ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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遂にリーリエVSブルー完結です。

どのような結末かは本編でお確かめください。

補足ですがシロンが習得するのに苦労したムーンフォースを何故ピッピが普通に使えるのか理由を書いておきます。

先ず作中でも説明した通り、アローラのロコンはフェアリータイプを所持していません。ですので原作で言うタイプ不一致であるため相性がいいとは言えません。(メタ発言をすればムーンフォースは遺伝技だからと言ってしまえば終わりなのですが……)
対してピッピは自身がフェアリータイプを所持しているため相性がいいです。それに加えピッピは月に関するポケモンであるため、月から力を借りるムーンフォースは更に相性抜群です。
ですのでシロンとは違い苦労せず習得しているのはそのためです。また、シロンのムーンフォースは形にはなったものの、未だ完全体ではありません。ただ遺伝技を努力で習得できる辺り、シロンにはバトルの才能があるのだと解釈してください。

以上、作中では描かれていない裏設定でした。


決着!ライバルフルバトル!激闘の果てに!

約束の舞台、カントーリーグでのライバル対決が実現し両者白熱したバトルを繰り広げるリーリエとブルー。どちらも一歩も引かず、観客全員が魅了するほどの激闘となっていた。

 

リーリエのマリルが辛くも強敵キュウコンを倒したかと思えば、ブルーのライチュウがマリルに続いてフシギソウに勝利。しかしその後のピッピの変則的な戦い方に翻弄されライチュウが倒される波乱の展開となっていた。

 

そして遂に2人の対決はクライマックスへと向かっていた。

 

ブルーの残り手持ちポケモンは2体。続けて彼女が繰り出したポケモンは……。

 

「行くわよ!プクリン!」

『プクプク!』

 

ブルーが繰り出したのはふうせんポケモンのプクリンだ。プクリンはプリンの進化形であるため、以前戦ったプリンをつきのいしで進化させたのだろう。

 

「プクリン!マジカルシャイン!」

 

プクリンは開始早々、マジカルシャインの空から降り注ぐ虹色の光によって攻撃する。ピッピは回避が間に合わずに直撃を受けるが、それでも咄嗟に防御していたため急所へのダメージは免れた。

 

「ピッピさん!大丈夫ですか!?」

『ピィ!』

 

リーリエはダメージを受けたピッピが心配になり声をかけるが、防御によりダメージを減らすことに成功していたため大きな被害は見受けられない。最もピッピ自身遊んでいると思いこんでいるためいつものように元気が有り余っている様子で、ダメージがあるのかどうか判別がつかない状態だが。

 

「まだまだ行くわよ!プクリン!おうふくビンタ!」

『プクッ!』

 

プクリンはおうふくビンタを決めるためにピッピに走って接近する。だがプクリンのスピードは他のポケモンに比べれば遅く、距離もあるため充分に見てから対応できる動きであった。

 

「ピッピさん!飛び跳ねて躱してください!」

『ピッピ!』

 

プクリンのおうふくビンタは大きく飛び上がって回避したピッピ。ピッピ得意の変則的な動きでプクリンを翻弄するが、ブルーはピッピのその動きをすでに見切っていた。

 

「今よ!うたう!」

『プクゥ~』

「!?しまった!」

『ピ?ピィ……』

 

回避に成功したと油断していたのか、プクリンのうたうが着地したピッピに決まる。その心地よい歌声にピッピも段々と眠気に襲われてしまい次第に眠り状態となってしまった。

 

『プクリンの攻撃を軽々と避けたかに思えた最中、プクリンのうたうが決まりピッピは眠り状態になってしまったぞ!これはピッピ!絶体絶命のピンチか!?』

 

眠り状態はちょっとやそっとのことでは起きることはなく、その間完全な無防備状態となってしまう。どれだけ変則的であろうと、素早く立ち回ろうとも攻撃力が高かろうとも眠ってしまえば全て意味がないものとなってしまう。

 

「プクリン!おうふくビンタ!」

『プク!』

 

プクリンはおうふくビンタで怒涛の攻めを見せる。眠り状態のピッピは成すすべもなく無抵抗のままおうふくビンタを受けてしまう。

 

