ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
というわけで新年の一話目です。新年早々休むと思った?残念だったな!(クロム感
なんと今回は豪華(でもないけど)2本立てでお送りします。一話目は長く2話目は短めです。
基本この小説は4,000から10,000字を目安に書いていますので話の長さは結構バラバラです。今頃になって公開する情報です。
読者様に意見を出していただきなんとかカントーリーグまでつなげることができましたのでお礼申し上げます。
そして自分の考えてた話は書いてる途中無理があったのでやめると言う緊急事態に。解せぬwww
カントーリーグが開催されるセキエイこうげんへと向かい旅を続けているリーリエたち。そんな彼女たちは今旅の道中の森で休憩中だ。
リーリエは今自分のポケモンのお手入れをしている。綺麗好きなリーリエはいつも自分と一緒に戦ってくれているポケモンに少しでもお礼がしたいと、定期的にお手入れをして綺麗にしてあげているのだ。
「はい!チラーミィさん、綺麗になりましたよ。」
『チラミィ!』
チラーミィは綺麗になった自分の尻尾や体に満足しながらリーリエの腕から降りる。特に尻尾の汚れを気にするチラーミィは自慢の尻尾がピカピカになって嬉しいようだ。普段は照れて素直になれないチラーミィも今は見るからに喜んでいる様子だ。
「チラーミィ、凄い綺麗になったね。」
「はい!チラーミィさんにも喜んでいただけたようでよかったです!」
リーリエがその場で立ち上がると、草むらから一匹のポケモンが姿を現した。そのポケモンは両腕に赤と青の薔薇をつけている小さなポケモンだ。そのポケモンを見たリーリエには以前見たことがあるため見覚えがあった。
「このポケモンさんって……」
「ロゼリアー?ロゼリアどこー?」
そこに一人の女性が姿を現す。その女性はシンジやリーリエよりも少し年上なのか、どこか大人びた雰囲気を出している。髪は肩まである短めの緑髪で、黒色の長ズボンに薄緑色のシャツ。その上に水色の上着を着用していた。
「あ、ロゼリア!ここにいたのね?探したんだから。」
『ローゼ!』
ロゼリアは自分の名を呼んだ女性の方へと振り向く。その後、目の前にいたシンジたちへと意識を向ける。
「あら?あなたたちは?」
「僕はシンジです。」
「リーリエです。それと私の仲間のチラーミィさんです。」
『チラ///』
2人はロゼリアのトレーナーと思わしき女性に自己紹介をする。リーリエはチラーミィを抱きかかえながら自己紹介するが、チラーミィは照れて顔を赤くしながら背けた。やはり素直になれないチラーミィには少々照れくさいのかもしれない。
「このロゼリアはあなたのですか?」
「ええそうよ。あ、紹介が遅れたわね!わたしはサナエ!それとわたしのパートナーのロゼリアよ。」
『ロォゼ!』
サナエに続きロゼリアも自己紹介をする。ロゼリアはサナエの紹介に合わせまるで令嬢のように礼儀正しいお辞儀をする。活発的な印象を持つサナエに比べ、ロゼリアはお淑やかなお嬢様に近い印象だろうか。
「あなたのチラーミィ、すごく可愛らしいわね。」
「は、はい!ありがとうございます!」
自分のポケモンが褒められて嬉しくなり思わず表情に出るリーリエ。そんな彼女にサナエは1つ気になることを尋ねた。
「もしかしてあなた達もひかりのいしを探しに来たの?」
「ひかりのいし?それってどういうことですか?」
「あら違ったの?チラーミィを連れてるからてっきりひかりのいしが目的なのかと思ったのだけど。」
どういうことなのかと疑問に思うリーリエたちに、サナエは自分の目的を一から説明する。
「実はこの近くの洞窟に、ポケモンの進化に必要なひかりのいしが眠っているって噂を聞いたの。」
