ハリー・ポッター 新月の王と日蝕の姫 作:???
あと警告ですが今回は残酷な描写タグがガッツリ仕事しますので苦手な方はお気を付けください。
ホグワーツは全寮制の学校である。その利点といえば友とのより深い友誼であったり勉学における幅広いサポートだったり、単純に通学費用が掛からなかったりと色々あるが、それでも家族と長期間会えなかったり勉強ばかりだったりで皆少なからず心労を抱えるだろうとクリスマスの前後1週間をクリスマス休暇と称して家に帰る事が許されていた。
帰る理由は家ぐるみで行われるパーティーに参加する為であったり手紙では伝えきれないホグワーツでの出来事を直接語るためであったりと様々である。だが中には家庭の事情で帰りたくない者やクリスマスを友と過ごしたいという者達もいる。そういった者らは少し前から大広間を出てすぐの掲示板のリストに名を書くことになっている。
一見すると何の問題も無いように思えるが前述にあるように事情があってホグワーツに残る者を狙った中傷が横行しかねない、というよりもこの手のトラブルは毎年一定数報告される。
ドラコがその在校者リストの中にハリーの名を見つけた際にわざとらしく憐れむような口調でハリーに聞こえるように呟く。
「可哀想に。クリスマスだというのに帰ってくるなと言われた子がいるんだね」
ドラコからしてみれば会心の一言だったというのにハリーは全く気にした風も無く隣のロンと談笑と始めてしまい、当てが外れたと舌打ちしその場を離れようとするが何の気なしにリストの方を見るとさぁっと顔が青くなるのを感じた。
在校者リストのスリザリンの欄に唯一レクス・ヴァルトフォーゲンと書かれていたのだ。
更に間の悪いことにヴァルトフォーゲン兄弟とシンクレア姉妹が4人で大広間に向かって来るのが分かったがレクスがドラコをまっすぐ見据えたその蒼い瞳には強弱はあれどハロウィンでトロールに向けていたのと同じ色が存在していた。殺されると直感したドラコは踵を返しホグワーツ特急へと走る。
「何だマルフォイの奴。急に走り出して」
「何があったんだろうね」
フリードからしてみればドラコがこちらを見たと思ったら怯えた目で全力疾走で逃げられたようなものだ。フリードは首を傾げセラは後ろに何か怪物でもいるのではと、恐る恐る振り返るが怪物はおろか人すら居なかった。
レクスからしてみれば愉快ではない事を話題にしていたドラコを軽く睨んだだけだというのにあれ程大袈裟に動くとは思っていなかったがリーゼは状況からして何と無く察した。
「まあそんなことは置いといてだ。レクスもホグワーツに残るとは思わなかったぜ」
「……城には帰りたくない」
「何だそんなにホグワーツが気に入ったのか?」
「……」
レクスとフリードの間に流れる空気がどことなく不穏なモノに変わったのを敏感に反応したセラは割り込んで話題を変える。
「ねえねえフリードはクリスマスのプレゼントは何が良い?」
「プレゼント?何でも良いぜ。こういうのはサプライズの方がおもしろいからな」
「じゃあ内緒にしておくね」
「セラ、そろそろ行かないと席が取れないわよ」
「え?もうそんな時間なの。それじゃあねフリード、レクス」
「ああ、また休み明けにな」
「休暇明けに会いましょうレクス」
「……元気で」
リーゼとセラを見送った後その足でスリザリン寮へと向かう。石壁に趣味の悪い合言葉を言うと壁が十字に割れ引き込んだ。その中にある扉をくぐっていくとようやくスリザリンの談話室に辿り着いた。スリザリンでホグワーツに残るのはレクスただ1人の為そこは無人のはずだが中には2人の姿があった。
片方はスリザリンの寮監のスネイプだったがもう1人はグリフィンドールの寮監のマクゴナガルだった。スネイプは寮監である為居ても別におかしくは無いがマクゴナガルがいるというのはどういうことだとレクスは2人に顔を向ける。するとスネイプが口を開く。
「見ての通りスリザリンでホグワーツに残るのは貴様だけだ。それを報告したところ吾輩はいいだろうと告げたのだが校長がいたく気にしておられた」
「その為特例として休暇期間中に限りグリフィンドール寮への出入りを許可します」
スネイプの説明に補足としてマクゴナガルが話すがレクスは内心舌打ちをした。スネイプの言う通り1人で構わないというのにダンブルドアめ余計なことを。
「それではグリフィンドール寮の場所を教えるので着いて来なさい」
マクゴナガルの案内について行くと、やがて8階の太った婦人の肖像画の前まで辿り着いた。マクゴナガルが合言葉であろう単語を太った婦人に告げると肖像画が扉の様に開けて道が開けた。そしてそのまま進むと中から炸裂音と共に花火やら糞爆弾やらが無数に放たれた。
炸裂音に反応したレクスは瞬時に杖を抜き防壁を張る。だが流石ホグワーツの副校長の肩書きは伊達ではないようでマクゴナガルが防壁を張る方が僅かに速かった。それらの爆音が止んだ後マクゴナガルはこの襲撃の犯人の名を叫んだ。
「フレッド!ジョージ!いい加減にしなさい!」
「お、俺たちじゃないぜ。なぁ兄弟」
「お黙り!あなた方でないなら他に誰がやるというのですか。グリフィンドール10点ずつ減点です」
「そりゃないぜ先生」
「最後にミスタ・ヴァルトフォーゲン。よく瞬時に対応出来ましたね。スリザリンに5点とします」
