ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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半分ふざけた前回の話から一転してシリアス展開です。
正直ヌシはブルーを最大のライバルという位置付けにするつもりはなかったのですが、気付いたらこうなってました。なんだかんだいって個人的に満足しているので結果オーライかなと。


決意を新たに、約束の舞台へ!

カントーリーグベスト8が出揃い、準々決勝の相手がそれぞれ発表された。そしてリーリエの対戦相手は……

 

「準々決勝第一試合は……リーリエ選手対ブルー選手です!」

 

リーリエの対戦相手は彼女の最大のライバルと言ってもいい存在、ブルーであった。その対戦カードを聞いたブルーは「やっと来たわね」とこの時を楽しみにしていた様子だ。

 

「リーリエ」

「ブルーさん……」

 

ブルーは次の対戦相手であるリーリエの元へと近づき話しかける。リーリエも覚悟を決めてブルーの目をまっすぐ見つめる。

 

「遂にこの時が来たわね。」

「はい。約束の時です。」

 

約束。リーリエとブルーは今までで2度対戦してきた。そして戦績は1勝1敗と五分だ。今度決着をつける時はこのカントーリーグでと約束を交わした。その約束を果たす時が遂に訪れたのだ。

 

「……ここまで来たんだもの。もう何も言わない。ただ、あえて一つだけ言わせてもらうわ。」

 

ブルーはビシッと右手の人差し指をリーリエに突きつけ、ハッキリとした声で宣言した。

 

「勝つのはあたしよ!」

「!?」

 

ブルーの一喝にリーリエは目を見開く。以前のリーリエであればその言葉に精神的動揺を表していたところだろう。

 

しかし今のリーリエは違う。リーリエはブルーの言葉にこう告げたのだった。

 

「……私も負けるつもりはありません。絶対に勝ってみせます!」

 

リーリエはブルーに堂々と勝利宣言をする。ブルーもその言葉を聞き、ニヤリと口角を上げその場を後にした。リーリエもそんなブルーの後ろ姿を見届けて呟いた。

 

「……絶対に負けませんから。」

 

そんな彼女の顔は、決意の表情に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルーとの対戦が決まったその日、リーリエは彼女にどう対抗しようか悩んでいた。強気に啖呵を切ったとは言え、相手はあのブルー。カントーリーグでの戦いを見ている限り、前回と同じ感覚で戦っていては必ず痛い目にあってしまうだろう。

 

自分でも分かっている。ブルーは間違いなく強敵だ。全力でぶつかっても勝ち目があるかといえば正直五分と五分。いや、もしかすればそれより低いかもしれない。

 

リーリエの戦い方は特殊で、相手のポケモンを逆に利用する、変則的な戦法で奇襲を仕掛けるなど、他には中々類を見ない戦術をとる。臨機応変に立ち回れると言えば聞こえはいいが、その分何度か交えたことのある相手であれば予測されやすく、対策も取られやすい。ブルーもそのことを充分理解しているだろう。

 

特にブルーはリーリエの事をライバル視している。彼女がリーリエの対策を怠るとは到底思えない。だからこそ、リーリエは彼女に対しどう立ち向かえばいいかを悩んでいる。

 

リーリエは今、珍しく心の底から勝ちたいと願っている。以前の彼女ではそんなことは考えなかっただろうが、旅の中で様々な経験をし、数多くのトレーナーと戦い試練を乗り越え、そして今、このカントーリーグという舞台で絶対に負けたくないと思える相手と戦おうとしているの。決して中途半端にはしたくない。自分を信じてくれるポケモンのため、そして自分と戦うために約束通り目の前に立ってくれているブルー(ライバル)のためにも。

 

そんな悩みを抱える彼女の前に、1人の女性が姿を現した。

 

「リーリエ」

「!?お母様……」

 

その女性はリーリエの母親であるルザミーネであった。大会が始まる前に出会って以来の再会だが、ルザミーネはリーリエの姿を見かけ心配になり様子を見に来たのだ。母親として、大舞台に立つリーリエに期待している反面、心のどこかでは不安で一杯なのだろう。

 

「リーリエ。いよいよ準々決勝ね。」

「はい。ですが……」

「次のブルーちゃんとの対戦が不安……そうよね?」

「はい……」

 

本来であればルザミーネも母親として彼女に、「よくここまで勝ち上がったわね」などの言葉をかけて褒めるつもりであった。しかし、今のリーリエを見て考えが変わった。

 