「ひかりのいしってサナエさんのロゼリアさんの進化にも必要な進化の石ですよね?」
「そうよ。だから私はロゼリアを進化させるためにここまで来たの。」
サナエの説明にリーリエもなるほどと納得する。進化の石そのものは希少性が高く入手するのは非常に困難な代物だ。その上ひかりのいしは進化の石の中でもレア中のレアで、コレクターも喉から手が出る程欲しいとされるものだ。
「そんなに貴重なものがこの近くに?」
「ええ。よかったらあなたたちも一緒に来る?」
「え?いいんですか?」
サナエの誘いにリーリエは疑問符を浮かべ尋ねる。サナエはそんなリーリエの疑問に笑顔で答えた。
「もちろんよ!それに正直な話、そのひかりのいしを守っているっていわれているポケモンがいるらしいの。」
「ポケモンがひかりのいしを?」
「ええ。実はそのポケモン、噂によるととても強いらしく、ひかりのいしを手に入れるためにそのポケモンに返り討ちにあったって人も多いらしいの。だから寧ろ一緒に来てくれると嬉しいかなって思って。」
サナエの誘いの理由を聞いたリーリエはシンジと目を合わす。本音で言えばそんな話を聞いて放ってはおけず、心配であるためついて行きたいが自分で勝手に判断するわけには行かない。そのためシンジにどうするべきか尋ねようとする。
しかしシンジはリーリエの顔を見ると、無言で首を縦に振る。どうやらシンジも了承したようだ。シンジの了承を得たリーリエは、サナエに誘いの返事をする。
「はい!私たちも是非連れて行ってください!」
「決まりね!早速行きましょう!」
こうしてリーリエとシンジは、サナエと共にひかりのいしを求めて近くの洞窟へと向かったのだった。
「へぇ~、サナエさんはシンオウ地方から来たんですね?」
「ええ。色々な地方を旅して強くなりたいからね。あなたたちはどうしてここに?」
「私はカントーリーグに挑戦するためにここまで来たんです。」
「僕はリーリエと一緒に旅がしたくて2人で旅を。」
「ふ~ん、そうなんだ。2人とも仲がいいのね?」
サナエの言葉に2人は照れて顔を赤くする。彼女たちがそんな雑談をしていると、目の前に怪しげな洞窟が現れた。その洞窟を見たサナエが洞窟を指差し口を開いた。
「あそこが例の洞窟よ。」
「あれが……?な、なんだか不気味ですね。」
その洞窟は見るからに真っ暗で何かが現れそうな雰囲気があった。だがここまで来たからには行くしかないと、サナエが先陣を切って前に出た。
「お願い!ジバコイル!」
『ジバァ!』
懐からモンスターボールを取り出したサナエはジバコイルを繰り出した。リーリエはジバコイルの詳細を知るためにポケモン図鑑を取り出す。
『ジバコイル、ジバポケモン。コイルの最終進化形。特殊な磁場の影響でレアコイルが進化したと言われている。強力な磁力を放ち、レーダーとしても使える。』
「ジバコイル。私たちの足元を照らしてくれる?」
ジバコイルはサナエの言葉に頷き、中央の目のような部分で足元を照らす。厳密に言えばジバコイルの中央は目ではなく、ジバコイルの目は左右についている黒い点であり、中央の赤い模様は謎に包まれている。主に攻撃技などを放ったりするときに使うものと考えられているが、真意は未だに不明だ。
「じゃあブラッキー!君もお願い!」
『ブラッキ』
シンジは続いてブラッキーを繰り出す。ブラッキーは出てきてすぐに額の模様を光らせ足元を照らす。
「僕が先に行くからリーリエは後ろからついてきて。」
「は、はい。分かりました。」
『チラ』
サナエに続きシンジ、リーリエの順で並ぶ。暗い洞窟の中を3人は慎重に進んでいく。
「この先何が起こるか分からないわ。2人とも、慎重にね。」
サナエの忠告にシンジとリーリエは“はい”、と答える。暫く進んでいくと、奥には大きな扉で閉じられていた。もしかするとこの先に例のポケモンがいるかもしれないと、一行はより一層緊張感の高まりを感じながらその扉を開けた。
