間彼らは目を見開き、大きく咆哮することではなふぶきの攻撃をかき消した。それと同時に咆哮の衝撃が広い範囲に響き渡り、カイリュー、アマージョ、ドレディアをも巻き込む攻撃と化したのだった。
「なっ!?カイリューさん!」
「ドレディアちゃん!アマージョちゃん!」
二人は自分のポケモンに呼びかける。ダメージはかなり負ってはいるが自分のトレーナーの声に応じて何とか立ち上がる。それでも立ち上がることがやっとであり、これ以上戦うのも限界に近い状態であった。
「悪くはなかったが、俺のカイオーガには及ばなかったな。」
「殆どやったのは私だが……まあいい。そろそろ終わりとしよう。」
「カイオーガ!こんげんのはどう!」
「グラードン!だんがいのつるぎ!」
カイオーガとグラードンが同時に構えパワーを溜める。両者が持つ最大の大技、こんげんのはどうとだんがいのつるぎによるプレッシャーと振動がリーリエたちに襲い掛かり、万事休すかと思われた。
しかし同時に解き放たれたその技はカイリューたちにヒットする前にお互いの技が交わってしまい大きな衝撃と共に爆ぜ散ってしまった。
「おいマツブサァ!てめぇ邪魔してんじゃねぇぞ!」
「邪魔なのはお前だアオギリ。先ほどから私の邪魔ばかりしているのはお前だろう。」
「ああ?てめぇ、喧嘩売ってんのか?だったら今日こそ決着つけてやんぞ?」
「奇遇だな。私もこれ以上君と慣れ合うつもりはない。どちらが正しいか決着を着けようではないか。」
そうして二人はリーリエたちを無視して火花をぶつけ合う。やられてしまう直前で注意が逸れ助かったのはいいものの、ここからどうするべきかと悩むリーリエ。しかし次の瞬間に突如として異変が訪れた。
なんと一瞬にしてマツブサ、アオギリの姿が消えてしまったのだ。それと同時に彼らを追うかのようにグラードン、カイオーガの姿も見当たらなくなってしまう。一体何が起きたのか脳の処理が追い付かない二人だが、なんとか助かったのかと安堵したのと同時に疲労が蓄積しその場に座り込んだ。
「……はぁ、なんとか助かったみたいですね。」
「一時はどうなることかと思いました。」
運が悪ければ敗北し最悪の結果となってしまっていた今のバトル。相手が悪かったとはいえまだまだ自分の実力不足だなと自らの未熟さを改めて実感する。そしてバトルが終わったのと同時に扉が開かれ、そこからは時間稼ぎをしてくれていたグラジオが姿を現した。
「リーリエ!ヒナ!」
「お兄様!?大丈夫でしたか!?」
「こっちはなんとかな。急にRR団が姿を消して驚きはしたが。」
「お兄さんもですか。実は私たちもそうだったんです。」
「そうなのか……」
いまいち状況が飲み込めなかったグラジオだが、今はともかく目の前の物事を解決する方が先決だと、リーリエとヒナの手をとって立ち上がる援助をした。
その後、奥の机を確認すると一つのカードキーを発見した。それが恐らくルザミーネのいる部屋への鍵だと判断すると、それをグラジオは手にし振り返った。
「カードキーは入手した。急いで戻るぞ。」
『はい!』
グラジオ、リーリエ、ヒナはルザミーネの救出を急ぐべく最初の部屋へと戻るのであった。
一方、リーリエとヒナがグラードン、カイオーガと対峙していた頃、ミヅキ、ヨウ、ハウの三人もまた伝説のポケモンであるパルキア、イベルタルと対峙していたのである。
「これが……伝説のポケモン……。」
ミヅキが伝説のポケモンのプレッシャーを肌で感じてそう呟いた。以前彼女たちも日輪の祭壇にてネクロズマと対面した経験はあるが、それでもやはり伝説のポケモンが纏っている途方もないプレッシャーには慣れることはない。
だがそれでも彼女とてアローラを代表とするしまクイーンの一人。伝説のポケモンに臆して退くことなどできるはずもなく、パートナーのアシレーヌ、そして一緒に戦ってくれるヨウ、ハウたちとともに伝説のポケモンと向かい合った。
「心意気は見事だが……恐怖を感じているのだろう?」
『っ!?』
「感情があるから人は恐怖を覚える。感情があるから人は悲しむ。君たちの中にある感情、私たちが抹消してあげよう。パルキア、ハイドロポンプ。」