彼女にとって重要なのはリーグで良い成績を収めることでも、優勝することでもない。彼女の目的は約束を果たすこと。ブルーともう一度戦い決着をつけることだ。勿論リーリエも優勝を目指していないわけではない。寧ろこのカントーリーグに出場した以上、決勝まで勝ち進み優勝したいという願望はある。

 

しかしそれ以上に、彼女はブルーとの再戦を望んでいる。ブルーとの対戦こそが、リーリエにとっての事実上の決勝戦と言ってもいい。ルザミーネも娘の顔を見てそのことを理解したのだ。

 

ならば自分に出来ることは娘を褒めることではなく、前に踏み出すことが出来るように背中を後押しすることだ。そう考えたルザミーネはリーリエにある言葉をかける。

 

「リーリエ、ちょっと話を聞いてくれる?」

「何でしょうか?お母様。」

「シンジ君から聞いたわ。あなたとブルーちゃんの関係。それにこれまでに2度戦って約束を交わしたこともね。」

 

リーリエはルザミーネの言葉に多分そうだろうと納得し頷いた。リーリエは真剣な表情でルザミーネの言葉に耳を傾ける。

 

「ブルーちゃんはあなたから見ても以前に比べて強くなっていた。だからこそ勝てるかどうかの不安要素が溢れてきちゃう。」

「ど、どうしてそれを?」

「分かるわよ。だってあなたの母親だもの。」

 

リーリエは不安な気持ちを押し殺し、表には出していないつもりでいた。しかし母親であるルザミーネには隠し通すことはできなかった。ルザミーネはリーリエに近づき、彼女の肩に手をポンッと置き語り掛ける。

 

「あなたは深く考えすぎよ。もう少し気楽に考えなさい。」

「で、でも……」

 

それでもやはり不安は消えない。今までの戦いも緊張しなかったわけではない。しかし心の中では理解しているつもりでも今回の戦いばかりはどうしても緊張が解れることはない。相手が強いから、ではなくあのブルーなのだから。

 

「リーリエ」

 

不安を抱えるリーリエの肩から手を離し、彼女の眼を見つめてルザミーネは真剣に答えた。

 

「あなたのそんな姿、ブルーちゃんも望んでいないと思うわよ。」

「え?」

「ブルーちゃんはきっと、普段のあなたと全力で戦いたいと思っているはず。ライバルって言うのは、お互いに競い合い、切磋琢磨して腕を磨き合う関係のはずよ。」

「お互いに……切磋琢磨……っ!?」

 

その時、リーリエは思い出した。かつて目にした最大のライバル同士の姿。そう、シンジとグラジオの姿だ。あの2人は最初は決して交じり合う事のない関係であったが、次第に戦いを重ね合う中共に成長し、お互いに認め合い、ライバルとして自分らしく正々堂々とぶつかり合った。

 

彼女自身2人の戦いを目にしたわけではないが、あの2人の姿を見れば誰でも分かる。2人にはライバルとしての出会いがあり、それぞれがお互いの限界を高め合い、ライバルとしてお互いの実力を認め合う。強くなるために孤独の中を歩み、普段誰かと関係性を持つことのない兄が、シンジに対しては明らかに違う対応をしていた。

 

それに、彼は大切なものを守るため、リーリエを守るために強くなる決意をした。そんな彼が以前シンジに言った言葉。それが「リーリエの事を任せた」だ。あれだけ自分が強くなって守ると決めたリーリエを、シンジにだけは任せることが出来た。それは彼がライバルとして、そして親友としてシンジの事を認めた証だ。

 

「あなたは、あなたのまま彼女と正面からぶつかればいいの。それこそがブルーちゃんの思いに、約束に答える唯一の方法だと私は思うわよ。」

「私は、私のまま。私らしく……」

 

リーリエは大会の前にシンジに言われた言葉を思い出す。自分らしく楽しく戦うのが一番だと。

 

何故自分はこんな簡単なことで悩んでいたのだろうと先ほどまでの不安な気持ちを振り払う。母の言った通り、自分は自分。例えブルーがどれだけ強くなっていたとしても、正面からぶつかればいいだけだ。それに、強くなったのは何もブルーだけではない。

 

自分には、今まで共に歩んできたポケモン達がいるのだから。

 

「……覚悟は決まったみたいね。」

「はい!お母様のお陰で気付くことができました。ありがとうございます!」

 