するとその奥には祭壇のようなものがあり、そこには光り輝くなにかが置かれていた。間違いなくそれはサナエが探しているひかりのいしそのものであった。
「やっと見つけた!ひかりのいし!」
念願のひかりのいしを見つけたサナエはすぐさま駆け出した。探していたひかりのいしが目の前にあるという現実に興奮したようだ。シンジとリーリエはそんな彼女を抑制しようと声をかけるが彼女には届かなかった。
そんなサナエの前に一匹のポケモンが降り立ちサナエの行く手を遮る。サナエは立ち止まると、目の前に降り立ったポケモンの名を口にしたのだった。
「!?エルレイド!」
「エルレイド……さん?」
『エルレイド、やいばポケモン。ラルトスの最終進化形。肘の刀は強力で、居合の名手として知られている。相手の考えを敏感に察知し、敵よりも素早く動き敵を切り裂く。』
そのポケモンはエルレイド。ラルトスの進化形であるキルリアの♂がめざめいしを使うことによって進化する珍しいポケモンだ。恐らく彼が例のひかりのいしを守っているポケモンだろう。
エルレイドはゆっくりと構えをとる。すでにエルレイドはやる気のようだ。エルレイドの戦闘の意思を感じ取ったサナエも、自分のポケモンたちと共にバトルの意思を示す。
「ひかりのいしは必ず貰うわよ!ロゼリア!エナジーボール!」
『ロォゼ!』
ロゼリアはエルレイドにエナジーボールを放つ。しかしエルレイドはジャンプして華麗にロゼリアの攻撃を回避する。
「だけど空中なら躱せない!ジバコイル!10まんボルト!」
『ジバ!』
ジバコイルは両腕の磁石から10まんボルトを放ちエルレイドに攻撃する。だがエルレイドはその攻撃を腕を強く振るうことであっさりと掻き消した。この光景には思わずサナエも驚かずにはいられなかった。
『エルッ!』
エルレイドは着地と同時に駆け出す。その動きは風のように素早く、一瞬でジバコイルとの距離を詰める。そしてその一瞬のうちにジバコイルはエルレイドに突き飛ばされる。相手の懐に飛び込み怒涛の近接攻撃を加えるこの技は、かくとうタイプの中でも強力な技、インファイトだ。
はがねタイプのジバコイルにかくとうタイプのインファイトは効果が抜群だ。その上このスピードとパワーから繰り出されるインファイトの威力は計り知れない。ジバコイルはこの一撃で目を回し戦闘不能となってしまった。
「くっ!戻って!ジバコイル!」
無念にも一撃で敗れてしまったジバコイルをモンスターボールへと戻す。しかし休む暇も与えずエルレイドは容赦なく攻撃を仕掛けてきた。僅かに気を抜いてしまったサナエとロゼリアも隙を突かれ対応できなかった。
だがその時、エルレイドの攻撃は何者かによって弾かれた。サナエはその正体を確認する。
「僕たちもいること、忘れないでよ?」
自分の目の前に立っていたのはシンジであった。そしてロゼリアを守っていた正体はブラッキーだ。ブラッキーのまもるによってエルレイドの攻撃は完璧に防がれたのだ。
「そうです!私たちも協力します!」
『チラミ!』
続いてリーリエとチラーミィが前に出る。サナエも2人の姿を見て口を開いた。
「ありがとう、2人とも!」
『ロゼ!』
覚悟を新たにするサナエとロゼリア。そんな彼女たちの姿を見たエルレイドは再び戦闘の構えをとる。
「チラーミィさん!スピードスター!」
チラーミィのスピードスターをジャンプして躱すエルレイド。隙を作らないために、シンジとサナエも続けて攻撃する。
「ブラッキー!シャドーボール!」
「ロゼリア!エナジーボール!」
ブラッキーとロゼリアはシャドーボールとエナジーボールを同時に放つ。しかしエルレイドはそれをも空中でジャンプし回避する。
「躱された!?」