無抵抗の状態で攻撃を浴びてしまったためダメージは大きいものとなったがそれでもピッピは目覚めない。例え攻撃を受けてしまっても眠り状態が解除されることはない。それこそが眠り状態の最大に厄介な部分だ。

 

「ピッピさん!起きてください!」

 

リーリエはピッピにそう呼びかけるも、ピッピは気持ちよさそうに眠ってしまっている。その寝顔はまるで遊び疲れた子供のようで、普段であれば微笑ましい光景のはずではあるのだが状況が状況であるためそう思う余裕などない。

 

このままでは確実にピッピが負けてしまうと次第に焦りを見せるリーリエ。どうすればいいのかと頭を悩ませている間も、プクリンの更なる攻撃がピッピを襲ってしまう。

 

「続けてマジカルシャイン!」

 

プクリンのマジカルシャインが連続してピッピに直撃する。更なる攻撃によりピッピも流石にダメージが見られる状態となってきた。だが、それでも眠り状態は一向に解ける気配はない。

 

(このままではピッピさんが何もできずに負けてしまいます……。ど、どうすれば……)

 

攻撃を受けてもピッピは目覚めることはない。ならばどうすればピッピは起きるのかとリーリエは模索する。

 

(ピッピさんが起きてくれる方法……ピッピさんが……。!?そうです!)

 

そこでリーリエはある手段を思いつき、ピッピの目を覚まさせるために一歩前に出てその手段を実行に移す。

 

リーリエは大きく息を吸い、ピッピに呼びかけた。

 

「ピッピさーん!ごはんの時間ですよー!」

 

ブルーはそんなことをしたって起きるわけがないと心の中で思うが、その瞬間に不思議とピッピの動きに変化が起きたのだった。

 

『……ピィ?ピッピ!?』

「うそ!?」

 

なんと驚くべきことにピッピが目を覚ましたのだった。攻撃しても目覚めることがなかったピッピがまさかのリーリエの呼びかけによって目を覚ましたのだった。まるで子どものようにはしゃぎながら起きるピッピにブルーは驚きを隠せない。

 

『な、なんとピッピ!リーリエ選手の呼びかけに反応して目を覚ましたぞ!これはなんとも驚くべき光景でしょう!このような方法で目覚めるとはだれが予想できたでしょうか!?』

 

恐らくこのような結果は誰も予想しえなかっただろう。絶対にないと言い切れることではないが、少なくとも公式にこのような状況は例外がない。実際にこの光景を見ていたシンジやワタルもこうなるとは予想できていなかったようで目を見開いている。

 

「反撃行きますよ!ピッピさん!」

『ピィ?ピッピ!』

 

リーリエの言葉に従い、ピッピも笑顔のまま身構えた。あまりの衝撃に言葉が出なかったブルーだが、それでもまだ自分たちが優勢なのに変わりはないと気持ちを切り替える。

 

「ピッピさん!うたうには注意してください。」

『ピッピ!』

「ムーンフォースです!」

「プクリン!マジカルシャイン!」

『プクリン!』

 

ピッピはムーンフォースを放ち反撃を開始する。プクリンはムーンフォースに対しマジカルシャインで対抗する。しかしムーンフォースの方が僅かに威力が高く、マジカルシャインは次第に押し返されてしまいプクリンはムーンフォースの直撃を受けてしまう。

 

「プクリン!?」

「畳みかけますよ!めざましビンタです!」

『ピィ!』

 

ムーンフォースによって怯んだプクリンに隙だと、ピッピはめざましビンタで追撃を仕掛ける。プクリンにはそれを防ぐ手段がなく、めざましビンタの直撃を受け後退する。体力が減っているピッピの攻撃とはいえ、プクリンも着実にダメージは溜まっている様子だ。その表情からは先ほどまで余裕から焦りへと変わりつつある。

 

ピッピはめざましビンタによって怯んだプクリンに対し、ゆびをふるを開始した。何が出るか分からない博打にも近い技だが、ピッピにとっては決定打になりえるかもしれない技だ。特に相手からすれば何が出るか予想できないため追い詰められた状況で使われれば、その焦りからミスに繋がることにもなりかねない。

 