母親であり、トレーナーとしても先輩であるルザミーネから貰った助言を胸に刻む。その彼女の顔には先ほどまでの不安な表情は一つもない。決意の表情に満ちた強き者の顔だ。その顔を見たルザミーネは心から安心し、最後に伝えるべきことを伝えた。

 

「最後に一つだけ、あなたに伝言があるわ。」

「伝言……ですか?」

「『練習用のバトルフィールドで待ってるよ』だそうよ。」

「!?は、はい!行ってきます!」

 

リーリエはルザミーネの伝言を聞き、即座に駆け出した。ルザミーネもそんな彼女の背中を見て、微笑みながら呟いた。

 

「ふふ、あんなに嬉しそうな顔しちゃって。あの子にとって、一番大切な人は誰なのかしらね。」

 

母親のその瞳は、温かく娘を見守っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夕方。現在賑わっていた人だかりも数が減り、今では数えられるほどの人数しか見られない。多くの人がバトルの興奮で疲れ果て、休息をとっているのだろう。

 

そんな中、リーリエは息を切らしてバトルフィールドに辿り着く。普段はこのバトルフィールドも一般の人が交流のために利用し賑わっているが、時間も時間であるため人影が全くいない。

 

しかし、バトルフィールドの中央に一人の人物の後ろ姿が確認できた。彼は自分のパートナーポケモンの頭を撫で、誰かの事を静かに待っている様子だ。その人物の正体がすぐに分かったリーリエは、彼にゆっくりと近付き名前を呼んだ。

 

「シンジさん……。」

「……来たね、リーリエ。」

 

その人物は彼女にとって特別な存在、シンジであった。シンジはパートナーであるニンフィアの頭を撫でながら彼女の到着を待っていた。そして彼女の姿を確認し、彼はその場でクルリと振り返り声をかける。

 

「ブルーとの戦い、いよいよ明日だね。」

「はい。正直まだ緊張はしていますが、もう覚悟は決まりました。」

「うん。君の顔を見れば分かるよ。」

 

シンジはそんなリーリエに、一つとある提案をした。その内容を聞いたリーリエは、驚きのあまり目を見開いた。

 

「リーリエ。僕とバトルしよう。」

「っ!?」

 

衝撃的であった。まさかこのタイミングでバトルを申し込まれるとは思っていなかった。だが誤解しない様にと、シンジはリーリエにその対戦形式を伝える。

 

「と言っても明日は本戦だから、本格的なバトルじゃないよ。リーリエのシロンと僕のニンフィア、1対1で軽く模擬戦をするだけだよ。」

「……理由を聞いてもいいでしょうか?」

 

シンジのことだから戦う事に意味がないわけがない。リーリエの質問に、シンジは端的に答える。

 

「単純な話だよ。君がライバルと、ブルーと戦う覚悟があるか確かめたい。バトルじゃなきゃ、分からないこともあるからね。」

 

シンジの言葉にリーリエも納得する。トレーナーになる前であれば理解が及ばなかったかもしれないが、トレーナーとして経験を積んだ今であれば理解できる。

 

ポケモントレーナーはバトルを通じて語り合う事ができる。今までの経験、成長、思い、全てをポケモンに、バトルに乗せて戦う。シンジはそれを通じてリーリエの覚悟を確かめるつもりだ。

 

リーリエにとってもこれはチャンスだ。カントーリーグが終わってから、シンジと戦う機会がいつになるか分からない。もしかすると永遠に訪れない可能性すらもある。自分の成長を、シンジに見てもらうことが出来る最後のチャンスかもしれない。

 

リーリエはシンジの提案を承諾し、早速バトルの準備をする。

 

「この時間帯なら人もいないし、僕も心おきなくバトルが出来る。リーリエの成長……見せて貰うよ!」

「はい!全力で行きますよ!シンジさん!」

 

形式は模擬戦。だが、あくまでそれは表向きの口実に過ぎない。リーリエにとって、彼との戦いは特別な時間だ。自分の憧れの存在、目標、そんな人物と戦う事は何よりも嬉しい。自分の今までの思いを、成長を、リーリエはこのバトルに込める。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「行くよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

そして誰にも知られないバトルが、幕を開けた。

 

「こちらから行きます!シロン!こなゆきです!」

 

シロンはこなゆきで先制攻撃をする。だがこの攻撃はリーリエの常套手段。シンジもそのことを理解し、冷静に対応する。

 

「ようせいのかぜ!」

 

