ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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ブルーノ、お前だったのか!


女の戦い!リーリエvsブルー!

旅を続けていたシンジとリーリエ。変わった出会いではあったが、ブルーと言うトレーナーと出会い翌日。リーリエとブルーがポケモンバトルで対決することとなった。どういった経緯で戦うこととなったかは知らされなかったシンジだが、トレーナーがバトルする理由に口出しするのは無粋であると考えているため問いかけることはしなかった。

 

「最初から全力で行くわよ。」

「はい!絶対に負けませんから!」

 

ブルーとリーリエは互いにポケモンセンターにあるバトルフィールドにて向かい合う。公の場であるため数人のギャラリーは存在しているが、二人にとってそれは少しの雑音にしか過ぎない。シンジは知らないが、これはある種の女の戦いでもあるのだから。

 

「じゃあ今回は僕が審判をするよ。ルールは一対一の一本勝負。どちらかのポケモンが戦闘不能、もしくは危険だと判断した場合バトルを終了する。二人とも、準備はいい?」

 

審判としてルールを確認するシンジの言葉に、二人は問題ないと首を縦に振る。二人の準備が整ったと判断したシンジは、一呼吸おいて合図を出す。

 

「それでは……両者!ポケモンを!」

 

まるで公式試合の様に合図をするシンジの言葉と同時に、リーリエとブルーは自分のポケモンを繰り出す。

 

「お願いします!フシギソウさん!」

「頼むわよ!ブルー!」

『ソウソウ!』

『ブルゥ!』

 

リーリエはフシギソウを、ブルーはブルーを繰り出した。リーリエはポケモンの詳細を確認するために

ポケモン図鑑を取り出す。

 

「あのポケモンさんは……」

『ブルー、ようせいポケモン。怖い顔をしているが、実は臆病で懐きやすい性格。遊ぶことも大好きで、そのギャップから女性に人気が高いポケモン。』

 

詳細が分かったところでリーリエはポケモン図鑑をしまう。

 

「どう?あたしと同じ名前のポケモンは?可愛いでしょ。」

「はい。そのブルーさんもトレーナーに懐いていると言う事がよく伝わってきます。」

 

ポケモン図鑑が言うことは正しいのだと改めて再認識するリーリエ。それに先日の戦いを見ていたため、ブルー自身が強いと言う事は前もって知っている。可愛いポケモンであろうと油断は出来ないと、気を引き締めて前を向く。

 

「ではバトル始め!」

 

シンジの合図に合わせ、リーリエは動き出そうとフシギソウに指示を与えようとする。しかしその時、フシギソウは足が竦んだように怯んでしまった。なぜ動きが止まってしまったのかとフシギソウに尋ねようとするが、その時にブルーの特性を思い出した。

 

「そう言えばブルーさんの特性は“いかく”!」

「ご明察。」

 

ブルーはドヤ顔でそう答える。いかくは、場に出るのと同時に相手の攻撃力を下げる厄介な特性だ。攻撃力は主に物理技の威力に関係してくる。フシギソウの技は殆どが物理技であるため、この特性によるハンデはかなり大きいものだろう。だが、まだ始まったばかりの戦いを不利だからと言って諦めるリーリエではない。この不利な状況をどう打破するか、それともこのままブルーに軍配があるがるのか。シンジも含めた周りのトレーナーたちも楽しみにしながら眺めている。

 

「行くわよ!たいあたり!」

「こちらも負けません!とっしんです!」

 

先ずはあいさつ代わり、相手の強さを確かめるために正面からぶつかり合う。普段であればたいあたりよりも威力の高いとっしんの方が有利であり、進化して攻撃力も上がっているフシギソウの方が押し返す力が強いだろう。しかし今回に限っては話は別だ。いかくによる攻撃力の減少が響いてきて、次第にパワー負けをし弾き返されてしまう。

 

「フシギソウさん!?」

 

弾き返されたフシギソウは倒れることを拒絶し、なんとか態勢を崩さずに持ちこたえる。そのフシギソウの姿にリーリエはホッと息を吐く。

 

「中々やるわね。でもまだまだ行くわよ?かみつく攻撃!」

 