ピッピは振り子のように左右に規則正しくゆびをふる。なにが起きるか分からない緊張感に包まれる中、ピッピの振り子が動きを止めた。

 

『ピィ!』

 

ピッピはゆびをふるによって決定した技を放つ。ピッピの体を白い光が包み込む。その技には見覚えがあるとブルーはその技の名を口にした。

 

「!?ソーラービーム!」

 

そう、その技はくさタイプの中でも最強クラスの大技、ソーラービームだ。ソーラービームは先ほどブルーのキュウコンも使用した技だ。だが日の光から力を集める必要があるため発射までのタイムラグはある。

 

「ならこっちも!プクリン!れいとうビーム!」

『プクゥ!』

 

プクリンは力を溜めれいとうビームをピッピ目掛けて放つ。しかしそれとほぼ同時のタイミングでピッピはソーラービームを放ち対抗した。

 

フィールド中央でソーラービームとれいとうビームがぶつかる。互いに強力な技で競り合うが、強力すぎる技であるため互いの技が力に耐え切れずに大きな衝撃を発生させ爆発する。

 

「プクリン!」

「ピッピさん!」

 

衝撃の中自分のポケモンの名前を呼ぶブルーとリーリエ。次第にその衝撃は晴れていき視界が蘇る。するとそこに広がっていた光景は……。

 

『ぷくぅ……』

『ぴ、ピィ……』

「プクリン!ピッピ!共に戦闘不能!」

 

目を回し戦闘不能状態となってしまっていたプクリンとピッピの姿であった。どちらの体力も限界に近かったのが原因だろう。2人は慌てて自分のポケモンをモンスターボールへと戻す。

 

「プクリン、よく頑張ったわね。お疲れ様。」

「ピッピさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください。」

 

『なんと両者ダブルノックダウンだぁ!これでブルー選手のポケモンは残り1体!もう後がないぞ!』

 

ブルーの残り手持ちポケモンは相棒であるあのポケモンを残すのみ。対してリーリエはシロンと傷付いたハクリューだ。ハクリューのダメージを考えればそれほど差はないが、それでもブルーが追い詰められていることには間違いはない。

 

だがそれでも、ブルーはニヤリと微笑み寧ろ燃えてきたと口にした。そして自分の相棒に最後のバトルを託し、相棒のモンスターボールをフィールドに投げた。

 

「頼むわよ!カメックス!」

『ガメェ!』

 

ブルーの相棒、カメックスがフィールドに姿を現す。ブルーの手持ちは全て強かったが、それでもこうして対峙するとカメックスからは並々ならぬプレッシャーが放たれているのがリーリエにも伝わってくる。間違いなく彼女の最強ポケモンであると分かる瞬間だ。

 

だがそれでもリーリエは彼女にだけは負けられないと、自分のモンスターボールを手にしブルーの気持ちに応えるかのようにフィールドに投げた。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエが繰り出したのは同じく彼女の相棒であるシロンだ。以前戦った時は力の差があり負けてしまったが、今度は絶対に勝つとカメックスの姿を見据える。

 

「行くわよカメックス!ハイドロポンプ!」

『ガメ!』

 

初っ端から大技で攻撃してくるカメックス。だがどれだけ強力な技でもこれだけ距離が離れていれば回避するのはそう難しくはない。

 

「躱してください!」

 

シロンはカメックスのハイドロポンプをジャンプして回避する。シロンの元いた場所は地面が軽くえぐり取られ、その惨状を見るとどれだけカメックスの攻撃が重く鋭いかが伝わる。当たったら一溜りもないだろう。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コォン!』

 

シロンはハイドロポンプを躱した直後、こなゆきで牽制の意味も含めた攻撃を仕掛ける。

 

「カメックス!こうそくスピンよ!」

 

カメックスは自身の甲羅に籠りこうそくスピンでこなゆきを完全に防ぐ。攻防一体のカメックスの戦術にリーリエは感心するが、この一手を防がれてしまったのは痛い。うまく隙を見つけなければカメックスに一太刀入れる事すら難しいだろう。

 

「れいとうビーム!」

「シロン!こっちもれいとうビームです!」

 