ニンフィアはようせいのかぜでこなゆきを相殺する。しかし相殺と言っても、明らかに威力はニンフィアの方が上だ。リーリエはこうなることは充分に予測していたため次の行動に移る。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

「でんこうせっか!」

 

シロンはこおりのつぶてで鋭い攻撃を加えるが、ニンフィアはその攻撃を次々と躱し素早いスピードでシロンとの距離をみるみると縮める。だが、リーリエもその行動は読めており……。

 

「ジャンプしてこおりのつぶてです!」

 

ニンフィアのでんこうせっかをシロンはジャンプして躱した。リーリエはニンフィアのでんこうせっかを誘発し、逆に隙を晒すように誘導したのだ。

 

でんこうせっかを回避したシロンは、こおりのつぶてで上空から奇襲を仕掛ける。しかし……

 

「ニンフィア!リボンで弾いて!」

『フィア!』

 

ニンフィアは自身のリボンを素早く振るい、こおりのつぶてをいとも容易く掻き消していく。これにはリーリエも驚かずにはいられない。

 

リーリエは確実に今の攻撃は決まったと確信していた。しかしその考えは甘かった。咄嗟のピンチにも対応するシンジとパートナーのニンフィア、2人の心がどれだけ通い合っているかがよく伝わるし、どれだけ鍛えられているかもわかる。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

ニンフィアはシロンの着地を的確に狙い撃つ。シャドーボールを受けたシロンはダメージを抱えるが、それでも耐えしのぎまだまだ行けると言った表情だ。ならばリーリエも自分のパートナー、シロンの事を信じ、自分の思いをバトルの中でシンジに全て伝えようとバトルを続行する。

 

「シロン!走ってください!」

『コォン!』

 

シロンはニンフィア目掛けて駆け出した。普段であれば無謀な選択だが、リーリエのことだから何か考えがある。そう踏んだシンジは、先ほどと同様に冷静に対応することにした。

 

「ニンフィア!連続でシャドーボール!」

『フィーア!』

 

ニンフィアは連続でシャドーボールを放つ。だがシロンを簡単には捉える事ができず、シロンもその攻撃を次々と回避していく。シンジもその動きは読めていたため、更に畳みかけに出た。

 

「ようせいのかぜ!」

「こなゆきです!」

 

かなり距離を詰められたため、今度は範囲の広いようせいのかぜで動きを止めようとする。シロンはその攻撃に対しこなゆきで反撃した。

 

確かにニンフィアのようせいのかぜの方が威力で言えば高いが、リーリエにとってそれを打ち破ることが目的ではない。少しだけでも時間を稼ぐことさえできればそれでいいのだ。

 

こなゆきとようせいのかぜの衝撃によって爆風が発生する。これはリーリエとシロンにとってチャンスである。そのまま勢いを殺さず、シロンはニンフィアの目の前まで飛び込むことに成功する。ニンフィアもさすがに攻撃の反動もあり対応が追い付かずに驚きの表情を浮かべる。

 

「今です!こおりのつぶて!」

 

至近距離にてこおりのつぶてがニンフィアに炸裂する。至近距離でのこおりのつぶては威力も高く、先ほどのような手段では防ぎようがない。リーリエが狙っていたのはこの瞬間であった。

 

シンジもそんな彼女の戦術に、彼女は間違いなく戦いの中で成長し続けているのだと改めて感じさせられる。だからこそ、自分も彼女には負けていられないのだと強く感じる事ができた。シンジにとってリーリエは、大切な存在であるのと同時に、追いかけてくる存在、ライバルにも近い存在なのだから。

 

「追撃です!れいとうビーム!」

「ジャンプして躱して!」

 

シロンのれいとうビームをジャンプすることで回避するニンフィア。そしてこうなったら自身の最大の技で迎え撃つのが最大限の答えだろうと、シンジはニンフィアに指示を出した。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーアー!』

「っ!?シロン!こちらもムーンフォースです!」

『コォン!』

 

ニンフィアは空中にてムーンフォースの態勢に入る。対するシロンも、鏡合わせのようにムーンフォースの準備をする。互いに力を最大まで溜め、同時にその力を解き放つ。

 

互いのムーンフォースはフィールドの中央でぶつかり合う。どちらの力も強いが、それでもやはり次第に力の差が明確に表れる。

 