マクゴナガルはフレッドとジョージを減点した後レクスに微笑み加点しグリフィンドールの談話室を後にした。マクゴナガルが去ったのを確認すると減点された直後だというのにフレッドとジョージがレクスに駆け寄る。
「おおっ、すごいな」
「今のは俺たちなりの歓迎だったんだけどな」
「「ようこそグリフィンドールへ!」」
夢を見ている。これを初めて見たのはいつだっただろうか。それも思い出せない程に何度も見せられた。最初にこれを見た時には魘されて3日ほど起き上がれなかった。目を塞いでも逸らしてもその光景が焼き付いて離れない。これに何の意味があるのだろうか。これほどまでに自分の才覚を恨んだことはない。
ああ、これは夢だ。かつて■■■■と呼ばれたモノの10年余の人生からしても最悪に分類される記憶の1つだろう。
■■■■■■■■■の魔法使いが端正な顔に獣の如き歪んだ笑顔を浮かべ呪文を唱える。杖から放たれたのは切断呪文だ。杖は渡したぞ、さぁ防いでみせろと嗤う。いくら何でもできるわけがない。確かに杖は渡されている。だが杖を手にすることを許されたのは今日が初めてだ。だというのに何度も執拗に切断呪文を当てられる。腕や脚は大きく裂け本来であれば見えるはずのない白いナニカが見えた。しかし数秒もすれば周りの肉が蠢き裂傷が塞がり始める。文字通り裂ける様な激痛であるが泣き喚いてもこのケモノを悦ばせるだけだ。ささやかな抵抗として何があろうとも叫ばず許しを乞わない。
それが気に食わなかったのだろう。強化した肉体で腹を全力で蹴りぬいた。その小さな身体はサッカーボールの様に壁にぶつかるまで無機質な石床を転がりロクな受け身も取れず激突した。
身体中を擦りむき咽せると吐血し白い簡素な服を紅に染める。置き土産として腹を踏みつけ、また明日も愉しもうと言い残しその場を立ち去る。
周囲には同じく
そんな中■■■■は隣で
「……ツェーン、タウゼントはもう……」
「■■■■……、わかってるよ。わかってるけど、なんでなのっ」
「……キミだけに背負わせないよ。……皆でタウゼントの生も夢も背負って進むんだ」
■■■■にツェーンと呼ばれた子どもはその腕の中でしばらく泣いていたが、やがて泣き疲れたのか気絶したように寝付いた。それを確認すると1人の名を呼んだ。
「……ツヴァイ、キミはツェーンを背負ってくれるかな」
「ああ、分かった」
歩み寄ってきたツヴァイも例外なく鏡写しの様に皆と瓜二つであった。ツヴァイはほぼ同じ体格のツェーンを軽々と持ち上げ背中に担いだ。■■■■も同様にタウゼントを背中に担ぎ上げ、2人を待っていた同胞を率いて自分たちに与えられた離れの区画に向かう。
自分たちの区画へは一度外へ出なければならず、外では満月が怪しく輝いていた。外を歩いていると自分たち以外の喋り声が聞こえ城の外周部の廊下ではこの城の主とその子どもが歩いているのが見えた。
それを眺めていた■■■■らと城の主たる男と目が会った。だが男は気まずいのか、それとも別の感情かそっと視線を逸らし逃げるかのように息子との会話に戻ってしまった。
この時■■■■の胸の奥では湧き上がるドロリとした濁った感情があった。
なんでボクたちだけが。ああ、■ましい。
■■■はその時ゾッとする程濁った目と合った。
レクスは引きつった顔で飛び起き毛布を跳ね除け胸に手を当てる。心拍数は物凄く速くなっており寝間着は汗でびしょ濡れだった。荒い呼吸を抑え深呼吸しながら、あれは夢だと、夢だったと言い聞かせようやくいつもの無表情な顔へ戻った。
取り敢えず寮に備え付けのシャワーでも浴びようかとベットを出ると足元付近では大量のプレゼントが山のように積まれていた。レクスの覚えている人数とプレゼントの数が明らかに一致しないのでつまり大半がご機嫌取りだろう。ご苦労な事だ。とりあえず知らない名前のプレゼントは圧縮し小さな袋に詰めた。
シャワーを出て身も心もさっぱりしただろうといつもの定位置に座りプレゼントを開ける。ドラコからは魔法界で有名なブランドの銘菓だった。気を見ていつかもらうとしよう。
リーゼからは蒼と銀の狼の装飾が施された髪飾りだった。早速着けてみようかと思えば更に手紙が出てきた。内容は短いがこうだった。
親愛なるレクスへ
メリークリスマス、レクス。お父様に聞いたら貴方の家の紋章は狼がモチーフとの事だったのでそれを選びました。貴方の髪と瞳と同じ色なのできっと似合うと思います。休暇明けに良ければ付けているところを見せて下さい。それではよい休暇を。
リーゼロッテ・シンクレアより
ほぼ無意識にであるが手紙を読み終わった頃には、レクスの流れる様な銀の髪には蒼と銀の狼が潜んでいた。
その後もいくつか開けていき残すところ最後の1つとなっていた。最後に残っていたのはフリードのものだった。何が出て来るのかと開けると贈り物はフリードらしからぬペンだった。見るからに安物ではあったが気が向いたら使ってやろうと懐にしまった。
残り一週間の休暇であるが結果のみ言うとグリフィンドール寮に入るどころか、スリザリン寮からすらほぼ出なかった。
その間何をしていたのかといえば
ここまで読んだ人の中には今話はなんだこれ意味わからんぞと思う方がいらっしゃるかもしれませんが安心して下さい
作者もです