そう言ってブルーは再び(ややこしいが)ブルーに攻撃の指示を出す。ブルーは鋭い牙をむき出しにし、フシギソウ目掛けて飛びかかってくる。その可愛い顔とは裏腹に、先ほどのたいあたり同様威力はかなりのものだろう。リーリエは慌てては敵の思う壺と、以前の敗北の経験を活かし冷静の対処しようとフシギソウに指示を出す。

 

「やどりぎのタネです!」

 

攻撃力の下がった現状、無暗に攻撃を加えても先ほどの様に弾かれて逆効果となってしまう可能性が高い。そう考えたリーリエの一手はやどりぎのタネだ。この技であれば攻撃力の変化に関係なく、相手にダメージを与えることが可能である。その上、ダメージを受けているフシギソウの体力も少しとは言え回復できるため一石二鳥と言うわけだ。

 

フシギソウは背中の成長した立派なタネから小さなタネで迎え撃つ。フシギソウに噛み付こうと飛びかかっているブルーは当然避けることが出来ず、タネが直撃してしまう。ブルーに接触したそのタネはすぐさま成長し、ツタがブルーに全身に絡みつき体力を蝕む。

 

ブルーは前日のカメールほど戦いなれておらず、慣れていない状況に追い詰められ焦ってしまう。しかし、自分のトレーナーであるブルーの声を聞き、冷静さを取り戻した。

 

「落ち着いてブルー!それはあくまで体力を奪われるだけよ。体力が尽きるまでに決着をつけましょう!」

 

自分のトレーナーであるブルーの声に頷きブルーは期待に応えようと決意をする。トレーナーを信頼するポケモンほど強いもの、恐ろしいものはない。リーリエもそのことはヤマブキジムでの戦いで知っている。だからこそ一切の油断はしないようにフシギソウに呼びかける。フシギソウも共に全力で戦い敗北してしまったために、信頼するトレーナーであるリーリエの期待に背かない様にと自らも気合を入れる。

 

「フシギソウさん!つるのムチ!」

 

左右から出したつるのムチはブルーに接近する。態々確実性の高い葉っぱカッターでなくつるのムチを選択した理由は、はっぱカッターにより折角のやどりぎのタネを切ってしまうと言う最悪の結果を避ける、それを考慮してのリーリエの考えでもあった。しかし、ブルーは先ほどの焦りから一変し冷静に回避する。トレーナーであるブルーもその様子に安心し、反撃の指示を出す。

 

「れいとうパンチで反撃!」

 

腕に冷気を纏ったブルーはフシギソウ目掛けて振り下ろす。フシギソウも攻撃を躱された事により隙が生じ、回避が遅れブルーの攻撃が命中してしまう。

 

れいとうパンチは氷タイプの技であり、草タイプであるフシギソウには効果抜群の技である。さっきのたいあたりとは違い明確なダメージをあらわにしてしまう。れいとうパンチは相手をこおり状態にしてしまう強力な追加効果も併せ持っている。そのことを前もって知っている知識から、リーリエは最悪の状況にならなかったこと、それと同時に立ち上がり戦闘意欲を失っていないフシギソウの姿に一安心する。こおり状態になってしまっては事実上の敗北となってしまうからだ。

 

「効果の高い技を受けても諦めずに立ち上がる……ね。良く育てられているみたいね。」

「ありがとうございます。」

 

戦闘中とはいえ、自分のポケモンが褒められ嬉しさのあまり礼を言うリーリエ。しかしそれとこれとは話が別と、戦闘態勢を解くことは一切見せない。油断のならない相手だと自分でも分かっている。それに、気持ちを一瞬でも緩めてしまえば、その時点で敗北へと繋がってしまう。自分はまだまだ未熟だと理解しているからこそだろう。

 

ベテラントレーナーになればなるほど、逆に余裕が生まれ、やがて慢心、油断へと繋がってしまう。それが一番の不安要素であり、トレーナーとポケモンにとっての最大の敵だ。ここにいるトレーナーたちもそのことを理解し、勉強になると納得している。

 

反撃をしたブルーだが、やどりぎのタネによる継続ダメージによって再び体力を(むしば)まれていく。フシギソウの体力も僅かではあるが回復し、ブルーにもダメージを与えられているため少しの余力は残ったようだ。

 

(必ず攻めるチャンスはやってきます。それまで堪えてください!)

