ハリー・ポッター 新月の王と日蝕の姫 作:???
とはいえ本編にはまだ絡みませんが
それではどうぞ
第12話 深淵の底より
第12話 Ab imo abyssi
ああ、これは罰なのだろう。かつて■■■が■■■■として■したモノを見せられるなど。
■■■は気付くと見知らぬ部屋に立っていた。部屋は暗いが5歩先まではかろうじて見える程度には光源があるようだった。部屋は薄暗いせいか奥まで見通すことが出来ずひょっとすれば無限に続いているのではないかと錯覚するほどに広大であるが飾り気などは一切無く、一定の間隔で配置されたガラス製の筒状のモノ以外の物は存在しない。その円筒を下から光が照らし、床には用途不明のコードが無数に張り巡らされていた。
その円筒にしろ中は得体の知れない薄い緑の水で満たされ豆粒程の大きさのナニカが浮いていた。■■■は直感的にそれらはなにか良くない場所であると理解した。
後ろを振り向いてもあるのは無機質な石壁のみで扉どころか窓すら無い。ここから離れたい一心で出口を探す為自らの警告を無視して奥に足を進ませる。
奥に進めば進む程に円筒の中のナニカは大きくなりどこか生物めいた造形に近付いていく。それは過去に読んだ本に載っていた胎児の絵に似ていた。
そうやってどれほど奥に向かって行っただろうか。円筒の中のナニカは少なくとも見た目と大きさは人間の赤子の姿をしているが、それは偶然に過ぎないと理解していた。何故なら今見たモノの隣の円筒の中の赤子は柔らかそうな肌では無く爬虫類を思わせる鱗で覆われ、頭部からは角が突き出ていたからだ。その他にも何があったのか過程を想像したくない血で濁った赤い水と何かしらの臓器が数個浮いているだけのモノもあった。
そんな倫理を犯し正気を疑うような冒涜的な光景を前にして■■■は胃の中の物が逆流する感覚を覚え口を押さえる。だが夢の中である為か実際に吐くことはなかったが精神的にはそれほどの強い衝撃を受けたのは確かだった。
こんな場所など一刻も早く脱出したいとは思うが、進む程に円筒の中身は冒涜的なモノになっていく事を考えると無計画に歩き回るのはあまり得策とは思えない。しかし得てしてこういった夢はジッとしていても覚めることはなく、何かしらの行動が無ければ終わることはないだろう。
さてどうしたものかと頭を抱えた■■■だったが、ふと耳をすませば人の声が聞こえた。こんな狂った研究所にいるのだからまともな人間であるはずないが、得体の知れないナニカと一緒にいるよりはまだマシだろうと声のした方に向かう。ただそれでも見たくない物は見たくないので床に張り巡らされたコードに足を取られないようにするといった名目で俯いていた。
やがて声が聞き取れる位置まで来て足を止める。部屋自体が暗い為あまり読み取れる情報は無い。相手が2人であることと、片方の男はダンブルドアを想起させる様なシルエットとして出るくらいに長い髭を蓄えていた。
「御老公、指示通りにホムンクルスの鋳造は進んでいます。……ですが既に少なくない数の個体が魔法生物の因子に拒絶反応を起こし自壊しています」
「それがどうかしたか。指示は変わらん1万のホムンクルスを揃えよ」
「……っ、時代は変わったのです御老公。本当にあのような事を為さるつもりか!?」
「何も変わらんとも。我らが再び玉座に返り咲くのもな。___時にお主」
「馬鹿な!世界は王など求めてはいない。……何でしょうか」
「お主の息子は随分と有望な様じゃな」
「き、貴様!まさか、……。そんなことはさせん」
「であれば、どうすのが得策か既に理解していような。さぁ選択せよ1万の絶望か息子の絶望か」
「ぐぉぁ。___好きに、すればいい。だが、……もう、家族には、息子には手を出さないでくれ」
「ああ、分かっておるとも。全く最初から頷いておればいいものを」
老公と呼ばれたモノは半歩後ろに立つ男と、聞くだけで耳、否魂が穢れる様な会話をしている。付き従っている方の男はまだ二十代前半に見える容姿で何処かで聞いたことのある声だと■■■は思った。突然老人に異を唱えるが思えば最初の報告の時に既に声が震えていた気がする。会話を聞く限りではこの冒涜的な研究の主導者はこの男では無いことは理解できたが、かみついた代償として太い釘を刺されてしまった様だ。
男はヒトがするべきではない命の天秤のどちらを選ぶかを迫られて獣の様に唸り声をあげ葛藤した末にポツリと懇願の言葉を投げた。その言葉を聞いた老人はにこやかに微笑むがこれほどまでに温かさを感じない悍ましい笑顔は見たことが無い。そして男は前後不覚にでもなったかのように頼りない足取りで何処かに消えて行った。
「くく、ようやくだ。我が悲願の成就まで後僅か。ホムンクルスを最後の1人になるまで喰らい合わせる。それにより生み出されたモノは1万の憎悪を凝縮した怪物となるであろうな。それこそが我が■■■■■■■■■の蠱毒よ」
老人は先程まで見ていた円筒のナンバープレートの汚れを拭い狂笑を上げ姿を消した。消す際に聞こえた特徴的な音からして姿現しだろう。
だが狂笑は消えずそのまま響き渡っていた。
レクスは背中に硬い石床を感じゆっくりと身体を起こすが、直ぐに顔を引き攣らせることになった。起きてすぐのところからヴェルヘイムがこちらを眺めていたのだ。何があったのか記憶を手繰り調整と途中で意識が途切れたのを思い出す。不甲斐なさと憎悪が混ざってレクスは顔を顰めその場を後にした。