エルレイドの軽快な身のこなしにシンジも驚く。その驚きも束の間、エルレイドは再び攻めの態勢へと入る。
『エル!』
エルレイドは両腕を上から下に振るい、両腕から実体化した刃を放つ。エスパータイプの技、サイコカッターだ。サイコカッターは同時にロゼリアとチラーミィに一直線に向かう。
その鋭く素早いサイコカッターの一撃を避けることができず、咄嗟に腕で防御するも強力な一撃で吹き飛ばされてしまう。高威力のその攻撃はどちらにも致命的なダメージを与えた。特にどくタイプを持つロゼリアは弱点であるエスパー技を受けてチラーミィ以上のダメージを受けている。チラーミィはゆっくりと立ち上がるが、それでもこのままでの戦闘は難しいだろう。
「チラーミィさん!」
「ロゼリア!」
リーリエとサナエはパートナーの事が心配になり呼びかける。駆けつけようにもエルレイドの攻撃が激しく中々近づくことができない。
シンジも2人のことが心配になるが、エルレイドはシンジとて決して油断のできる相手ではない。シンジはなるべく被害を抑えるためにバトルへと集中する。
「ブラッキー!連続でシャドーボール!」
『ブラキ!』
シャドーボールを連続で放つブラッキー。エルレイドは走って回避し続けるも全てを回避しきることは出来ずシャドーボールをその身に受ける。だがエルレイドは咄嗟にガードしてダメージを軽減させた。
エルレイドはシャドーボールを受けて発生した爆風の中をジャンプして飛び出す。そして刃に力を込め腕を交差させブラッキー目掛けて突撃する。その技はむしタイプの技のシザークロスだ。
「ブラッキー!まもる!」
ブラッキーはまもるを発動させる。さすがにエルレイドでもまもるを破ることは出来ずにはじき返され隙が出来る。
「イカサマ!」
『ラッキ!』
ブラッキーは前足と後ろ脚を巧みに使いエルレイドを地上に投げ飛ばす。イカサマは相手の攻撃力を利用して攻撃する技だ。エルレイドもさすがにダメージの色が見えるが、それでも受け身をとりダウンを拒否する。
『エル!』
『ブラッキ!?』
エルレイドは再び飛び上がりブラッキーへと一直線に向かう。ブラッキーは対応に遅れてしまい、エルレイドのインファイトの直撃を受けてしまう。
あくタイプのブラッキーにかくとう技のインファイトは効果は抜群。さすがのブラッキーもこのダメージには苦い顔をする。そのまま殴り飛ばされたブラッキーは地面で跳ねながらもなんとか受け身をとる。
「シャドーボール!」
ブラッキーはシャドーボールを放つ。空中で回避行動のとれないエルレイドはそのシャドーボールを腕を振るって弾き飛ばす。だがその弾かれた攻撃はひかりのいしが置かれている祭壇へと直撃する。
すると祭壇からなにかが飛ばされ、サナエの足元へと降ってきた。サナエはそれが何かを確認するために拾い上げると、その正体に驚く。
「!?これってひかりのいし!?」
そうだ。サナエの元へと落ちたのはひかりのいしであった。ひかりのいしを守っていたエルレイドであったが、シンジとブラッキーを相手にしていて気付いている様子はない。そのひかりのいしを見て思いつき、サナエはリーリエにあるお願いごとをする。
「リーリエ、お願いがあるの。」
「お願い……ですか?」
サナエは疑問符を浮かべるリーリエに、覚悟を決めて口を開く。そしてサナエから伝えられたことはリーリエにとっても驚くべきものであった。
「このひかりのいしを……あなたのチラーミィに渡してほしいの。」
「!?で、でもそんなことをしたら!」
サナエはひかりのいしをチラーミィに渡してほしいのだと言う。リーリエが驚くのも無理はないだろう。
なぜなら進化の石が効果があるのは一度きりで、ポケモンの進化に使用してしまえば進化の石も消失してしまうのだ。
ロゼリアがひかりのいしでロズレイドに進化するように、チラーミィもまたひかりのいしで進化することが出来るポケモンだ。チラーミィにひかりのいしを渡すという事は、同時にロゼリアの進化を諦めるという事にも繋がる。
