ハリー・ポッター 新月の王と日蝕の姫   作:???

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とうとう夏休みも終わりですね

それではどうぞ
第10話 日常から非日常へ


第10話 A cotidiana in incredibili

レクスはたった1人のスリザリン寮で何時ものように席を占領し羊皮紙にペンを走らせていた。寮に入って来る者などいないはずなのに1人や2人じゃない人数の気配を感じ、そこでようやく今日で休暇が終わりだと思い出した。

 寮の入口付近の席を使っている為入ってくれば変な方向でも向いていない限り嫌でも視界に入ってしまう。一部の生徒からは魔王の如く恐れられているレクスと目が合ってしまった上級生は小さな悲鳴を上げ速足に奥に引っ込んでしまった。

 レクスからすれば有象無象が何をしようと知った事では無いがいちいち騒がれては面倒だと防音呪文を用いて遮断した。机に向き直ったレクスは知る由もないがスリザリン生の大部分が返ってくるまでに5人に1人の割合で驚いていた。

 

 その後もペンを走らせていたのだが後ろから触られる気配を感じ瞬時にペンを杖に持ち替え突き付ける。近付いて来ていたのはリーゼだった。リーゼはいくら話し掛けても反応の無いレクスを不審に思い、軽く肩を叩こうと手を伸ばしたのだが気付けば首元に杖を突き付けられていた。

 リーゼが何かを言っている様だが何も聞こえない。そういえば防音呪文を掛けたままだったと解除するが、何故かリーゼの怯えた顔を見ると胸が痛み杖を降ろした。

 

「その、レクス、驚かせてしまってごめんなさい」

「……いや、こっちも。……後ろから触らないで」

「ごめんなさい。あ、レクス髪飾り付けてくれたのね」

「……どう」

「とても似合っているわ。先に言うべきだったけどプレゼントの魔導書、とても分かりやすかったわ」

「……そう。ならいい」

 

 レクスが研究する傍らでリーゼが予習をする。稀にリーゼでも理解できない箇所がある時には気が向けば見てやる。その2人の背景としてドラコたちが自慢話で騒ぎクィディッチチームが作戦会議をする。そんないつもの日常に戻ったのだと思うと、レクスの胸の内に穏やかで抗い難い温かなモノが宿った。それに名前を付けるなら友情とでもいうのかと自然に頬が緩み微笑みを浮かべた。

 しかし___

 勉強していたリーゼがふと顔を上げると思わず目を見開き二度見するほどの衝撃があった。

 表情筋が存在するのかと言いたくなる程に変化の無いのレクスの気分を見分けるには唯一感情の読み取れる瞳を見るしかない。その筈だったがリーゼが見たその時はレクスが思わず見惚れる様な笑みを浮かべたのだ。

 だが直ぐにその衝撃は別種の驚愕に塗りつぶされた。レクスの顔を見ていたらいきなりペンをぐしゃりと握りつぶしたのだ。しかもそれに気付いていないのか尚も力をこめて粉砕し破片が手に食い込み手に血が垂れ羊皮紙を赤く染めた。

 

「レ、レクス⁈」

「……あ」

 

リーゼが慌てて声を掛けるとそこで始めて気付いたのか血の滴る腕を茫然と眺めている。そんなレクスが最初に取った行動は傷を塞ぐことでも、汚れた羊皮紙を拭うでも無く、砕け散ったペンを修復することだった。

 

「……良かった」

「ペン何かよりも先に治癒が先でしょう⁈いいから手を出し__え?」

 

リーゼが杖を取り出し治癒魔法を掛けようとレクスの右の手のひらを見ると色々なところにたこがあるくらいでペンが刺さったかの様な傷は存在しなかった。いつの間に治したのかと首を傾げるがリーゼに見られずに治癒できるタイミングなど無い。

 

「いつの間に治したのよ」

「……秘密」

「何よそれ。……まぁいいわ、でも次からは自分の身体を大事にしなさいよ」

 

リーゼがたしなめる様にそう告げるとレクスは驚いたような顔をした。

 

 

 

 

 

クリスマス休暇から開けて数週間が経つがその間事件らしい事件は起こらず平穏な日々であった。そのまま何も起こらず一年が終わってくれと多くの者が願う中それは破られた。レクスがリーゼと大広間に向かって歩いていると何重もの人だかりが出来ていた。一体何事なのかとリーゼが見渡すとセラがフリードと人だかりの方を見ているのが目に入った。

 

「あら丁度良かったわセラ。この人だかりは何なのかしら?」

「グリフィンドールが一晩で200点も減点されちゃったからね。みんなびっくりしてるんだよ」

「200点ですって⁈一体何があったのよ」

「ねぇフリード。言ったらだめ?」

「この二人になら大丈夫か。……あー、ちょっとここだと話しずらいから移動しないか」

 