 

心の中で自分の思いに答えようと頑張ってくれているフシギソウにそう呼びかける。フシギソウもそんなリーリエの思いに気付いたのか、態勢を整え、いつ攻められても対応できるように身構える。

 

「まだまだこれからよ!ブルー!たいあたり!」

「負けません!もう一度つるのムチ!」

 

一直線に突撃してくるブルーをフシギソウはつるのムチにより押さえつける。攻撃力が下がっていて傷を負っているフシギソウではあるが、怒涛の攻撃によりスタミナが少なくなり、やどりぎのタネによって体力が削られているブルーにも当然疲労の色が伺える。最初に繰り出したたいあたりに比べ、威力が明らかに落ちてきているため間違いはないだろう。現にフシギソウのつるのムチを弾き返すどころか、押さえつけられたまま身動きが取れない状態だ。その拮抗状態に、リーリエはチャンス到来と感じ、新たな指示を出す。

 

「フシギソウさん!そのまま離してください!」

 

フシギソウはリーリエの指示に従い、つるのムチを引っ込めブルーを解放する。するとブルーは勢い余って転んでしまう。トレーナーであるブルーは思わず「うそっ!?」と言ってしまい、驚きの表情を浮かべてしまう。

 

リーリエの狙いは、ブルーのスタミナ消耗によるミスを誘うことだ。スタミナが無くなり、拮抗状態に持ち込まれれば、どのようなポケモンでも力任せに押し切ろうと考えてしまう。戦い慣れていないポケモンや経験が浅いポケモン、トレーナーはそういった傾向が特に強く出てしまうだろう。全日に戦ったカメールの動きを見ていたからこそこういった判断に持っていくことが出来た。対するリーリエは、以前にシンジの戦いぶりを幾度となく見てきたため戦い慣れこそしていないものの、経験は新人トレーナーに比べれば豊富な方だろう。更に本を読み常に予習をしているため基礎知識も備わっている。ヤマブキジムにおいての想定外な事態を除けば、一般のトレーナーにも引けを取らない。本人の性格上、リーリエ自身はその事を自覚してはいないだろうが。

 

「今です!はっぱカッター!」

 

すかさずフシギソウははっぱカッターを繰り出す。無数に放たれたはっぱカッターはブルー目掛けて飛んでいき、態勢を崩してしまったブルーに難なく命中する。やどりぎのタネは鋭いはっぱカッターにより切り裂かれてしまったが、ブルーには確実に致命的なダメージを与えることに成功した。

 

「ブルー!?」

 

ブルーの叫び声に対し、ブルーはボロボロになりながらも立ち上がろうと踏ん張る。しかしそこで、シンジによる一声によりバトルに集中していたブルーとリーリエはハッとなる。

 

「そこまで!」

「なんで!?あたしもブルーもまだ!?」

 

シンジは視線でポケモンのブルーの方を指し示す。ブルーとリーリエがブルーの方に目をやると、ブルーは力が抜けたように膝をつく。戦闘不能とまではいかないものの、これ以上戦うことは困難だと言う事が伺える。ブルーも自分のポケモンが傷つき限界に近いことに気が付くと、慌ててブルーの元まで駆けつける。

 

「だ、大丈夫!?」

 

自分のトレーナーの声に気が付き、抱かれた状態でブルーは安心したような笑みを浮かべる。それと同時に、力のない声で申し訳なさそうに謝る。自分を信じてくれたトレーナーの期待に応えることが出来なかったのが悔しいのだろう。そんな自分の大切なポケモンの意志を感じ取ったのか、ブルーは首を横に振った。

 

「あたしの方こそごめんなさい。あなたが限界に近いのに、私はそれに気づいてあげられなくて。これじゃトレーナー失格よね。」

 