「分かってる。でも、わたしのロゼリアはダメージが大きすぎて今進化しても戦力にならないわ。だけどあなたのチラーミィなら違う。新しい力を得ればきっと戦える。」
サナエは戦っているシンジとブラッキー、それにエルレイドの方へと視線を向ける。
「シンジたちは強い。それはわたしにも分かる。でもそれはエルレイドも同じよ。このままではどちらが勝つか分からないわ。」
サナエは再びリーリエの方へと視線を向け言葉を続けた。
「だからお願い。あなたのチラーミィにこのひかりのいしを。手遅れにならない内に!」
「で、でも私は……。」
リーリエは悩む。現在もシロンの進化でこおりのいしを使うべきかどうかを悩んでいるのだ。ポケモンの意思もあるためそう簡単に決断できることではない。
『チラ!』
「ち、チラーミィさん?」
その時、チラーミィはリーリエへと呼びかけた。リーリエはチラーミィの方へと振り向くと、チラーミィはリーリエを見て笑みを浮かべて頷いた。チラーミィにも今の会話が聞こえていたようだ。
「チラーミィさん……。」
リーリエはチラーミィの覚悟を受け取り、サナエからひかりのいしを預かった。
「サナエさん、ありがとうございます。それと……ごめんなさい。」
サナエからひかりのいし受け取ったリーリエは、感謝と同時にサナエに小さく謝罪をする。サナエもその言葉を受け取り、口角を僅かに上げて無言で首を小さく横に振る。
「チラーミィさん!受け取ってください!」
『チラミ!』
リーリエから投げられたひかりのいしを、チラーミィは尻尾を上手く使い受け取る。するとその瞬間、チラーミィは青白い光に全身を包み込まれる。それに気付いたシンジとエルレイドも振り返った。
「この光は!?」
その光はチラーミィの姿を徐々に徐々にと変えていく。次第に大きくなったその光が解き放たれ、そこにいたのはチラーミィに白い体毛が生え、それをマフラーのように巻いている優美さを感じさせるポケモンの姿であった。
リーリエは直ぐにそのポケモンの詳細をポケモン図鑑で確認する。
『チラチーノ、スカーフポケモン。チラーミィの進化形。白い体毛は特殊な油でコーティングされており、ほこりや静電気も寄せ付けず、敵の攻撃を受け流すことも出来る。』
チラーミィの進化した姿、チラチーノの説明を確認したリーリエは、ポケモン図鑑をしまいチラチーノと共にシンジの隣に立った。
「シンジさん、すいません。お待たせしてしまいました。」
「気にしなくていいよ。それより……」
シンジとリーリエは目の前にいるエルレイドへと向き合う。ひかりのいしを失った今でも、エルレイドは決して戦闘態勢を解くことはなかった。
「行くよ!」
「はい!」
『ブラッキ!』
『チラチ!』
「ブラッキー!シャドーボール!」
最初に動いたのはブラッキーだ。ブラッキーはシャドーボールでエルレイドに牽制攻撃を仕掛ける。エルレイドは避ける動作をとることなく、正面からシャドーボールを受け止める。
その後、発生した衝撃を打ち破り正面から勢いよく突撃してくる。それをチラチーノは正面から受け止める態勢に入った。
「チラチーノさん!」
チラチーノに呼びかけるリーリエ。チラチーノはそのまま待機してエルレイドの攻撃を待ち構える。エルレイドがインファイトの構えに入ると、チラチーノはなんと自らエルレイドに向かっていった。
エルレイドはチラチーノに向けてインファイトを繰り出した。このままではチラチーノに直撃してしまう。しかしチラチーノは驚くべきことにその攻撃を受け流したのだ。
その動きは華麗で、今までの軽快な身のこなしだけではない気がした。リーリエはその時、ポケモン図鑑による説明を思い出す。
