私の条件を満たすような剣を持ってくるまでは、この魔剣の所有者は私ね。
というと、取り巻き共は何か言いたそうにしていたが、勇者(笑)は笑顔で承諾してくれた。
ならば早く王都に戻って剣を探そうと、瞬くスピードで私の視界から去って行った。
まぁ、私の条件を満たす剣なんて、王都でも中々出会えないと思うけどね。
頑張って探したまえ勇者(笑)くん。
王宮の宝物庫になら、良い剣が沢山埋まってそうだよ?
明日から勇者(笑)の剣を探す旅の未来を描きながら、当初の目的である冒険者ギルドに戻っていると、緊急放送が流れる。
『緊急、緊急!全冒険者各員は戦闘態勢を整えて、正門前に集合してください!!』
お馴染みのルナさんの声が響く。
なんか焦ってるっぽい。
てか、緊急放送し過ぎじゃない、ここ最近。
まさかねぇ?
私がいや~な未来を想像していると、再度放送がかかる。
『緊急、緊急!!全冒険者各員は戦闘態勢を整えて、直ちに正門前に集合してくださいっ!!特に、サトウカズマパーティーは大至急でお願いしますっ!!!』
ありゃりゃ、私達のパーティー指名でお呼ばれですか?
心当たりしかないような気もしなくもない。
考えても、正門に行ったら分かるよね。
と実に脳筋っぽい考えを発動しながら、ぶらぶらと正門に向かう。
途中で放送を聞いたらしいカズマ君等が、後ろから走って来て合流した。
そんなにも慌てなくてもいいのにね、と言った所で無駄だったらしく、私も走る羽目になりました。
軽装備なカズマ君とめぐみん、それにアクア様は素早く走るが、重装備のダクネスさんと慣れない魔剣を持った私は走るの手こずってしまった。
そんな私とダクネスさんにカズマ君が言う。
「おいダクネス、ゆにな。俺達先に行くからな。ちゃんと来いよ」
「うむ、分かった。ゆになが逃げようとすれば連れてこよう」
「えぇ!?…どうしてそこまでするのかなぁ?」
「ゆにながめんどくさがり屋なだけですよ。先に行きますね」
「別に面倒くさがりじゃないもん。……アクア様も気を付けてくださいねー」
めぐみんに言われたことが腹が立ったので、否定してからアクア様に声をかけて走るスピードを落とす。
「済まないな」
「何がですか?」
「私を一人にさせないために、噓を付いたのではないのか?」
急に謝って来たダクネスさんに、私ははてなマークを頭に思い浮かべる。
噓?はてはて、私は嘘なんかついてませんが……………あ、そうか。
「別に嘘じゃないですよ。アークウィザードである私にこの魔剣は重かったみたいでね」
と答えたのだった。
やっと一巻最後の章に辿り来ました。毎日更新のラストスパートです。八月中には終われるかな?