両者同時にれいとうビームを放ちフィールド中央で再び技が交じり合う。ほぼ互角の勝負で、その技により発生した衝撃により互いの視界が奪われる。

 

「カメックス!みずでっぽうで薙ぎ払って!」

『ガメェ!』

 

カメックスはみずでっぽうを薙ぎ払う事で技の衝突により発生した衝撃を打ち消した。これにより視界は復活したものの、そこにはシロンの姿はなかった。

 

「こおりのつぶてです!」

「っ!?後ろよ!」

 

シロンはカメックスの背後からこおりのつぶてを放ち奇襲を仕掛けるが、カメックスはブルーの声に反応しこおりのつぶてを腕で防ぎ直撃弾を回避した。

 

シロンは自身の方が体が小さく小回りが利くため、その利点を活かし素早い動きで気付かれないように接近した。しかし素早さで下回っていようとも、カメックスはブルーの声に咄嗟に反応しその攻撃を受け流したのだ。

 

その行為は一見簡単そうに見えるが、ポケモンとトレーナーの絆、そしてすぐに反応できる反射神経、バトルの経験がなければ決して熟せない。それはブルーとパートナーのカメックスだからできた業だ。

 

「ハイドロポンプ!」

『ガメ!』

 

攻撃を防いだ瞬間、一瞬だけだが攻撃後の隙を見逃さなかったブルーはチャンスだと攻撃の指示を出した。カメックスもその指示通りに背中の砲台を構え狙いを定め即座に放つ。

 

シロンもその隙を狙われてしまい回避行動をとる前に被弾してしまった。先ほども見たため分かってはいたが、カメックスのハイドロポンプは強力でシロンのダメージもたったの一撃で甚大な被害となったのが分かる。

 

「シロン!?」

『こん……コォン!』

 

リーリエの声に反応し立ち上がるシロン。しかしそれでもダメージは目に見えて明らかだ。まず次の一撃を食らってしまえば耐えられないだろう。

 

「もう一度こなゆきです!」

「こうそくスピンよ!」

 

再びこなゆきを放つシロンだが、先ほどと同様にこうそくスピンによってあっさりと阻まれてしまう。攻撃を完全にしのぎ切ったと判断したカメックスは甲羅から体を出し正面を見る。

 

しかしそこにはシロンの姿はなかった。周囲をチラチラと見渡すがどこにも姿は見当たらない。ならばどこに行ったのかと考えるが、その時ブルーの声が耳に入り我に返った。

 

「カメックス!上よ!」

『ガメ!?』

 

カメックスが上を見上げると、そこには飛び上がり既にムーンフォースによる攻撃態勢に入っているシロンの姿があった。

 

カメックスのこうそくスピンは一見隙の無い防御技に見えるが、自分の体を甲羅の中に隠す関係上視界は殆ど見えていない。そのためそこに一瞬の隙が生まれ、カメックスの目を欺くことができたのだ。

 

「シロン!ムーンフォースです!」

『コォン!』

 

シロンはムーンフォースを放ちカメックスに渾身の一撃を浴びせる。カメックスも焦りからか防御も回避も間に合わずその直撃を受け怯んでしまう。だが即座に立ち直り、反撃を開始した。

 

「甘いわよ!れいとうビーム!」

 

カメックスは攻撃後の隙を晒したシロンにれいとうビームを放ち反撃する。

 

「!?かわしてください!」

 

シロンに躱すように指示を出すリーリエ。しかし先ほどの重い一撃がここにきて響き、シロンは一瞬膝を崩してしまい回避行動が遅れる。

 

咄嗟にれいとうビームで反撃しようと試みるが、自分が技を撃つ前にカメックスのれいとうビームが被弾し飛ばされてしまった。

 

「!?シロン!」

『コォン……』

 

「ロコン!戦闘不能!カメックスの勝ち!」

 

『おおっと!ここにきてロコンが倒れてしまった!これでリーリエ選手のポケモンはハクリューのみ!いよいよ最後のバトルとなります!』

 

「……シロン、お疲れさまでした。あなたの戦いは無駄にはしません。ゆっくり休んでください。」

 

リーリエは健闘してくれたシロンをモンスターボールへと戻す。相手はあのブルーのカメックスだ。負けてしまうのも無理はない。だがそれでもカメックスからしても決してこの勝利は簡単なものではなかった。