チラチーノの体毛は特殊なコーティングによってできており、相手の攻撃を受け流すことが出来るのだと言う。今回華麗に避ける事ができたのもその特徴を上手く生かすことができたのも一つの要因であろう。
この現象にはさすがのエルレイドも驚きの表情を浮かべる。
「チラチーノさん!おうふくビンタです!」
『チラー!』
『エル!?』
隙をさらしたエルレイドにすかさずおうふくビンタによる近接戦を仕掛けようとする。しかし、チラチーノが使用したのはおうふくビンタではなかった。
攻撃する瞬間、チラチーノの尻尾が白く光りだした。チラチーノはその尻尾をエルレイドに向けて勢いよく振り攻撃した。その攻撃がクリーンヒットしたエルレイドは壁際まで飛ばされるが、受け身をとることで壁に直撃することを避けた。
「あれはスイープビンタだ!」
「スイープビンタ?」
「うん。おうふくビンタよりも攻撃力の高くて、覚えることの出来るポケモンも少ない珍しい技だよ。」
「チラチーノさん!新しい技を覚えたのですね!」
『チラチー!』
新しい技を覚えたことに喜ぶ2人。だが、いつまでも喜んでいる場合ではない。立ち上がり態勢を整えたエルレイドが再び突っ込んでくる。
『チラ!?』
エルレイドは突っ込みながら両腕を振り下ろしサイコカッターを放つ。その攻撃がチラチーノ目掛けて接近してくる。
「ブラッキー!」
『ブラッキ!』
シンジの呼びかけにブラッキーは答え、チラチーノの前に立つ。サイコカッターがブラッキーに直撃するが、ブラッキーには一切ダメージがない。
理由は簡単だ。あくタイプのブラッキーにエスパータイプの技は効果がない。故にブラッキーはエルレイドの攻撃で傷がつかなかったのだ。
「助かりました!ありがとうございます、シンジさん!ブラッキーさん!」
「まだ油断しないで。エルレイドはまだ戦えるみたいだよ。」
シンジの忠告にリーリエも気を引き締めてコクリと頷く。そして反撃するためにリーリエはチラチーノに指示を出した。
「チラチーノさん!走ってください!」
『チラ!』
チラチーノは走ってエルレイドに接近する。素早いエルレイドにこちらも素早さで対抗しようと言うわけだ。進化したことによりチラチーノの素早さも間違いなく速くなっている。
「僕たちは援護だよ!ブラッキー!シャドーボール!」
『ブラッ!』
ブラッキーはシャドーボールによりチラチーノの援護に回る。シャドーボールを複数放ち、エルレイドはその攻撃を次々と弾いていく。だが、それでもチラチーノが接近するには充分の時間稼ぎとなった。
「チラチーノさん!スイープビンタです!」
懐まで潜り込んだチラチーノは飛びかかって尻尾を振りかざしスイープビンタで攻撃する。エルレイドは上体を逸らしてその攻撃を躱し、インファイトで反撃する。
だがチラチーノも負けていない。自慢の柔軟性と身のこなし、それに進化したことで新たに得た体毛を上手く利用して回避し反撃する。インファイトとスイープビンタの応酬が繰り広げられる。
パワーでは圧倒的にエルレイドに分があるだろう。しかしチラチーノは小さい分小回りが利き、手数でも勝っている。パワーの差を埋めるには充分な要素だ。
インファイトとスイープビンタの応酬は長く続かない内に崩れ始める。小さく小回りの利くチラチーノに次第に追いついていくことができなくなってきたエルレイドが攻撃を食らい始める。そして遂に拮抗が崩れ、エルレイドは膝をついた。
「これで勝負あり、かな。」
勝負がついたと判断したシンジはエルレイドにゆっくりと近付く。エルレイドは身構えることなくそのままシンジの顔を見ていた。
「ほら、オボンのみ。食べれば体力も回復するよ。」
オボンのみに視線を移したエルレイドは再びシンジの顔を見る。その後、躊躇なくエルレイドはオボンのみを食べた。
オボンのみを食べ体力を戻したエルレイドはスクッと立ち上がる。その姿を確認したリーリエがエルレイドに近づいた。