 フリードはレクスの事は兎も角としてリーゼの事はあまり知らないが数少ない交流や又聞きの噂などから、こういった緘口令が引かれている事をぺちゃくちゃと話したりはしないだろうと信用することにした。

 グリフィンドールであったならば談話室でゆっくりと話すことも出来たのだろうが生憎レクスとリーゼはスリザリンだ。寮が違う者たちが交流できそうな場所など大広間くらいなものだが内緒話には向かない。ならばどこで話すのかと思えばフリードは図書館へと入っていった。

 

「それでな、話はハグリッドがドラゴンを育てようとしたところから始まるんだ」

「ドラゴンですって!?あの森番は何をやっているのかしら。普通に法律違反よ」

「ハグリッドからするとドラゴンも子犬も変わらないからね」

「……ちょっと待ちなさい。セラまさか貴女も関わっていたんじゃないでしょうね」

「うえっ、藪蛇だった」

「ことが事だからお父様やお母様には報告できないけど危険なことは止めなさい」

「あーもう、わかってるってば。それより話を進めようよ」

「じゃ続けるぞ。ちょっと考えれば解ってた事なんだが成長が早くてな。そこでルーマニアに居るっていうロンの兄貴がドラゴンキーパーをやってるらしく、ホグワーツまで回収に来て貰う予定だったんだ。だがロンの不手際でその手紙がドラコの手に渡っちまってな」

「無計画過ぎる上に杜撰。ドラコのあの変な笑いはそういう事だったのね」

「でも今更計画は変えられないと昨日俺とハリーとハーマイオニーでドラゴンを天文塔に運んだんだがその帰りにフィルチに捕まっちまったんだ。それでマクゴナガルに引き渡されて大目玉ってわけだ」

 

 フリードの語りが終わるとリーゼは頭が痛くなって手で抑える。彼らの計画の杜撰さなどは思わず口を挟んでしまう程だった。そんな事にセラが関わっていたなど冷や汗ものだ。

 

「そういえばドラコはどうしたのかしら。性格からして放置とは思えないけど」

「ああ、それなぁ。あいつが変な欲を出してくれて助かったぜ。お陰で現場は抑えられなかったし一足先にフィルチに捕まって減点されたからな」

「道理で朝から静かな訳ね」

 

 200点も失ったグリフィンドールとは違いスリザリンは減点が20点だけなのでそのくらいの減点では今の王座は揺るがない。寧ろ首位争いをしていたグリフィンドールが自滅してくれたお陰で寮杯獲得はほぼ揺るがぬ物となった。

 

「ああ、そう言えばレクス」

「……何」

「クリスマスプレゼントで渡したペン、使ってるか?」

「……拒否。あんな安物」

「仕方ねぇだろ。小遣いが無かったんだから」

 

 その時リーゼは休暇明けの日の事を思い出していた。あの時レクスが慌てて直したペンは見るからに安物に見えた。更に言えばそれ以降寮内で使っているペンはその時の物だ。ならば、そういうことだろう。

 

「ふふっ」

「何だよシンクレア」

「いえ、ごめんなさい。何でもないわ。……ただあなた達兄弟の事を少し誤解していたみたい」

「何だそりゃ。誤解するような事言ったか、なぁレクス」

「……知らない」

 

 

 

 

 

 それから数日が経ち多くの生徒が悲鳴を上げる期末試験がやって来た。試験会場はその教科の場所な訳で結界スリザリンとグリフィンドールは大体の試験が合同であった。だが普段と違うところと言えば蛇蠍の如く嫌い合う2寮が隣り合わせても問題が発生しないという事か。

 レクスにとってみればこの程度暇つぶしににすらなりえない問題でしかなく、リーゼはこのままでも成績上位は堅いであろう。そのリーゼと最後の復習をしているハーマイオニーも同じくだ。その寮が違う2人であるがハロウィンの騒動を機に友好を結んだようだ。

 

 ドラコやセオドール、フレーズ、ダフネは最後に悪足搔きとして頭に詰め込んだものを忘れないようにブツブツと呟いている。グラップやゴイルは一転して余裕の風格だがあれは逆に何も考えていないだけだろう。そもそも勉強しているのかすら怪しい。

 フリードやハリーにセラ、ロンなども同じく必死に頭に詰め込んでいるがその内の何割が残るのだろうか。その隣ではネビルが派手に転んだ。普通に歩いても転ぶというある種の才能を持つネビルが暗記の為、上を見ながら歩けばどうなるかなどは解り切った事で、校則違反をしたハリーの前をスネイプが通ったらどうするかなどと聞くようなものだ。

 