 

実際、シロンの攻撃を浴びてカメックスも傷付いている。少なからずシロンの活躍は眼に見えて明らかだ。これで条件はほぼ互角だろう。

 

「……最後はあなたに託します!ハクリューさん!」

『クリュー!』

 

そしてリーリエの最後のポケモン、ハクリューが姿を現す。先ほどのトゲキッスとの戦いによるダメージは決してなくなっていないが、それでもモンスターボールにて待機していたからか多少はダメージも回復しマシになっているようだ。これならば今のカメックスとも充分渡り合えるであろう。

 

「泣いても笑ってもこれがラスト……最後まで全力で行くわよ!リーリエ!」

「はい!私も全力でぶつかります!ブルーさん!」

 

ブルーの言葉に同意し意気込むリーリエ。そんなトレーナーたちの思いに応えるように、ハクリューとカメックスも再び気を引き締める。正真正銘、ライバルバトルのラストバトルが開始された。

 

「カメックス!ハイドロポンプ!」

『ガメェ!』

「ハクリューさん!アクアテールです!」

『クリュ!』

 

カメックスのハイドロポンプをアクアテールで防ぐハクリュー。しかしカメックスに連続で攻め込まれてしまえば防戦一方となりジリ貧だ。

 

そのためペースを握られないために今度はこちらからとリーリエは攻勢にでることにした。

 

「ハクリューさん!たつまきです!」

「みずでっぽうよ!」

 

ハクリューは文字通り竜巻を発生させる。カメックスはみずでっぽうで竜巻の接近を許さず阻害する。

 

「ドラゴンテールです!」

『クリュー!』

 

ハクリューはその攻撃の隙を狙い飛び上がり接近することでドラゴンテールにより攻め立てる。

 

「こうそくスピンよ!」

『ガメ!』

 

しかしその攻撃はこうそくスピンにより防がれてしまい容易く弾かれる。そして今度はハクリューが隙を晒しカメックスが反撃に出る。

 

「れいとうビーム!」

「!?こちらもれいとうビームです!」

 

カメックスはこおりタイプのれいとうビームで攻撃するがハクリューのれいとうビームがフィールド中央で炸裂し合う。こうそくスピンによって弾かれ態勢を崩してしまったハクリューだったが、何とか空中で態勢を立て直すことに成功した。これは柔軟で空中戦も可能なハクリューだからこそうまくいったのだ。

 

さすがにこおりタイプの技を直撃でもらうわけにはいかないと焦ったリーリエ。もし今のれいとうビームを食らってしまったらドラゴンタイプのハクリューはただでは済まなかっただろう。

 

「カメックス!ハイドロポンプ!」

「躱してください!」

 

着地を狙いカメックスはハイドロポンプを放つが、ハクリューは細く柔軟な身体を利用しするりと回避しその勢いでカメックスに接近する。

 

「ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

 

ハクリューは手の届く距離まで接近しドラゴンテールで攻撃する。これだけ距離を縮めれば間違いなく直撃すると確信していた。しかし、それこそがブルーの狙いだった。

 

「カメックス!ハクリューを捕まえて!」

『ガメェ!』

 

カメックスは振り払われるドラゴンテールをがっしりと掴み受け止め捉えた。ハクリューはカメックスの拘束から逃れようともがくがパワフルなカメックスから逃れることが出来ず振りほどけない。

 

「投げ飛ばして!」

 

カメックスは捉えたハクリューを空中に投げ飛ばした。その反動によりハクリューは自由が利かずいい的となってしまった。

 

「今よ!れいとうビーム!」

『ガァメェ!』

 

カメックスは弱点であるれいとうビームで確実にダメージを狙ってくる。投げ飛ばされ身動きが取れないハクリューは抵抗することが出来ずにれいとうビームの直撃を受けてしまう。

 

「ハクリューさん!?」

『く……リュー!』

 

ハクリューはリーリエの声に反応し何とか立ち上がる。それでも弱点であるこおりタイプの技を受けてしまったためダメージは相当きている。現に今も足取りがおぼつかない様子で体力も限界が近づいているのが見て取れる。

 

