その日の放課後、俺達は部室に集まっていた。
「みんな集まってくれたようね。」
全員揃った事を確認してリアスが声を掛ける。手には記録メディアを持っていた。
「若手悪魔の試合を記録したものよ。私達とシトリー眷属のもの入ってるわ。」
今日はみんなで試合のチェックをすることになっていた。
先生がディスプレイの前に立って言う。
「お前らの他にも若手悪魔はゲームをした。大王バアル家と魔王アスモデウスのグラシャラボラス家、大公アガレス家と魔王ベルゼブブのアスタロト家、そろぞれお前らの後に試合をした。それを記録した映像だ。ライバルの試合だからよく見ておくようにな。」
『はい!』
アザゼルさんの言葉に全員が頷いた。
確かに気になる。ほとんが俺達と同期の悪魔達のはずだ。どのような戦いをしたのか?力量は?
みんなも同じ様子でモニターへ視線を向けていた。
「まずはサイラオーグ──バアル家とグラシャラボラス家の試合よ。」
いきなりサイラオーグさんの試合か。
ディスプレイに映像が流れる。
試合から数時間みんなの顔つきは真剣そのものになり視線は険しいものになっている。
映像から伝わってくるのは圧倒的なまでの『力』だった。
ヤンキー・・・ゼファードルとサイラオーグさんの一騎打ち。一方的にヤンキーが追い込まれていた。
眷属同士の戦いは既に終わっていて、それぞれの戦いは白熱したが、問題は『キング』同士の戦いだ。
最後の最後で駒をすべて無くしたヤンキーがサイラオーグさんを挑発した。サシで勝負をしろ、と。サイラーグさんはそれに躊躇うことなく乗った。
それは一方的な戦いだった。ヤンキーの魔法を弾き返し、まともにヒットしても何事も無かったかのようにサイラオーグさんは反撃していた。
自分の攻撃が通じないことで、ヤンキーは焦りの色を濃くし、冷静さを欠いていた。
そこへサイラオーグさんの拳が放り込まれる。
幾重にも張り巡らされた防御術式も紙のごとく打ち破られて、サイラオーグさんの一撃がヤンキーの腹部に鋭く打ち込まれる。
会場の空気を振るわせるような一撃を受けてヤンキーはその場にくず折れて悶絶していた。
サイラオーグさんは全て拳か蹴りしか使っていない。
打撃の威力が桁違いだった。ヤンキーが避けたりした時その一撃が建物に突き刺さって半壊したり、周囲の景色が吹き飛んでいた。
防御に徹しても俺でもダメージ通るな。
「凶児と呼ばれ忌み嫌われていたグラシャラボラスの新しい次期当主候補がまるで相手になっていない。ここまでのものか、サイラオーグ・バアル。」
祐斗とイリナの目つきが険しいものになっていた。パワーだけではなくスピードもかなりの速さだった。多分イリナでもあのスピードに対応するのは厳しいだろう。俺でもギリギリ追えるかどうかだった。通常の
「リアスとサイラオーグは『キング』なのにタイマン張りすぎだ。基本『キング』は動かないで駒を進軍させて敵を撃破していけばいいだからよ。ゲームでは『キング』が取られたら終わりなんだぞ。バアル家の血筋は血気盛んなのかね。」
先生の言葉にリアスは顔を真っ赤にしていた。
「ゼファードルってどれくらい強いんですか?」
俺の問いにリアスが答える。
「六家限定にしなければ決して弱くは無いわ。といっても前次期当主が事故で亡くなっているから代理ということで参加しているけれど・・・。」
朱璃さんが続く。
「若手悪魔の対決前にゲーム運営委員会が出したランキングだと1位がグレモリー、2位がバアル、3位がアガレス、4位がアスタロト、5位がシトリー、6位がグラシャラボラスだな。『キング』と眷属を含み平均で比べた強さのランクだ。それぞれ一度手合わせして1部結果が覆ったけどな。」
「まあ、1位がお前らな訳だが・・・お前等は制限があるからな。それを入れれば1位がバアルになっていたかもしれない。」
アザゼルさんが補足する。
「イッセー抜きだと厳しいわね。朱乃と私が本気で戦っても勝てないでしょうね。」
イリナの意見に朱乃も頷いている。
「わかりやすくグラフをみせてやるよ。各勢力に配られているものだ。」
アザゼルさんが術を発動させて立体映像的なグラフを展開する。
グラフにはリアスをはじめ他の若手悪魔の名前と写真が貼ってある。
そして各人の所にパラメーターが書いてあり、パワー、テクニック、サポート、ウィザードそれから
「こうやって見るとサイラオーグさんはずば抜けてるな~。」
サイラオーグさんは
「リアスは
「これってサイラオーグさんは
「そうだ。ただ現状で、という話でだがな。ゼファードルの試合では本気は出して無かったしあれから修行もしてるだろうからなんとも言えん。ちなみにイッセーはパワーだけならサイラオーグより上だ。
アザゼルさんの言葉に考える・・・・。
「なんで俺のもあるんですか!?」
「ああ、下級でしかも兵士で現状ここまでの実力ある奴はいないからな、面白そうだから参考までに出してみたんだよ。」
面白そうだからって・・・。
「私よりもイッセーが
「リアスまで何いってるの!?」