まるでこちらの感情を見透かしているかのように淡々と語るアカギ。彼は自らの目的を遂行するため、伝説のポケモンパルキアに指示を出した。通常のハイドロポンプとは比にならない威力の攻撃がアシレーヌたちに襲い掛かるが、彼女たちはその攻撃を寸でのところで回避する。
「君たちのように勇気あるトレーナーを壊すのは私としても心苦しい。だが我々の目的のために、消えて貰おう。イベルタル、あくのはどう。」
続いてフラダリがアカギとは対照的に少し悲し気な声でイベルタルに指示を出していた。イベルタルのあくのはどうが地を割きながら襲い掛かった。パルキアの攻撃を避けた直後であったためあくのはどうまでは避けることができず、アシレーヌ、ガオガエン、ジュナイパーは薙ぎ払われ吹き飛ばされてしまった。
「アシレーヌ!」
「ガオガエン!」
「ジュナイパー!」
三人の呼びかけに答えて起き上がるアシレーヌたち。直撃を受けたわけではないためダメージは思ったほどなく、まだまだ戦う元気はあるようだ。
「なら今度はこっちから!アシレーヌ!うたかたのアリア!」
『シレェヌ!』
アシレーヌのうたかたのアリアがパルキア、イベルタルの頭上から襲い掛かる。しかし伝説のポケモンに対してそう簡単に攻撃が通るわけもなく。
「イベルタル、ぼうふう。」
イベルタルの強烈な羽ばたきによってうたかたのアリアは文字通り泡となって消滅した。だがミヅキたちの攻撃はそれだけでは終わらなかった。
「ジュナイパー!かげぬいー!」
『ジュパァ!』
ジュナイパーのかげぬいがパルキアの影を捉え動きを封じる。今がチャンスだと、最後に動き出したのはヨウのガオガエンであった。
「ガオガエン!DDラリアット!」
『ガオゥ!』
ガオガエンは回転しながら動きを止めたパルキアにDDラリアットによる攻撃を仕掛ける。今ならば攻撃が通るだろうと確信していたヨウたちだが、そうは問屋が卸さなかった。
「パルキア、あくうせつだん!」
『ギュルオオオオォォン!!』
『ガオォ!?』
パルキアはあくうせつだんによって空間に歪みを生じさせ、かげぬいを振り払いDDラリアットを弾き返した。パルキアはシンオウ時空伝説において空間を司ると言われている伝説のポケモン。かげぬいなどで止まるほど優しい相手ではなかった。
「っ!?くっ、強い!」
伝説のポケモンと言われるだけはありまるで歯が立たないと悔しがるヨウ。しかしその裏ではポケモントレーナーとして、こんなに強い相手と戦えるのが嬉しいと思ってしまう自分もいる。それは同じポケモントレーナーであるミヅキ、ハウも同じ気持ちであった。
だが相手は普通のポケモントレーナーではなく悪事を働く非道なトレーナーだ。フラダリは容赦することなく、イベルタルに指示を出して追撃を仕掛けてくる。
「イベルタル、デスウィング。」
『ギュルウウウウゥゥゥ!!』
イベルタルはあくのはどうに続き今度はデスウィングで破壊の限りを尽くしてくる。カロス地方において破壊の化身と言い伝えられているイベルタルの攻撃は、まさにその名を象徴するかのような威力を誇っていた。
さすがにこれはマズイと、ミヅキとアシレーヌが先に動き出す。
「アシレーヌ!ムーンフォース!ライチュウ!あなたもエレキボールで援護お願い!」
『シレェヌ!』
『ライライ!』
アシレーヌだけでは無理だと判断したミヅキはライチュウも繰り出しエレキボールでの援護を頼んだ。二体の攻撃となんとかデスウィングを抑え込むことに成功し、今の内だとヨウとハウに呼びかける。
ヨウとハウは呼びかけに頷いて答え、チャンスなら今しかないと同時に同じ構えを取る。
「行くぞ!ガオガエン!」
『ガォウ!』
「おれたちも行くよー!ジュナイパー!」
『ジュパァ!』
ヨウとガオガエン、ハウとジュナイパーをZパワーのオーラが纏い繋がる。互いの気持ちが一つとなり、内から湧き上がる力を膨れ上がらせる。
「俺たちの全力!」
「受けてもらうよー!」
そしてヨウとハウは全力のZ技を解き放った。
――ハイパーダーククラッシャー!
――シャドーアローズストライク!