シロンのムーンフォースはニンフィアのムーンフォースに押され、その力を次第に失い始める。そしてニンフィアのムーンフォースが最終的に競り勝ち、シロンの足元に被弾した。シロンはその爆風により後方に吹き飛ばされる。思いの外シロンのムーンフォースの威力も高く、ニンフィアのムーンフォースの軌道が僅かだが逸れ、シロンへの直撃は免れたのだ。

 

「……うん、今回はここまでにしようか。」

 

シンジはリーリエの覚悟を充分に見ることができたと判断し、バトルを中断させる。それに明日は準々決勝当日だ。そんな大事な日の前に疲労を溜め込んでしまい、当日に勝てませんでしたでは話にならない。

 

リーリエもそんなシンジの判断に同意し、シロンを抱きかかえる。シロンもダメージは見受けられるものの、直接の被弾は少なかったため大したダメージには至っていない。

 

「シンジさん。私の思い、伝わったでしょうか?」

「うん。確かに感じたよ。リーリエの成長、思い、それから覚悟も。これなら僕も安心して見ていられるよ。」

 

バトルの内容だけ見れば力の差は大きく圧倒的な敗北で終わってしまっている。しかし、今までのシンジとのバトルを振り返るとその差は明白だ。確実にリーリエも成長を遂げていることがシンジもバトルを通して肌で感じる事ができた。だからこそ、明日のバトルも安心して見ていられると告げたのだ。

 

彼女にはもう、不安の感情は感じられない。あるのはただ勝つのだと言う強い意思、トレーナーとしての覚悟だけだ。

 

だが、もう一つだけ別の問題がある。その問題をどうするべきか、シンジはリーリエに尋ねた。

 

「リーリエ、知ってるとは思うけど準々決勝からは6対6のフルバトルだよ。」

 

そうだ。準々決勝以降の戦いは6対6のフルバトル。数多いるトレーナーの中でも選ばれた者のみが勝ち上がることのできるカントーリーグ。そしてその中でより力があることを見せつけ上位に食い込んだベスト8のトレーナーたち。そんなトレーナーたちには全力で戦ってもらいたいと言うポケモンリーグ側の意向なのだ。

 

だがリーリエの手持ちは現在5体。フルバトルをするには後1体だけ足りていない。ルール上別に6体所持している必要はないが、それでは5対6になってしまうため数の差で圧倒的に不利になってしまうだろう。

 

「それなら大丈夫です。私に考えがありますから!」

 

リーリエはシンジの問いに笑顔で答えた。シンジはどうするつもりだろうかと考えるが、リーリエが大丈夫だと言うのであれば彼女の事を信じようとこれ以上問いかけることはしなかった。

 

「リーリエ。これ以上、僕が君にしてあげられることはもう何もないよ。」

「……はい。」

「最後に一言だけ。……折角の夢の舞台、楽しんできてね。」

「!?はい!」

 

リーリエは微笑みながらそう言ってくれたシンジの言葉をしっかりと噛み締め、明日の約束の舞台を迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。遂にやってきた準々決勝の舞台。リーリエとブルーの約束が果たされる日が訪れた。

 

背中は押した。後は彼女次第だと、シンジとルザミーネもリーリエがこの約束の舞台でどのような戦いを繰り広げるのかを静かに見守っていた。

 

「それではこれより!カントーリーグ準々決勝第一試合を行います!対戦するのは、リーリエ選手対ブルー選手!」

 

審判の言葉と同時に、リーリエとブルーはこのカントーリーグという舞台で遂に戦う為に向かい合った。

 

勝利を手にするのは果たしてリーリエか?それともブルーか?

 

2人の約束のバトルが今、始まろうとしていた!




話の内容的に少し告白っぽいですが違います。いや、既に告白的な話があった気もしなくもなくもなくないですが。

予定より長くなりました。本当は4000字くらいに収めて次回に取っておこうと思ってたんですけどね。気付いたら入れる予定の無かった2人のバトルも書いてました。どうしてこうなった……。

最近ニンフィアのスマホカバーの尻尾の部分がヨレヨレになって千切れそうになってしまったので、かなり凹みながら新しいスマホカバーを買いにポケモンセンターに行きました。お気に入りだったのになあ。常に使ってるとガタが来てしまうのは仕方のない事ですが。

とりあえず少し大きめですが、ブイズのドット絵が書いてあるスマホカバーがあったので一安心です。さすがにカバー無しではスマホは扱えません。可愛かったのでまあよしとします。

それではまた次回お会いしましょう!ノシ

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