 実際試験の内容はレクスにとって児戯に等しく思えた。ただ空白で提出するにはプライドが許さず全ての空欄を埋めた。そしてレクスが腕の動きを止めたのは試験開始より長針が五つ進む前の事であった。

 実技試験の存在する魔法薬学ではスネイプを唸らせ、妖精の魔法学ではフリットウィックを感嘆のあまりひっくり返らせた。また変身術学ではレクスの提出した課題を見たマクゴナガルはニコリと微笑んだ。

 試験を終えてホグワーツの廊下を1人歩いていたレクスは前方の曲がり角から興味深い内容が聞こえ、すぐさま壁の窪みに身を隠した。

 

「今夜ダンブルドアはいないしマクゴナガルは聞いてくれない。なら僕達が行くしかない。そうだろう?」

「気は確かか?ダンブルドアがいなんだぜ。俺たちに何ができるってんだよ」

「そうだよハリー」

「だめよ。マクゴナガル先生にもスネイプ先生にも言われたでしょ。退学になっちゃうわ」

「だからなんだっていうんだ!わからないのかい?スネイプが石を手に入れたら、ヴォルデモートが戻ってくるんだ!僕一人でも行く!」

「はぁ、1人でなんか行かせるかよ。俺も行くぜ」

 

 4人は今している会話に悪意ある者からすればどれほどの価値があるのかそれを知らずに続ける。

 ハリー達がその場を去った後も暫くレクスは動かないでいた。正に絶好の機会。恐らくこれも罠だろうが諸共餌を喰い千切ってやろう。ボク()を侮ったお前の負けだダンブルドア。

 そうレクスは嗤った。

 それはかつてリーゼに見られた微笑みとは真逆。真冬の吹雪の如く冷たく、しかし煉獄の炎を思わせる狂笑であった。

 

 深夜生徒達が寝静まる時刻になるとレクスは姿現しで禁じられた廊下に跳んだ。三頭犬は侵入者に気付くと低い唸り声で威嚇するが、レクスと目が合うと一転して怯える様な声に変わった。

 この三頭犬はハグリッドの手によって訓練された優秀な門番であるが、門番である前に獣であった。三頭犬は野性の勘で彼我の戦力差を悟り一度たりとも襲い掛かる事なく腹を見せて降参の意を示した。

 既に地下への扉は開かれているがレクスは、三頭犬に杖を向けると3つの禁じられた魔法のうちの一つ服従の呪文を使った。

 人間に向けて使用すればそれだけで世界最凶の魔法監獄 アズガバン行きは避けられない。そんな法と道徳を犯す呪文を使い三頭犬に自分以外を襲えと指示を出す。それだけでは意味が無いと三頭犬の最大の弱点である音楽を無効化する為に、その大きな耳を焼いて塞いだ。弱点を消して文字通り命懸けで敵を襲わせる。これならば多少の時間はダンブルドアを足止めできるだろう。

 

 次の罠である悪魔の罠にはいたるところに蛇を忍ばせた。全ての蛇の血に呪毒を仕込んみ条件指定の爆発呪文をかけある為無効化されても大丈夫だ。

その次の鍵の鳥は正解のものを引き寄せ扉を開けた後複製呪文で倍以上に増やし襲撃呪文をかけた。それらに紛れ込ませて透明化した剣を何本か浮かせてその部屋を後にする。

 次の罠たるチェスはすでに終わっておりロンが倒れているだけだった。扉に凍結呪文をかけその場を後にする。

 次の部屋には2匹のトロールとそれらに追い詰められたフリードとハーマイオニーがいた。片方のトロールは既に気絶させられたようだ。とは言えそれなりの代償を払わされたようでフリードも気絶させられその前にハーマイオニーがかばうように立っている。いつぞやのトロールとは違いきちんとした武装を身にまとっており一年生の魔法では太刀打ちできない為壁際に追い詰められたようだ。

 レクスに気付いた様子の無いトロールは緩慢な動作で棍棒を振り上げ、それが頭上まで来ると一気に振り下ろした。ハーマイオニーは思わず目を閉じているがこのままでは間違いなくフリードも巻き込まれて死ぬだろう。

 レクスは誰に手を出しているのだと悪霊の炎で2匹諸共に焼き払う。

 

「え?何で此処にヴァルトフォーゲンがいるの___」

 

 ハーマイオニーはレクスが入ることに驚いている様だがすぐさま気絶呪文で気絶させる。その後忘却呪文をかけレクスと会っていないように記憶を改竄する。

 その後恐らくスネイプが仕掛けたのであろう毒薬の論理パズルを見る。レクスの頭脳を最大限働かせて先に進む事ができる薬を飲んで炎の奥に進み最奥部の部屋へ向かった。

 




中途半端なところで終わってるので何とかして近日中にもう一話上げて賢者の石編を終わらせたいと思います

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