(ハクリューさんの体力もそろそろ限界です。おそらく次の一撃を受けてしまえば……)

 

倒れてしまう。そう最悪の結果をリーリエは想像する。しかし、それでも自分が負けることは一切考えなかった。絶対負けられない戦い。そして何よりトレーナーとして、自分のポケモンを信じているから。

 

ならば自分のできることはただ一つだ。

 

「ハクリューさん!」

『クリュ?』

「絶対勝ちましょう!私たちの全力で!」

『……クリュ!』

 

リーリエの眼を真っ直ぐと見つめ、ハクリューも自分のトレーナーと思いを重ねる。

 

ブルーはリーリエの眼を見て、まだ諦めていないのだと感じ取る。諦めが悪く、ポケモンとの絆が深いトレーナーほど怖いものはない。それを理解しているからこそ、ブルーは決して油断はしないとカメックスと意思を通わせる。

 

「全力で叩き潰すわよ!ハイドロポンプ!」

『ガメェ!』

 

最後の最後まで全力で戦う。そう決めたブルーはとどめと言わんばかりにハイドロポンプで仕留めにかかる。

 

「ハクリューさん!ジャンプです!」

『クリュ!』

 

ハクリューは尾を使い高くジャンプすることでハイドロポンプを回避する。

 

「みずでっぽうよ!」

 

カメックスはハイドロポンプよりも隙の少ないみずでっぽうで追撃する。この状況でもブルーは慌てることなく冷静に立ち回る。

 

「ハクリューさん!アクアテールです!」

『クリュー!』

 

ハクリューはアクアテールでみずでっぽうを振り払う。打ち消されたみずでっぽうはその場で水しぶきを上げ美しく散っていった。

 

「ドラゴンテールです!」

 

ハクリューはアクアテールによる反動を利用し更に大きく振りかぶってドラゴンテールを振り下ろす。

 

「何度やっても無駄よ!もう一度受け止めてあげるわ!」

『ガメ!』

 

先ほどと同様、振りかざしてくるドラゴンテールを正面から受け止める態勢に入るカメックス。このままでは先ほどの二の舞となりリーリエとハクリューは確実に負けてしまう。誰もがそう思った。

 

「無駄ではありません!ハクリューさん!地面に叩きつけてください!」

「なっ!?」

 

正面から来るかに思われたドラゴンテールはブルーの予想を大きくはずし、カメックスに届く寸前の地面に叩きつけられた。その高度から叩きつけられたドラゴンテールにより地面はひび割れ、大きな衝撃が発生しカメックスは態勢を崩した。

 

「しまった!?リーリエの狙いは!」

 

ブルーはそこでようやくリーリエの狙いに気付く。しかしその時には既に遅く、ハクリューは最後の一撃を決める態勢へと移っていた。

 

「これが私たちの全力です!ハクリューさん!ドラゴンテールです!」

『クリュウ!』

 

ハクリューは自分の持つ最大限の力でドラゴンテールをカメックスの懐に振り切った。カメックスは先ほどの衝撃によりうまく受け身の態勢に入れず、不安定な状態で懐に潜り込んだハクリューの全力のドラゴンテールを浴びてしまう。

 

そのハクリューの一撃は今までの攻撃を凌駕するほど重く、カメックスの巨体は宙に浮かび大きく吹き飛ばされる。

 

「!?カメックス!」

『ガメ……』

 

「カメックス戦闘不能!ハクリューの勝ち!よって勝者!リーリエ選手!」

 

カメックスは目を回し戦闘不能状態となり、遂に激闘だった因縁のライバルバトルに終止符が打たれたと同時に、まるで大雨のように会場全体を大歓声が包み込み鳴り響いたのだった。




ライバルバトルはリーリエの勝利に終わりました。結構予想より長引きましたが、個人的に書きごたえがあったので満足です。もうこれが最終回でいい?ダメ?さいですか(´・ω・`)

感想や個別メッセージで時たま応援メッセージが届いたりしてるのでヌシも頑張れています。なのでこれからもこの調子で気長かつ自由気ままに書き進めていきたいと思います。

ヌシの戦いはこれからだ!

ご愛読ありがとうございました。作者の次回作にご期待ください。

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