「あの……エルレイドさん。あなたの守ってきたひかりのいし……」
『エルエル』
「エルレイドさん?」
俯くリーリエにエルレイドは一言言葉をかける。リーリエがエルレイドへと視線を向けると、エルレイドは軽く微笑み返した。
その後、エルレイドはその場を後にし立ち去って行った。エルレイドの姿を見たサナエが一言呟いた。
「エルレイド……これからどこに行くのかしら。」
「僕にも分からない。でも……」
エルレイドの行く先は誰にも分からない。だが、それでもシンジにはなんとなくわかることがあった。
「もしかしたらエルレイドも……強くなりたいだけなのかもしれない。」
「え?」
「そんな……眼をしている気がしたから。」
真実は分からないが、リーリエもシンジが言っている意味がなんとなく分かる気がしたのだった。
「サナエさん……ひかりのいしですが……。」
「そんなこと気にしなくていいわ。あれはわたしが頼んだことなんだから。」
未だに罪悪感を感じているリーリエにサナエはそう言って励ます。それでも気分が晴れないリーリエに、サナエはこう伝えた。
「後悔してないって言ったら嘘になるけど、今回のことで私がまだまだ未熟だって思い知らされたわ。また一から修行のし直しよ!」
『ロゼ!』
「サナエさん……。」
「もし、また会うことがあれば、その時はバトルしましょ。今度会うときは今よりも強くなって、必ずわたしのロゼリアをロズレイドに進化させてみせるから!」
「……はい!必ずバトルしましょう!私も負けませんから!」
サナエとリーリエはガッチリと握手を交わす。お互いのライバルと認め合い、再会の約束を交わしたのだからこれ以上の言い合いは無しだ。トレーナーならばバトルの中で語り合えるのだから。
「シンジも、今度会った時に戦いましょう。あなたにも負けるわけにはいかないからね。」
「僕も負けるつもりはありませんよ。戦える時を楽しみにしています。」
シンジもサナエと握手を交わす。その後、サナエはシンジたちと別れまた修行の旅へと向かったのだった。
リーリエはそんなサナエを見送り、もう一つの心残りと向き合う。
「チラチーノさん……。」
『チラチ?』
「進化して……よかったですか?後悔とか……。」
チラチーノはそんなリーリエの暗い表情を見ると、リーリエの頭まで上った。
『チラチー!』
「チラチーノさん?」
チラチーノは明るくリーリエに向かって微笑む。その笑みはリーリエに大丈夫だと言っているようであった。
「チラチーノさん……。ありがとうございます。」
『チラ!』
自分のポケモンに励まされ、自分が後悔していてはダメだなと自身に渇を入れるリーリエ。そんなリーリエはチラチーノを抱きかかえて彼女に感謝の言葉を伝えた。
「チラチーノ、進化してだいぶ素直になったみたいだね。」
「そうですね。少し寂しい気もしますが、素直なチラチーノさんも可愛くて大好きです!」
リーリエはチラチーノを抱きしめて笑顔でそう答えた。そこにはさっきまで後悔で落ち込んでいた彼女の姿はない。チラチーノが進化して成長したのと同様に、リーリエも一歩先へと成長したようだ。
こうしてリーリエのチラーミィはチラチーノへと進化を遂げた。チラチーノや仲間たちと歩んでいくリーリエの冒険はこれからどうなっていくのか?シンジとリーリエの冒険はまだまだ続く!
チラーミィの進化は正直悩みました。進化させずに進もうかなとも思ってましたが、いっそのことと思い切ってここで進化させました。
サナエの再登場予定はありません。ひかりのいしを出すための強引な設定のために作ったモブちゃんです。希望があれば再登場する……かもしれませんが、登場キャラが多いとヌシの頭がパンクする可能性があるので望みは薄いです。
今でさえ結構パンク気味なのに(ボソッ