ブルーは自分のトレーナーに「そんなことはない」と言いたげな眼で微笑み、ゆっくりと首を振る。そんな姿を見たブルーはお礼を言いながら「お疲れ様、ゆっくり休んで」と労いの言葉をかけてモンスターボールへと戻す。

 

フシギソウも同じく力が抜けたようにぐでっと広がる。ダメージだけで言えばフシギソウの方が大きいだろう。だがこの戦いは経験の差が勝敗を大きく分けた。次があるかどうかは分からないが、次戦った時に勝てるのかどうか不安になるリーリエだが、今は懸命に戦ってくれたフシギソウに感謝するべきだろうと頭を撫で、モンスターボールへと戻す。

 

「今回はあたしの負けね。」

「ブルーさん……。」

「けど……次は負けないから!」

 

ブルーの眼には当然悔しさの気持ちも込められている。だがそれ以上に、次はライバルに絶対に負けないと言う悔しさを糧とした感情の方が強く宿っているように思える。そんな感情を抱き、ブルーは手を差し出す。リーリエもブルーの感情を感じ取ったのか、ブルーの手を握り締め握手に応じた。そんな熱い戦いを見せてくれた二人の姿に称賛の意味も込め、周囲のトレーナーたちも拍手の喝采を送る。

 

「い、いつの間にかこんなに人が集まっていたんですね。」

「そ、そうみたいね。」

 

どうやら二人はバトルに熱中しすぎて今の状況に気付かなかったようだ。それほどまでに接戦を繰り広げていたのだろう。だが昨日の敵は今日の友。ブルーとリーリエはライバルとして全力で戦ったが、その中には互いに友情が芽生えたようにも感じることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう行っちゃうんですか?」

 

傷付いたポケモンたちをポケモンセンターにて回復させた一行は、遂にブルーと別れようとしていた。

 

「ええ。今回はまだまだあたしが未熟だって事を思い知らされたわ。もっともっと精進しないとね。」

 

今回の2回連続での敗北は、ブルーの心に新たな決意を生み出す結果となったようだ。これは強力なライバル出現と言う状況に緊張するリーリエだったが、それ以上にワクワクした気持ちで一杯だった。これも一人のポケモントレーナーとしての性と言うやつだろう。

 

「それに……」

 

ブルーはそこで言葉を区切り、リーリエの隣にいるシンジをチラリと横目で見る。どうしたのか分からなかったシンジは首を傾げるが、ブルーはそんなシンジに微笑みかけて言葉を続ける。

 

「あなたには負けられないからね、リーリエ。」

 

バトルの事もあるだろうが、それには別の意味も含まれているのだろうと悟るリーリエ。そんなブルーに、リーリエも一言返す。

 

「私も負けません!絶対に!です!」

 

力強くそう宣言するリーリエ。自分のライバルであるトレーナーなのだからそうでなくては困る、と心の中で答える。そしてブルーは「またどこかで会いましょう」と別れを告げ振り向き、自らの旅を続けることにした。

 

「絶対に負けませんから……。」

 

リーリエは小さく呟き、手をギュッと握りしめる。次に会った時、どれほど強大な相手として立ち塞がるのか不明だが、それでもバトルでも……女の戦いでも負けられないと強く誓う。そしてシンジと共に、次なる目的地へと旅を続けるのだった。




ブルーとブルーとかややこしい……。いや、書いたのは自分だけどさ。

と言うわけでライバル対決はリーリエが制しました。とは言え最初はいつも通りどういう展開にするか全く考えてなかったんですけどね。最近では他の小説でも見ながら勉強(?)して書いていますけども。勉強と言う単語が最も嫌いですけどね(^^;

そろそろもしかしたらアニポケコラボ回を挟むかもしれません。結局一周年まで待てなかったよ……。でもほしぐもちゃん回なら既に終わってるから問題ないしね。本編時系列はむっちゃ飛びますが、まあ本編のネタバレは挟みません。……タブンネ

一応外伝回は本編ストーリーを細かく考慮はしていません。劇場版のパラレルみたいなものだと思って下さい。本当に外伝を挟むかは……2%程度の確率で書きます(弱気

ではまた次回ノシ

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