「それもいいかもな。とはいえ戦術面ではやっぱりリアスのほうが詳しいし頭も良いからな。
「当たり前ですよ!てか軽く俺ディスられてね?」
リアスとアザゼルさんと俺のやりとりにみんなが笑う。
「サイラオーグさんて天才なんですかね?パワーは俺並みでかつ
ふとした疑問を言ってみる。
「それは逆だ。」
「逆?」
アザゼルさんの言葉にちょっと驚く。
「ああ。サイラオーグはバアル家はじまって以来の才能の無い純潔悪魔だ。バアルの特色である滅びの力を持って生まれなかったな。そして滅びの力を強く手に入れたのは従兄弟のグレモリー兄妹だったのさ。」
────っ。
ということはリアスのお母さんはバアルの家の出だからそれがリアスやサーゼクス様に継がれてサイラオーグさんには継がれなかったと・・・なんて皮肉だ。
「それでも若手最強って・・・。」
「ああ、サイラオーグは家の才能を受け継ぐ純潔悪魔とは違い、本来しない事をして天才どもを追い抜いたのさ。」
「本来しない事?」
アザゼルさんは真剣な眼差しで話す。
「凄まじいまでの修行だよ。サイラオーグは尋常じゃない修行の果てに力を手に入れた稀有な純潔悪魔だよ。あいつには己の体しかなかった。それを愚直なまでに鍛え上げたんだよ。」
言葉が出なかった。俺達もかなりの修行をして力を手に入れているがサイラオーグさんとは逆だ。持っている力を十二分に発揮する為、コントロールする為にしてきた俺達の修行とは違ってサイラオーグさんは力や才能が無い為、力を得る為に修行をしてきた。
「サイラオーグは生まれた時から何度もの勝負の度に打倒され、敗北し続けた。華やかに彩られた上級悪魔、純血種の中で泥臭いまでに血まみれの世界を歩んでる野郎なんだよ。」
だからこその自信であり、他とは違う雰囲気を持っていたのか。
「才能の無い者が次期当主に選出される。それがどれほどの偉業か。──敗北の屈辱と勝利の喜び、地の底と天上の差を知っている者は例外なく本物だ。ま、サイラオーグの場合、それ以外にも強さの秘密はあるんだがな。」
試合の映像が終わった。
最後は物陰に隠れたゼファードルが怯えながら震えながら敗北を宣言した。
みんなは息を飲んで見ていた。
実際蟻と象の戦いに等しかった。ゼファードルの攻撃はことごとく弾かれ避けられる。当たっても意にも返さない。そんな戦いを終始していた。
勝利への執念というか、物凄い気迫だった。己の信念や夢に向かって突き進む覚悟を持った戦いと言えばいいのだろうか?
「先に行って置くがお前等、ディオドラが終わったら次はサイラオーグだぞ。」
『えっ!?』
アザゼルさんの言葉に全員が驚く。
「少し早いのでは?先にゼファードルとやるものだと思っていたわ。」
リアスの言葉に全員同意みたいだ。
だが、アザゼルさんは首を横に振り
「奴はもう駄目だ。ゼファードルはサイラオーグの試合で潰れた。この試合で心身ともに恐怖を刻み込まれた。奴はもう戦えん。サイラオーグはゼファードルの心──精神まで断ってしまったのさ。だから残りのメンバーで行う。若手同士のゲーム、グラシャラボラス家はここまでだ。」
確かに映像では試合が終わっても怯えているゼファードルの姿が映し出されていた。
精神を断つ──か。今までには居なかった相手かもしれないな。
「お前らも充分に気をつけておけ。あいつは対戦者の精神をも断つほどの気迫で向かってくるぞ。あいつは本気で魔王になろうとしているからな。そこに一切の妥協も躊躇もない。」
アザゼルさんの忠信は心にしみる。だからといって俺も負ける訳にはいかない。実際オーバードライブ無しでどかまでやれるかは分からない。とはいえまだ時間はあるからな、修行と当たらしいつからの模索は続けるし、それが駄目でも負ける気は無い。
リアスは深呼吸して言う。
「まずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの試合も研究のために見るわよ。──対戦相手の大公家の次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話だもの。」
「大公が負けた!?」
あそこの眷属もかなり強かったはずなんだけどな?それを倒したディオドラか・・・。
「私達と善戦したソーナ達は金星、アガレスを打ち倒したアスタロトは大金星という結果ね。確かに所詮対戦前のランキングはデータから算出した予想に過ぎないわ。ゲームが始まれば何が起こるかわからない。それがレーティングゲーム。」
「とはいえアガレスが負けるなんてな。」
俺がつぶやいてリアスが次の映像を再生させようとした時だった。
部屋の片隅で一人分の魔法陣が展開した。
見覚えないな、何者だ?
「──アスタロト」
朱乃がぼそりとつぶやく。
中から現れたのは爽やかな笑顔を浮かべる優男だった。
「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました。」
突然現れた奴はアーシアに向かって微笑むのだった──。
次回はディオドラとのやりとりです。
時間が欲しい・・・。