ガオガエンのハイパーダーククラッシャーがパルキアに、ジュナイパーのシャドーアローズストライクがイベルタルに襲い掛かった。両者の攻撃は伝説のポケモンの身体を貫き、確実に大きなダメージを与えているのが分かるほどパルキアとイベルタルは大きく仰け反っていた。
明らかにダメージは通っている。しかしそれでもパルキアとイベルタルは倒れることなくその場で踏みとどまっていた。伝説のポケモンの名は伊達ではない、と言うのは間違いないがそれでもこれほどタフネスだとは正直誰も思ってはいなかった。
「素晴らしい一撃だった。しかしそれでも私のパルキアを倒すことはできなかったようだな。」
「我々を倒すにはまだまだだ。我がイベルタルの本気の力、とくと味わわせてやろう。」
彼らとの戦いはまだまだこれから。だが三人は先ほど使用したZ技によって体力を消耗してしまっている。パルキアとイベルタルが本気を出したら果たして勝てるのだろうか?いや、まず勝ち目などゼロに近い。満身創痍な彼らでは満足に戦うこともできないだろう。
これ以上は厳しいか、と半ば諦めかけた頃、アカギとフラダリの身体が突如として光りだした。
「っ!?これは……」
「一体なにが……」
本人たちが疑問に思った刹那、二人の姿が突如としてこの場から消え失せた。それと同時に彼らの操るパルキア、イベルタルの姿も同時に消え去っていたのだった。
一体なにが起きたのかと疑問に思うミヅキたちだが、それ以上にZ技の反動と緊張感の解放からどっと疲れが訪れて三人はその場にへたり込んだ。
「疲れたー!」
「全くだな……ここまでしんどい相手は初めてだぞ……。」
「はぁ……ってそうだ!ビッケさんたちは!」
当初の目的を思い出し、ミヅキはビッケたちを探し始める。奥にはもう一室の部屋があり、そこには気を失って倒れているビッケとその他の財団員たちの姿があった。
「ビッケさん!起きてください!」
「んっ……ミヅキちゃん?それにヨウくん、ハウくんも?」
「よかった、無事だったんですね。」
「大丈夫ー?立てなかったら肩貸しましょうか?」
「いえ、大丈夫よ。三人とも助けに来てくれたのね。ありがとう。」
ビッケは助けてくれた三人に感謝する。ミヅキは現状を把握しきれていないビッケに事のあらましを説明する。その説明で理解したビッケたちは三人に協力すると、エーテルパラダイスの機能を修復するために別れたのであった。
ミヅキたちはこの場所の安全を確認すると、急いでみんなと合流するために元の広間へと帰還するのであった。
そして彼女たちが伝説のポケモンを撃退した頃、シンジはRR団の下っ端たちと交戦を続けていた。
「ブースター!かえんほうしゃ!サンダース!10まんボルト!シャワーズ!ハイドロポンプ!」
『ブスタ!』
『ダース!』
『シャワ!』
ブースター、サンダース、シャワーズの合体攻撃で一気にRR団員たちのポケモンを蹴散らした。しかしそれでも数だけは一丁前に多く、シンジも苦戦を強いられていた。
「っ、早くエーテルパラダイスに行きたいのに、次々と沸いてくる。面倒くさい人たちだよ本当に!」
一向に数が減らないRR団に対し嫌気がさし珍しく悪態を吐く。このままではただただ体力と時間だけが蝕まれてしまい問題を解決することができない。
一体どうすれば、と悩むシンジだが、そんな彼の希望の光が差し込んだ。彼に襲い掛かったRR団のポケモンを第三者が吹き飛ばしたのである。その第三者は大きな巨体を持っておりまるで関取の様な見た目。紛れもなくハリテヤマと言うポケモンであった。そしてそのポケモンを操るトレーナーと言えば一人しかいないであろう。
「ハリテヤマ!つっぱりです!」
『ハァリィ!』
ハリテヤマのつっぱりが敵を一掃していく。だがRR団を倒しているのはハリテヤマだけではなかった。
「ルガルガン!ストーンエッジ!」
『ガウゥ!』
「シロデスナ!シャドーボール!」
『スゥナァ!』
「ドデカバシ!タネマシンガン!」
『カバシィ!』
ハリテヤマの他に真夜中の姿をしたルガルガン、シロデスナ、そしてドデカバシが次々と敵のポケモンをなぎ倒していく。状況を理解したシンジが振り向くと、そこには四人の頼もしい仲間が立っていたのだった。
「すみませんなチャンピオン。我々も倒すのに少々時間が掛かってしまいました。」
「いやぁー、こっちにもやたらと数だけ多いチャレンジャーが挑んできてねー。」
「でも正直腕前は大したことなかったからアセロラたちだけでなんとかなったよ♪」
「あなたは行くべき場所があるのでしょう?ここは私たちに任せて向かってください、チャンピオン。」
四天王であるハラ、ライチ、アセロラ、カヒリである。シンジに引けを取らない実力者であり、彼にとっても信頼を寄せている仲間たちである。自分たちのところにも来たであろうRR団たちを処理し、シンジの援軍に来てくれたのである。
四人はシンジの前に立ち早く行くように促し道を切り開いた。そんな彼らに感謝し、シンジは自分のポケモンたちとともにRR団たちを振り切って駆け抜ける。その先で待機していたヘリコプターに乗り込み、急いでエーテルパラダイスへと向かうのであった。
(待っててみんな。僕もすぐにそっちに向かうから。)
本来は2話かけてグラードン&カイオーガ、パルキア&イベルタルの戦いを別々に書こうと思ったのですが、あんまり長引かせたくないので一話に纏めました。一気に凝縮したため結構なハイペースで戦闘が進みましたが、強力な伝説のポケモンを相手にすると長時間戦った場合戦況がかなり厳しくなりそうと思ったので結果的にこれでよかったのかなと。
ポケモンSVの発売まで残り一週間となりましたが、皆さんのパートナーは内定確定しているでしょうか?新ポケモンも色々と公開されているので、新しいポケモンとの出会いも楽しみにしながら発売を待ちましょう!
因みに私は当然SV両方予約してます。