「ん?レクスじゃないか。こんな所で何やってんだ?」
「……関係無い」
「そんな訳ねぇだろ。泣いた跡があるぞレクス」
ヴェルヘイムの私室を後にしたレクスはフリードと出くわしてしまった。常のフリードであったなら、ばっさり切り捨てればそれ以上は踏み込んでは来ないのだが今回はやけにしつこかった。フリードに泣いた跡があると指摘され咄嗟にレクスは頬を拭おうとしたが、一拍遅れてそれこそがフリードの狙いであったと気付くも既に手遅れで、真剣な表情でこちらを見ている。
「泣いていたんだな。……俺は確かに頼りないかもしれねぇけど、それでも弟の、レクスの力になりたいんだ。なぁ何があったんだ」
「……お前には、関係無い」
「なら、もうそれは聞かねえよ」
だがそれでもレクスは強引に押し通る。それしか生き方を知らないのだ。レクスの頑なな態度にフリードは悲しそうな表情を浮かべた。だがその直後にいつもの表情に戻り夕食は何かなどという話題を振ってきたがそれは無視した。
フリードと話していたためそれなりに時間を使ってしまったが、レクスは別れた後
ホグワーツの森を禁じられた森と呼ぶならばこちらは彷徨いの森といったところか。だがそんな危険な森をレクスは1人進んでいた。彷徨いの森は侵入者にとっては処刑場に等しいが内部の者にとってはそうではなく、進行方向にある木が独りでに根を蠢かせて道を譲る故に迷う事すら無い。
少し先が見えない程に鬱蒼と生い茂る木々が蠢いて確保したレクス1人分程度の隙間を進んで行くと、やがて森を抜け出てぽっかりと開けた場所に出た。視界の先にある建物は、城と比較すれば小さな建物であるがそれでも
地下室どころかその建物にまともに立ち入るのは既にレクスしか居ない為か、照明の類は一切無い。だが暗闇であろうとも行動可能な目を有しているのでその点は問題無かった。
1階は荒れ放題だったが、地下室はそれとは真逆の静謐な雰囲気が肌で感じられる。その部屋の最奥には巨石が設置してあり、何か文字が刻まれているようで、その場の雰囲気も相まって石碑というよりは墓碑の様に思えた。だがそれを墓碑と呼ぶには少々不可解な点があった。それは、レクスの背丈など軽く超える黒い巨石に刻まれている文字はいずれも番号なのだ。およそ縦に百、横に百の一万個に見えるがよく見ると、左端の上から一番目の場所には一つ書き込めそうな欠けを残し空いていた。
地下室に降りてきたレクスの足取りは何かに取り憑かれたのかと勘違いする程に、様変わりし幽鬼の様にふらふらとした頼りないモノだった。やがて墓碑の前まで来たレクスは刻まれた文字を指でなぞる。鏡の様に磨かれた巨石は過不足なくレクスの表情を映している。その顔はかつての過去を偲び目元や頬が緩んだようにも、どうしようもない絶望に押し潰される一歩手前に出てくる渇いた笑みにも見えた。
そんな相反する感情の笑みを浮かべるレクスだったが最終的にどちらに傾いたかは明白だ。
「……ぁあ、ツェーン、ツヴァイ……。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。……こんな、
もし、この場にホグワーツの誰かが居たとしたら驚愕し目を疑うだろう。なにせあのレクス・ヴァルトフォーゲンが涙を流し、壊れたラジオの様に謝罪を繰り返し墓碑に縋り付いているのだから。そんな光景ホグワーツで最も親しいであろうリーゼはおろか、兄であるフリードや父親であるカイルですら見たことないのだから。
そうやって蹲っているとレクスの特徴的な長い髪がまるで風にあおられたかの様に揺れる。室内どころか地下である為そんな強い風が吹く余地などないというのに揺れ動く。
そこでようやく事態に気付いたレクスがあたりを呆然と見渡すと、まるでオブスキュラスの様な黒い靄がレクスを囲っていた。それに頬を撫でられるとその部位に鳥肌が立つような怖気が走ると同時に、信頼できる者の腕の中の様な安心感を覚えたレクスには受け入れがたいモノには思えなかった。
レクスは黒い靄の特に濃い一点を見つめ夢遊病者の様に弱々しい手を伸ばす。そこに手を突っ込んだ瞬間、レクスの腕がズタズタに切り裂かれた。その痛みで我に返ったレクスは慌てて腕を引っ込めようとするが既に時遅し。黒靄が切り裂いた傷口にそれが入り込んだのだ。それ自体には痛みは無く直ぐに傷は塞がったが、入り込んできた時に身体が揺れる感覚がした。レクスはそんな魂を犯されるような異物感故に肉が裂けるほど強く掻き毟るが、直ぐにそれが何なのか、何をしにここへ来たのかを思い出し手を止める。
精神を落ち着けるようにゆっくりと起き上がり再び巨石の前に立ったレクスは、先程の弱々しい態度とは異なり毅然とした態度ではっきりと告げる。
「……此処に来るのはきっと最後。だけど君たちは永劫忘れない。だから次に巡り合うまでさようなら」
墓前でそう誓ったレクスはその場を後にする。だがその時レクスは暗闇の中にいて尚、ハッキリと見える程に闇より昏い輝きを纏っていた。
ほんと伏線の張るのが上手い人ってどうやってるんでしょうね
作者が言うのもなんですがウチの主人公毎回SANチェック失敗してるなと